1-1.宇宙連邦剣士(自称)
新版です。改めて冒頭から書き直しました(笑)
可能なら最初からお楽しみください。
俺は双川功、17歳の高校生だ。
成績は普通かな。
本好きで、スポーツは特にやっていない。
今日は月曜、ヤングヨンデ―の発売日なので速攻で帰る。
いつもはラノベをネットで読むのが好きなんだが、今連載中の『多職転生』は漫画でしか読めない。
バイトが続かず転々としていた主人公。
彼は異世界に生まれ変わり、定職に就く事を目指す。
だが結局ジョブチェンジしまくり、そこで新たな生き方を見出すという壮大な物語だ。
「一日6回ジョブチェンジ」は、伝説の神回として語り継がれている。
以前は帰るなり速攻で読んだものだが今は落ち着いてから読む。
自室で主人公と同じスウェットに着替えるだけだが。
(よく知らないが、世間的にはジャージと呼ぶらしい)
休載してないのは確認済み。
床に置き、寝転び読むのが基本だ。
目次からでなく、パラパラめくって絵を探し更に少しずつめくって最初のページへ。
ん、誰か真横にいる。
見ると美人のお姉さんが真似するようにうつぶせに。
近い、顔が。
「こんにちは」
「・・・誰?」
~~~~~~~~~~~~
「あ、双川さんおはようございます」
書類棚を整理しながら振り向いたのは、家にいたお姉さんだ。
体にフィットした服、制服? コスプレ?
胸から上・腕・下半身が黒。偶然にも俺のジャージと同じデザインだ。
スタイルは普通・・・いや、締まるとこは締まってる。
胸も普通っぽいが、お尻が大きいのは好みだ。
俺は時間が抜け落ちた感覚で立っている。
事務所? 何かの会社?
体におかしなところは無い。
混乱したまま答えた。
「おはよう?ございます」
「付いてきてください」
何か言うべきはずだが、変だ、考えがまとまらず出てこない。
中央に分厚いマットが置いてある以外飾りっ気のない部屋に来た。
「私エル、よろしくぅ~!」
突然目前に現れた妖精?にひっくりコケそうになった。
浮かんでる、いや羽で飛んでる。
顔が女性とそっくり、いや同じ。
「これってもしかして?」
交互に指差すと、両者が頷く。
「じゃあ後は引き継ぎますので・・・あ間違った」
妖精だ。
「じゃあ後は引き継ぎますので。エルよろしく頼みますね」
女性の方だ。
「はい、お任せください。では双川さん、よろしくー」
妖精だ。
結構天然らしい。
エルさんって彼女自身の名前かな。
まだ真っ赤な本人に軽く会釈したが、両者互いに手を振っていた。
何がしたい?
妖精と二人だけになった。
「あなたは宇宙連邦エージェントに選ばれたの、おめでとー!」
「・・・・・・」
おめでたいのはあんたの頭・・・
いやいや、妖精がいる。
立体映像にしたってこの実体感は有り得ないよな。
「かわりにコマンド言うね、『メニュー』!」
エルの声で俺の目の前に半透明の小型PCのような画面が現れた。
「他人には見えないから安心してね。
じゃあ一つずつ見て行くけど、危険時には自動で作動するからね」
レーダー
バリア
加速
重力制御
代謝制御
ゲームっぽい何かの機能?の名前が「メニュー」に並ぶ。
SF好きなら「!」と思うものがあるが・・・。
加速って、あれか?
そして重力制御?
まず本当・・・なはずがないんだが。
普通なら。
これは本当だ、となぜか思ってしまっている。
俺自身意味が解らないが、特に損するわけではないのでそれでいいか。
・・・?
「あとは弱点表示と武器の機能があるよ。
使いやすいように『脳内表示』モードにしといて。
一番下にあるボタンを押してね」
おお、頭の中にさっきの画面が移動した。
視界の邪魔にはならない、別々に認識できるみたいだ。
頭の後ろ側に意識を向ければはっきりと見える。
「レーダーからいきまーす。
ボタンは意識で押せるから慣れてね」
マップと多くの光点が見える。
さっきのお姉さんの場所はすぐ分かった。
建物の外の知らない街、多くの人の動きや地形も分かる。
またも違和感、だが考えがうまくまとまらない・・・。
意識はメニューへ、今はこれが大事なのだ・・・?
「次はバリア、意味は分かるよね」
画面で形状が分かるようだ。
バリアは500トンもの圧力に耐えるらしい。
衝撃の場合は・・・重量が人ひとり分なので当然吹っ飛ぶ。
だが衝撃は可能な限り緩和され、その後の落下や衝突も同じ。
まず死ぬことは無いようだ。
閃光やレーザーには常駐のバリアが反応する。
通常は透明・物質透過するが、反応して組成が変化するそうだ。
いきなり爆発が起きてもバリア内なら大丈夫なわけだ。
他の機能もそうだが、「充分発達した文明はまるで魔法」だな。
昔の偉い作家が言ってた。
次は『加速』だが・・・。
俺が知っている『加速』の装置で間違いないのか。
「そのとおりー!」
心を読み取られているらしい・・・いやそれ以上に『加速』に驚く。
マンガやアニメの「加速装置」は割とみんな知ってるだろう。
“スピードが速くなる” で間違いじゃないが・・・ちょっと違う。
おじさんの家に膨大なSF小説があり、小学生の頃から入り浸った。
いつかこういう物ができるのかと思うと胸が踊った。
いわゆるヒーロー物だったな。
「加速装置」はその人の時間の流れを速くする機械だ。
SFの説明では「原子中の電子の回転速度を速める事で、固有の時間速度を速める」らしいが。
まあたとえそれが出来ても、色々な問題が起きるよな。
特に人間が耐えられるかとか。
彼ら『宇宙連邦』は問題をクリアしたんだろう。
つまり「自分以外がゆっくりになり、その結果自分だけ滅茶苦茶素速く動ける」という夢のような装置なのだ。
「原理はしらないけど正解!
あとでシミュレーターで試してね」
こいつ、完全に思考を読んでやがる。
マット上で『重力制御』してみる。
「0で無重力ね。
まず0でかるーくジャンプ、100に戻す手順でやってね」
言われた手順通り4~5メーター上昇、100に戻す。
うおっいきなりマットが消えた、横向きに落ちる!
足からは無理、受け身を・・・
床直前の一瞬ふわっと減速、着地した。
「いまのは緩衝モード、つまり『重力制御』作動時の自動バリアね。
訓練次第でこれ無しでいけるかも、がんばろー」
ドッキリかよ!
でもこれ、工夫次第でその「訓練」できないか?
緩衝バリアを足が出る程度にし、普段は体を丸めるイメージ。
「なるほど、さすがー!
ちなみに、横向きにも跳べるけど訓練が大変。
その丸まりで解決できるかもしれないね!」
・・・思考に勝手に答えるな。
「次は代謝制御、 これは実際に体験しないと出来ないんで。
傷の治りを少し早めたり、毒の回りを抑えたりね」
なるほど、治療とかの補助か。
「『弱点表示』機能は直接敵と重なって見えるから超便利!
それから最後は武器、これ大事!」
武器か、どんなもので威力は?
「時計の右ボタンを押して」
いつの間にか見たことの無い時計を着けていた。
俺の好きなクロノグラフ(多針の多機能時計)、いいデザインだ。
ガラスが丸く膨らみ厚いのに、重さを感じず歪みも無い。
これはいいものだ、と思う。だが今は武器か。
腕側に突き出ていた分を加えても10センチ無い棒が取れた。
取り出すといきなり伸びる。
50センチはあるが、市販の伸縮棒と違い先端まで全く同じ太さだ。
継ぎ目も無いな。
「基本的に殴るのと突く武器で、先端は尖ってるんで気をつけてね。
あとは握った部分以外に帯電させられるよ、スタン機能ね。
時計に戻せば多少壊れても修復可能だから覚えといてね。
伸ばした長さは60センチ、短くも設定できまーす」
思っただけでまた短くなり、時計へ戻す。
あれ・・・?
この時計くっついてないか、 腕に。
バンドのままだが、ずらそうとしても動かないし離れない。
「これ、は?」
「安心して、リンク解除すれば数時間ではがせるよ。
一切体は弄って無いから」
「分かった。
で、それより・・・せんぶ聞こえてる?」
「ごめん、その時計――ガジェットと思考リンクしてるの。
ニュアンスを伝えたり、行動中の安全に必要なの。
言い出すタイミング難しかったから、ごめん」
「そっちの思考は分からないけど?」
「仕様と、こういうのに慣れてるのと。ニュアンスや感情は伝わるよね」
「うん、たしかに」
エルの申し訳ないという気持ちが伝わって来る。
人間の姿の彼女を思い出す。
ピッタリした服、大きめのお尻。
なぜかついつい裸の姿を想像してしてしまう。
見られていると思うと止まらない。
うわー、誰か止めて!
「・・・大丈夫、そういうの分かります」
落ち着いてる? 助かった。
でも「分かる」のか、男性に聞いたとかじゃなく。
でも真っ赤だ。
「そういう時は任意のみで繋がるように出来るから・・・」
(《心の声》嘘だけど、これで落ち着くはず?
この年代はありがち??)
よく分からない説明だったが、なんとか立ち直った。
腹は減らないが、勧められてブロック型の食べ物を口にした。
知っている市販品の5分の1程で1食だ。
これって、知らないと一気食いしてしまいそうだな。
帰りには常時携帯用にリュック1つ分くれるそうだが。
これを食う日が来るのか・・・?
立体シミュレータで、ゲームのような基礎の戦闘練習をする。
「加速」も試せた。
敵全滅まで数分だった。
ほんとにゲームだな・・・。
もう一度。
相手は模擬の立方体生物だが、たまに人も走ってくる。
レーダーの色で敵が分かるが、意識して動くのは大変だ。
そのうち、色での判別以外に様々な異常や感情も直接感じた。
諦めて動けない子供(らしき立体映像)を救助する。
加速は10%まで使えたが、今はこれ以上は上げられないようだ。
俺自身は普通の感覚のまま、比べ物にならない程すごい。
たった10%でも、敵の動きが明らかに鈍い。
怖いほどの効果だ・・・。
離れた敵には、近づくために重力制御でなんとか跳ぶ。
近づければ弱点表示を一撃、数体倒す。
良い使い方に気づいた。
跳ね回ったり飛び降りる時は重力を減らす、それだけだ。
それだけで移動が楽で早い、月面を跳ぶ感じかも。
でも空中でふわっとしてると狙われやすい。
その時は100%に戻し、すぐ着地。
地味にレーダーが一番役に立った。
これら機能の組み合わせは凄い。
何が起きてもほぼ死なない気がする。
ただ、武器のみ足りない気はする。
腕力と「加速による衝撃」頼りで棒を振り、突くだけだ。
宇宙連邦エージェント、いや、宇宙連邦戦士だな・・・
ちょっと恥ずいので宇宙連邦剣士とでも名乗るか。
ただし、防御特化型。
で、俺は一体どうなるんだ?
何のためにこんな装備を?
■「読みました」の一言でいいのでツイッター感覚で感想くださいw
とりあえず ブックマーク してもらえれば無上の喜びです!
いくつでもいいので★よろしく
↓ ↓ ↓