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妖かし四方山話 強さを求む者  作者: けせらせら
6/8

 ふと、目が覚めた。

 まだ辺りは暗い。

 ここ数日、追われていて眠りが浅くなっている。常に追われている気がして、ゆっくり眠ることなど出来ない日々が続いている。

 そんな不安から、また目覚めてしまったのだろうか。

(違う)

 何かの気配がする。

 奴らが追いかけてきたのだろうか。

 丈瑠は起き上がるとすかさず木刀を構えた。

 だが、そこに人の姿は見えない。

 ただ、白い煙が辺りに漂っている。タバコの煙でも線香のものとも違う。何の匂いもしない。濃い霧が道場の中にたちこめている。

(なんだ?)

 丈瑠は暗闇の中で目を凝らす。

 やがて、その煙が一箇所に集まっていく。そして、みるみるうちに人の形を作り出す。

(これは?)

 羽織袴の侍が目の前に立っている。

(土方歳三?)

 もちろん過去に土方歳三に会ったことなどあるはずもない。肖像画を目にしたことはあるが、その顔立ちまではハッキリとは確認出来ない。

 それでも、そこにいるのが土方歳三だと確信出来る。

 ザワザワと心がざわめく。

 やはりあの噂は本当だったのだ。

 だが、興奮する気持ちがある反面、体は硬直して自由が効かない。

(震えている?)

 足が震えていることに、丈瑠はやっと気がついた。

 亡霊を目の前にして、恐怖を感じているのか?

 いや、そういう類の震えではない。もちろん武者振りなどという格好のいいものではない。

 身動きが取れない。

 ただ、ただ相手の強さに飲まれている。

 亡霊が刀を抜き、その剣先が自分のほうへと向けられる。

 切られる。

 ツーっと冷たいものが背筋を走る。

 まさに蛇に睨まれた蛙といった状態だった。


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