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妖かし四方山話 強さを求む者  作者: けせらせら
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 どんよりとした雲が西の空に見える。

 雨が降り出すまで、そう長い時間は必要としないだろう。暗い雲の下には広い畑が永遠と続いている。あと一ヶ月もすれば、この地は真っ白な雪で覆われることになるだろう。

 清水丈瑠しみずたけるはバスの窓からぼんやりと外を眺めた。

 いつか観てみたいと思っていた北の大地の風景を、こんな形で観ることになることに丈瑠は不思議な感じがしていた。

 7年前、高校二年の修学旅行の時、北海道か沖縄のどちらかを選択することになり、丈瑠はさほど考えることなく沖縄を選んだ。たいした理由はなかった。友人たちのなかに沖縄に行きたいという者たちが多かったというだけのことだ。

 その後、テレビで観た北海道の広大な風景に興味を持つようになったが、これまで訪れる機会には恵まれなかった。

 そして、今、目の前にはずっと観たいと思っていた景色が広がっている。それなのにまったく心は動かない。

どんなに良い景色だったとしても、気分良く眺めていられるはずもない。なぜなら、今、自分は命を狙われているのだ。

 どうしてこうなった?

 昨日から、何度も呪文のように心のなかで繰り返す。

 だが、答えなど出るはずもない。

 もし、原因があるとすれば、それは自分の短気な行動から始まったことだ。これまでは何があっても過去を振り返るなんてことはしたことがなかった。後悔なんてものは弱い人間がするものだと思ってきた。

 それなのに今は、過去に戻ることが出来るなら……と、ついつい考えてしまう。

 そして、つい思い出すのは6年前の全国大会のことだ。

 高校最後の剣道の試合、あの大会で優勝していれば、その後の考え方も生き方も変わっていたのかもしれない。

(どうしてまた今頃になって)

 今更悔やんでみても仕方がない。

 それはわかっている。それでもそのことがどうしても頭をよぎる。


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