第六話 〜空駆ける半妖〜
この作品は東方projectの二次創作作品です
既存キャラとオリキャラとの絡みが多々あります
※今回、莉音くんが女装するシーンがあります。女装が苦手な方は注意してください
「はぁ…はぁ…」
咲夜の特訓は夕方まで続いた。時計台から飛び降りる、これは身体的により精神的にくるものがあった。
「お疲れ様。今日はここまでにしましょうか」
「はい…そうします…」
咲夜に時計台から下ろしてもらい、部屋に戻った。
「はぁー…なんなんだあの特訓…」
部屋の中で一人呟く。が、よくよく考えてみれば、飛行能力を身につけてからは時計台より高い場所を飛ぶことになるのだからやはり慣れておく必要がある。
明日も時計台から飛び降り…そう考えると気持ちが休まらないが、あまり考えないようにして休むことにした。
次の日、特訓の内容は昨日と同じだが、莉音はあることをやってみることにした。
「あの…今日は自分で飛んでみます」
咲夜に押してもらうだけではいけないと思い、自分で飛び降りることに挑戦してみるのだ。
「あら、大丈夫なんですか?」
「はい…頑張ります…!」
そう言って時計台の端へ。深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、飛ぶ覚悟を決めた。
「…よし!」
ジャンプして飛び降りた。目を瞑り、声が出るのを必死に抑え、浮く感覚を覚えるのに集中した。結果、昨日よりは感覚を覚えるのに集中することができた。
このやり方を繰り返した結果、ある変化が起きた。夕方、最後に一回飛んで終わることにして、莉音は一回飛んだ。そろそろ地面に着く辺りで体がフワリと浮く感覚におそわれた。が、気の所為だと思い、目を開けることはしなかった。そして地面に足が着く。また時計台の上だと思い目を開けたが、見えたのは湖。さらに下を見ると紅いレンガではなく草が生い茂っていた。困惑する莉音の元に咲夜が来た。
「莉音…あなた…」
咲夜は驚いた表情をしていた。
「あの…咲夜さん、なにかしました?」
「いえ、今回は何もしてないわ」
「じゃあ、ひょっとして…」
あの体が浮く感じは気の所為ではなかった。
「浮けた…?」
「えぇ、僅かではあったけど、あなた浮いたわよ…」
「や、やったぁ!!」
二日目にして早くも成果が表れた。
「この調子ね。明日も頑張りましょう」
「はい!」
そうして咲夜に部屋に案内してもらう。雰囲気には慣れたが、広い故にまだ構造が把握できていない。まだ咲夜の案内が必要だ。
夕飯を食べ、食器を廊下のミニテーブルに戻そうとした時、横から声をかけられた。
「ん?あなた、誰?」
見ると、薄い紫のローブを着た少女と赤いロングヘアの少女がいた。ここの住人なんだろう。
「あ、はじめまして。僕は駆雷莉音といいます」
「あぁ、あなたが今ここで特訓してるっていう半人半妖さんね。はじめまして。私はパチュリー・ノーレッジ、ここに住む魔法使いよ」
そう言った後、パチュリーは横の少女を指さした。
「こっちは小悪魔。ここの地下図書館の司書兼私の使い兼実験台よ」
「パチュリー様…実験台は不要では…?」
「ん?間違いあった?」
なんだか仲良さげな二人だ。
「間違いって…私がいつ実験台になりました?」
「つい一ヶ月前ね。あなたの食事に新作の薬を混ぜているわ。効果は…秘密よ」
「そんな!?」
随分と危ないことをしている気がするが、ツッコまなかった。
「と…そういえばあなた飛行能力を身につけるために特訓してるんだって?」
パチュリーが莉音の方を向き言った。
「はい。今日少し浮く段階までいけました」
「ふむ…なら飛行能力の習得もそう遠くはないわね。あなたみたいな人なら…早ければ明後日には習得できるかもね」
「本当ですか!?」
「えぇ。あなたは半分雷獣、つまり幻獣の血を継いでいる。その力が飛行能力習得の支えになっているわ。でも、気を抜かない事ね。完璧に習得するまで、頑張りなさい」
「はい!ありがとうございます!」
「ふふ…期待してるわ。さ、小悪魔、行くわよ」
そう言ってパチュリーは小悪魔を連れて廊下を歩き出した。小悪魔の顔には不安の色が浮かんでいた。
「パチュリー様…薬の効果って…」
「まだ考えてたの?仕方ないわね…効果は疲労回復、記憶力、集中力アップよ。副作用で背が縮むだけ」
「じゃあ、最近疲れないし本の位置を覚えられるのも…背が縮んだのも…!」
こんな会話が聞こえてきた。そんな薬を一ヶ月も盛られて、大丈夫なんだろうか…そう考えながら部屋の中に戻った。パチュリーが「雷獣の力が支えになる」と言っていたが、雷獣の力はそんなに強いのか…莉音はまだ自分の力を理解していなかった。雷双の力、これについては紅魔館を出る前にパチュリーに聞いておきたいと考えていた。
特訓三日目、いくらか高さには慣れ、目を瞑らなくても飛び降れるようになり、滞空時間も少しづつだが伸びてきた。そして四日目、長時間の滞空に成功した。が、まだ空中での体のコントロールができたわけではない。
「じゃあ、明日からは体のコントロールの仕方についてね。これを覚えれば飛行能力を身につけたも同然よ!」
「はい!頑張ります!」
部屋に戻り、風呂に入ろうとした時に気付いた。替えの服が無いことが。莉音は部屋中探し回ったが、どこにもなかった。咲夜に聞こう、そう思った時、咲夜が入ってきた。手には何か持っている。
「莉音、あなたの服なんだけど…道着なんて洗濯したことなくてね…まだ乾いてないの」
「でも、今まではちゃんと乾いてましたよ」
「そうなのよ。それは早めに洗濯したから乾いてたんだけどね…今日はちょっと洗濯物が溜まってしまって道着の洗濯が後回しになっちゃったの。だから、明日はこれを着てね」
そう言って手に持っていたものを渡された。
「サイズが合うのがそれしかないの。悪いけど明日だけ、ね?」
「分かりました。大丈夫ですよ」
「ありがとう。本当にごめんなさいね」
「いえいえ、気にしないでください」
咲夜が部屋を出た後、莉音は咲夜に渡された物を広げてみた。
「…!」
咲夜と同じメイド服だった。なぜこのチョイスなのかわからなかったが、ふと、紫とのやり取りを思い出した。紫は莉音に性別を尋ね、男と言ったら本当かと疑った。咲夜も莉音のことを女としてみていたとしたら…それは十分にありえることだった。服を変えてもおうとも思ったが、案内無しに紅魔館内をうろつくのは自分から迷子になりにいくようなもの。諦めることにした。
風呂から上がり、ベッドの上に置いておいたメイド服に着替える。少し抵抗があったがなんとか着てみた。
「……」
初めて着るメイド服に違和感しかおぼえなかった。特にスカートに関してはスースーするし、袴とは全く違っていた。何より、異性の服を着るという恥ずかしさもあった。
次の日の朝、部屋の前にて。
「あら、似合うじゃない」
「…」
「そんなに照れる…?」
「だって…こんな…」
「似合うわよ?女の子らしくて」
「あの…咲夜さん…」
「はい?」
「僕、男です…」
「えっ?」
「男です…」
「え、えぇ!?」
明らかに驚いた表情をした。そんなに女の子に見えるのか…容姿に関してまたこんな展開になるとは思ってなかった。
「でも、男の子の服なんてここに無くて…ごめんなさいね…」
そんなことあるか?とも思ったが、今日で紅魔館に来て五日目、まだ男の人に会ってないことから、本当なんだろうと思った。
「仕方ないです…今日は我慢します…」
そしてまた時計台…ではなく、今日は中庭だった。咲夜曰く、体のコントロールだけなら中庭でもいいし、安全だからとのこと。
「じゃあ、まずは浮いてみて」
トン、と軽くジャンプして莉音は宙に浮いた。
「うん、バランス感覚はある感じね。全くブレてないわ。飛行のコツは…無い」
「な、無い!?」
「えぇ。歩行みたいな感じよ。頭で考えた通りにやれる筈よ」
「分かりました…やってみます」
言われた通り、歩くのと同じ感覚でやってみた。すると、意外と簡単に前に進めた。
「わ…出来ましたよ!」
「あら、本当に簡単に。ひょっとして才能あったんじゃないの?」
あっさりと習得できてしまった。
「咲夜さーん!どうです?上手く飛べてますかー?」
「えぇ。バッチリよ!」
その日のうちに完璧に飛行能力を身につけた。明日紅魔館を出発することにし、そのために荷物をまとめていた。
「いよいよか…」
そう呟き、リストを確認した。次の目的地は冥界。空を飛んで行く場所ということはわかっていたが、どこにあるのかはわからなかった。それは明日の朝聞くことにして、今日はもう休むことにした。
次の日の朝、レミリアに挨拶しようと、レミリアの部屋に案内してもらった。中に入ると、レミリアともう一人、赤い服を着た少女がいた。背中には枝に宝石が付いたものが生えていた。翼…にしては不思議な形をしている。
「あら、莉音。今日出発なのね」
「莉音?お姉様、この人誰?」
「ここで特訓していた人よ。莉音、こっちはフランドール・スカーレット。私の妹よ」
「フランドールさん…ですね。こんにちは」
「こんにちはー!ねーねー、あなた人間?」
「いえ、半人半妖です。半分人間、半分は雷獣です」
「らいじゅー?よくわかんないや」
そう言ってフランは莉音に歩み寄った。
「な…なんですか?」
「んー?あなたの血って美味しいのかなぁって」
「え!?」
「ふふっ…冗談よ♪」
満面の笑みで言った。なんだか無邪気な笑顔だった。
「そ、そうですか…」
「うん♪」
フランの後ろからレミリアが声をかける
「フラン、莉音はもうここを出発するのよ」
「えー…フラン莉音と遊びたいー」
「やめておきなさい…莉音はまだ未熟なんだから」
「はーい…」
そう言ってフランは莉音から離れた。
「で、もう出るの?」
「はい。次の目的地に行かなければならないので」
「次は確か冥界ね?冥界は雲の上に存在する…かなり飛ばないと行けないわよ」
「雲の上…ですか」
「そう。冥界に入れたら、後は階段を登っていけば住人は見つかるはず…って咲夜が言ってたわ」
「なるほど…わかりました」
少しボケたつもりだったが、全くツッコミが入らなかったことにレミリアは少し表情を崩した。が、すぐに表情を正した。
「冥界には半人半霊がいるわ。あなたと種族が似ているし、アドバイスをもらうのもいいかもね」
「半人半霊…?」
「半分人間で半分幽霊。あなたの妖怪部分が幽霊になった感じよ。彼女なら、今の幻想郷での半人の立場について詳しく知ってるかもよ」
「なるほど。色々ありがとうございます」
「いいのよ。あなたがちゃんと使命を全うできることを願うわ…」
「次来たときはフランと遊んでねー!」
二人との挨拶を終え、部屋を出た。そして咲夜の案内でエントランスに向かう。パチュリーと小悪魔にも挨拶がしたかったが機会が無く、できなかった。結局、雷獣の力について理解しないままになってしまった。
雷獣の力…半分自分に宿っている力はどんなものなのか…それをなぜ自分が知らないのか…それもわからなかった。忘れたのかそもそも知らなかったのか、そんなことを考えているうちにエントランスについた。
「あとは案内がなくても出れるわね?」
「はい。今まで、案内や特訓をしてくださりありがとうございました」
「ふふっ…次の目的地でも頑張ってね」
「はい!」
そう言って咲夜に背を向け、扉をあけて外に出た。眩しいくらいに日が照っている。門を開けて紅魔館の敷地から出る。美鈴にも挨拶をしようとしたが
「スー…スー…」
「…また寝てる」
起こしちゃ悪いと思い、そのままゆっくりその場を去った。少し歩いたところでトンッと軽くジャンプし、宙に浮いた。次の目的地、冥界は雲の上…そこを目指すために空に向かって莉音は飛んだ。
どうも、作者のよっしー兄貴です。東方雷双歴第六話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。第六話執筆中まで非公開なのに気付きませんでした…
今回は紅魔館編最後のお話でした。パッチェさんやこあ、フランも出てきましたね。莉音くんも無事に飛行能力を身につけることができました。
そして、咲夜さんにメイド服を渡され、それを着る展開もありましたね。すいません、あれ完全に趣味です()自覚ない男の娘が女の子っぽい格好するやつ、好きなんです。莉音くんがメイド服着た時の感想ですが、半分は実体験が元です。メイド服ではないですが、コスプレ経験あるんです。
次回は冥界にある白玉楼を目指します。冥界の位置は妖々夢四面の「雲の上の桜花結界」から雲の上、としました。冥界では何を学ぶのか…どう成長するのか…
次回もよろしくお願いします〜




