第二十四話 〜二度目の想起〜
この作品は東方Project二次創作作品です
既存キャラとオリキャラの絡みが多々あります
「いやぁ…本当に大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だって!」
「その自信はどこから湧くんの…?」
「まぁまぁ、こいつなら上手くやるさ」
「だからその自信何?」
「私にもよくわからん。と、そろそろ地霊殿だぞ」
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「で、勇儀達があなたをここへ運んできたのです」
「は、はぁ…」
莉音は、さとりが出したお茶を飲みながら、ここへ来た経緯を説明されていた。要は、寝ているうちに勇儀たちに運ばれ、地霊殿に着いたようだ。
「で、自分の記憶を戻したいと…」
どうやら地霊殿を目指していた理由も伝えられていたようだ。
「はい」
「まあ、できなくはないですが…」
「ですが…?」
さとりが不安そうな目で莉音を見た。
「割と鮮明に思い出しますよ?もし辛い記憶だとしたら…」
その言葉で一緒気持ちが揺らいだ。自分の父親のことを思い出すなら多分、あの事件の想起も避けられないこと。だとしたら…
「もう少し考えても構いませんし…」
「いや…」
しかし、莉音はある決意を抱いていた。もう逃げないと。あの過去からも…もう目は背けない。
「お願いします…」
「…わかったわ。ここじゃなんだし、場所を移しましょう」
二人は部屋を出た。廊下を歩きながら、莉音は気持ちを整えていた。どんなことを思い出しても、大丈夫なように…。向かった部屋の前で、猫耳が付いた少女と出会った。
「さとり様?その人は?」
「あぁ、ちょっと用事があってね。そうだお燐、今暇?」
「暇ですよ」
「では、部屋に誰も入らないように見張っててくれない?」
「了解でーす」
二人は少女に見張りを任せ、部屋に入った。中はあまり広くなく、本棚に囲まれた部屋だ。
「あの…さっきの方は?」
「火焔猫燐、火車という妖怪で、私のペットです」
「ペット…!?」
「あ、変な意味は全くありませんよ。普段は猫の姿をしているので」
「は、はぁ…」
「それは置いておいて、早めに初めましょう。その椅子に座って」
「あ、はい」
莉音は部屋の真ん中の椅子に座った。さとりも椅子を持ってきて莉音の前に座った。
「では、目を閉じて…記憶の想起に集中してください…」
「はい…」
莉音はゆっくり目を閉じた。さとりは莉音の頬に手を添え莉音の額に自分の額を合わせた。
「では…もういい時に目を開けてください」
さとりがそう呟くと、過去の記憶がぼんやりと浮かび上がってきた。それも段々鮮明になっていく。
『莉音、こっちおいで〜』
白い道着に青の袴を履いた青年が莉音を呼んだ。
『おとーさん!』
(お父さん…じゃあ、この人が…)
青年は莉音を抱き上げ、優しい笑みを浮かべた。後ろの方に茹でたとうもろこしを乗せた皿を持った女性がいる。
(お母さんも…)
『光、莉音、おやつよー』
『お、莉音!今日のおやつはとうもろこしだぞ〜』
『わー!とうもろこし好きー!』
さりげなく呼ばれた父親の名前。
(光…駆雷光か…)
正直、もう思い出すことは思い出せた。だが、まだ記憶を遡ってみたいと思い、莉音は目をつむったままでいた。場面が切り替わり、今度は光がサイズの小さい白い道着を持っていた。
『莉音、お父さんとおそろいの道着だぞ?どうだ?』
『おそろい!着る!』
光に着付けをしてもらい、莉音は白い道着と青の袴を身につけた。
『うん、やっぱり似合うな!』
『サイズもピッタリね。光そっくり』
『?おとーさん、これは?』
莉音が指さした先には雷の刺繍が入っていた。光の道着には無い、雷の刺繍。
『それは莉音のためにお母さんが付けてくれたんだ。全部お父さんと一緒じゃ間違っちゃうからな』
『そっか!』
莉音は光とおそろいの道着にご満悦の様子だ。
(思い出した。この後無茶言って同じのたくさん作ってもらったっけ…)
その後も場面転換をしつつ、莉音は記憶を辿った。
そして…
『お前は早く莉音を連れて逃げろ!』
『でも…』
(これ…まさか…)
ある日、昼寝から覚めると莉音は母親に抱かれていた。外は騒がしかった記憶がある。
『大丈夫、前にピクニックに行った時に使ったあの小屋を目指せ。俺はあいつを食い止める』
『…』
『お父さん?』
光は莉音の頭に手を置いた。
『莉音、お母さんのこと、頼んだぞ』
『え…?』
外がより騒がしくなる。風が唸る音まで聞こえてきた。
『早く行け!もうそこまで来てる!』
『光…無事でね…』
『あぁ。俺なら大丈夫だ。お前もな…桜』
光は妻、桜と莉音に目配せをした後、家を飛び出した。桜も莉音を抱いて家を出た。
『お父さん!』
莉音が見たのは、見たことも無い凶器を持って暴れる一人の人間と、上からの強風で拘束を試みる烏天狗、そして帯電しながら人間に向かう父親の姿だった…
そこで何故か記憶が途切れた。莉音はゆっくり目を開けた。そこにはさとりが泣きながら座っていた。
「さ、さとりさん…?」
「あんな記憶見せられて泣かない方が無理…」
「え、さとりさんも見てたんですか?」
「だって私が引き出した記憶をあなたに送ってたんだから…」
「そ、そうだったんですか…」
「ち、ちょっと…気分を落ちつかせてきますね…。あなたも少し休んでいてください」
そう言ってさとりは部屋を出た。部屋の外からうっすら聞こえてきた会話から察するに、燐もさとりに同行したようだ。
部屋に一人取り残された莉音は、思い出した事を整理していた。霊廟の時とは違う。自分に関する記憶は全て取り戻せた。いい思い出も悪い思い出も…無意識の内に忘れていた記憶も…。気持ちも落ち着いてきたところで、部屋の扉が勢いよく開いた。
「さとり様ー!」
入ってきたのは背中の大きな黒い翼が目立つ少女だ。
「あれ?さとり様は?それより、あなた誰?」
少女は莉音の前にトコトコっと寄ってきた。
「僕は駆雷莉音といいます。雷獣と人間のハーフです」
「ふーん。私は霊烏路空!地獄鴉だよ!」
空は満面の笑みで莉音を見ている。
「…」
「…なんですか?」
「んー?」
空はいきなり莉音の頬を人差し指でつついた。
「みゅ!?」
「やっぱり!柔らかい!」
そう言うと、空は莉音の頬を両手でムニムニと弄り始めた。
「ムニムニしてるー」
「うゆ…」
「お空!何してるの!?」
「あ、さとり様!」
さとりが部屋に戻ってきた。
「ほっぺムニムニしてました!」
「お客さんに失礼なことしないの!」
「でもー…」
「口答えしない」
「…はぁい」
空は名残惜しそうに莉音の頬から手を離した。
「私はこの子とお話があるから、お空はお燐と遊んでて」
「はーい!」
空はまた勢いよく部屋を出ていった。
「ごめんなさいね。元気有り余ってる子で…」
「いえ、大丈夫です」
「ありがとう。あぁそれで、さっき私が勝手に打ち切っちゃったけど、思い出すことは思い出せたかしら?」
「はい。バッチリです。ありがとうございました」
「それは良かったわ。で、もう帰るの?」
「うーん、そうですね。なんか、すいません…こんなことのためだけに…」
莉音は申し訳なさそうな顔をして答えた。それにさとりは軽く首を横に振った。
「いえ、私もいい物を見せてもらったし…。そうだ。せっかくだし、お茶飲んで行ってください」
「いえ、そんな…」
「私は迷惑と思いませんから。遠慮しなくていいですよ?」
「それなら…」
「では、お燐とお空も呼んでみんなでおやつにしましょうか」
さとりと莉音は部屋を出て、食堂へ向かった。途中、燐と空も呼んで一緒に歩いた。空は気に入ったのか、ずっと莉音の頬をつついていた。
テーブルにはドーナツの大皿と、紅茶が五つ置かれていた。他に誰か来るのかと思い、莉音はさとりに数が多いことは言わなかった。しかし、四人のままで和やかな雰囲気でおやつを食べた。
作者のよっしー兄貴です。東方雷双歴第二十四話を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。今回で莉音の記憶が完璧に戻りました。まぁ、記憶喪失じゃなく、自分で封じこんだんですけどね。
さとりの記憶の想起はさとりが記憶を引っ張り出す→さとりを通して記憶を見せるというシステムになってるので、さとりも莉音の記憶を見れたのです。勿論この設定は雷双歴での設定です。
そして莉音の両親の名前も出ましたね。駆雷光と駆雷桜です。二人とも莉音を可愛がってくれたいい親でした…また出る機会があれば…出るかも?
次回は地霊殿編が終わり、いよいよゴールを目指します。雷双歴もそろそろ大詰め。最後まで平和…というかシリアスにはならないと思います。
そんな雷双歴、次回もよろしくお願いします〜




