第二十二話 〜聖人のお告げ〜
この作品は東方projectの二次創作作品です
既存キャラとオリキャラとの絡みが多々あります
「青娥殿?こんなところで何をしているのだ?」
部屋の前に立っている青娥に布都が話しかけた。
「あら、物部様。いえ、ちょっと…。それより、蘇我様は大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ、屠自古か?ならもう大丈夫じゃ。我が宥めておいたからな」
「そうですか…」
屠自古はもう落ち着いたという話を聞いた青娥の頭にある考えが浮かぶ。
(もしや…物部様なら)
ひょっとしたら青娥が解決できなかったことも解決できるかも…そう考えた。
「物部様、ちょっとお時間いいですか?」
「む?良いぞ」
「ありがとうございます」
「何かあるのか?」
「はい、実は…」
青娥はさっきの出来事を布都に話した。
「莉音殿が?」
「はい。絶対何かあると思うんです」
「青娥殿が部屋を出てすぐに泣きだすか…。確かに何か隠しているな」
「物部様、対応できますか?」
「我に任せろ!」
そう言うと布都は戸を少し開き、部屋の中を覗いた。莉音が横になって寝ている。
「寝ておる…」
「泣き疲れたのかもしれません」
「なら起きてから話を聞くか」
──
「ん…」
「おぉ、起きたか」
莉音が目を覚ますと、隣に布都が居た。
「あれ…僕…」
「なに、話なら聞いておる。大丈夫だ」
「え?」
「さっき何があったか、話せるか?」
「…はい」
布都は優しい表情をしていた。それのおかげで気持ちが楽になる。
「特訓中のことを整理してたら…父さんのことが過ぎって…」
布都はうんうん、と黙って聞いている。
「父さんも僕と同じかなって思ったら…その…」
ここで言葉に詰まってしまった。さっきの感情がまた押し寄せてくる。
「それ…で…」
「我慢しなくて良いぞ。話したくないなら話さなくてもいい」
布都にそう言われたが、莉音は全て話すという考えしか無かった。
「父さんのこと…思い…出せなくて……それが…悔しくて…」
頬を涙が伝うのを感じた。
「…辛いな」
莉音はただ頷いた。
「だが、お主は全部話してくれた。ひょっとしたら何か打つ手があるかもしれない」
黙って聞いている。
「だから落ち込むな。お主の記憶も絶対戻る」
布都は莉音の両肩に手を置き、少し強めに言った。かなり説得力がある。
「布都さん…」
「ひょっとしたら意外なところで記憶が戻るかもしれぬぞ?」
布都はニヤッと笑いながら言った。それにつられて莉音も少し笑う。
「ありがとうございます布都さん。だいぶ気持ちが楽になりました」
「また何かあれば我に相談するが良いぞ!」
布都は立ち上がり、莉音の頭を軽くポンポンとした。
「では、我は失礼するぞ」
「はい。ありがとうございました」
布都は軽く手を振りながら部屋を出た。莉音も微笑みながら応え、布都が部屋を出てから涙を拭いた。
次の日…
「莉音、ちょっといいかな?」
「え?あ、はい」
莉音は神子に呼ばれ、部屋に通された。
「布都から話は聞いたよ。なんでも、思い出せない記憶があるそうだね」
「え…」
「あぁ、話したくないならいいんだ。ただ、それの解決策なら知っているから伝えたくてね」
「!! 本当ですか!?」
莉音は神子の方に身を乗り出した。神子の驚いた表情にハッとなり、莉音は座りなおした。
「すいません…つい…」
「いや、いいんだ。君の大切な記憶だからね。…話を戻そうか」
「はい…」
「地底にある地霊殿という場所…そこの主のさとり妖怪なら、もしかすれば君の記憶を引き出せるかもよ?」
「さとり妖怪?」
聞いたことがない妖怪だ。
「他人の心を読めるのさ。口に出さずとも、さとり妖怪は考えを読んでくる…そんな妖怪だ」
「そのさとり妖怪がなぜ僕の記憶を?」
「どうやらその妖怪はトラウマを呼び起こし、間接的に真相意識を読むことも可能らしい。使い方を変えれば、思い出せなかったことが思い出せたり…ということもあるかもね」
「なるほど…」
多少は賭けになるかもしれないが、行く価値はあると考えた。
「しかし、地底は危険な場所だ。最悪命を落としかねない。だから身の危険を感じたらすぐに逃げるんだ」
「わかりました…」
「じゃあ、次の目的地は決まりだね」
「え?ですが…」
莉音は懐からリストを出そうとしたが、何故か無い。
「あ、あれ?」
「君が探しているのはこれ?」
神子が持っていたのは折りたたまれた紙。莉音が持っていたリストだ。
「あ!それです!」
「そうか…なら」
神子は畳まれたままのリストを破いた。
「え…」
「もうこんなのに縛られて行動する必要は無い」
「ですが…」
「大丈夫。あの賢者も行先なんて適当に決めただろう。それに…」
神子は改めて莉音を見る。
「君は充分成長したはずだ。第一、半人半妖の地位の確立なんてただの建前さ」
「え…?」
意外なことを言われ、唖然とする。
「君は人間の里に住む白澤に会ったか?」
「白澤…慧音さんですか?」
「そう。彼女も半人半妖みたいなものだが、見た通り、人間とは上手くやっている」
「…」
「君に幻想郷巡りをさせる理由は他にあるはずだ。それを知るのはあの人だけだが…」
「じゃあ…」
「もう自由に幻想郷を巡ればいい。それが君のためになるんだから」
「…はい!」
「とりあえず、私は地底に向かうことをオススメするよ。ただ、行くか行かないかは君次第だからね」
「わかりました…!」
「あと…博麗神社には絶対に訪れるようにしなさい」
「博麗神社…?」
「そこが多分、最終目的地のはずだから」
「わかりました。色々と、ありがとうございます!」
「帰りは青娥が案内してくれるよ。道中、気をつけて…」
「はい!」
莉音は神子に一礼をして部屋を出た。
「…」
「ねぇ、ちょっと」
神子の後ろの空間が裂け、紫が現れた。
「やっぱり居た…」
「当たり前でしょ。あの子に何かあったらダメだから」
「でも君の暇つぶしも兼ねてるよね?」
「う…」
図星のようだ。
「素直な子だからね。君の言うことみんな信じてたよ?」
「そ、それよ!何見抜いてんのよ!」
「見抜けるでしょ…半人半妖も受け入れられてるんだし…私以外にも多分見抜いた人はいるはずよ」
「でも言わなかった…か」
「多分」
神子は立ち上がり、部屋の出口へ向かった。
「君はこれからどうするんだい?一応、博麗神社へ行くようには促したが」
「当然、これからも見守るわ」
「ふーん。そのストーカーじみた行為も、ちゃんと博麗神社に着いたら辞めるんだよ?」
「はいはい、わかってますよー」
神子は部屋を出て、紫はスキマを閉じた。
「じゃあ、莉音ちゃん。またいつでも遊びに来てね」
「はい!あと、屠自古さんと布都さんにも…」
「大丈夫。ちゃんと伝えるわ」
「ありがとうございます!では…!」
「あ、待って」
青娥は莉音を呼び止めた。
「はい?」
「あなたの能力…判明したでしょ?」
「あ。そう言えば…」
「だからあなたも能力聞かれたらこう答えなさい。『雷を操る程度の能力』ってね」
「雷を操る…」
「ぴったりでしょ?」
「はい!」
「これで大分様になってきたんじゃない?じゃ、最後まで頑張るのよ」
「はい!ありがとうございました!」
「またね〜」
青娥は手を振って莉音を見送った。地底の入り口近くに出してもらった莉音は、神子に言われたことも頭に入れながら、地底の入り口を目指した。
「ここ…かな?」
莉音は大きな穴の縁に立った。覗いてみたが、底は見えない。
「でも地底って言うくらいだからな…。よし…!」
莉音は覚悟を決め、飛び降りた。地底にあるという地霊殿を目指して…!
作者のよっしー兄貴です。東方雷双歴第二十二話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。今回が神霊廟でのお話は最後…かつ割と重要なお話だった気がします。
布都ちゃんはアホの子で失敗も多いけど、根は努力家で優しいと私は思うんです。だから、雷双歴布都はメンタルケアが上手なんですよ。
神子様がキーキャラとなりましたね。当初の目的である「半人半妖の地位の確立」は真の目的では無いことを見抜きました。
次回から地底でのお話になります。記憶を取り戻す為に地霊殿目指して地底へ向かいます!
そんな雷双歴、次回もよろしくお願いします〜
実は莉音の幻想郷巡りもあと少しだったり…




