第二十話 〜宙に舞う神霊と雷〜
この作品は東方projectの二次創作作品です
既存キャラとオリキャラとの絡みが多々あります
「あの…さっきは…いきなり…襲ったりして……ごめんなさい…」
「声がちいせぇ!!」
「いきなり襲ったりして!!ごめんなさいぃ!!」
泣きながら謝る布都と、その横に浮いてる屠自古。何故か布都の服が少し焦げているのが気になったが、今はそれより目の前のことをなんとかしなければならない。
「ぼ、僕は大丈夫ですから…」
「莉音、別に気使わなくていいんだよ?悪いのはこいつなんだから」
「や…でも、泣いて謝ってますし…屠自古さんも許してあげてください…」
「優しいな莉音は」
「おぉ…お主ぃ…感謝するぞ…」
屠自古はやれやれという感じだったが、この一件は無事に納まった。布都は屠自古に「着替えてこい」と言われたため、着替えに行った。屠自古も用事があると言って行ってしまい、今は青娥と二人だ。なんとなく、さっき気になったことを聞いてみた。
「青娥さん、さっき布都さん…?の服が焦げてましたが、何かあったんでしょうか」
「あぁ、あれはきっと蘇我様に雷を落とされましたね」
「雷を?」
「えぇ。蘇我様は『雷を起こす程度の能力』を使えるのですよ」
「程度の能力?」
「あら、何も知らない感じですか。今の幻想郷ではそんな能力を持っている人妖は少なくないですよ。ちなみに私は『壁をすり抜けられる程度の能力』持ちです」
また新しいことがわかった。ならば今まで会ってきた人妖も能力持ちだったりするのだろうか…そんな考えが頭をよぎった。
「莉音ちゃんは?」
「え?」
「能力なんなの?」
「僕の…ですか?」
能力については全く記憶にない。そんなのを考えたことも言われたこともない。
「わからないです…」
「あら、そうなの。早く判明するといいわね」
外から「せーがー!」と青娥を呼ぶ声がした。何やら青娥に用事があるらしい。
「ごめんね。呼ばれちゃったから行くわ。ゆっくり休んでてね」
そう言って青娥は部屋を出た。ここは賑やかな場所だが、静かな場所に暮らしていた莉音にとっては少し疲れる感じもする。しかし、それより気になることがあった。
「雷を起こす程度の能力…か」
雷を起こすなら莉音にもできる。さらに制御も天界の特訓でマスターしたからバッチリだ。何がどう違うのか…興味が湧いてきた。しかし屠自古は今用事と言っていた。すぐには聞けないだろう。
「早いうちに…いや、ここを去る前には聞いておきたいなぁ」
しかし、機会は思ったより早く訪れた。
「莉音、居るか?」
部屋の外から屠自古の声がした。
「はい。居ますよ」
「よかった。今日休む部屋が準備できたから、一緒に来てくれないか?」
「え?」
「今日は色々迷惑かけたからな。お詫び…的な感じだ。一泊していってくれないか?」
「でしたら…お言葉に甘えて」
莉音は部屋を出て屠自古の後ろをついて歩く。
「屠自古さん、さっき青娥さんに聞いたのですが、屠自古さんって雷を起こせるんですか?」
「ん?あぁ、そうだよ。それがどうかしたか?」
「僕も一応雷使えるので…」
「何?あ、あぁそういや雷獣とのハーフだったな。どんな感じなんだ?」
「天界で特訓したので制御はバッチリですよ」
「なるほど。なら一度見てみたいな」
「いいですよ」
「でも今日は疲れているだろ。明日見せてくれないか?」
「わかりました」
霊廟の奥にある建物の一室に案内された。
「ここに泊まってくれ」
「おぉ…広い…」
「ここでの注意書きは机に置いてあるからちゃんと読んでくれよ。じゃあ、私はこれで」
「はい。今日は色々とありがとうございました」
「おう。ゆっくり休むんだぞ」
莉音はすぐに机の上にある注意書きを読んだ。部屋の使い方等について詳しく書かれていた。どうやら門徒が泊まっているらしく、食事や入浴は時間が決められているらしいが、気にしなくてもいいらしい。とりあえず汗を流すために入浴することにした。入浴道具は大浴場にあると書いてあったので、手ぶらで大浴場へ向かう。場所も書いてあった。
大浴場前
「ここ…か」
男女の暖簾が掛かっている。莉音は男湯の入り口から中に入ろうとしたが、中から会話する声が聞こえた。それも大勢いる。正直、まだ顔を合わせたことがない人達と一緒に入浴するのは抵抗がある。だから時間をずらそう。そう思い振り返った時
「君、何しているの?」
「わっ!」
いきなり男の人に話しかけられた。
「あ、ひょっとして、屠自古様が言っていたお客さんですか?」
「じゃああなたは…」
「僕はここの門徒の者です。あなたのことは屠自古様が皆に言っていたので、把握していますよ」
「そうでしたか…」
「えぇ。あ、入浴でしたら、あと十分後には入浴時間が終わるのでそれから来てみてはいかがですか?」
「そうなんですね。ありがとうございます」
門徒にお辞儀して莉音は一旦部屋に戻った。
十分後。莉音は再び大浴場に来た。今度は人の気配はなく静かだ。
「うん、今度は大丈夫そう」
広い脱衣場で服を脱ぎ、浴場へ入った。大浴場というだけあってかなり広い。莉音は体を洗って湯船に浸かる。お湯の温度もちょうどよく、とても心地がいい。ふと視線を巡らすと、ガラス越しに外にも風呂があるのが見えた。
「あれは…露天風呂ってやつかな?」
名前は知っていたが実際に入ったことはなかった。折角の機会なので入ることにした。
外は弱い風が吹いていた。寒くは感じない、むしろ心地いいくらいだ。その風を楽しみながらぬるめのお湯に浸かる。空を見上げると、たくさんの星が輝いていた。
「星…綺麗だなぁ」
そう独り言を呟くと
「ん?誰かいるのか?」
「え!?」
隣から声がした。多分女湯の方だ。
「門徒ではないな。聞かない声だが…」
「え…あ、その…」
「あぁ、ひょっとして今日ここに来た半人半妖の子かい?」
「あ…はい」
優しい感じの声だ。
「そうかそうか。屠自古から話は聞いているよ。うちの布都が何やら迷惑をかけたようだね」
「いえ…」
「布都は少しやり方を間違うこともあるからね。今後こうならないように注意しておくよ」
「は、はい」
少し沈黙が続いた。莉音は、向こうに居るのが誰なのか気になった。
「あ、私が誰か気になるって感じだね?」
「え!?ど、どうして」
「そういう欲が聞こえたのさ。大丈夫、教えてあげるよ」
いきなり考えを見透かされて驚いた。
「私の名前は豊聡耳神子。ここ神霊廟で一番偉い人…と言えば伝わるかな?まぁ、気にせずさっきみたいに接してくれて構わないよ」
「わかりました。僕は…」
「駆雷莉音…という名前だね?屠自古から聞いてるよ」
「あ、え?」
「全部聞いておいたからね。ここの主だからこういうのも把握しておかないとね」
「はぁ…」
「君はしばらくここに滞在することになるかもしれないからね」
「え?」
「それについても明日話そう。明日屠自古との約束もあるみたいだしね」
隣から立ち上がる音がした。
「じゃ、また明日」
神子は露天風呂から上がり、室内に戻った。しばらくここの滞在することになるかも…その言葉が少し気になった。ひょっとしたら神子も何か考えがあるのかもしれない…理由はよくわからないが、明日わかるそうなので、あまり深くは考えないことにした。
次の日の昼前
「では、屠自古さん」
「あぁ」
神霊廟の中庭で莉音は屠自古に雷を見せるところだ。両手に力を集め、空に向かって放った。
「おぉ、なかなかいい感じじゃないか」
「ありがとうございます」
「弾幕タイプじゃないんだな」
「弾幕?」
「あぁ、私のやつみたいな感じだ」
そう言って屠自古は莉音から離れ、少し浮いた。
「よく見てなよ」
屠自古は両手を広げ、矢の形をした雷を放った。ジグザグと曲がりながら弾幕は広がった。放たれた弾幕は空に浮かぶ無数の神霊と相まってとても綺麗だ。
「どうだ?」
「とても綺麗です!」
「き、綺麗?なんか…照れるな…」
「しかし凄いですね。雷の軌道を変えるなんて…」
「練習すればできるようになるよ」
「そうなんですか?」
「あぁ、いずれできるさ。頑張れよ」
「ちょっと待った」
霊廟の方から声がした。声がした方を見ると、マントを羽織った少女が立っていた。ケモ耳のような特徴的な髪型をしている。
「屠自古、まさかあれを見せておいて弾幕の軌道調整等を教えずに返す気ですか?」
「え…?ですが…」
「折角ですから教えてあげてはどうですか?大丈夫、あなたが彼に指導している間の家事は門徒にさせますから」
「はぁ…」
「それに、君もこれは身につけておいておいた方が得だしね」
少女は二人の方に歩み寄った。
「その声…ひょっとして…」
「お、気づいたかい?そう、私が昨日露天風呂で話した相手、豊聡耳神子だよ。」
「そうでしたか!」
「ろ、ろろろ!露天風呂で話したぁ!?」
屠自古が何故か取り乱した。
「屠自古、壁越しに話しただけですよ。一緒に入ったわけではありませんよ」
「な、なんだぁ…」
「早とちりはいけませんよ。さて、話を戻しましょう」
神子は莉音の方に向き直った。
「莉音、さっき言ったみたいに君は弾幕の応用を覚えた方がいい」
「はい…」
「というわけで、しばらく泊まりこみで特訓しなさい」
「え!?」
作者のよっしー兄貴です。東方雷双歴第二十話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。ついに二十話ですね…
今回も前回から引き続き神霊廟でのお話でした。ちなみに莉音が泊まったのは神霊廟の離れにある建物で、門徒が泊まるのに使ったりします。大浴場付きの快適な建物です。今回神子と莉音の入浴のタイミングが一緒でしたが、普段は神子は一番風呂です。今回は少し用事があった為、門徒の後に入りました。
次回から神霊廟での特訓開始です。この弾幕…というか雷の弾道調整等の特訓において莉音はある才能を発揮することになるのだが…
次回もよろしくおねがいします〜




