第十一話 〜記憶の想起〜
この作品は東方projectの二次創作作品です
既存キャラとオリキャラとの絡みが多々あります
鈴仙に案内され、莉音は月の頭脳、八意永琳の居る部屋に入る。
「あら、この子がお客さん?」
「はい。あ、こちらが八意永琳、私の師匠です」
鈴仙が赤と青の服を着た女性を紹介する。
「はじめまして。駆雷莉音といいます」
莉音の自己紹介に応えるようにあちらも自己紹介をした。
「はじめまして。私が八意永琳よ。それで、今日はここにどんな用事で?」
莉音はここに来た目的などを話した。
「なるほどね。ということは、前に紅魔館にいたのね」
「え?なぜそれを…?」
永琳は少し得意気な顔をした。
「前に紅魔館のメイドがここに来たのよ。パニック状態になった時に効く薬はないかってね」
「パニック…?あ…」
一つ思い当たることがあった。前に咲夜を見てパニックになったことがある。多分、再発した時のために薬をもらいに行ったんだろう。
「いきなりそんなこと言われたからびっくりしたのよ。で、その理由も聞いたわけ。そしたらあなたの事を話してくれたわ」
「咲夜さんは何て…」
「人間を見るとパニック状態になる半人半妖がうちに来てるからパニックを抑える薬が欲しいって言ってたわ」
間違いではないが大雑把な紹介な気がした。咲夜らしいが。
「聞いたところ、あなた過去に何かあったんでしょ?それがトリガーになってパニックを引き起こす…ということね?」
「はい…」
「過去については何か思い出せる?」
「正直…思い出したくないんです…」
「ふーん…どうしても?」
永琳は少し険しい顔をしながら言った。
「どうしても…です」
「わかったわ」
そう言って永琳は不敵に笑う。
「では、荒治療がいいのね?」
「…えっ!?」
突然の発言に理解が追いつかない。そもそもなぜその結論に至ったのかも莉音にはわからない。
「あの、それってどういうことですか!?」
焦る莉音に対し、永琳は冷静に返事を返した。
「そのままよ。私の薬で無理矢理その記憶を蘇らせるわ」
「えぇ!?」
「結局それも克服しなきゃいけないんでしょ?なら早い方がいいわよ」
「ち、ちょっと待ってくださいよ!!」
「大丈夫、苦しいのは初めのうちだけよ。それに、薬の味もなるべく苦くなくはするわ」
「そういう問題じゃないですー!!」
「口答えしない」
「そんな!!」
「じゃ、私は薬の調合をしておくわ。ウドンゲ、逃げないように縛っておきなさい」
「あの、何も縛らなくても…」
「縛りなさい」
永琳は恐ろしい笑みを浮かべながら鈴仙に言った。
「…はいぃ」
永琳は隣の部屋に入った。鈴仙は棚から紐を取り出し、莉音の後ろに立った。
「すみません、師匠には逆らえません」
そう言うと、莉音の肩を掴みながら膝裏に蹴りを入れ、体制を崩したところで後ろ手に縛った。
「う…」
「すみません…少し手荒になってしまいました…あ、それと、その紐はどうやっても切れませんよ。それはフェムトファイバーの組紐なので」
「ふぇむとふぁいばー…?」
「フェムト、わかりやすく言うと須臾。須臾とは…えーっと…なんだっけ…?」
「つまり、逃げられないと…」
「そういうことです」
素直に諦めて抵抗をやめた。鈴仙は棚から何かを探している。莉音はこの状況に不安しかおぼえなかったが、動けないからどうしようもなかった。
十分後、永琳が二つの試験管に入った薬を持って部屋から出てきた。
「…何?そんなに暴れたの?」
莉音の縛られ方に少し引いた様子を見せた。
「あーいや、一応…」
「もうちょっと加減してあげなさいよ…」
「すみません…」
「ん。じゃあ、紐解いてあげて」
鈴仙は紐を解いた。その気になれば逃げられたが、下手に動いて痛い目を見たくなかったので抵抗はしなかった。
「じゃ、まずはこの薬を飲ませるわね」
「えっと…これは…?」
「強めの記憶喪失の特効薬。飛んだ記憶が一瞬で戻るわ」
記憶喪失というわけではないのに記憶喪失の薬が効くのかは疑問だった。
「とりあえず飲んでみますね…」
「えぇ。あ、万一パニックに陥った時も薬で抑えるから安心しなさい」
「はい…いきます…!」
莉音は意を決して薬を一気に飲み干した。
「どう?何か変化は?」
「ん…特に…」
何も無い、そう言おうとした瞬間に頭痛に襲われ、過去の記憶が戻ってきた。
「うぅ…!」
「どう!?何か思い出した!?」
「っ…お父…さん……が…人間と……お母さん…傷だらけ…で……」
「…?これは…どういうこと?」
「あぅ……」
「今は聞き出せないわね。ウドンゲ、この薬を注射器使って投与しなさい。首に刺すのよ」
「はい!」
鈴仙は手に持っていた注射器に永琳が持っていたもう一つの薬を入れ、莉音の首に刺し、薬を投与した。すぐに莉音は意識を失った。
「師匠…」
「睡眠薬よ。寝かせただけ」
「あぁ、なんだ。安心しました。」
「まさか私が患者に毒を盛るとでも…?」
「いやいや!全然考えてませんよ!!」
「…本当かしら?まぁいいわ。この子ベッドで寝かせてあげなさい」
「あ、はーい」
鈴仙は莉音を抱き上げ、ベッドの上に運んだ。
「…んぅ?」
「あ、起きたわね?」
莉音が目を覚ますと、隣には永琳がいた。
「あの…僕…」
「薬で寝かせたのよ。どう?気分は落ち着いた?」
「…はい。だいぶ楽です」
「じゃあ、思い出したこと、言える?」
永琳は優しく言った。莉音は薬で思い出した過去のことを話し始めた。
「まず…お父さんが沢山の人間と何かに向かっていくのが…僕はお母さんに抱えられてました」
不思議とパニックに陥ることはなく、ゆっくりとだが、はっきりと話していた。
「その後…確か森の中で…お母さんが倒れて…すごい傷だらけで…そのまま……」
「…それで、あなたは人間が怖くなったの?」
「はい…お母さんを…人間がやったと……」
「なるほどね…確か、それについての書記がうちにあるわ。それを読めば、あなたのトラウマも克服できるかも」
「本当ですか?」
「えぇ。ちょっと待ってなさい。ウドンゲー!」
永琳は鈴仙を呼んだが、来なかった。代わりに、鈴仙より背の低い兎が来た。
「鈴仙なら薬売りに行ったよ。なんか用事でもあったの?」
「あら、てゐ。ちょうどいいわ。この子にお茶とお菓子出してあげて」
「およ?お客さん?」
兎は首を傾げながら言った。
「えぇ、ちょっとね。じゃ、よろしくね」
「あいあいさー」
二人は部屋を出た。部屋の中で莉音は一人でぼーっと考え事をしていた。なぜあんなに話したくなかった記憶について話せたのか、なぜ落ち着いていられたのか…これも永琳の薬の効果だったのだろうか…
そんなことを考えていると、部屋の戸が開いてお茶とお菓子を持った兎が入ってきた。
「はーい、お待たせさーん」
「あ…ありがとうございます」
「あいよ。遠慮せずに食べてね」
莉音は用意されたお菓子を食べた。その様子を兎は笑顔で見ている。
「あ、そういえば、自己紹介がまだだったね。私は因幡てゐここに住んでる地上の兎さ」
「僕は駆雷莉音です。雷獣との半人半妖です」
「へー、雷獣との。こりゃ珍しいね」
その後もてゐからの質問は続き、莉音はそれに答えていた。てゐと会話を弾ませていると、永琳が戻ってきた。
「あったわよ。例の書記」
「おぉ…」
「ん、これは私は出た方がいいね。じゃ、莉音、またね」
「はい、ありがとうございました」
てゐは部屋を出た。永琳は莉音の隣に座って本を開いた。
「これね。結構昔のやつだけど…」
そこには人間の里で起きたある事件について書かれていた。
「…外来人が里で暴れた?」
本にはこう書いてあった。
『人間の里で外来人が凶器を持って暴れる。里の人間、里にいた妖怪数人が死傷』
外来人とは幻想郷の外から迷い込んだ人間のこと。基本、妖怪に食われたりしてしまうが、稀に生き残れるらしい。その人間は大体里で暮らすことになるのだが、これのようにトラブルが起こることもあるらしい。
「なんでも、幻想郷にはないような凶器を使ったらしいわ。チェーンソーとか言ったかな…?それをまともにくらった人間は即死、妖怪も回復が追いつかず失血死って感じだったらしいわ」
「その外来人はなんでそんなことを…?」
「環境の違いに追いつけなかったみたいね。それで気が狂って」
「なるほど…」
さらに本を読んでいると、気になる記述があった。
『その外来人は里にいた鴉天狗により拘束され、そのまま処罰された。鴉天狗は里の人間により手当された』
「つまり…ここの人間には何もされていないし、むしろ妖怪にも協力的…?」
「そう。だから安心しなさい。あなたが思っているより人間は危険じゃないわ」
とにかく、人間は妖怪に害をなさないということはわかった。莉音は懐からリストを出し、目的地を確認する。次の目的地、魔法の森の次が人間の里だ。今の状態ならいけるかもしれない、そう思うと少し気持ちが楽になった。
どうも、作者のよっしー兄貴です。東方雷双歴第十一話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。師匠のお薬活躍回でした。
今回、莉音くんの過去についてのお話しがはっきり出ましたね。実は幻想郷の人間に襲われたんじゃなく、外来人に襲われたということでした。なので、幻想郷の人間に対しては少し友好的な印象を抱きました。もうパニックに陥ることは無いです。
ちなみに、永琳が莉音に打った睡眠薬には精神安定剤の効果もあるので、莉音は落ち着いた状態で永琳に過去について話せたんです。
次回は多分永遠亭~魔法の森道中になるかと…輝夜も出ますが、フランみたいにちょっと出る感じになってしまいます… まぁ、番外編とかで再び訪れた時にはもっと絡ませます。フランともね。
次回もよろしくお願いします〜




