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こう見えて異世界最強です  作者: オリガミ
第一章 転移編
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第4話「宿屋の兄と妹 魔法編」

勉強の合間を縫って執筆中‥‥‥

  話し合いの後、宿を出ていた商人たちが戻ってきた。

 気づくともう夜だった。そういや飛ばされた時点でこっちの世界では太陽が高く昇っていたなぁ、どうりで早く感じるわけだ。


 大勢の商人たちが酒場で食事をし、わいわい騒いだり、商談をしたり、酒を飲んで愚痴を言い合ったりしている。社会人になって飲み会とかに行ったらこんな感じなんだろうか。


 そんな中、俺はクレアさんにご馳走になったパンとシチューを食べていた。現代の味になれている俺でも、「おいしい」と声がこぼれる程美味であった。良かった、こっちでも食を楽しめそうだ。


「ごちそうさまでした」


「はいよ。ジュン君、早速なんだけど今忙しくてね、手伝ってくれるかい?」


「もちろんですとも!」


「じゃあ、この料理をあの机の大柄な男の人に‥‥」


 手伝いは、酒場のホール(?)の仕事だった。注文をとったり、料理を運んだり、なんだかバイトしている気分。


「お?見ない顔だな、新入りか?頑張れよ。」


 商人の人はみんな気さくで、よく話しかけてくる


「お前クレアさんに惚れたかぁ?あ、どちらかというとリリちゃんかな??」


 おい、変なこと言うな。向こうでクレアさんはめっちゃ笑ってるけど、リリちゃ‥リリさん顔真っ赤にしてるじゃないか!


「あはは、そういう話はここではパスで」


 と言っておくがその後で「まぁ、すげぇかわいいですけどね」と小声で付け足しておいた。その商人は嬉しそうに酒をぐびぐび飲んで笑っていた。




「ふぃ~疲れた~。」


 ほとんどの客が食事を終え、部屋に帰っていった。

 1時間くらい手伝っただろうか、頑張った。


「ジュン君お疲れ~!あとはあたしに任せていいから、部屋に行ってていいよー!」


「はい!ありがとうございます!!」


「リリー?部屋案内したげてー?今日は終わりでいいからー」


「ん、分かった。ジュン君、こっち」


 リリさんに案内してもらえるとかクレアさんぐっじょぶ!!

 階段をリリの後ろからついていく。

 降りてきたときと同じ階段だ。

 もちろん同じ廊下に出る、リリが指さしたのは、俺が今日運びこまれた部屋だった。

 ドアには、恐らく数字だろう、何か書かれている、もちろん読めない。


「ここ、自由に使っていいから。」


「あ、ありがとうね、こんなによくしてくれて。」


「トイレは廊下の突きあたり、残念だけどお風呂は壊れてるから、入るならお風呂屋さんにいってね。」


 こんなに細かく気を利かせて説明してくれるなんて、なんていい子なんだろうか。


「丁寧にありがとう、いろいろあって疲れたからもう寝るよ、おやすみなさい。」


「うん、おやすみなさい、また明日。」


 部屋に入ってベットに腰かける、リリのおやすみを聞いたときに思ったけど、意外に声が低いんだな。

 ‥‥好みじゃ。


 今日はたくさんのことがありすぎた。事実、心身ともにくたくただ。

 ――――眠い。

 あっ、駄目だ。もっと考えてこれからのことを事前に決めておこうと思っていたが、その前に睡魔に襲われてしまったようだ。


「ねっむ‥‥‥」


 寝るか、寝よう。



 そうして、異世界転移1日目は意外とあっけなく幕を下ろした。












 夢を見た。

 懐かしい光景だ、幼い頃、紫と日和と京介の3人で近所の公園で遊ぶ夢だ。

 紫と日和はこのころから仲が良かったなぁ。

 京介も当時から年齢に合わない身体能力で遊具を駆使して立体的に走り回ってた。


 懐かしいなぁ。













 ――――意識が覚醒する






 最初に思ったことは、前の世界に残してきた、家族、友人、知り合いの事だった。もう会えないと思うと、心に穴が空いたような感覚に襲われた。


 地球に帰ることはできたりしないのだろうか?

 別の世界から今いるこの世界に来ることができるのだから、こちらから地球に行くこともできる、と考えることもできる。


 異世界転移魔法‥‥あるだろうか?


 俺は、きっと地球では失踪したことになるだろう、

 警察に捜索願いが出されて探され、最終的には死亡者扱いになるのだろうか。


 せめてもの、無事ってことを伝えたい。

 今頼れる人は3人しかいない。周りにいる人の大切さをここまで実感したのは初めてだ。




 部屋を出て、階段を降りる、昨日ぶりの酒場では、これから仕事に出かける大勢の商人が朝食をとっていた。

 今はまだ7時にはなっていないと思う、まぁまぁ早起きしたなと思った自分が少し恥ずかしい。


 忙しそうにしているクレアさんの隣にはリリもいた。

 彼女も偉いなぁ‥‥俺と違って。


「クレアさんおはようございます!手伝います!!」


「ジュン君おはよう!そんじゃあこの料理をあの机の大柄な男の人に‥」


 ‥‥なんかデジャヴ。



 商人が全員食事をとり出掛けたところで、宿屋の三兄弟+一人はちょっと遅めの朝食をとる。

 オーソドックスな朝食だ。この世界でも卵を食べる文化があって良かった。

 テーブルでは、向かい合う形で、クレアさんとリリ、シンさんと俺だ。


「じゃあ、頂きましょう」


 音頭を取るのはシンさん、このイケメン、朝は何をしていたんだろうか。朝から忙しかったから、手伝うパターンではないのか、イケメンだし、評判上がるのでは?


「そういえば、シンさんはさっきまで何をしていたんですか?」


「私か?私はいつも通り起きて一人で食材の仕込みをしてから、朝の稽古をしていたところだが‥」


 あの仕込み全部やったのか!?手伝わないのとか思った俺をお許しくだせぇ‥


「稽古って、何かして‥らっしゃる?」


「あぁ、剣の稽古だ。自分で言うのも何だが、そこらの人には負けない自信はあるよ。」


 イケメンや‥‥‥

 この人はきっと心がきれいなんだろう。


「そういえば、時にリリさん、魔法を教えてくれるっていう件なんですけど‥」


「あっ、それなら、このあとに自由な時間があるから、ご飯の後で‥い‥い?」


「もちろん!楽しみ!」







 朝食を食べ終え、クレアさんに食器を片付けて貰った後、テーブルには魔法を教わりたい少年と、こらからその少年に魔法を教えようという少女が残った。


「えっと、おっほん、それでは、今からジュン君に魔法のノウハウを教えようと思います。」


「おっほん」って咳払いだろうか、かわいいな。


「はい。リリ先生、お願いします。」


「まず、魔法とは、体の中の魔力、いわゆるMPを外に放出する術のことです。このときに、放出した魔力で土や水、炎を作って敵を攻撃したり、対象の傷を治したり、特殊なものはたくさんあって、私では説明しきれません、例えば、結界を張ったり、別の場所に転移したりと、ここまではよろしいですか?」


 まぁ、この辺はゲームや小説で予習済みなのだ。


「ほうほう」


「普通は魔法は、詠唱すれば基本的に誰でも発動可能です。しかし、人には魔法適性、ここでは適性と呼びますが、適性のあるなしで、どの魔法がその人に合っているかわかります。ジュン君いいですか?」


 いちいち確認をとってくれるとか優しさにじみ出てるぜ。

 全然理解できる内容なので、適当に相づちを打っておこう。


「なーーるほど」


「魔法には、無、火、水、風、土、闇、光の7つの基本属性があり、それぞれに適性の有無があります。私は無属性と水属性、風属性に適性があり、どれも詠唱無しで魔法を発動することができます。逆に、適性がないと詠唱が必要なのはもちろんMPの消費が激しかったり、威力が低かったり、適性が無さすぎると、そもそもその属性の魔法が使えないということもあります。」


「で‥その適性のあるないってのは、どうすれば分かりますの?」


「ふふん、ではジュン君、手を出して?」


 手のひらを上にして、机の上に手をさしだす。

 ん?手の上に何か乗せられた


「これはなんぞ?」


「7つの基本属性が全て込められた特殊な魔石です。魔力を込めると、人に何の適性があるか大体わかります!」


「おぉ~」


 もしやここで俺の無双ライフが始まるのでは?

 全属性に適性があるとか、未知だったりレアだったりの属性の魔法が使えたりとか‥‥


「では‥‥調べされてもらいますっ‥‥」


「よろしくお願いします。」


「では手に魔りょ‥意識を集中してください。」


 魔力って言おうとしてたよね、確実に。意識を集中か、こうか?むむむむむむ‥‥


 リリさんが魔石に手を触れる、そして俺の指にちょこんと触れる


「「ひゃっ」」


「「‥‥失礼」」


「お前ら結婚すれば???」


 というクレアさんの横やりが入り、一悶着あった。

 でもリリが超が4つ付くくらいかわいかったので許そう。


「先程は失礼、では、気をとりなおして、魔石に意識を集中して下さい。」


「はい。では‥‥」


 むむむむむむむむむむむむむむむむむむ‥‥


「ん~?あれ?無い???」


 無い!!!?え!?終了??


「あっ、ある!!」


 くそビビった、危うく魔法人生終了のお知らせだったわ


「えっと‥ですね、光、闇?う~ん、無‥かなぁ、その3つに近い派生属性に適性がありそうです、‥‥‥‥ん?どっちかというと闇寄りの‥‥」


 派生してるパターンキター!!

 レアだよね!?きっとレアだよね?いやっほー!


「んー‥‥詳しくは分かりません、でも光と闇のそのものには適性は全く感じられません。」


「総合的にまとめると?」


「光、闇、無の3つから派生した属性の適性を持っているようです。基本属性は、適性があるとは言えませんが、若干無属性が強いかと。」


「そうか、なるほどね~ありがとう」


 その属性が何か分からないっていうのが辛いとこだな、しかし、レア魔法の使い手ってのは努力次第だけどほぼ確定事項なのではないだろうか。


 薄桃髪の少女は席を立ち、「これから魔法、教えるから、ついて、来て。」と、癖なのか句読点が多い話し方で少年を誘い酒場を共に出るのであった。












 これから魔法を練習するという街からすこし外れたところにやってきた。もちろん人はいないし、家もない、所々に岩がある。


「まず、魔法、見せるから」


 と言った少女は息を大きく吸って集中、そしてひと言‥


「魔弾」


 と唱える、彼女の右手、手のひらの延長上に白くて丸い‥弾丸が生成された。


「とりゃ!」


 緊張感を帳消しにするかけ声と共に、弾丸が彼女の手を離れる。

 射出された魔弾はやや重力の影響を受けているような軌道を描き、前方15メートルくらいにある岩に着弾。

 岩に大きな亀裂を作った。


「おぉ」


「えっへん、ちょっと‥がんばった。」


「それじゃあ、今日はこの魔弾を‥教え‥ます。無属性は、全ての属性に通じる魔法の基礎だから、しっかり覚えて」


 あれができたらやれる幅が大幅に上がる、ゲームやマンガでもあのような魔法はモブでも使ってる。俺はあの魔法も使い方次第で最強の魔法だと思っている。


「はい!頑張ります!!」


 今思ったんだが、この世界で最初に出会った同年代の可愛い女の子ってことで、自然とリリをヒロインと俺は定義付けしてるみたいだ。

 普段はあまり女子を可愛いだの思うことは多くない、異世界転移でテンションがおかしくなっていたのだろう。


「まず、私が詠唱するから、後に続いてやってみてね。コツは意識を集中することだよ。体の中の目に見えない何かを操るイメージ。」


 と言って彼女が詠唱を始める、俺も後に続いて真似をしてみた。

 なんだか体に未体験の感覚が走る、力の1部が右手の平に集められるような。


 気づくと俺はさっき見たものよりも小さいがまさしく魔弾を生成していた。


「おおっ、できたね、ぐっじょぶ。」


 後は、何となくどうすればいいか分かった。

 俺の手のひらの魔弾は真っ直ぐ射出され、前方の岩に当たって消滅した。


「1発でできるとは、ジュン君、すごい。」


「えへへ、あんがと。」


 MPが3減ってる。50発は撃てる計算だな、MP切れでどうなるのかは不明なのだが。




 この後もガンガン魔弾をぶっぱなして練習した。リリによると、イメージがしっかりしていて、才能あると句読点多めに言われた。









 2時間が経過した。

 相変わらず魔法初心者の少年は詠唱を続ける。


「‥‥‥魔弾!!」


 俺の手のひらから生み出された魔力の弾丸は初期の物とは比べ物にならないくらい大きく、彼の師匠にも匹敵するものだった。

 魔弾が直撃した岩は、今までとは違い、亀裂が入っている。


「よっっしゃぁぁ!!」


 リリがおめでとうと言わんばかりに手を叩いてくれている。

 今のはかなりの大成功だ。きっと、ステータス150で引き出せる最大の威力ではないだろうか。

 俺はやったぞ‥‥‥。


「おめでとうジュン君、すごいよ、まだ始めてちょっとなのに‥‥‥」


 リリも絶賛してくれてる、達成感が異常だ。


「いや、リリのおかげだよ、ありがとう。」


 そういえば、聞きたいことがあったんだった。


「なぁ、この世界の魔術師ってどのくらい強いんだ?やっぱ、剣士の方が強かったりするの?」


 この世界の魔法は、基本は詠唱を使って発動するタイプだ。MP管理に詠唱完成までの時間、これらの要素を踏まえると、剣士の方が強いと思われる。


「ううん、確かに、剣士の人は詠唱もしなくていいし、近付いて剣を振れば勝てるけど、魔術師はそれにたいして、工夫をして戦うとか、集団で戦ったりするの。」


 なるほど、魔法は使いようによっては強いし、逆に使いようによっては弱い。やはり工夫なのだろうな。


「時にリリさん、例えば剣を持った人が貴方に突撃してきたらどうするんですか?」


「ん、まず、詠唱なしで使える風属性の魔法で砂ぼこりで煙幕、張る。」


 リリは砂ぼこりを起こし、後ろに下がりながら早口で何かを口ずさむ。

 うん、これは突っ込めないだろうな、危険過ぎる。


「次に前方に砂ぼこりで稼いだ時間で詠唱して土壁(ウォール)って魔法を使って間合いをはかる。」


 そりゃ、あんなに高い壁がせりだしたら前には進めないな。

  いくら砂ぼこりが晴れても、罠が警戒されるしね。


「そんで、得意な魔弾を両手で同時に生成しまくる。」


 おわわわわわわ‥‥あんなに俺が苦労して作ったあの魔弾を両手で創りまくってるって‥‥‥。


「で、さっき作った壁の魔力を霧散させて壁を崩して、あとは、これを撃ち込む‥‥‥って感じ。」


 30発以上生成されて背中周辺を漂っている魔弾がマシンガンのように連射される‥‥‥。

 狙いは十数メートル先の岩だ。




 ドドドドド‥‥‥‥‥。




 魔弾の餌食になった1.2メールくらいあった岩は跡形もなく消し飛んでいる。







「あ、あの‥リリ‥さんってもしや‥‥‥めちゃくちゃ強かったり‥‥します‥?」





 薄桃髪の美少女は、いつもの少し眠そうな目で笑って見せた。

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