第3話「やはり異世界での最初の出会いはイケメンか美少女に限る」
―――――目を開ける。
最初に目に入ったのは見慣れた自室の天井‥
ではなく、知らない天井だった。
‥ベットの中だ。布団もかけられている。
ゆっくりと、体を起こす、痛くない。
「治ってる‥。」
あっ、そういえば、女性は無事だったのだろうか?
かっこよくキャッチしようとしたが、結果は女性の下敷きになる形で助けることができた‥‥と思う。
少なくとも、誰かにどこかの部屋に運ばれたんだろう。
「大丈夫かい?」
「ふぁっ!?はひ!?」
呆然と考え事をしていたため、隣に誰か居たことに気づかなかったようだ。
声の主はあのときに助けた(?)女性だ。
あのときはわからなかったけど、かなり美人だ。
整った顔にピンク色の髪が背中まで伸びている。
それと、俗に言う巨乳とやらだ。
「具合いが良さそうで良かったよ。
あのときは助かったよ、ありがとう。
混乱しているようだから、もう少しゆっくり休んでいるといい。
待っているから好きなときに降りて来てくれ、それから話をしよう。」
「はい、ありがとう‥ございま、す」
「それじゃ」
と言い残し、女性は部屋から出ていった。
そうか、無事だったのか、良かった。かなりの美人だったし、もしかしたら俺の異世界ライフは順調かぁ!?
異世界に来て初めて人の優しさとぬくもりを感じた気がする。
まぁ、状況をチェックだ。
ステータスは、変化なし、スキルも増えていない。
それより、HPが全回復してる。
寝たら回復するのか?いやまさかな、回復薬があるとか、回復魔法があったりするのだろう、きっと。
荷物は潰れたと思ったけど無事だった。ケータイも割れてない。ケータイの時刻を頼りにするなら、大体1時間経ったことになる、結構寝たな。
状況は粗方把握したので、1度伸びをしてから部屋から出ることにする。
ドアを開ける、木のドアだ。廊下に出てみると、今出てきたのと同じようなドアがいくつも並んでいる。
アパートか宿屋だろうか?
廊下はけっこう狭い、でも普通にしているぶんには何も支障はない。
廊下の角に下に行く階段を発見したので、下に降りる。
そこはまるで、よく西部劇や今いるような異世界によく登場する、机や椅子が全てが木でできた、酒場と呼ばれる場所のようだった。
っていうか客が一人も見当たらない、大丈夫なのだろうか?
「おっ、やっときたな。」
「お待たせしました。あの、えっと‥‥」
「いや、座ってから話をしよう。」
と、桃髪の女性は酒場のテーブルを1つ指して言うのであった。
酒場の奥に、あのときの美少女がいた。
あとときみたいな青い顔はしていない。
短く切った薄い桃色がかかった髪と柔らかい表情が、花を思わせる。
やばい、かわいい。
「さてさて、いやーきみー、助けてくれてありがとうねぇ!」
桃髪の女性はずいずい話をしてくる。
「あっ、あたしかい?私はクレア、窓から落ちるとは不覚をとったもんだな」
桃髪の女性―――改め、クレアさん、異世界の知り合い一人目だな。
「俺はジュンっていいます。助けられたのは本当に良かったのですが、そのあとベットに運んで、傷まで治して頂いて‥」
「もー、敬語はやめてなー?というか、あたしは落ちても死なないと思うけど、両足骨折は流石に厳しいよ、今は商人の団体さんがこの宿に滞在してて、稼ぎ時なんだから!」
そうか、ここは宿屋だったのか。ずいずい来るクレアさんもすごく気になるけど、俺はその隣に座ってる子が気になってしょーがないんだけど!?
「‥流石にこの子にも骨折は治せないからねぇ!」
まだ喋ってたのか‥‥。なんかすごいなぁ。
「あっ、俺の傷を治してくれたのって」
「あ、私‥‥です。」
やべぇかぁわぁいぃ‥俺きもっ。
「あ、あの、リリっていいます、そこの、クレアお姉ちゃんの妹です‥‥。」
リリというのか‥‥!!
「と、いうわけで、助けてもらったから、何か君にお礼をしたい。」
「あ、私も‥‥。」
なんだこれ、天国か‥‥。
お礼、かぁ、今必要なもの、えっと、食事にお金に寝るところ、あとできれば収入のための職業ってとこかな。
お金は頼みづらい、いや、全部頼みづらいやつやなぁ‥。
「その、クレアさん‥?」
「なんだい?私らにできることなら‥」
「俺の話を聞いてはくれませんか?少し、信じられないかもしれませんが。」
「なーーーーーーーるほどね」
「はい、信じられないことも多いと思いますが。」
「いや、信じるよ。」
え、ええぇぇぇ!?信じちゃうの!?
「あたし、親からの遺伝でね、人の嘘を見抜くスキルがあるんだよ。今の話、全部ほんとのことでしょ、でも、ここまで自分のスキルを疑ったのは久しぶりってもんよ。」
「あの、それで、お礼と言われて、少し、いえ、かなり図々しいと思うのですが‥」
「行くあてができるまでうちに住むかい?」
「っえ!いいんですか!?」
「うーーん、できれば手伝うくらいしてほしいものだけど、あたしが経営している宿なんでね」
ドヤ顔で言われた。でも、超うれしい‥野宿も考えてたからなぁ‥‥。
「いいよね?リリ?」
「うん、もちろんいいよ。
それと、じっ‥ジュン‥さん?私からもお礼をしたいんですけど‥‥。」
なぁ、へ、平常心じゃーーーー!
考えるのだ、お礼の内容を‥‥!!
「こ、これは個人的なものなんですけど、俺、魔法を使ってみたいんだ、教えてくれないかな?」
「はい!お安いご用です!!」
きたこれ。
魔法を使えるという賭けにも勝った。
もうやばい、魔法を付きっきりで教えてくれるってことっしょ?神かよ。
「それと、もう一人、あなたにお礼をしたいって言う人がいるのよ、おーーーい!?シーーン!!降りておいでー!!」
クレアさんの声が響く、お客さんはいないんだろうか。
階段の方から降りてくる音が聞こえる、その姿といえば、
長身の男だ。スラリと長い体でも、筋肉がよくついているのが分かる。キリッとした顔に上品で優しそうな雰囲気、長い茶髪を後ろで結んだ‥‥イケメンだ。
「そこのクレアの弟で、リリの兄のシンです。姉が助けて頂き、感謝とともに、何かお礼をと。」
かっっけぇぇ!!
騎士さんなのかな!?やばい、イケメン!!!
はわわわわ‥‥。
「え、えぇぇっと‥‥」
「冒険者ギルドにでも行ってみたらどうだい?職がないんでしょう?シン、連れてってやりなよ?」
「冒険者ギルド、あるんですか?」
「あぁ、あるよ。こちらから提案しておいてなんだけど、一緒に冒険者ギルドにいって、えっと‥‥」
「ジュンです。」
「ジュン君の冒険者デビューのお手伝いをするってことでいいかな?」
「もちろんです!!ありがとうございます!!」
レベル上げもスキル獲得もこれでできるぞ!!よっしゃぁ!!
「私はシン、17歳だ。この家の長男、三兄弟の2番目だ。これからよろしく頼む、ジュン君」
「おっと、自己紹介がまだだったね、あたしはもう1回名乗ってるけど、クレアだ。三兄弟の1番上、こう見えて23歳で、親がいなくても宿屋を経営する働き者だよ。」
「私はリリ。15歳、いつもはお姉ちゃんの手伝いをしてて、魔法は結構得意です。よろしく‥です。」
これは俺も自己紹介するパターンなのかな。
「俺はジュンです、16歳でこの世界来てまだ数時間だったりで、路頭に迷ってるところでみなさんに出会えてマジで安心してます。これからしばらくお世話になります。」