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こう見えて異世界最強です  作者: オリガミ
第二章 王都編
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第34話「途中経過」

1年ぶりに投稿するんだが。

俺の朝はけっこう早い。

すっきりと、健康的に爽やかな目覚めとともに起床。

ベッドをある程度直し、着替えて部屋を出る。


早いといっても、シンさんやリリ、ユウよりは遅いことが多い。

ただ、ユウはときどき寝坊するので、いつも最後ではない。


「おはよー」


「‥ジュン君、おはよ」


ここで高確率でリリと遭遇。

彼女はだいたい、掃除やら料理やらをしてくれている。

少し忙しそうだ。


この家の料理の腕前は

リリ>シン>>ユウ>俺

となっている。


シンさんも食事を作るし、ユウもそこそこ上手だ。

そして、簡単な料理しかできない俺がいる。

もちろん何もしないのはどうかと思うので手伝うようにはしている。

が、なかなか上達しないのも現実だ。

早くできるようになって日本食を振る舞うのもよさそうだ。



顔を洗い、伸びをしていると、木剣を携えたユウがいた。どこか感触がおかしかったのか首を傾げてから木剣を降ろした。


「おはよう」

「おはよう」


「シンさんは?」


「もう先に始めてるよ。ボクは今から行くとこだよ」


「そうか、‥頑張れ」


シンさんは騎士試験‥騎士になるわけではないが、それに向かって訓練を欠かさない。

といっても、王都に来る前もああしていたし、イケメンだ。


ユウもシンの相手になっているみたいだが、いまいち振るわないらしい。

格が下、ということはないと思うが、かなり打ち負けているようだ。


俺も参加することもあるのだが、基本的に相手にならない。

防御しかしない、サンドバッグなのだ。

現状、魔法も剣術も強くなく、タンクとして動くのが俺の最善となっている。


たったった、と外に出ていくユウ。その後ろ姿を見届ける。

言い方に語弊があるがこれから彼がボコボコにされると思うと不憫な気になってくる。その後に朝食を食べながら「大勢で食べる食事はいいなあ」なんて言ったら落涙ものである。

因みに一度このセリフは彼の口から出ていて、若くも一人で暮らしていた時期が長かったからだろうが、そのときはジュンの心に突き刺さったものだ。


俺も彼らと訓練するという選択もある、が

今日は、サンドバッグにされるより、朝食を作りに参加しよう。


「リリ、これ、鍋に入れちゃっていいやつだよね?」


「‥ん、あ‥お願い‥」


調理の工程へと自然に侵入、まな板の上の食材と鍋の中の液体、状況を瞬時に把握。

自分に出来る作業を探して発言。

難しい作業でなければ任せてもらえる。


つまりは俺が手伝うと料理のクオリティーが落ちかねない、ということか。しかし、常識的に有り得ないことをしないという絶対的なセオリーを守れば酷いことにはならない。

それに、普通の朝食にクオリティーなど求めない。


リリは俺に的確な指示をくれるし、嫌な顔せずに横入りを許してくれる。


しかし、こうして厨房に二人で立つと夫婦にでもなった気分で浮かれてしまう。絶対に口には出せないが。

リリの横顔をチラリと見てキュンとなることが何度かあったが、それが原因でナイフで指を切る事件が発生してからはチラ見は控えるようにしている。


今日の朝はリリと楽しい時間を過ごせたので満点だ。





朝食の後は、ギルドに行って依頼を受けたり、買い物をしたり、皆で訓練をしたり、ときにぐでぐでしたり(主に俺とユウ)と様々だ。


今日は、訓練をするらしい。



「オウ、まァた来たかよ

どうだ?修行はイイ感じかァ?」


俺は、体力づくりのためのランニングと言い、王都の街並みの外まで歩く。そこでやや秘密の特訓とやらを行う。

早朝でもない限り、いつものおっさんが先客としているのだ。

しかしこの人、何をしている人か、働いているのだろうか。まあ、この世界には冒険者というフリーターみたいに自由な仕事があるから大体それか、俺もだし。


「オレの技教えてやッからよォ、弟子になんねェのかぁ?」


「だからならないって」


相変わらずというか、何故か気に入られている。

弟子になれ、と言うが俺はなるつもりはない。最強の必殺技が付こうと同様だ。


「‥あーそうかよ」


ばつが悪そうな顔で天を仰ぐようにおっさんが上を向く。

犬歯をのぞかせている横顔けっこうイケメンを見ながら素振りをする(魔闘術発動中)


「っていうか、おっさんは、人族か?」


「いや、見るからに違ェだろよ」


おっさんは、2メートルを超える身長に、濃い体毛と何の動物かよくわからない牙のような歯を持ち合わせている。

見るからに良い家の出ではなさそうだし、人族と獣族の混血か。


「残念ながらよォ、オレもそれは知らねェンだよ。人族に獣族、魔族も混じってるだろうな」


「そうか、魔族とか獣族とか身の回りにいないからよくわからん。特に俺の地元は人族しかいなかったし」


「あ?種族大戦前かよ、お前歳が四桁だったりするか?」


「まさか」


勿論本当のことしか言っているわけだが、戯言として聞き流される。

それにしてもおっさん、本当に何者なのだろうか。


俺の訓練はMPが無くなるまで続く。魔闘術はけっこうMP消費が激しく、長くは持たない。故に少ない俺の切り札になるだろう。俺の回りにはシンさんやリリにユウという強力なバックがいるが、頼ってばかりではいられない。

少しでも強くなって頼られるくらいにはなりたい。



1日の予定はそれぞれだが、俺の1日は大体同じだ。

皆と訓練したり、皆と依頼を受けたり、おっさんと魔闘術を練習したり、リリと家事をやったり‥‥


一番忙しくしているのはユウだ。

彼は護衛団の事務所に出向いたり、シンさんと冒険者として依頼をを受けたり、休まず訓練したりと‥


一度、ユウが護衛の仕事で朝帰りだったことがあった。寝不足に疲労にお腹も空いてたらしいが、家には俺たちがいるから少し無理して帰ってきたんだとか。別にそうしなくてもいいのに。


机に突っ伏して寝ているユウを見たときは滲み出るその健気さに神々しさすら覚えた。

彼には悪い人とかに騙されないで欲しい。



時間というものは早いもので、あっという間に午後になってしまう。この世界に来る前も時間は飛ぶように早かったが、なんせ密度が違う。

発泡スチロールと鋼鉄の差がそこにある。


この生活は楽しい。

目標もあって仲間がいて向上もしてる。



その日の夕食はシンが作った。その後ろで男二人が動物園の熊みたいにうろうろ、最終的に彼らは配膳を手伝う形で落ち着いたが、シンに後ろで動き回られると気が散るとのクレームが入った。


夕食も美味しい。


ここの四人で食べるご飯は悪くない。

リリやシンさんの話を聞くと頑張ろうって思えるし、ユウともかなり親密になった。


順調だ。

上手くいってる。



けど、なぜだろうか。

今までと比べて、リリやシンの声が遠い。自分と世界との間にラグがあるみたいに気持ちが悪い。


談笑する皆の笑い声がまた少しずれる。


「ボク、明日の仕事早いからもう寝るね~」


「おう、おやすみ」


食事の席からユウが離脱する。それぞれが「おやすみ」と見送る。


「じゃあ俺、食器洗っちゃいます」


ユウをきっかけに各々が動き始める。

俺も、手を動かしている時間はさっきの不快感を忘れられる。


食器洗いでも食事作りでも訓練でも冒険者の依頼でも、動いている時間は嘘みたいに体が軽くなった。

そのときにも、集中力や作業の効率が下がったりすることもない。


(気にしない‥気にしない)


その日は、そのままベッドに入って寝た。


□□□


「‥‥またか‥」


ジュンは真っ暗な部屋のなか、ベッドの上で体を起こした。

どうしても目が覚めてしまうのだ。


灯りがなく真っ暗といっても、隙間から射し込む月の光はやけに明るく、暗闇に慣れた目なら問題なく行動できる。


どうせすぐには眠れない。だから‥


「水でも飲みに行くか」


と体を起こして部屋を出る。


眠れないのなら、いっそ夜歩きでもしようか。


とも考えた。

そういえば、向こうで京介とした夜歩きは本当に気持ちが良かった、と思い出す。


「‥いや‥だめだ」


ついこの前、夜道を歩いていたら殺されかけただろう。

あのときは、リリとクレアさんに迷惑もかけたし心配もさせた。二度目は怒られる。それも本気で。


「‥‥‥」


京介、向こうの世界、というワードがチクチクと胸に突き刺さる。



「‥‥これ‥」


一階に下りてみると、何やら外から音が聞こえる。キンッという音と、ドガア、という大きなものが砕けたり、地面に落ちたりする音。

そして、男女の声。


リリとシンさんだろう。

リリの土魔法と、シンさんの剣戟、二人はまだ努力を続けているのだ。


「は、はは‥‥」


そういえば、日本では日和や紫も俺が寝てる時間も勉強してたっけな。


日和と紫。

ふと心で呟いた弟と妹の名前にまた心がチクリと痛んだ。



リリとシンも努力してる、ユウだって頑張ってる。

一番辛いのはリリとシンだろう。クレアという一番の家族を半ば失いかけて、取り戻す手立てを探して。


俺はどうだ。ダメじゃないか。

努力家の中に放り込まれてこうなるのは何度目だ?


やるせない気持ちが沸き上がってかる。

仕方がないと頭で分かっているから、余計に。


ずずず‥と音を立てて薄暗い何かが込み上げてくるようだ。


「‥‥‥家に、帰りたい」



言葉にした瞬間、頭の中がいっぱいになった。


その日は、眠れなかった。

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