第31話「依頼Withユウ」
王都から見て南西、豊富な資源が採れ、王都が王都として栄えることのできた要因とも言える森。
その森で、二人の少年が走っていた。
片方は、黒髪で平均身長、特に目立った特徴はない。
もう片方は、灰色の髪をした少年だ。
やや小柄だが、傍らの少年よりも走っている姿に余裕を感じられる。
二人の視線の先には青い体をした大きな蜥蜴が、
全力で二人から逃走をしていた。
走る。
っていうか、さっきから走りっぱなしだ。
隣にはユウが同じく走っているが、まだまだ余裕そうだ。
これがステータス差か‥くそっ。
現在受けている依頼は、『ブルーサーペントの討伐』
Bランクの依頼だ。
『ブルーサーペント』というのは、でかい蜥蜴の魔物だ。
その辺はよくわからないが、ヘビの下級種に分類されるから、蜥蜴だけど、サーペントらしい。
まぁ、そこはいい。
その名の通り、青い体をしている。
大きさといえば人間の胸程度、全長にすれば2メートルくらいあるだろうか。
他のサーペント系よりも力も弱く、小型だ。
しかし、この魔物はBランク・B級の魔物として扱われる。
一番の特徴は、敵に遭った時に、とんでもない速さで逃げる習性だ。
トカゲを思わせる四足歩行で一瞬にしてその場から立ち去る。
討伐するには、こいつに追い付かないといけない。
更にこいつは、高レベルな魔法を使う。
具体的には、迎撃用の魔弾 (正確には魔弾ではないらしい)と、
結界魔法だ。
こいつの意思ひとつでシンさんの炎刃をも防ぐ結界が出現する。
結界とは、魔盾と同じく防御の魔法だが、魔盾では『魔斬り』が有効だが、結界に対しては効果が薄いそうだ。
現在この結界を割ることができるのは、シンさんの炎刃、ユウとシンさんの『魔斬り』、リリの『魔弾』での集中砲火だけだ。
更に更に言うと、この魔物の体には、薄い結界が常に張られていて、弱い攻撃を通さない。
この性質は人間にも希に表れるらしい。
持つ魔力が特殊な状態で生まれてくる人が持っており、『結界体質』と言うらしい。
まぁ、チクチク攻撃できないってだけだ。
そんで現状。
追いかけているのは俺とユウだけだ。
さっきまではシンさんとリリも一緒に追跡をしていた。
しかし、そこに乱入してきた角の生えた猿。
その際にターゲットは逃走を続け、猿を迎え撃ったシンさんとリリとはぐれてしまったのだ。
こっちが高速で移動しているので、もう合流は望めない。
「ジュン、そろそろ仕留めないと」
「そうだね、‥‥‥‥魔物が出てこないとも限らないし‥‥」
俺は息が切れているため、いつものようには話せない。
なんでそんなに余裕があるんだよ。
「あと、10秒したら仕掛ける」
こっちを向いていたユウが正面を向く。
俺は彼の左にいるため、あまり表情を伺うことができない。
髪で左目が隠れているためだ。
「はっ!」
ユウが踏み込み、ブルーサーペントとの距離を一瞬にして詰める。
攻撃を放つのは自分の間合いに入ったときではない。
ブルーサーペントに追いつき、前方に回り込んだときだ。
ガギン!という音が響き、ユウとブルーサーペントとの間あった結界が可視化する。
ヒビが入っているが、まだ破壊には至らない。
ユウが次の攻撃をする前に、ブルーサーペントは180度逃げる向きを変えた。
つまり、俺のいる方向に。
「シャアアアア!」
ブルーサーペントが声を上げ、一瞬ドキリとするが、構わず剣を振り下ろした。
ズガン!という音がして、結界がヒビだらけになる。
「あ‥ おわっ!?」
ブルーサーペントの胴体付近から、魔力の弾丸が発生する。
その数三発。
放たれたそれを回避するために、地面に倒れこむようにして避ける。
ブルーサーペントが90度方向を転換する。
何故だかこいつが方向を変えるときは90度刻みなのだ。
だからこの仕掛け方は好ましい。
ブルーサーペントの逃走に速度が乗る前に追い付いたユウが結界を剣で叩き割る。
だが、ブルーサーペントの背中近くには、既に三発の魔弾が発射されようとしている。
「あ、危なっ!」
ユウはすんでのところで身を躱した。
その間にブルーサーペントは逃げる。
くっ、逃げられた。
「『土弾』!!」
俺の手から放たれた岩石は真っ直ぐに飛来し、体の表面にある結界に阻まれ、傷をつけることはできなかった。
「追うよ!」
ユウが再び走りだし、俺はクラウチングスタートみたいな体勢をとってから走り出す。
「『魔弾』!」
使い慣れた魔法をブルーサーペントに向けて放つ。
しかし、それは対象の体に辿り着くことなく消滅した。
結界が復活したのだ。
「くっ‥」
どうすればいい?
今の攻防で、俺もユウも体力と精神力をかなり削がれた。
ユウも息が切れ始めている。
結界は、ユウの『魔斬り』二発で破壊することができる。
結界はブルーサーペントを球状に囲っている‥
「‥‥ユウ、またさっきと同じ仕掛け方で仕掛けてくれ」
「うん、わかった」
その言葉にユウはすーぅっ、と息を吐いた。
そして踏み込みからブルーサーペントの前方に回り込む。
『この魔物はすごく頭がいい。』
そう、シンさんからは聞かされていた。
学習されていたのだ。
前方に回り込み、ユウが結界に一撃を入れた瞬間、ブルーサーペントから反撃があった。
三発の魔弾、それを放ちつつ、180度の方向転換。
ユウは頭を下げて魔弾を回避し、
俺は、ある魔法を放った。
「『土壁』!」
地面から土の壁がせり出す魔法、
その壁は、ブルーサーペントの真下から発生し、その体を掬い上げた。
「ジュン!ナイス!」
一撃。
結界が音を立てて崩れた。
一撃。
ブルーサーペントの体には結界があるため、一瞬、剣は止められるが、
「はぁぁぁ!」
力ずくで剣は振り抜かれ、胴体が真っ二つになった。
「やった」
「ふぅー、勝てたー」
この場に安堵がもたらされる。
殺傷能力は低いかが、なかなか倒せない難敵だった。
「じゃあ、シンたちにも知らせないとね」
終わったら、仲間に知らせて合流する。
普通は一緒にいるのだが、はぐれてしまうときもある。
だから、狼煙を上げて知らせるのだ。
原始的だろう?
「ジュンってさ、いいやつだよね」
火を起こしながら、ユウが言った。
「そうか?ありがとう」
「リリたちと一緒にいたときはビックリしたよ」
確かに‥驚きもするよな。
「そりゃあ、あのときの少年とまた会うなんて思ってなかったって」
「はははっ、スケルトンに囲まれたときもさ、何だっけ、『助けにきた。俺に任せろ』みたいなこと言ってさ」
「おい、ちょ、やめろ、言うな」
俺がそう言うと、ユウはケラケラ笑いだした。
確かにキメ台詞的なことは言ったが、後から考えると猛烈に恥ずかしい。
「ジュンはさ、別にカッコいいわけでもないし、強いわけでもないし、ずば抜けて頭がいいこともないし」
「はいはい。俺は普通ですよ」
知ってたよ。
もう何年も認識してきた事実だからね。
「けど、あのときは助かったよ。ありがとう」
俺たちはシンさんたちと合流するまで、ユウと話した。
ユウと仲間になれた気がした。




