第27話「隠しごと」
「なんで柱の人がここにいるの?」
爆弾は投下された。
どうしよう。
無論、俺は柱などではない。世界を守る八人の内の一人だなんてカッコいいと思ったけど、柱になった記憶はどこにもない。
俺がまずい理由は『柱』だと疑われた理由にある。
俺のユニークスキル、その『死力の解放』による超パワー、あれが、『世界の柱』のメンバーの一人に似ているらしい。
異世界に来て一ヶ月足らずで、初戦闘もその頃だ。
そんな俺が柱に間違えられることがそもそもおかしい、ついこの前までLV1で全ステータス150だったし、どうすれば柱とかいう世界的な超人に間違えられるのだろうか。
‥‥間違えられるだけの力を隠し持ってるってことなんすよ。
リリとシンさんには、というより、誰にもユニークスキルの存在は明かしていない。
この能力は秘密にしている方がいいと思っていた。
「?? ‥ジュン君?」
リリが『?』を浮かべてこっちを見ている。
シンさんはきわめて冷静だ。
話しても、いいのだろうか。
「え?いや、俺は柱とかじゃないよ?全然」
「うそ、じゃあ、あのときのは何だったの?ねぇ?」
否定を口にすると、灰髪の少年がジュンの不安の核心を突く。
リリが「ユウ‥?」と戸惑いを漏らす。何でそんなに真剣なの?という感じだ。
仕方がない。
すべてを話そう。
そう決意して、俺は口を開いた。
〈リリ視点〉
ジュンは全てを話してくれた。
柱と間違われるような能力を持っていることについて。
それがこの世界に来たときに貰ったユニークスキルだ、ということ。
発動するとユウが柱と間違えるような力を発揮すること。
発動の条件が大怪我をすることであること。
王都に来る途中にユウと共に戦い、そのときにそのスキルを使ったこと。
クロウとの戦いでは使わずにいたこと。
その他、きっと全てを話してくれた。
ユウと兄さんを含め、けっこうびっくりしていた。
前置きが「あの、俺、実はこの世界に来るとき、ユニークスキルを貰っちゃってて‥」というものだったので、もっと軽い話かと思ったけれど、きっと普通の人だったら何度も度肝を抜かれるような話だったと思う。
話を切り出すのが下手なのが彼らしい。
クロウとの戦いでその能力を使わなかったことを、ジュン君は気にしているようだ。
その事を話すとき、しきりに兄さんと私を見ていた。
ジュンの顔には不安の色が広がり、きっとそれを聞いたときの私たちの反応が怖かったことを物語っており、少しばかり検討違いだ。
「今まで隠しててごめん!」
私は、別に責める気はない。
兄さんも同じだろう。
ユウは‥話がわからないみたいで居心地が悪そうだ。
「‥‥‥」
言うことも無いようで、無言を貫いている。
ジュン君がその事を言っているときにユウは私たちに何があったか察しがついちゃったみたい。
説明しなくてごめんね‥
「隠してた‥の」
発動のトリガーは大怪我をすること、となると、1つ心当たりがある。
ジュンが家に来て二日目、シンと冒険者ギルドに登録しに行った帰り、ジュンは魔法の練習をしてから帰る途中、何者かに襲われ、首に切り傷を作って帰ってきたときだ。
首を切られて生きていられるだろうか、それもそのスキルがあれば納得できる。
あのときから、隠してたのか。
あはは‥気付かなかった。
「ごめん!もう隠し事はしませんから‥‥」
「え? ‥気にしてないよ?」
「気にしてないの‥?」
「「うん」」
ジュンが困惑を浮かべる。
ユウがため息をついた後、にこりと笑みを浮かべた。
そういえば、ユウが私たちと一緒にいたとき、ジュン君みたいに隠し事をしていて、こんな風に打ち明けてくれたっけか。
お姉ちゃんが気にしない、と言ってユウを泣かせてたなぁ。
「あ、ありがとう」
「いいんだジュン君、打ち明けてくれてありがとう」
確かにそうだ。
このままうやむやにされたら、心の面でとても良くない。
「えーーと、ごめんなんだけど‥‥この人は‥?」
ユウが口を開いた。
そういえば、ジュン君の話でユウには何も言っていなかった。
「あっ、えっと、ジュン君。
昔のユウみたいな感じで‥一緒にいる」
「うん、わかった、ボクはユウ。
この一昨日は助けてくれてありがとう。
よろしく、ジュン‥君?ジュンでいい?」
「おう、よろしく、ユウ」
良かった。二人は打ち解けられそうだ。
「‥またごめんなんだけど、ボクに説明してくれないかな?クロウとか出てきて、もうちんぷんかんぷんだよ」
あぁ、その説明もしなくちゃだった。
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「そんなことがあったのか‥クレアさん‥」
これまでの説明は、何も問題無く進んだ。
「で、でもあのクロウを退けたの!?」
しかし、クロウの話に関しては驚きを隠せないようだ。
ユウも実力者の一人である。中級騎士が勝てない相手を退けた、というのがどれだけあり得ないことかわかっている。
「し、シン‥そんなに強くなったの‥?」
「いや、勝てたのは、リリとジュン君がいたからだ。それに、運も良かった。」
「あ、そういえばシンさん、これからその話をしに貴族のところに行くんでしたよね」
「あぁ、ライトレア家の邸宅にこれから‥あ、しまった!もう時間がまずい」
見てみれば、もう太陽の刻七時だ。
時間に余裕はない。
「あっ、そういえばボクもこれから報告にそこに行くんだ。
一緒に行こう!」
〈ジュン視点〉
貴族街、そこにはめちゃくちゃ綺麗な街並みが広がっていた。
高級住宅街、というのが表すのに相応しいだろうか、日本にあってもおかしくない。
自動販売機や街灯がないのが違いか。
ユウ、彼がリリとシンさんが言う「あの人」だったとは、とても驚いたものだ。
追求を受けたときはヒヤヒヤしたが、俺が隠し事をしていたことを気にしていない、と二人には言われた。
単に優しすぎるだけなのかな?
そのうち、一つの大きな屋敷の前に到着し、門の前でシンさんが紙を取り出し、門番の男に見せる。
程なくして、門が開いた。
「うわっ、ちょっ、でかっ」
屋敷が大きい、それは既に認識していた事実だが、庭も含めると話は別だ。
美しい噴水に、緑の植物の配置も完璧だ。
もっとも、庭における芸術の知識はジュンにはない。
「すごいな」
シンさんも感嘆の声を漏らす。
屋敷から、一人の給仕服を着た女性が出迎えてくれた。
め、メイドだ‥‥‥!!
リアルにメイドは存在したのか!!
「‥‥めいど」
メイド服が存在した感動を外に出さないようにしつつ、ぼそり、と呟く。
部屋に案内される途中、更に何人かのメイドを見かけた。
三人の反応を見るに、別に変わったことはないのだろう。
「この部屋に、当主アーレン・ライトレア様がお待ちです。
どうぞ」
そう促され、メイドによってドアがゆっくりと開かれる。
当主‥つまり、家で一番偉いってことだ。アーレンって名前を聞くと、多分女性。
怖そうなお婆さんが頭に浮かぶ。
しかし、そこにいたのは―――
「お、来たね、私がライトレア家の当主、アーレン・ライトレアだ。よろしく」
金髪を長く伸ばした若い女性が、部屋の奥の椅子に座っていた。




