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こう見えて異世界最強です  作者: オリガミ
第二章 王都編
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第25話「未熟さと騎士」

一週間お休みして申し訳ございません!今週から頑張ります

 時は遡り‥‥


 〈シン視点〉


 シド王国の王都―――その中央区。

 その中でもより王城に近い、いや王城近くの超重要施設の1つ。


 その一室。

 腰かける男は、茶髪が後で結ばれ、真剣な表情で前に座る男をにらむ。

 それに、ほとんど寝ていないのにも関わらず疲れを感じさせない。

 そんな彼の精神力が伺える姿だ。


 その対面には王国でも名を馳せる、最高の治癒術師に次ぐ回復魔法の使い手。


 そして傍らのベッドには綺麗な桃色の髪をした女が寝ている。

 その寝顔は安らか、の一言で表せるだろう。



 その寝顔は、シンに多くの事を思わせた。

 シンのこれまでの人生を、その寝顔の主―――クレアと共に生きてきた。


 幼い、いや、ハッキリとした記憶で思い返すのがギリギリなくらい昔のことだ、まだ赤ん坊だったリリを抱いて一緒に行こうと言ってくれたのは彼女だった。

 両親に捨てられ、孤児院で育った。そんな境遇でも姉として、シンとリリを包み込んだのも彼女だった。

 孤児院を出てからは、シンはいつでも彼女に元気付けられていた。

 宿屋を開いたのも彼女のアイデアだった。

 宿屋の経営は、すごく楽しかった。


 毎日が輝くようだった。

 クレアとシンとリリ、この三人で生きた毎日だった。


 そんな活発で、いつだって笑顔を絶やさない彼女は、もうそこにいなかった。


「これは驚いたもんだな」


 そんな声で、シンの意識はその声の主へと集中される。

 これから聞かされることを、一言一句聞き逃さないためだ。


「あー粗方、ファミスの言ってることが合ってるな。」


 そんな、説明を省くかのような口調で言われた。

 一瞬、ほんの一瞬、シンの心に雲がかかる。


 シンとて、人間である。例えば、ジュンの中でイケメンの完璧に近い人間と定義されていようと、彼も人間なのだ。


 死の危険すら考えられる姉のことを雑に言われたら誰だって真面目にやれ、と怒鳴りたくなるはずだ。

 その衝動をノータイムで呑み込む。

 声を荒げて状況が良くなるなんてことはない。


「まぁ、こんな状態の人診るのなんて初めてだしさ」


「――――なるほど」


 この男がそのような人間なのだと、シンは悟った。

 国内で2番手の治癒術師、彼はとんでもない大物だが、礼儀や作法、そして他人への気遣いといったものが抜け落ちていると。


「魂の研究なんてまだまだ途中だから、誰が診ても同じこと言うと思うけどさ、確実に言えることはあるね。」


 そう言い、続く言葉を勿体ぶるようにする。


「む。どうかしたのか?」


「―――彼女には魂が入ってないよ。これは、ほぼ確定」


 男はシンの言葉に一瞬驚くような反応を見せ、それから言葉を紡いだ。


「そうか」


 そう短く答える。


「あとは、ただの植物状態―――あ?」


「もうよいか?早くしてくれ」


 男の言葉は、この部屋のドアの方から遮られた。

 そして入ってくる一人の男、服装を見て、一目で貴族だとわかった。いい服を着ているが、それを帳消しにする小太り、頭は禿げかけており、眉間にはしわが寄っている。


「もう全く、めんどくさい仕事がよりめんどくさくなったわ」


「はいはい、だったら早く終わらせましょ」


 小太りの愚痴を男は自分の無精髭を触りながら受け流した。


「おいルーズ、こいつか?」


「はい、そうっすね」


 ルーズ、治癒術師の名前だろう。

 それから貴族は姉さんを舐め回すように見た後、視線を私に向けてきた。

 苛立つ、そういえばこんなやつ、ガルド市にもいたな。

 貴族は私が剣を腰に持っているのを見ると、いきなり喚きだした。


「お、おいルーズ‥!こいつは大丈夫なのか!?」


「――――――」


「あ?あぁ、大丈夫っすよ、いい子みたいですし。

 それに、いるじゃんか、入っていいけど?」


 男―――ルーズがそう言うと、三人の男が部屋に入ってきた。

 金髪に、黒髪、そして赤い髪の男だ。


 騎士。

 あの白い制服、誰もが彼らを騎士と言うだろう。

 しかも黒髪と金髪、彼らの制服は赤い髪の騎士とは違う。

 中級騎士だ。


「わははは、こんな上等な騎士が三人とはな、これなら安心じゃわ」


 小太りは満足そうに笑う。ルーズと金髪の騎士、赤い髪の騎士が冷たい視線を送る。

 黒髪の騎士は、「こいつがクロウを?」と私の方を見ていた。


 この三人‥‥‥

 私にはわかる、彼らは強い。

 三人とも私以上、いや、金髪は更に強い。


 そんな事に考えを巡らせている間にも、五人の男が事態を進める。


「あっ、資料いる?たくさん作ってきたしさ」


 ルーズがここにいる全員に紙が配られる。一瞬目を通すと、内容はクレアの状態についてと、ジュンがクロウを鑑定したときの鑑定結果、そしてクロウの戦闘時の情報だ。


「ちょっと待て、本当にこいつがクロウを退けたのか?」


「そうだ、本当なんだろうな?」


 声をあげる黒髪の騎士に小太りの貴族が便乗する。

 居心地が悪い。


「殺戮者クロウは、我が国の中級騎士を四人同時に相手して全員を葬ったんだぞ!?こんなただの冒険者が退けた?馬鹿を言うんじゃない!」


 小太りも「そうだろう、そうだろう」と言っている。何が馬鹿を言うんじゃない、だ。


「あのよぉシリス?ガルド市の衛兵からの証言もあるし、その頃の、ガルド市で連続殺人事件、鑑定結果だってある」


「それに―――彼女が、何よりの証拠なのでは?」


 赤い髪の騎士とルーズが言った。


「それに、戦いってのは何があるかわからないだろ?」


 その言葉に、シリスと呼ばれた黒髪の騎士は舌打ちで返し、


「おい!ドレーク!貴様は先輩がこいつに劣ると言うのか!?」


「だーから言ったんだよ、戦いは何が起こるかわからねぇって」


 黒髪の騎士―――シリスはぎりぎりと歯を鳴らし、それ以上何も言わなかった。


「ごめんよ、実はあの人、仲良かった先輩騎士をやられててね。あの話には敏感なのよ」


「いえ、問題ありません」


 金髪の騎士が私に言ってきた。

 その気持ちはわかる。私だって、姉を悪く言われたりしたら、きっと憤慨することだろう。


「ちっ、クロウなど、最初から上級騎士をぶつけとけば良かったんだ!

 あんな中級騎士(役立たず)なんて送り込むから負けるんだ!

 こんな男に勝てて何故騎士が勝てない!?」


 小太りの貴族が怒鳴った。

 その感情の源泉は、自分の思う通りにならくて苛立った、というもの。

 そんな幼稚な怒りなど、何にもならない。


「あ?」


 突如右から凄まじい殺気―――シリスが貴族を睨み付けていた。


「な、なんだ、お前はっ!ワシに楯突くというのか‥!?

 ‥‥‥あ、そういえば、お前は平民の家の出身だったなぁ、小さな家など、いつでも取り潰しにでもできるんだぞ?」


 途中からニヤニヤと貴族が喋った。

 彼の中では、シリスは頭を垂れ、許してくれ、とそう懇願するイメージが見えているのだろうか。

 現実は違う。シリスはその言葉を受けて、更に強い眼光で睨んだ。


「ぷっ‥くははははは!!」


 その様子を見て、笑い出したのは赤い髪の騎士―――ドレークと呼ばれていた男だ。


「なっ、何が面白い!?」


「取り潰し?面白い冗談だな

 お前の家、中級貴族で確かに小さいとは言えないが、家から出てる騎士はゼロ、戦争になったら軍事力はないに等しいな。傭兵でも雇うか?」


 小太りは顔をひきつらせ、「な、なんだ‥」と言うが、ドレークの口は止まらない。


「しかも相手は『雑魚狩り』で有名なシリスだ、騎士一人に貴族の家が負けるのはどうかねぇ」


 シリスはその名で呼ぶな、と言うが、言葉はそのまま続けられる。

 小太りは真っ赤になりながら、「ちっ」と舌打ちをして


「おいルーズ!!もういいだろう!ワシはもう行くぞ!!」


 と言い部屋を出ていった。

 ルーズは、ばつが悪そうにしている。


「あの貴族、あぁ見えて悪いことしてるわけじゃねぇんだわ、あんま気にするな」


「そうか‥」


「それでは、話戻そっか」


 小太りを抜きにして、話は再開された。


「魂を抜かれた体に、クロウに称号『魂を喰らう者(ソウルイーター)』、禁断魔法が二つか、流石に頭おかしいな」


「『魂を喰らう者』か、この称号を持っているのは『暴食』だけだが、こいつがそれである可能性は?」


 異常性を金髪の騎士が語り、シリスがそれについて言及した。


「ないだろ、七大罪が禁断魔法を二つも持っていたら世界が滅ぶぞ」


 ドレークが口を挟む。

 更にその赤い髪を触りながら、


「そういや、こいつとこの女はどういう関係だ?恋人?」


「姉弟だと」


 答えようと思ったが、ルーズさんが即答した。

 ドレークはこちらを向き、



「そうか、お前、姉さん守れなかったのか」



 その言葉は、私の胸に突き刺さった。

 衝撃が走り、目眩が襲った。この場で失態はしてはいけないという精神で切り抜ける。


 話は進んでいる。

 しかし、全く理解ができない。


 姉さんを守れなかった。


 その事実とその言葉が、頭の中で暴れていた。

 みじめだと、思った。

 死んでしまいたい、消えてなくなりたいと思った。


 情けない、情けない‥あぁ、情けない‥‥‥。


 姉さんを守れずに、ジュン君も一度死にかけた。リリにも、ジュン君にも、助けられ、私はここにいる。

 未熟だ。





 ――――おい、しっかりしろ、シン!

 私には、リリという妹がいる、ジュンという大切な仲間だっているんだ。


 二人に顔向けできないだろう!


 顔をあげる。

 視界は、少しだけ晴れている。息苦しさも、幾分緩和された。

 そして、口を開いた。





 話し合いは、意外とすぐに終わった。

 いろいろと議論したって、謎が多すぎる。また今度、という具合だ。


「あー、誰かが報告書まとめるんだが‥」


「あっ、僕がやりましょう」


「お、そうだな、フェイが適任か、ライトレア家に任せますよ」


 金髪の騎士――――フェイ・ライトレアがルーズから何か書類を受けとった。


「えーと、シン君、後日、ライトレア家の邸宅に来てくれ。そこで、話の続きをしよう。」


「はい、わかりました。」



「それと、だが、この女は封印魔法LV5で封印するが、異論はないな?」


「――――っ!? ‥問題ない」


 一瞬、シリスの顔が固まった。

 他の騎士からは、何も無かった。


「おいお前、感謝しろよ、こんなの――」


「おいシリス、そこまで言う必要は―――あ」


 私は無言で、全員に頭を下げた。


「それじゃあ、お別れだが、最後に何かあれば好きにしな」


 こうして、姉、クレアと別れた。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 話の中で、一つ、気になった話がある。


「魂を奪った相手を殺せば、魂は器に戻る」


 簡単だ。

 姉さんを助けるには、クロウを殺せばいい。

 私は、クロウを倒す。


 そう決めた。

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