第23話「嵐の前、束の間の平穏」
よくわからないスケルトン騒動が完結した。
まぁ、死人がこちら側から出ていないから完璧と言えば完璧だろう。
俺 (のユニークスキル)がいなけりゃ襲撃者を倒してもスケルトンの大軍に全滅させられただろうし。
何はともあれ上手くいった。
問題点を挙げるなら、ユニークスキルを見られたくらいか?
最悪‥‥よからぬ疑いとかかけられて国から命を狙われる‥とか?
強すぎる力というものは周りから恐ろしく見えるのは知っている。もしそれが味方のものだとしても。
やっぱり緊急時以外はユニークスキルは封印だな‥‥
毎回喉を裂いているようでは気が狂いそうだ。
血が染み込んで乾いた服が気持ち悪い。
そこまで気になってはいなかったが、首からの出血で上半身は血だらけだった。
血をぬぐっただけの皮膚を心地よい風が撫でる。
なんだか疲労感が強い。
まぁ、仕方のないことなのかも知れないが。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥??
‥‥‥‥!!
えっ!?
ちょっと待って!?
《人間 名前 ジュン LV 32
ステータス
HP:323/324
MP:202/411
攻撃力:684
防御力:460
魔法力:598
魔法抵抗力:360
スキル
「剛力LV7」「堅牢LV3」「魔力LV5」「魔耐性LV1」「月魔法適性LV1」「痛覚軽減LV2」「自己鑑定」「ユニークスキル」
称号
「異界からの来訪者」》
え?
おおおおお!
なんかめっちゃ強くなってるんだけど!
これは強い‥‥‥
攻撃力と魔法力は500超えで防御力もそれに迫っている。
もしかしたら戦闘力は並を超えたのでは?
これなら正面からスケルトンと戦えるじゃないか。すごいな。
街に入ったが、血だらけの格好でもあまり気にしなくてもよかったようだ。
冒険者がどこかで死闘を繰り広げて帰ってきた。そのくらいの認識を与えるくらい。
早く服を買って、風呂にも入ろう。
リリやアレスさんを心配させてはいけないしな。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「あぁっ!ジュンさん!今までどこに行ってたんですか!?探そうかと思いましたよ~」
宿屋の扉、開けると飲食店の風景が広がってくる。
クレアさんの宿の酒場というより、カフェ、という方がしっくりくる印象だ。
酒場の席にはリリとアレスさんが座っており、寝不足を解消してスッキリした顔のアレスさんがお出迎えとばかりに駆け寄ってくる。
リリはいつもの調子でコップに入った飲み物を飲んでいた。
「すみません、お風呂に入ってて」
俺が今着ているのは今日買った服だ。なんとこの町は既製服がたくさん売っていて感動したものだ。
それに風呂にも入ってきた。
疲れは残るが、俺から死闘の痕跡は消えたと言えよう。
「そろそろ出発しますか?あー、えと、それともご飯でも」
「あのー!すいませーん!」
こうして、食事を摂った後に王都へ向かうことになった。
王都へ出発する馬車では、リリが寝てから出発するというリリ案が採用され、彼女が馬車の中で寝付いてから馬車は動き出した。
まだ夕方だ。なぜだかすごく疲れた。
寝るのもいいが、まだ早い。
「ジュンさん、お疲れですか?」
俺がまたアレスさんの座る御者台に座らせてもらっているので、アレスさんの声が横から聞こえる。
「あぁ、大丈夫です」
そう答えると、アレスさんが若干難しい顔をした。
「クロウに襲われた後、息をつく間もなく王都に行くだなんて、やっぱり大変なんでしょう?
でも、何だって一人で背負い込むのはよくないですよ。」
「―――――――――」
「笑いましょう、ジュンさん、そうしないと、リリさんが心配しますよ?」
と、そう言ってアレスさんがにこりと笑う。
確かに、精神的にも少し疲れが見えはじめている。
意識不明のクレアさんに、先に王都へ行ったシンさん。
今馬車で寝ているリリに自分のことだってある。
考え込み過ぎたのかもしれない。
「そうですね。ありがとうございます」
と、言って俺も笑う。
作り笑いとは‥‥違うものだと思う。
「ふふっ、いい顔するじゃないですか」
そう言うとアレスは前を向いた。
彼の長めの茶髪がふわりと揺れる。
すごく前向きで、優しく、明るく、愛嬌もあって未来のある青年。普通の人がアレスさんを見れば、そう評価するだろう。
でもその横顔にジュンは少しばかりの違和感を感じた。
「僕の夢は、物と人の流れで世界を変えてやることなんですよ」
「アレスさんなら、できますよ」
アレスは再びジュンの方を向き、笑顔をつくる。
「そう言ってくれると嬉しいです」
人の考えはそれぞれだ。
でも、アレスさんは世界を相手にしている。立派な人だ。
こういう人が世界を変えていくんだろうなぁ‥‥
「では、今日は休ませて貰います。」
しばらくの会話の後に、俺はそう言った。
この後も数時間、アレスさんはこの高速の馬車を制御し続けるのだ。
まぁ、それはアレスさんの仕事だし、俺が気にしていたらきりがない。
なんだか疲れからか頭が痛くなってきた。
アレスさんに「おやすみなさい」とだけ言い、ドアを開け、布団に潜り込む。
目を閉じれば王都だろうか?
そんな考えがよぎったが、それに続く思考は無かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「おっ‥‥起きた」
目を開けた瞬間、そんな声が入ってくる。
むくり、と体を起こす。思考は殆ど機能していないが、寝起きは悪くない。
外は既に明るかった。
「ん、あ、リリ、おはよう」
薄いがしっかりと赤い髪をした声の主に挨拶をする。当たり前のように返ってくる。
今が何時かはわからないが、少し寝過ごしてしまったか。
「‥‥‥?っえ、!?」
馬車の外に広がる景色は、街だった。
建物がでかい。人の往来が多く、賑わっている。
一瞬ガルド市と間違えそうになったが、王都に着いたようだ。
馬車が待合所(?)わからないが、馬車の、駅、みたいなところだろうか、そこに止まる。
「お疲れ様です!着きましたよ~!」
前からアレスさんの声が聞こえる。元気そうで何より。
そして「お疲れ様~よくがんばったなぁ~」と馬を愛でる声まで聞こえてきた。
動物好きとか、好印象じゃないか。
「じゃあ、行こっか」
荷物をまとめ、忘れ物がないか確認。
少しだが、ベットや椅子といった家具類を整えておく。
「あ‥‥‥」
馬車を降りると、シンさんがいた。
リリも一緒に、安堵に包まれる。
「長旅ご苦労様」
「兄さん!」
「シンさん!」
短く、再開を喜ぶ。
ジュンは、この2日間が二人にとってどのようなものだったか、理解ができていない。
下手に喋れば、悪い空気にしてしまうかもしれない。
素直に、ただ素直に喜ぶことにしよう。
「‥お姉ちゃ―――――」
「二人とも、無事で良かった。宿はとってある。そこで話そう。」
シンはリリの言葉を遮り、本題は先送りにする。
それは、その話が長くなること、複雑な話であること、色々な意味を含んでいるように思える。
「ん、僕のことは気にしなくていいですから!ほんとに!」
「気遣い、感謝します。」
アレスさんの言葉にシンさんが反応する。三人で頭を下げ、感謝と別れを告げた。
やって来たのは、石造りの宿屋。きっと貴族のお付きの人とかが泊まるような宿なんだろう。
そこの1階、例外ではなく、飲食のできる店となっていた。
三人で、そのうちの1つの席に座る。
「ひとまずは、再開を喜ぼう。話は、それからだ。」
と、言うシンさんの顔は、何だか言葉では表せない、影を持っていた。




