第19話「召喚と鑑定」
僅かな考えだが、見なかったことにして街に帰る。という選択肢を投げ出し、既にジュンは走り出していた。
ジュンは、助ける、という行為をすることが多い。
それは単にジュンが冒険者の中で盾役をすることが多いからだ。対クロウ戦で見せた防御の魔剣でのガード術、そして、攻め役の前に出て攻撃を受ける立ち回り。
それらは冒険者での経験により培われたもので、シンやクロウのように強くない彼にとって、自分の力を活かす工夫でもあった。
その盾役で培った感覚は癖となり、攻撃を受ける者を守らねば、という使命感を彼にもたらした。
「あ~~!!衛兵呼ぶべきだったかー!!」
ふと考えが浮かび叫んだ。
確かに、強くないジュンにとって、それは最善とも取れる選択肢だ。
しかし、ジュンが目にしたのは、馬車の護衛であろう人から血飛沫が上がったシーンだ。事態は一刻を争う。衛兵を呼んだが行ってみたら死体がごろごろ転がっているだけ。なんてなったら最悪だ。
それに、既にかなり走ってきている。
「行くしかない」
頭の中で理屈を並べて他の選択肢を潰す。
―――そう。俺が取る選択肢は、あの馬車の一団を助けるという選択肢だ。
草原を疾走する。襲撃の現場が少しずつ大きく見えてくる。
「―――あれって‥」
俺が見たものは、馬車を襲っている、白い集団―――その正体だ。
―――――スケルトン
誰もが知っている、骸骨の化け物だ。それが、馬車を襲う敵の正体だった。
人間の白骨死体が、剣と盾を持ち、戦っているのだ。俺からすると、嫌悪感がすごい。
それも、あのスケルトンは、人間の死体が魔物になったものらしい。どの個体も、人間でいう心臓の位置に魔核が肋骨の間か覗かせている。
しかし、これで1つ安心することがある。これは人の襲撃ではなく、魔物の襲撃なのだ。
もし人為的な襲撃なら、貴族どうしの勢力争いとか、面倒なことに巻き込まれる心配が大いにある。しかし、魔物が相手ならそれもない。人も殺さずに済む。
スケルトンの数に対して、馬車の護衛側の人数は少ない。馬車の右側を3人、左側を3人――だが、一人落ちて2人で守っている。対するスケルトンは片側に4、5体といったところだ。
しかし、
そんな数の差をもろともせずに、戦う少年がいた。
馬車の左側‥2人でスケルトン5体を相手をしているという圧倒的不利な戦力で、
距離と速度を利用した素早い立ち回りに、スケルトンの攻撃を、いなし、受け流す剣術。
たった2人でつくる防衛線を越えさせない為に深く踏み込むことはできないが、確かに、2人で戦っている。
「―――強い‥」
あの少年が、とにかく強い。
恐らく、シンさんレベルだ。伸びた灰色の髪を乱し、舞うように剣を振るう。そして一瞬の隙を突くように骸骨の首を飛ばした。
―――――――いける。
あの少年と協力してスケルトンを一体ずつ撃破していけば、この修羅場の終わりが見えてくる。スキルをつかわずとも。
スケルトン側と護衛側の勢力は、いいとこ6対4くらいに思っていた。この人数差で1体でも消耗なしに撃破できる戦力なら、かなり希望は大きい。
「―――――――ッ」
そんなジュンの安堵と期待は、一瞬にして強い警戒と危機感に塗り替えられた。
スケルトンとの激戦が繰り広げられるその最中、
地面に魔方陣が出現し、地面から怪しい紫色の光に包まれながら、新しい個体のスケルトンが出現したのだ。
「召喚魔法っ‥」
既に助けに入れる距離まで走っていたジュンは慌てて近くの草むらに飛び込み、身を潜める。
――――召喚魔法が行使された。
これは、魔物ではなく、人による襲撃であること。
そして、近くにスケルトンを召喚した術者がいることをジュンに知らしめたのだ。
「――――っ‥完全に油断した‥‥‥」
もし、その術者が走ってきたジュンに気付いていたとしたら、先にこちらへの攻撃もあるかもしれない。
「術者は‥‥見当たらねぇ‥」
辺りを警戒して腰の剣に手をかける。――見える範囲に召喚魔法を使った魔術師はいないようだ。
つまり‥何処かに潜み、召喚だけをしている、ということだ。
多分単数‥一人であって欲しい‥‥‥。
ガサガサと音がするのを抑えつつ、良く見える位置までほふく前進を用いて移動。
スケルトンと護衛の戦場まで約30メートル。
今すぐにでも敵に斬り込むことができる。
が、しかし俺は召喚魔法の使い手を探さねばならなかった。
――――――鑑定!!
《スケルトン 名前 なし LV 2
ステータス
HP:221/273
MP:39/39
攻撃力:472
防御力:654
魔法力:82
魔法抵抗力:530
スキル
「剛力LV1」「堅牢LV3」「魔耐性LV2」「アンデットLV1」
称号
「使役されし者」》
‥‥‥おいおい。めっちゃ強いじゃねぇかよ。
魔法が無いのはいいとして、その他は俺の上位互換かよ‥
特に防御系のステが高い。
『使役されし者』ってのは召喚されて使役されてますってことで大丈夫なんだな?
しかしきついわ。
索敵にも動きがあった。
新たなスケルトンが召喚されるとき、戦場から少し離れた位置、その木の陰から、一瞬、一筋の光が走ったのだ。
勝ちを悟る。
鑑定魔石を使用し、木の陰にいると思われるの術者を鑑定する。
《亜人 名前 バーサ LV 24
ステータス
HP:304/305
MP:896/1047
攻撃力:320
防御力:417
魔法力:1471
魔法抵抗力:702
スキル
「魔力LV7」「魔耐性LV6」「水魔法適性LV3」「闇魔法適性LV4」「召喚魔法LV7」「鑑定LV1」「擬態」「怠惰の片鱗LV2」
称号
「殺人者」「怠惰の使徒」》
はい、ビンゴぉぉ!!特定完了!
『擬態』のスキルで紛れていたみたいだ。
怠惰の使徒ってなんだろう‥‥‥
しかし強い。強いな。俺じゃ勝てないわ。
未熟さを実感。
さて―――
俺がここで身を伏せている間、当然、骸骨と護衛の戦いは続いている。幸い、俺が見たものを最後に怪我人は出ていない。血飛沫を上げて倒れた人もなんとか馬車まで逃げることができている。
そして、何度も言うようだが、灰色の髪をした少年がガチで強い。よく見るとすごく小柄だ。多分リリと同じくらいだろうか、小さいのに強いなぁ。
そういうのは多分何十人かに一人、みたいな割合でいるんだな。と、一時的に結論付ける。
スケルトンも倒せる。召喚魔法の使い手もどうにかできそうだ。
手札は揃った。
あとは―――やれるだけやる。それだけだ。
これは、3週間前に、突如別れを強いられた友の考え方だ。手段が見えるまでは動かない。それが見えたら全力を尽くす。
しかし、このやり方を採用するかは場合によるんだと。
理解、という意味では全然だけど、アイツはすごくできるやつだった。
また京介と同じ日常を過ごしたい。
京介は最強で、俺は普通。
しかし、京介と覇道を歩むのは俺なのだ。
腰の剣を引き抜き、前の世界より格段に速くなった足で走る。
―――――集中だ。
前方にスケルトンは2体、手前の1体に飛び蹴り。
着地と同時に次の足を回して回し蹴りを放つ。
きまった!
ステータスで及ばなくても、蹴り飛ばすくらいは可能だ。
馬車の方に走り、敵の方に向きなおす。
「助けにきた。こいつら全員倒すぞ。」
あくまでドヤ顔にならないように、自然に、そう言い放った。
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