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こう見えて異世界最強です  作者: オリガミ
第二章 王都編
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第16話 「いざ王都へ」

タイトルに適した内容は後半にあります。

<とある武器商人視点>


 その日の朝、なんだか知らんがクロウとかいう殺し屋(?)から初めて生き延びたってやつがいる。とかいうニュースを小耳にはさみつつ、店番をしていた。



 別に興味があるわけでもない。たくさん殺したやつなんだろう。そりゃ強いわ、騎士様もことごとく殺られてるんだからな。

 でも上には上がいるってもんだろ。


 どんなに強くたって、負けるんだ。

 だから、あんまり目立つような動きをしないほうがいい。いい名声も、悪い名声も、結局死を早めるばかりだ。


 こうやって、武器屋の買い取りで暇していればいいんだ。






 それは昼間のことだった。

 ガルド市の1番大きな武器屋の買い取り係をしているのが俺だ。


 武器を売りたい、なんてやつはそうそういない。

 鍛冶屋の納品予定も明日で今日はない。よって1日中座っているのはほぼ確定だ。


 今日は1日座って仕事が終わり、それだけで給金が貰える。給料泥棒とはな‥‥



 そこに、2人の冒険者らしい少年少女がきた。

 なんでも、武器を売りたいそうだ。変わってるな。


 しかし、たまにあることだ。中古の武器を銅貨数枚で買い取って終わりだろうとは思った。



 黒髪の少年が魔剣を売りたい、と言ってきた。

 ほう、腕利きの冒険者で迷宮に潜っていたりするのだろう。


 久しぶりに仕事への情熱が感じられた。


「おい‥ちょっと待てよこれ‥‥‥!!」


 これって‥間違いない!でも何故!!?




 これは‥数年前一時期のみで僅かな数だけ出回ったタイプの魔剣だ。

 しかし、制作者は不明、そしてシンプルながら強いという性能に、漏れなく再生ができる魔剣として、今では誰もが喉から手が出る程欲しい剣というわけだ。


 ありえない。何故こんなものが大量に‥‥‥!



 本物かどうかは確かめないとわからない。


 意を決して刀身の薄い剣で地面を殴り付け、刃こぼれさせる。

 武器商人としてあるまじき行為だ。


 しかし、目的はその後にある。

 自分の中で少しだけ習っていた無属性魔法の感覚を思い出し、魔力をボロくなった刃に注ぐ。


「うそ‥‥‥だろ‥」


 手元には鮮やかな緑に輝き自身の損失を直していく刃があった。これは本当に間違いない。


 大急ぎで仲間を呼んでくる。不覚にも慌ててしまったせいか、皆「何事か!」と見に来てくれた。

 そして説明をしながら再生するところを見せる。


 どよめきと歓声が上がった。


 店の隅の椅子に座って待っている2人が居心地が悪そうにしているのが申し訳ないが、今いる客には帰ってもらい、この魔剣を買い取るのに集中する。


 あの薄桃色髪の少女と黒髪の少年には申し訳ないが、一大事なのだよ。


「おいこれ!本物だぞ!!」


「店の大金庫と‥‥商会からも金だ!!」


「鑑定いそげ!!」


 店は大騒ぎになる。


 ここでその魔剣について、知っていることを説明しよう。


 約3年前、このガルド市で突如世に出た魔剣だ。しかし、制作者は不明、その一時期で世には出てこなくなったという魔剣だ。能力はいずれもシンプルだが、魔力により再生するという特殊な力を持っている。

 また、使い手を選ぶ。と言われており、使い手によって能力の強さが変わってくる。

 今では上級騎士や勇者様まで使うとされる剣だ。強さとその貴重さ故、今では金貨200枚は下らない。



 そんな剣が22振りもあるとは、うちの店で買い取れるのだろうか?

 そんな不安をよそに1振りずつえげつない値段がつけられていく。






「とりあえずこれが、金貨200枚だ。」


「「―――――――!!!?」」


 露骨に驚く2人。しかし、このくらいで驚かれていては困るのだ。


「それと、王札が5枚だ。1枚で金貨1000枚って覚えとけ。」


「え、あ、は?ええ!?‥‥!!!?」


「ジュン君落ち着け‥落ち着く‥のだ‥」


「お、おう‥そやな‥」


「そやな」とロアの方の方言で答える少年。そして、はっと何かに気付いたように顔をしかめてこっちを見た。


「いやいや、王札は詐欺じゃねぇぞ?なんなら金貨5000枚、じゃらじゃら持ってくか?持ち運ぶのも用意するのもちと骨が折れるぞ?」


 そりゃ俺だって国家予算を扱うときや物資が大商会や国家で動くときにしか使わない王札を見ることになるとはな。


「大金だから契約書を用意した。目を通して、どっちか、サインしてくれ。」


 と、言うと薄桃髪の少女が自然な動きで手にとって読み出した。もしかしたら少年の方は字が読めないのかもしれない。


「‥問題ない‥」


 と言い、渡されたペンでさらさらと自分のサインを書いた。


「リリね。家名は?」


「ない‥‥‥」


「よしわかった。これで契約も本物だ。」


 正直、あの魔剣の入手先は商人として気になるところだが、絶対に詮索するのはよくない。

 俺たちは買い取りの依頼を受けてそれを買っただけ。

 深入りしないのは商人の鉄則だ。



 あの2人、律儀に頭を下げてから店を出ていった。礼儀とか、貴族様の家系か?まさかな。


 それにしても、訳がわからん話だ。伝説の魔剣を大量に所有している少年たちか‥‥‥

 あの魔剣は人の手によって作られたものではなく、限られた迷宮からのみ手に入れることができる‥とか?

 いや、考えるだけ無駄だな。






 この店を含む商会が、これをきっかけにして急成長するのは、また別の話である。





<ジュン視点>

 気づけば既に夕方であった。



 なんだかどっと疲れた。そういえば、睡眠を取っていない。


 魔剣を買い取ってもらうときは大変だった。やはり魔剣というものは珍しいのか、なんだか知らないけど他のお客さん帰しだしたり、急に騒ぎ出したり、すごく疲れた。


 しかし、ありえない程の大金が転がり込んできてしまった。


 最初に金貨を渡された時点でめちゃくちゃ動揺していたが、その時にリリの神がかった落ち着きを垣間見た。


 えーーと、確か銅貨1枚だとクレアさんの酒場で1番安いメニューが食べられた。

 無理矢理だけど日本基準に当てはめるなら、銅貨1枚は500円ってとこかな?

 なら銀貨は50000円だから金貨は500000円か。

 うーーん、50万円‥‥‥既に俺の金銭感覚では桁が違うなぁ。


 王札1番は金貨1000枚だから‥ん?

 金貨1000枚‥‥‥500000000円‥‥?


「えっ、ちょっ‥は?」


 ご‥5億‥‥だと‥‥

 王札は5枚あったから25億だと‥‥?

 なん‥だと‥


「ジュン君‥落ち着け‥」


 前を歩くリリに声をかけられた。

 動揺で歩き方がおかしくなっていたみたいだ。


 うーん、シンさんは魔剣作って売って生きている方がいいと思うなぁ。




 しばらく歩き、街の外れへやってきた。数時間前、シンさんとクレアさんを乗せた竜車が出発した場所だ。

 そして今から俺とリリが乗る馬車の出る場所でもある。


 俺とリリの乗る部分は、普通のものよりも丈夫に作られているようで、人が乗ることを想定されているつくりだ。


「どうも。はじめまして!あなた方を送る馬車の御者を務めさせて頂きますアレス・ユーロです。よろしくお願いします」


 そのふわりとした印象の男は、ぺこりと頭を下げ、それからにっこりと微笑んだ。



 馬車の中には小さな机とベッドが2つ。天井も低くない。1日の間だけだが、生活するのに不満が起きるような物ではない。


「おぉ‥すごいなぁ」


「きれい‥‥‥」


 きっとすごくお高いやつなんだろうなぁ。手配してくれたファミスさんに感謝しておかねば。


「じゃあ、出発しますよ~!」


 馬車の前方からアレスさんの声が聞こえる。

 彼はこれから長い時間ずっとそこで馬を制御し続ける。途中で倒れたりしないのだろうか。


 2頭の馬の足音とともに、馬車が動き出した。

 馬車の小窓からは、景色を見渡すことができる。



「‥‥‥‥また‥すぐに‥来るから‥‥」


 リリが呟く。

 俺が転移してきて、3人にお世話になった街だ。俺にもガルド市にはかなりの思い入れがある。


 初めてこの地に立ち、魔法を使い、剣を振り、3週間でも、全力で生き抜いたあの街だ。





 あの、俺が転移してきたガルド市が、

 あの、リリに魔法を教わったガルド市が、

 あの、シンさんと冒険者として活躍したガルド市が、

 あの、クレアさんの手伝いをしたガルド市が、


 少しずつ、遠ざかっていった。

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