2.1
ノブは今日までに自信満々に見つけたぜ、とか来てくれるみたいだぜ、とか、散々安心させるようなことを言ってたのに……っ!
「あんた……っ!幽霊連れてきてどうすんのよ!!」
「ノブ!期限は延ばしてやるから、先に除霊に行ってこい!」
ついにノブが変な霊に取り憑かれてしまった……。
ヤスと頭を抱えそうになると、不思議そうな顔をして突っ立っているノブの後ろで、扉が開く。
「っと、お客さんの邪魔になるだろ、ノブこっち来い」
「そうよ、通行の邪魔よ……、!」
一瞬で目を奪われてしまった。
扉を開けたのは、真っ白なツルツル肌、額にかかる綺麗なブルーブラックの髪、切れ長の目に、高い鼻梁、薄い唇……。
こんな飲んだくればっかり集まるような場所には場違いな、端正な顔立ちの男が一人。
しかも、大きな真っ黒の楽器ケースを背負っている。
まさか、このイケメンが──……?
「こんばんは、よく分かりませんけど、この人からここへ連れてこられました。ダイです」
「事情は説明しただろー!」
「まぁそうですけど。……それより、ベース持ってきたんですけど、どうしたらいいんですか」
どことなくアンニュイな雰囲気を纏うダイくんは、目を伏せただけでも色っぽく、パッと見て明るい系だったシンジ、ヤス、ノブと比べると、グループの色がガラリと変わるんじゃないかと思わせるような存在感だ。
彼は、居酒屋の扉の前に立っているだけでも絵になる。
「……あ、それなら外でやるわよ」
「外でやるのか!?」
いけない。つい、見とれていた訳じゃないけど、ボーッとしてしまっていた。
ヤスが驚いて大きな声を出したが、同時に机の上に運ばれてきた唐揚げをすぐに口に放り込み、不服そうな表情を浮かべる。
「お前はどうしてそう、いつも突拍子もない事を……」
「ここでする訳にもいかないしね。ダイくんは外でも構わない?」
「別に構いませんけど」
「じゃあオッケーね。移動するわよ」
「ちょっと待ってくれ、俺まだ唐揚げ……」
一刻も早くダイくんの腕前を確認したくて、時間短縮にと唐揚げをひとつ盗む。
それを見ていたヤスは何も咎めて来なかったが、間を置かずにノブが甘えたように、ヤスへ擦り寄る。
「ヤスさん俺にも1個くださいよ」
「あぁいいよ……」
「ありがとうございますっ!」
満面の笑みで唐揚げを頬張るノブは、ヤスにとっては弟に近い存在なので、ヤスはノブには甘い。
全部無くなってしまったところで、私は自分で頼んでいたもののお金を払い、唐揚げ代を払うヤスを置いていく勢いで外へ飛び出した。