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OVAの聖騎士様~終わりから始まる英雄譚~  作者: 天野ハザマ
2章:蒼き海の凱歌

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魔境海域6

 変形する。異界の理をもって、ヴァルツオーネ号が変形する。

 OVA「蒼海のヴァルツオーネ」。地表の七割以上が海に沈んだ世界を舞台とした冒険アドベンチャー系OVAである。

 この蒼海のヴァルツオーネの最大の特徴は、明確な「人間の主人公」を定めていなかったことである。

 超高度な……オーパーツとも呼ぶべき人工知能を搭載したヴァルツオーネ号と蒼に染まった世界で生きざるを得なくなった人々との関係、そして世界の新たな支配者「海獣」との戦いなど盛りだくさんな要素があったのだが……まあ、一言で言って「売れなかった」のである。

 売れれば計画されたであろう2巻はプロット段階で終わり、1巻完結として「終わってしまった」物語、それが蒼海のヴァルツオーネだ。

 つまりアルフレッドが「蒼海のヴァルツオーネ」の主人公を呼び出せなかったのは……ヴァルツオーネ号こそが「蒼海のヴァルツオーネ」における道具にして最大の力、そして主人公でもあるからだったのだ。


―変形プロセス完了。操縦、武装をアタックロイドモードに移行します―


 白と蒼を基調とした流線形のボディ。鎧騎士と呼ぶには非人間的で、しかし確実に人型であると理解できるヴァルツオーネはその中にアルフレッド達を載せたまま、水上を器用に二本足で走る。

 スケーターをも連想させるその動きは触手を華麗に避け、縦横無尽に水上を走り回る。


―対象の探査完了。当船の海獣リストに該当するものはありません。全長はおおよそですが200Mオーバー。多触手を持つ正体不明の生物です―


「おおよそとか不明とか、何も分かってないってことじゃないの!」

―肯定します、ミス・ヒルダ。原理は不明ですが、こちらの探査装置が弾かれています。同時に多量の魔力も感知。この「異界」の主の可能性を提唱します―

「……なるほど。お前の武器でそれを叩けるということか?」

―肯定し否定します、ミスター・アルフレッド。当船の武装では恐らく滅しきれません。潜航モードでの戦闘を推奨しますが、人員の安全を完全には保証しかねます―


 なるほど、外では今もヴァルツオーネ号が触手を避け続けている。

 潜航……海に潜り本体に近づくことで、その攻撃が更に激しくなることを考えれば、ヴァルツオーネ号の言っている事はもっともだった。

 何故なら、人間は海中に放り出されて生きていられるほど強くはない。


「問題はありません。近づけるところまでヴァルツオーネ号で近づきましょう」


 だからこそ、セレナのその提案に全員が驚いたような顔をする。


「ちょっと、どういうこと?」

「そのままの意味です。限界までヴァルツオーネ号で近づき、敵の鼻先で魔星機を呼び出します」


 陽子の疑問にセレナが答えると、考え込むようにしていたアルフレッドがなるほど、と呟く。


「……相手の油断を誘う、ということか?」

「その通りです。魔星機はヴァルツオーネ号に乗ったままでも乗り込めます。同乗者に関しても登場の瞬間に抱きかかえるなどしていれば問題ありません」


 そう言うと、セレナはアルフレッドの腰の剣を見る。


「……ですが、その為には鍵が必要です。アルフレッド様、星斬剣は何処に?」


 確かにアルフレッドの腰の剣は星斬剣ではない。それは「黄昏の聖騎士伝」におけるアルフレッドの剣、名もなき剣。

 だからこそ、アルフレッドは操作盤から手を離すと腰の剣を抜き放つ。


伝説解放(オープン)。『魔星伝レヴィウス』・星斬剣」


 続けてアルフレッドの剣が、一振りの巨大剣に変化する。

 黄金色にも似た宝玉の嵌った巨大剣はそれ自体が凄まじい魔力を放ち、周囲の景色を歪ませる。


―……!? 船内にて異常なエネルギーを感知! ミスター・アルフレッド! その危険物が「星斬剣」ですか!?―

「そうだ」


 アルフレッドの言葉に、鳴り響き始めていたアラートが停止する。


―星斬剣のエネルギーパターンを登録しました。続けて警告です。敵触手、こちらの対空ベルンカノンに適応しつつあります。これ以上の水上戦闘には難があります。潜航しますか?―


「……セレナ。問題ないな?」

「ええ。それは確かに星斬剣です……」

―ヴァルツオーネ号、潜航モードに移行します。乗員保護の為外部扉をロック、密閉します。3、2、1……潜航開始―


 するりと、何の抵抗もなくヴァルツオーネ号はその身体を海の中に潜り込ませる。

 海の上を進むよりは静かに、しかしまるで空を駆けるかのように自由にヴァルツオーネ号は海中を進む。

 不可思議な月の下、暗い海。多数の触手がごぼりごぼりと音をたてながらヴァルツオーネ号へと襲い掛かってくる。

 水上で見えていたよりも長く、大きく。その先にいる「何か」の巨大さを示すかのようなその触手を、ヴァルツオーネ号の放つ光が照らし出す。


「ひ、ひえええ……ほんとに大丈夫なのアレ!?」

―対海獣用ハウゼン式魚雷連続射出開始。突入時に誘導式エネルギー爆雷を散布します。衝撃に備えてください―


 ヴァルツオーネ号から無数の筒のようなものが放たれ、水中で爆音と衝撃を響かせる。

 続けてばら撒かれた平べったい円盤状の何かが周囲の触手で向かっていき、更なる爆音を響かせる中……ヴァルツオーネ号は更に奥へ、更に深く……触手の「本体」がいるであろう場所へと向かっていく。

次回更新は26日の予定です。

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