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OVAの聖騎士様~終わりから始まる英雄譚~  作者: 天野ハザマ
2章:蒼き海の凱歌

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帰港

 かくして、サンバカーズを従えバッカス号を手に入れたアルフレッド達はバッサーレの港へと帰還した。

 久々の大型船の到着にバッサーレの港に居た住人から歓声があがったが……まあ、商船でないと知れば落胆に変わるだろう。

 ちなみにサンバカーズがやけにイイ顔をしているのは、誰もが無視している。


「よ……っと」


 まずは何を聞かれてもいいように口の回るヒルダが縄梯子でバッカス号から降りれば、待っていたというように漁業ギルドのギルドマスターが走ってくる。


「よく帰ってきた! だが、この船は……!? 海賊は倒したのか!?」

「あー、その海賊だけどね。そんなのは影も形も見えなかったわ。つーか、ちょっとめんどくさい話になってきたわよ?」

「何……?」


 訝しげな顔をする漁業ギルド長に内緒話するように耳に口を寄せ、ヒルダは予め決めていた台詞を囁く。


「海賊船みたいな武装船をブッ壊して積むようなクソ化物が海にいる可能性があるわ。船の墓場が「作られて」た。犯人がいるとしたら、それでしょうね」

「なっ……」


 顔を真っ青にした漁業ギルドマスターは周囲で船を見上げている野次馬たちに聞かれていないか見回した後に、咳払いをする。


「あー……とにかく、「調査」からよく戻ってきてくれた。詳しい話はギルドで聞こう」

「そうしてくれると嬉しいわね」

「で、あの船は……商船か?」

「どっかの金持ちの道楽よ、今回の件に協力してくれることになったの。まあ、商船ではないわね」


 肩をすくめるヒルダに漁業ギルドマスターは目に見えて残念そうな顔になるが、すぐに「まあ、うん。それはよかった」などとフォローする。

 周りで聞いていた野次馬も一様に残念そうな顔になるが、それでも船が来たこと自体は嬉しいのだろう……何処かに行く様子はなかった。

 それを尻目にヒルダが手を振って合図すれば、ノエルやセレナが縄梯子を降り始め……アルフレッドが船から跳ぶようにして降りてくる。

 ズドン、という凄まじい音を立てて落下してくるアルフレッドに周囲の視線が集まるが、本人は気にした様子もない。


「話は終わったか、ヒルダ」

「むしろこれからよ。つーか、ちゃんと梯子で降りてきなさいよ」

「そうしてもいいんだが、俺は見ての通り重装備だからな」

「ああ……まあ、ね」


 確かにフル装備のアルフレッドでは縄梯子も頼りないが……まあ、アルフレッドの強さを宣伝する材料としては丁度いいかもしれないとヒルダは思考を切り替える。


「ま、そんなわけで後でそっちに行くけど。もし今回の件を何らかの形で継続する気があるなら長丁場になりそうよ?」

「……場合によっては仕方ないだろうな」

「そ。なら宿紹介してよ」


 バッカス号に泊ってもいいのだが、どうせなら陸の上で寝たい。

 そんなヒルダの考えが漁業ギルドマスターに伝わったかどうかは分からないが……漁業ギルドマスターは「そうだな……」と考える様子を見せた後に指をパチンと鳴らす。


「よし、それなら綿毛の羊亭に行くといい。食堂と宿を兼業してるから飯も美味いぞ」

「なら、そこにするわ。場所は?」

「セレナ殿が定宿にしてるから分かるはずだ」

「あー……そう」


 それならセレナの紹介でも良かったんじゃないかと思わないでもないが、ヒルダは頷くだけに留める。


「お待たせしました」

「縄梯子って怖いねえ……」

 

 そんな事を言いながら走ってきた二人……のうちのセレナにヒルダが視線を向けると、そのセレナはすでにアルフレッドの隣に陣取っている。


「どういうお話になったのですか?」

「後で漁業ギルドに行くことになったようだな。それと、綿毛の羊亭という場所に宿を取ろうという話に……」

「まあ、それなら私の泊まっている宿ですね。ご案内できます」

「そうか」

「あー、ともかく!」


 ヒルダは咳ばらいをすると、アルフレッドの腕を引っ張る。


「そういう話になったから、まずは宿を取りに行くわよ!」

「そうだな」

「宿取ったら行くからね! 留守とかにするんじゃないわよ!」


 そうヒルダが言えば、漁業ギルドマスターがおざなりに頷く。

 

「で、宿は何処にあるのよ」

「此処からも見えますよ。坂の上すぐの場所です」


 言われてヒルダは坂の上の方を眺めてみるが、どれがそれであるのかはサッパリ分からない。


「ふーん? まあ、いいわ。行きましょ」

「そうだな」


 先導するセレナの後を追うようにアルフレッド達も歩き出す。

 ふと振り返った先ではバッカス号の甲板でサンバカーズがカッコつけているのが見えるが「余計な事はするな」と言い含めておいたのでとりあえずは大丈夫だろう。

 何よりバッカス号の操縦に必要な船長帽は今、ヒルダが持っているのだ。バッカス号で何かをやらかすような最悪の事態だけは起こりえない。

 

「ああ、此処ですよ」


 ヒルダが考え込んでいる間にも坂を上り切り、セレナは一つの建物を指し示す。

 其処には確かに「綿毛の羊亭」と書かれた古臭い看板がかかっているが……もう夕方も近いというのに、客の姿はない。


「いらっしゃい」


 中に入れば、やる気の無さそうな店主の声が聞こえてくるが……アルフレッドの姿を見た店主は驚いたように椅子から立ち上がる。


「その恰好……騎士様かい? てことは、まさか領主様が」

「悪いが、俺は単なる旅人だ。ただ、今回の件に関して請け負ってはいる」


 アルフレッドの答えに店主は喜ぶべきか落胆すべきか微妙な顔をする。

 

「あ、ああ。そうかい。てことは漁業ギルドの紹介かい?」

「そういうことだ。とりあえず一晩の宿を頼みたい」

「三人だから、よろしく。一部屋でいいわよ」


 横から出てきたヒルダのそんな台詞に店主は更に微妙な顔をするが……口に出さない分、プロであるとも言えるだろう。

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