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OVAの聖騎士様~終わりから始まる英雄譚~  作者: 天野ハザマ
1章:再臨の聖騎士

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アルテーロ解決編:罠士ギルド

「じゃ、私はこれからちょっと罠士ギルド行ってくるけど」

「俺も行こう」


 ヒルダが馬を別方向へ向けると、アルフレッドも即座にその方向へとついてこようとする。

 そんなアルフレッドにヒルダは来るなと言おうとして……しかし、すぐに諦める。


「まあ、ついてくるなって言っても……無駄よね」

「当然だ。あんな事があったんだぞ?」

「うん、まあ……もう問題ないけど。いいわ、なら来なさいよ」


 この歓声の中、どうせ聞こえはしないだろうが「暗殺」とハッキリ言わなかったのは正解だ。

 何しろ、それを言ってしまうと引き時が無くなってしまう。

 戦闘要員はほとんど死んでしまっただろうが、情報収集要員が健在だろう状況で余計な事は言わないでほしいというのがヒルダの正直な心境だ。

 アルテーロの端に行けば喧騒からも離れ、この付近に普段いる人間もほとんどが大通りに出てお祭り騒ぎの準備に移行し始めている。

 人通りのない街外れで馬を進めながら、ヒルダは「えーとね」と切り出す。


「予め言っとくとね、もう罠士ギルドはあたし達の暗殺依頼を失敗と見做してると思う」

「根拠は何だ?」

「向こうから接触してきたもの」


 ヒルダのあっさりとした返答にアルフレッドは「やはり」と思う。

 それもあってスレイプニルにヒルダを送らせたのだが……正解であったようだ。


「でね。どうにも依頼人が罠士ギルドを裏切ったとか、そういう話らしいのよ」


 確かにドーマは罠士ギルドからの刺客をアンデッド化し生き残りの者達をも殺した。

 しかし、それを知っているということは……あの状況を検分したか、聞いていた者が居たということだろう。


「だから降りるって言ってたし……そもそも依頼人ってアンタが倒したんでしょ?」

「ああ」

「なら猶更よ。あとは始末をつけるだけ」


 言っている間に罠士ギルドの建物の前に到着し、ヒルダはヒラリと馬を下りて近くに繋ぐ。

 アルフレッドもそれに倣い……しかしスレイプニルは繋がずにその場に放置する。これは当然、何かあればスレイプニルを暴れさせる為であり「そうする」という示威行動でもある。

 当然ヒルダもそれを察するが、チラリと見るに留める。


「じゃ、行くわよアルフレッド」

「ああ」


 ヒルダを庇い前に出ようとしたアルフレッドを抑え。ヒルダは軽くウインクする。


「いいから、任せといて」


 自信満々なその姿に、アルフレッドは黙って頷き……しかし、いつでも庇えるようにすぐに後ろに立つ。

 そんなアルフレッドを従えるかのようにヒルダは罠士ギルドの中へと入り、その途端にヒルダへと視線が集中する。


「……ヒルダか」

「そうよ、マスター。景気悪そうな面ね?」


 カウンターに座っていたギルドマスターにヒルダが声をかけると、ギルドマスターはフンと鼻を鳴らす。


「賭けどころを失敗したせいで一気にギルド員が減っちまったからな」

「ご愁傷様。でも傷心のところ悪いんだけど、貰うもん貰いに来たのよね。そっちの臨時収入にならなくて本当に悪いとは思うけど」

「ハッ、構いやしねえよ。元々お前のもんだし、臨時収入ならたっぷり入ってる」


 言うとギルドマスターは何かがたっぷり詰まった革袋を放り、ヒルダはそれを危なげなくキャッチする。


「それは……?」

「預けてたあたしの財産」


 あっさりと言い放つヒルダに、アルフレッドは今のやりとりの意味を理解する。

 つまりヒルダが死ねばそれが臨時収入とやらになったということであり、「たっぷり入った臨時収入」とやらは……つまり、襲ってきた者達の預けていた財産ということなのだろう。


「その騎士様と行くのか」

「そのつもりよ。何処に行くつもりかは知らないけどね」


 預けていた財産を引き出すというのは、他の町へ拠点を移すという意思表示だ。

 そんなヒルダにギルドマスターは頷くと、一枚のカードを投げてくる。


「何これ。身分証じゃない」

「ああ。このアルテーロの罠士ギルドでの正式な証明書だ。世界中どの国に行っても通じる……そっちの騎士様のは、これだ」


 再度投げられた銀色のカードをヒルダが受け取って眺めると、そこには確かにアルフレッドの名前が刻まれている。しかも罠士ギルドではなく戦士ギルド発行だ。


「……偽造?」

「人聞き悪い事言うんじゃねえよ、本物だ。こっち来るだろうって事で預かってんだよ」

「ふーん?」


 その辺りの事情はヒルダには分からない。アルテーロ戦士ギルド登録の人間が今回の騒動を解決したということにしたいのか、それとも目の前のギルドマスターが向こうのギルドマスターに何か話をつけたのか。

 何はともあれ、あれば便利ということだけは間違いない。


「貰っておくわ」


 言いながらヒルダは険しい顔をしているアルフレッドの胸をトンと叩いて踵を返す。

 だが、押してもアルフレッドはビクとも動かない。


「……それだけか?」

「ん?」

「仲間を殺しにかかっておいて、それだけかと聞いている」

「お前だって殺したろう。こういうのは恨みっこなし、だ。清廉な騎士様にゃ分からんかもしれんがな」


 確かに、アルフレッドも襲ってきた者達を殺した。殺さなければ殺されるという状況ではあったが、それは確かだ。

 だが、そもそもそんな仕事を受けなければそうはならなかったのではないか。

 そう言いたげに睨むアルフレッドに、ギルドマスターは肩をすくめてみせる。


「俺達はこういう商売だ。昨日酒を酌み交わした仲間と、今日は殺し合う。これはお前が此処で俺をブッ殺したところで変わりゃしねえ」


 罠士ギルド、盗賊ギルド、暗殺者ギルド。呼び方は色々だが、そういう商売だ。たまたま真っ当に生きる者も居れば、「なんでもする」者も居る。そういうのが必要とされているから、国に認められたギルドとして罠士ギルドは存在しているのだ。


「……それで正しいと思っているのか」

「正しいか間違ってるかじゃねえよ。誰が調整するのか、だ」

「アルフレッド……行きましょ」


 再度ぐいと押されて、アルフレッドは仕方なしに踵を返す。

 その背中に、ギルドマスターは含み笑いと共に声をかけてくる。


「太陽みたいな兄ちゃんだな。ヒルダが焼かれて落ちなきゃいいが」

「ならないわよ」


 呪いのようなその言葉に、ヒルダはそう返す。


「古今東西、太陽に焼かれて死んだ奴なんて神話にしか居ないもの」


 違ぇねえ。爆笑と共に返ってきたそんな声を背に、二人は罠士ギルドを後にした。

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