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OVAの聖騎士様~終わりから始まる英雄譚~  作者: 天野ハザマ
3章:竜殺譚は遥か遠く
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現れた「敵」

「ガ……ッ……超竜王様……な、ぜ……」


 自分を焦がす炎の中で、グラートはそう敬愛すべき主へと問いかける。

 しかし、超竜王からの答えはない。

 何故。何を間違えたのか。一体、何を。

 その答えが分からないままに、グラートは灰になる。


「ただの炎で俺のメギドブラスターより強ぇってのか……」


 その光景を見下ろしていたヴォードは僅かな恐怖と共にそう呟いて。

 ハッとしたようにヒルダ達へと叫ぶ。


「おい! 早く山を降りろ! この調子だと、そのチンケな結界ごと山が吹き飛ぶぞ!」

「アルフレッドは……!」

「生きてる! いいから山降りろ! 守り切れねえ!」


 ヒルダの手を、シェーラが引いて山を駆け降りるルートを走っていく。

 今の超竜王の攻撃が自分の許容量を超える事は明らか。

 たとえ全力で結界を展開しようと一撃で消し飛ぶ。

 故に……この場に居るだけで足手纏いになる。

 それが理解できていただけに、シェーラの行動に躊躇いはない。


「ちょっと、シェーラ!」

「いいから逃げますよ! 私達が此処にいるだけで、アルフレッドさんの足枷になるんです!

「……!」


 そう言われてしまえば、ヒルダとしても嫌だとは言えない。

 理解できている。理解できてしまっているからだ。


「くっ……絶対勝ちなさいよ……!」


 叫び、ヒルダは走る。そうやって、二人が走り去っていったその場所で。

 アルフレッドは、ゆっくりと起き上がった。

 身に纏っていた風霊鎧装はバラバラに砕けているが、アルフレッドに怪我はない。

 

「超竜王……」


 見上げる巨大な敵……超竜王の目には、意志の光はない。

 恐らくだが、アレは有り得ざるもの。

 幻想の中から生まれた者が生み出した、幻想の中の幻想。

 だが生き物としてこの世界に顕現したのであれば、当然その身体には意思が宿る。

 そして、それは……砂嵐の中から湧き出てこようとしているその巨体の。

 その瞳に宿りつつある理性と狂気の入り混じる色が示している。


「お、おお……そうだ。人界を制さねばならぬ。余は、その為に居るのだ」

「チッ……おいアルフレッド! 早く召喚元を壊せ!」

「ああ……!」


 そう、未だ超竜王の身体の大半は砂嵐の向こうにある。

 ならば、押し返す事も可能なはず。

 言われるまでもなくアルフレッドは走り、砂嵐の柱の立つ神殿へと向かう。


 だが……砂嵐のようなノイズに包まれた神殿は、アルフレッドの侵入を許さない。

 星斬剣を振るい砂嵐を斬ろうとするも、なんと星斬剣自体が弾かれてしまう。

 ティタンシステムによって人では有り得ざる力を発揮しているはずのアルフレッドによって振るわれる星斬剣が弾かれる。

 それは、マトモな方法ではこの砂嵐を突破できない事を示していた。

 そして同時に……超竜王を召喚しようとしている原因を壊すことが不可能ということでもあった。


「ならば……押し返す!」


 そう叫ぶと、アルフレッドは星斬剣を掲げる。


「天魔星の輝きに導かれよ」


 アルフレッドの星斬剣が淡く輝き……そして消える。

 それは、黄金の巨神の召喚サイン。


「レヴィウス!」


 超次元空間を通り、アルフォリアに黄金の巨神が顕現する。

 空間を裂いて、超技術の巨人が現れる。

 そう、それは黄金の鎧騎士。

 荘厳なデザインの全身鎧に似た装甲を纏い、フルフェイスの兜のような頭部の奥からは、やはり二つの赤い瞳が輝いている。

 だが、特筆すべきはその手に持つ巨大な剣。

 先程までアルフレッドが持っていた星斬剣に似た剣が、その手の中にはある。

 ……いや、この剣こそが「真の」星斬剣なのだ。

 星を断ち、銀河をも砕く破壊の象徴。味方に向けられることなどないように、最も誠実な者に託されたはずの超兵器。

 すなわち……天魔星レヴィウスである。


「おおおおおお!」


 レヴィウスの星斬剣が振るわれ、超竜王の身体を……切り裂かない。

 ギャリンッと激しい音を立てた星斬剣は超竜王の身体を上滑りし、傷一つ付ける事はなかった。


「なに……っ」


 星をも斬り裂く真価を発揮した星斬剣。それをアッサリと弾いた超竜王に、アルフレッドは驚愕の声をあげる。

 だが、それは……アルフレッドにもヴォードにも分からぬ事だが、当然の事であった。

 超竜王は「超竜戦記ヴォード」において「竜の中の竜。無敵と謡われる鱗の鎧に覆われ、あらゆる攻撃を通さぬその鉄壁の防御と一度放たれれば炎の耐性ある者をも焼き尽くす業火によって、瞬く間に竜界を統一した」と語られていた。

 故に……顕現した超竜王もまた、その設定を現実としつつあったのだ。


「愚かな……愚かな巨人よ、余に逆らうか……」


 超竜王がその顎を開き、慌てたようにレヴィウスの拳がその顎を下から殴り閉じさせる。


「そのまま抑えてろ! 喰らえ……全力のおおお……メギドッ! ブラスタアアアアアアアア!!」


 叫ぶヴォードが巨大な熱線を放ち、アルフレッドが素早くレヴィウスを操作し飛び退いた直後に超竜王の身体へと突き刺さる。


「ぐ、おおおおおおおおお!?」


 レヴィウスの星斬剣を弾いたはずの超竜王は、その熱線に明らかな痛みの声をあげる。

 威力で言えば、星斬剣よりも下がるはずのヴォードのメギドブラスター。

 ……それは、一つの「事実」をも指し示していた。


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