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第2話 校門前にいる女性

私、近藤秋実は見てしまいました

ある日の午後、授業中にふと窓の外を見た時に、いつもと違う違和感を受けたのです

というのも、私の教室から窓の外を見た時に見える風景は校門が校舎で半分影になっているのですが、その校門にチラチラと見えるのです

黒い羽根を背中から生やした女性が、人を待っている風で佇んでいるのです

しばらく見ていると、遠くから見ているので、実際に見ている所は分からないのですが、私の方を見た気がしたのです

その時、前の席の坂井君が舌打ちをしてこう言っていたのです

「あいつ、こんな所に来てやがる…」

私も気になっているので、ひそひそ声で聞いてみました

「あの…坂井君…校門に居る女性は坂井君のお知り合いですか?」

坂井君は驚き、そして困惑した表情で少しの間、私の顔を見ました

「えっと…」

その時に、話したこともない私が話しかけた事にビックリしているのかもと思い直しました

「あの、私、近藤です。」

坂井君は、ふと我に返ったように表情をゆっくり元の無表情に戻し、返事をしました

「ああ、近藤さん…」

やっぱり覚えてなかったみたいです

「さっき、また来ているって…」

「聞いていたのか…まあ少しだけ…知り合いかな」

ちょっと言葉に困っているような、そんな口調

授業が終わると、普段通り坂井君は席を立ちました

そしてしばらくすると、窓の外のグラウンドに現れ、校門前の女性の所へ歩いて行きました

坂井君とその女性が話している所を眺めるようにボーっと見ていると、坂井君がこちらを見て、また女性の方へ向き直り、今度は女性がこちらを見ました

「秋実~誰見てるの~?イケメンでも見つけた~?」

窓の外を見ていた私の反対側、つまり教室側から声をかけてきたのは斎藤美奈

私の中学校からの友達、最近は彼氏を作ることに夢中みたいで

街を歩いていても『ナンパされないかな?』と常にワクワクしているような女の子です

美奈と話している間に坂井君と女性は離れて、坂井君は校舎の方へ戻ってきました

しばらくすると校門の女性はいつの間にか居なくなっていました

そして教室に戻ってきた坂井君が私の机の前に来て

「ちょっと二人っきりで話せるかな」

と私の腕を掴んで聞いて来ました

(あ、私、今から告白されるのかな)

なんて思った瞬間、隣にいた美奈が

「ええ!どうぞどうぞ!どこにでも連れて行ってあげて!なんなら保健室にでも」

席を立った私を背中から坂井君の方へ押し付けながら冗談を言う美奈

「ちょっと美奈、何を言っているのよ」

少し赤面する私

「じゃあ…いいかな?」

坂井君は私の返事を聞かず、ぐいぐいと私の腕を引っ張りながら教室を出て行きました

でも、私が痛くない程度の強さや速さで歩いてくれるので苦ではありません

(どうしよう…なんて答えよう…坂井君とあんまり話した事もないのに…)

なんて告白される前提で考えながら坂井君の後に着いていった先は教室を出て、階段を下り1Fの廊下を歩き、角を曲がった突き当りの保健室でした

ガラガラッ

保健室の扉を勢い良く開く坂井君

「すいませーん」

私は思わず保健室の先生に声をかけたものの、先生は留守でした

保健室の中に入り扉を閉めると坂井君は開いていたもう片方の手で私の反対側の肩を持ちました

(えっ…このまま…キス…しちゃうの…?)

そんな甘い考えを坂井君は打ち砕いてくれました


「さっきの校門前にいた女。いつから見えていた?」

刺激が強すぎて何を言っているのか理解できませんでした

「はい?」

「だから!あの校門前にいた女。何日前から見えていた?」

真剣な表情、ふざけている訳ではなさそうです

「えっと、今日から…かな?」

答えた私の言葉が聞こえないのか返事をしても坂井君は反応しませんでした

でもそれも3秒くらい

「はぁ…そっか。良かった」

坂井君は言葉とは裏腹にガックリと項垂れて、でも声は喜んでいるような感じでした

それから今度は5秒くらい停止

そうしてから、自分が女の子に迫っているように見える構図に気付き恥ずかしがって両手とも離してぴょんと可愛く飛びのきました

「あっ、いつまでもごめん。てか乱暴に連れて来てごめん」

坂井君は頭をポリポリと掻きながら謝ってくれました

「あの人俺のいとこでさ、たまに遊びにくるんだ。学校には来るなって言ってあるんだけど…」

坂井君は恥ずかしそうな顔で身の上話をしてくれました

「そうなんだ。いとこのお姉さんお洋服が凄かったね。羽根が生えてる様に見えたよ」

何の気なしに世間話を続けようと答えると、また坂井君がぎょっとした顔でこちらを見ました

そしてまた停止

3秒程して今度は私から声をかけました

「えっと…ごめんね。私…なんか失礼な…」

言葉の途中で視界が暗くなりました

そしてそのまま無意識に膝が崩れる感覚の最中誰かが私の両肩を抱いて支えてくれた所で意識が途絶えました


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