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第17話:色々と大やけど

 取り合えずベープも設置してあるから、大丈夫だろうと騎士団の人達を置いてコンビニへと向かった。

 ランスロット君が、何度も訴えるような目を向けてきたけど心を鬼にして……

 おっと、ついつい頬が緩む。


 ちなみにジェニファーさんからは、金貨を追加で10枚もらえた。

 まだ持ってるらしい。

 いや、全部寄越せよ!

 風呂代にすら足らんぞ!

 とは、言えなかった。


「風呂の魔道具だと……下手な貴族なら、金庫が空になるぞ!」


 とかって、エドガーさんが呟いていた。

 のを聞いていたはずなのに。

 まあ良い。

 今、俺は気分が良い。

 ようやく、これで佐藤さんと2人きりの生活が戻ってくる。

 待ち遠しかった。


 のは、俺だけだろうな。


 コンビニが近付いているのが見える。

 こうして見ると、かなり明るいな。

 あー、夜に光が見えた方に進んできたとかってエドガーさんたちも言ってたから、これのことだったんだろう。


 とはいえ魔道具の灯りはあるらしいが、こんな森の中じゃ珍しいとのこと。

 もしかしたら村か集落があるのではと、期待と不安を胸にゆっくりと距離を詰めてきてたらしい。

 昼間に移動してたから、時折全然違う方向に向かってて離れてしまってたとも言ってたな。


 取り合えず……外の照明は消しとこうか。

 うーん、駐車場がだいぶ汚れてる。

 森の中だから、仕方ないか。

 そして、蚊が飛んでる音が聞こえる。


 腰の殺虫剤に手をかけてゆっくりと近づく。

割と大きいかな?

……あっ、吹っ飛んだ。


 自動ドアの隙間にストローみたいなのが見えるから、佐藤さんか。

 

「あっ、店長さん! いま、でかい蚊が2匹も居たんですよ!」

「見てたよ! そして湯気出てるよ」

「やった!」


 最初に狩った1匹からだいぶ間が空いて、お腹周りを気にしてたからこれで少しは落ち着いてくれるかな?


「うーん、わき腹のあたりが気になる」

「ならないよ? 凄いモデルさんみたいになってるよ」

「そうですか? 自分じゃ、よく分からないかも」


 そのくらいで、ええんやで?

 佐藤さんまでこっち側に来なくても。

 俺だって細マッチョ目指してたのに、割とゴリマッチョ気味で頭抱えてるのに。

 佐藤さんまでゴリマッチョになったら……

 まあ、佐藤さんなら……

 でも、ムキムキ佐藤さんはいやだなぁ。


 っていうか、あっちの佐藤さんがわけもわからずマッチョになって、病みそうだからやめたげて。

 そういえば、あっちの佐藤さん……日常生活で困ってないと良いけど。

 たぶん、日用品とかも使用感が全然違うだろうし。


 こりゃ早めにあっちの俺に捕獲させて、事情を話さないとまずい気がしてきたぞ。

 そして少しオラ、ワクワクしてきたぞ!


「えっ、18人もですか?」

「ああ、ランスロット君も入れてね」

「そういえば、ランスロットさんは?」

「やっぱり、仲間と一緒が良いんだって」

「少し、寂しくなりますね」


 おっと、佐藤さん?

 やっぱり、イケメンの方が良かったのか?

 純粋に2人に減ったせいだよね?

 あれ?

 でも、割と1人でも平気な人だったよね?

 うん、とりあえず聞き流しておこう。

 レベルが上がっても、そっち方面のメンタルまでは鍛えられなかったらしい。


「ふーん、そんな楽しいことしてたんですか」

「いやいや、もう作業だから! 楽しくなんかなかったから」


 バーベキューをして、風呂を用意して、髪まで洗ってあげた話をしたら佐藤さんが不機嫌に。

 おっ?


「いいなあ、バーベキュー」

「そっちかい!」

「え?」


 バーベキューに妬いてただけか。

 焼肉だけに?

 やかましい!


「じゃあ、明日やる?」

「外でですか?」

「ベイプ炊いてたら大丈夫だって」

「2人でですか?」

「……そうなるよね」

「家でホットプレートで良くないですか?」

「そうだね!」


 あっ、なんかそっちの方が嬉しいかも。

 家族みたいで。

 家族……


 夫婦じゃなくて、親戚の叔父さんか、歳の離れた兄ポジっぽい。

 くっ、距離感が急接近しすぎて、逆に壁が出来たやつや。

 安心感を抱かれてしまった以上、そこは裏切れない。

 ということは、冒険も出来ない。

 これが憧れの、この距離感を壊してギクシャクしたくないってやつか!

 俺には親しい女友達なんて居なかったから、ギクシャクするのを怖がってなんてジレンマ学生時代ですらなかったのに。

 いや親しい女友達、結構いたよ?

 こっちも恋愛対象外、向こうからも恋愛対象外って丸わかりの感じの。

 鈍感とかじゃなくて、割とガチでそういった興味を持ってない友達。

 そして、俺はその友達の仲の良い女友達が好きだった。

 けどさ!

 結局、話しやすい友達とばかり話してたら、その子も勘違いするよね?

 お前ら、付き合っちゃえよヒューヒュー的なノリで煽ってきてさ。


「あっ、そういんじゃないから」


 って友達がガチの真顔で答えててさ……


「ゴメン」


 って、女の子からの本気の謝罪が入ってるの見てさ。


「俺が一番傷ついとるわ! 2人とも俺に謝れ!」


 って流れがさ……泣けてきた。


「とりあえず今後のことなんだけどさ」

「はい」

「焼肉しながら、話そうか」

「はい!」


 ちょっと、俺らしからぬ真剣な話し合いになりそうだったので、クッションを置くことに。

 俺エモン、肉と野菜よろしく!


***

「美味しい!」

「うん、本当に美味い!」

「良かった、買ってきた甲斐があったよ」


 そして3人で焼肉。

 俺エモンは、PCの画面越しだけどね。

 チャット焼肉で、参加だ。

 本音は邪魔だと言いたいが、約束してしまったからな。

 佐藤さん免疫を付けるための、練習だって。


 佐藤さんにも向こうの佐藤さんと接点を作るために、あっちの俺に頑張ってもらうしかない事情を話して協力してもらっている。


「割と愛想もよくて、人見知りなんてしなさそうなんですけどね」

「それがさ、制服着てレジに立ってると平気なんだけど。いざ、プライベートのエリアに引っ張ろうと思うと……」

「えっと」

「気に入ったお客様を食事に誘うとかさ、そういったのは全然」

「社員の勧誘ですよね?」

「うん、身内になってもらおうって意味で考えたら、どう声を掛けたら良いかさっぱり分からなくて」


 おおう、そっちの方でガチ相談が始まってしまった。

 俺は、ひたすら肉を焼いて。

 自分の皿、佐藤さんの皿と交互に入れている。

 野菜も焼け?

 はい、焼かせていただきます。


 肉ばかり焼いてたら、少し眉を寄せたのが分かった。

 野菜も食べたいんですよね。

 野菜も焼きます。

 そして、会話に入れないことで、俺に妬いてたり。

 やかましいわ!

 やかましいわ……

 あれ?

 この肉、塩かけ過ぎた?

 ちょっと、しょっぱい。


「そこからですね」

「うん、ちょっと頑張って作ってみるよ! そろそろ食事休憩終わるから戻るね。2人ともありがとう。俺から大事な話があるんだったよな」

「まあ」

「譲ってもらって悪かったな。頑張れよ!」


 おいいい!


 最後の一言が余計だよ!

 大事な話と頑張れよの組み合わせとか……


 ほらもう、佐藤さんがめっちゃ警戒してるじゃん!

 

「なんですか?」


 うわっ、ちょっと距離感が遠い!

 物理的にも少し離れたよ、この子!

 野郎の余計な一言のせいで、大やけどや!

 焼肉だけ……いや、しつこいな。


「あー、割と真剣にこっちでの生活を考えないとさ」

「……」


 睨まないで!

 僕と佐藤さんの将来設計的な話だけど、幸せ家族計画じゃないから!

 てそのまま言えばいいんだ。


「あー、家族設計の話なんだけどさ」

「はっ?」


 テンパリ過ぎたー!

 物騒!

 手に持ってる殺虫剤が物騒だから!

 第1回森居家異世界会議、開催前に大炎上!

 焼肉だ……略


 なんだかんだと一生懸命言葉を重ねて、どうにか誤解を解いてようやく会議のスタートラインに。


「いや、現状帰る手立てどころか、こっちの世界に対する情報も無いわけだし。こっちで、生計を立てていくにしても、いつまでも2人ってわけにはいかないでしょ」

「それはそうなんですけど、かといって現地の人がどんな人か分からないですし」

「そうなんだよ。ランスロット君や森であった人達じゃ参考にならなくて。きっと従者の方とかともっと話せたら、色々と分かったんだろうけど。常識人ぽかったし」


 そうなのだ。

 全員が全員エドガーさんや、ジェニファーさんのような人じゃなかった。

 主に補給部隊の方の中には、本当に真面目そうな普通の人もいたわけで。

 ただ、エドガーさんとランスロット君と、お嬢様4人組が俺を離さなかったわけで。


「その割には、女性の髪の毛を洗ったりと良い思いもしてきたみたいですね?」

「そのくだりで、女性陣が残念だって気付いてほしいよ」

「店長さんは、満足そうですが?」


 てか、やっぱりちょっと面白くなかったのかな?


「その顔、少し腹立ちますね」


 おっと、口元が緩んでしまったようだ。


「思い出して喜ぶとか……」

「そっちじゃない!」


 取り合えず、こっちの誤解も頑張って解いたらどっと疲れた。


「真面目な話、現地の人ともある程度ネットワークを繋いどかないと、今後困ることも出てくるし佐藤さんも辛いでしょ?」

「えっ?」

「いや、いついつ帰れるとかって分かってるならともかく、帰れるかも分からない状況で下手したら、こんなハゲて太ってるおっさんと2人でずっとって辛くない?」

「今は髪の毛もあって、いい身体してるじゃないですか。それに、自分も辛いはずなのに私をいっぱい元気づけてくれて。本当に、優しい()みたいに思ってますよ! あっ、私に兄はいないですけど、いたらこんな感じかなって」


 おお!

 慰めついでに、しっかりと予防線もはられてしまった。

 けど、いまはこの好意的な感想によしとしておこう。


「まあ、私もそろそろ現実みないとダメですよね。なるべく、考えないようにはしてたんですけど」

「ああ」

「だから、こういった話なんじゃないかなと思って、はぐらかそうとしてごめんなさい」


 ぶわっ。

 そうやったんか。

 てっきり、警戒心や嫉妬であんな態度になってたと思ってた。

 単純に、心の準備というか覚悟が出来てなかったのか。

 気遣ってるつもりで、肝心のところで気付けてない。

 本当に、俺って……

 佐藤さんが少しだけ前向きになったことで、割と建設的に話が出来た。 

 取り合えず外交担当俺。

 家事と自宅警備が佐藤さんで役割分担出来た。


 ……覚悟とはなんぞ。


感想ありがとうございます♪

これからも、よろしくお願いしますm(__)m

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