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第10話:エルダーストロードラゴン

「まずは着替えて貰わないとだけど……」

「はあ……」


 ランスロット君を見る。

 全身銀色の甲冑姿の、怪しさ満点の気弱な男の子。

 年齢は……


「きみいくつ?」

「このあいだ、16歳になったばかりです」

 

 ふむ……

 バイトに雇うには問題無い年齢か。

 といっても、こんな森の奥のお店に誰か来る訳無いんですけどね。


「取りあえずさ……もう一人このお店には居るんだけど、その子が戻ってきたらちょっと風呂に入って来て貰うから」

「子って事は、女の子ですか?」

「あっ? てめー、変な気起こしたら、店から追い出すからな? バイト同士の恋愛はご法度だからな?」

「ひっ……はい、分かりました」


 そんな怯えなくても。

 でもまあ、パッキンイケメン外人と、脱メタボなマッチョ薄毛おっさんなら佐藤さんもどう考えてもイケメンに行くわな。

 しっかりと、釘を刺して置かないと。

 下手したら、ランスロット君が主役で佐藤さんがヒロインの一大スペクタクル超大作を、目の前で見せつけられることに。

 しかも、俺の自宅でチョメチョメとか。


 くそっ!

 絶対に、許さんぞ!

 絶対に、許さんぞー!


「ど……どうしたんですか、目から血を流して」

「ああ……すまん、ちょっと魔力を使い過ぎたらしい」

「だ……大丈夫ですか?」


 それから、しばらくランスロット君に色々と話を聞く。


「このペン凄いですね……」

「ああ、でも価値としては銅貨10枚くらいかな?」

「ええ? いや、だって透明なよく分からない素材の筒に、漆黒の柔らかい握り手。小さいのに完璧で綺麗な円錐の金属を使ったペン先に、恐ろしく細い穴の開いた金属……大魔導士様の英知の結晶じゃないのですか?」

「あ……ああ、そうだった……ちなみに、ランスロット君ならいくら払う?」

「えーっと、私なんぞではとても手が出ません。それこそ大商人の人達なら、金貨10枚は払っても欲しがるんじゃ……いや、それ以上かも……」


 ただの、ジェットストームが100万円……


「ち……ちなみに、こっちのペンのインクは、後ろのゴムで擦ると消せるんだけど?」

「ま……魔道具ですか? こ……これは駄目です……禁術レベルの魔道ぐじゃないですか!」


 フリクションは禁術指定だった。


「だって……契約書を書き換えられるんですよね? そんなの闇ルートに流したら余裕で白金貨1枚は行きますよ! いや、そんなもんじゃない……値段なんて付けられないかも……」

「白金貨?」

「金貨100枚分の価値があります……まあ、この国で数千枚しか作られていないので、額面以上の価値があるので実際は金貨100枚での買い取りになるでしょうが」


 フリクション……1000万?

 いや、あくまでも貨幣価値だから。

 その、金貨の金の含有量や、白金貨の素材次第か。

 仮に、白金貨がプラチナだとすれば……

 金貨が10Kだとしても、ほぼ金貨の方が日本での価値は高そうだ。

 18K以上なら、言うまでもないし。

 

 ということは、ここで物を売るなら金貨までだな。


 しかし、契約書か……

 絵を描く時に炭で書いて、パンで消したりとかってのはしないのかな?

 この辺りの筆記用具の事情も、知っておいた方が良いか?


 というか……やっぱり、異世界だよなー。

 異世界か……

 今は昔に、一大旋風を巻き起こした異世界転移を、まさか今更体験するとは。

 転生じゃなかったことを、喜ぶべきか。

 

 まあ、それよりも目下のところ、自分自身の収入源の確保だな。

 ここが異世界なら適当な物を持って帰って、あっちの俺に渡せば多少は何かしらの収入は得られそうだけど。

 物によっては、大変な騒ぎになりそうだ。

 まずは、無難なところから。


「ランスロット君は金貨持ってる?」

「えっ? ははは、やだなあ……僕みたいな、下っ端の補給部隊の騎士が金貨なんて持ち歩ける訳無いじゃ無いですか」

「チッ!」

「えっ?」

「いや、なんでも無いよ」


 金貨持ってたら、あっちの俺に質屋に走らせたのに。

 まあ、金貨の価格が分からないけど、あまり大量に売りにだすのも色々と怪しまれそうだし。

 つっても、まあ金貨数枚でこっちに必要な物資は買えそうかな?


「この紙も嘘みたいですね。 こんな薄っぺらい紙どうやったら出来るのだか」

「普通に売ってるから」

「どこでですか!」

「あー……この店」

「まあ、そうでしょうね」

 

 こっちでは、普通に売って無いか。

 原価でいったら、銅貨1枚すらわるような紙。

 うん10円でA4コピー用紙1枚とか言われたらキレるわな。 

 

 しかし、こっちだとどれほどの値が付くのか。


 というか、微妙に文明度が分からない。

 ここがどこか分かって無いらしいけど、取りあえず彼の国を中心に周辺地理を絵にしてもらおうと思ったのに、ペンと紙の話題だけで全然話がすすまん。


 まあ、高田君の真反対に居るような真面目な子だという事は分かったけどね。


 ブーン……

 ガンガン……


「またか……」

「ひっ」


 そして、ドアに攻撃をかましてくる巨大な蚊…… 

 あれ?

 デカすぎじゃね?


「あっ……」


 ランスロット君の方に目をやると、この世の終わりみたいな顔してる。

 ニョーン。

 取りあえず頬っぺたを引っ張てみる。

 

 すぐに手を離す。

 ベタベタしてる。


 まあ、森の中をずっと歩いてきたんだ。

 仕方がないか。


「取り合ず、地図書いといて」

「えっ?」

「あのでっかい蚊に、殺虫剤かけてくるから」

「あれ……エルダーストロードラゴンなんですけど?」

「さっきのの、でかいばんだろ?」

「いや、でかいだけじゃなくて外皮が異常に硬くて、嘴もより鋭く毒まで持ってるんですけど?」

「あー、そうなんだ」


 取りあえず、ランスロット君の話半分で聞いて殺虫剤片手にでっかい蚊に近づく。

 少しだけ自動ドアに隙間をあけてから、プシュッと一噴き。


「グギャアアアアア!」

「おっ! しぶとい」


 一発で、全身から煙をあげながら吹き飛ばされていく。

 羽をボロボロにしながらも、こちらを威嚇してくる様はさすがなんたらストロードラゴンというだけのことはある。

 普通とは違うという事だろう。


 まあ、もう一回噴きかけたら死にそうだけどね。


「もういっちょ」


 プシュッという音が、手元と遠くの蚊から聞こえてくる?

 えっ?

 あっちからも?

 そして、胸に感じる違和感。

 取りあえず、蚊の方は完全に胴体が消し飛んでたから死んだと思うけど……

 嫌な予感……


「大魔導士様!」

「いてー! っていうか痒いい! っていうか、また煙!」

「痒い?」


 胸に蚊の針が刺さってた。

 というか、口飛ばすとか反則だろ!

 毛虫か!

 さらに、身体から湯気がまた立ちのぼっている。

 お願いだから、痩せマッチョに近づけますように。

 これ以上、マッチョ要素いらないから。


 取りあえず、この痒みをなんとかしないと。

 掻きむしろうにも、針が生えて邪魔だし。

 

 たしかウナかムヒが……あったあった。

 カウンターの裏からかゆみ止めを持って来る。

 そして、自分の胸元を再度しっかりと確認する。

 シャツに血が滲んでいる。 


「うわあ……これ、駄目だ」

「大丈夫ですか? すぐに助け……駄目だ……この森を抜ける自信も、戻って来る自信もない」


 いや、ランスロット君が駄目なのは知ってるから。

 俺が言いたいのは、制服に開いた穴の事だし。

 シャツのボタンを開けて、脱ぐと針も一緒に取れる。

 ちょっとだけ、胸から血が出てる。

 割と、口もでかいもんね。

 でも、傷は浅かったみたいで安心。


 取りあえず、傷口にムヒとかまじ拷問だけど痒いし。

 あー、先に消毒かな?

 染みる……

 それからムヒ……

 染みる……

 泣きそう。

 まあ、良いや。


 あれっ?


 胸に塗ったムヒが光ったかと思うと、一瞬で痒みが収まる。

 すげーな池田模範○。

 近頃、蚊とかって殆どみなくなったから、使用期限も怪しかったけどちゃんと効果あったわ。

 最近のかゆみ止めって、ガチの即効性だったのか。

 取りあえず、痒みは収まったから。


 あとは、絆創膏を貼ってと。


 少し怪我をしたから取りあえず、絆創膏を貼る。

 すぐに感じる違和感。

 なんか、ムズムズする。

 また、痒みがぶり返してきたのか?

 一度貼った絆創膏を剥がすと、粘着力が著しく落ちるからあまりやりたくないけど。

 ……

 ……

 ……

 ペラッ。

 チラッ。


「うそ……だろ?」


 絆創膏をめくると、もう傷が塞がってた。

 すげーなリバテー○製薬。


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