表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

出会い

あれは、小学校二年の夏だった。

突然、はる兄が家来たと思ったら、そのまま出掛ける事になった。

一体何処に行くのか、わからないまま着いて行く。

誰かと待ち合わせをしてるみたいで、慌ててるはる兄。

そに道中で。

「真由と同じ歳の女の子と、一緒に遊んであげて欲しい」

とはる兄言われた。

どうやったら、私と同じ歳の女の子とはる兄が知り合いになるんだろう?

と疑問には感じたが、それは聞かないでおいた。


待ち合わせ場所に着いたのか、はる兄が辺りをキョロキョロしてる。

「オーイ、雅斗。悪い、遅くなった」

目的の人物を見つけたのか、大きな声でそう叫ぶはる兄。

ちょっと、恥ずかしいじゃない。

私は、隣に居るはる兄を睨んだ。

「あ、遥。その娘が、真由ちゃん」

はる兄が、声をかけた人が声をかけてきた。

「あぁ。真由、挨拶は?」

はる兄が、急かしてきた。

「芹沢真由です。よろしくお願いします」

そう言って、ペコリと頭を下げた。

「えっと、鞠山亜耶です。こちらこそよろしくお願いしますね」

って、雅斗さんの横に居た女の子が花が綻ぶような笑顔で頭を下げた。

本当に同い年なの?

もう少し上のお姉さんに見える。

それに、名字の鞠山って、あの財閥に関係してるのかなぁ?

私が、疑問を持ってはる兄を見上げると、私の疑問を感じたのか、ゆっくりと首を縦に振り、口許に指を一本立てて秘密だと訴えてる。

やっぱり…。

だけど、何処かお嬢様らしく見えないのは、何故だろう?

そう考えていれば。

「遥。本当に良いのか?」

雅斗さんが、はる兄に聞いている。

亜耶ちゃんが、そんな二人のやり取りを不安そうに見ている。

「うん、良いよ。雅斗は、デートに行ってこいよ。時間、迫ってるんだろ?」

ニコニコしながら言うはる兄。

こんな顔見た事無いよ。

「ありがとう。亜耶、遥の言う事ちゃんと聞けよ」

雅斗さんが、亜耶ちゃんの目線まで屈み、頭に手をやって言う。

「うん、わかってるよ。お兄ちゃん、早く行かないと由華さんに怒られちゃうよ」

って、子供扱いされたくないのか、少し口を尖らせて言う亜耶ちゃん。

何、この子。何で、こんなに可愛く出来るの?

はる兄を見れば、目尻を下げて見てるし…。

「あぁ…。じゃあ、遥、亜耶の事頼むな。時間は守れよ」

雅斗さんは、はる兄の返事も聞かずに走って行ってしまった。



「さてと。二人共、何処か行きたい所はあるか?」

はる兄が、屈んで聞いてきた。

あれ、何時もと対応が違うじゃん。

これ、亜耶ちゃんが居るからだよね。

私だけだと、屈んで目線を合わせるような事しないもん。

「あ…あの…。私、遊園地に…行ってみたい…です」

亜耶ちゃんが、恥ずかしそうに俯きながら、そう言葉にした。

この子、顔に直ぐ出るんだな。

今も、顔を真っ赤にしてるし…。

はる兄もそんな亜耶ちゃんを見て、赤くしてる。

えっと、もしかしてだけど…はる兄、亜耶ちゃんの事…。

ロリ…否、もう少し様子を見た方がいいか。

「亜耶が行きたいのなら、遊園地にしようか。真由は、それで良い?」

私に話しを振るはる兄。

「うん、いいよ」

って言うか、たぶんはる兄の中では、もう決定してる事だろうね。

「真由ちゃん。本当に良いの?」

亜耶ちゃんが、私を見て言う。

「うん。今、私が行きたいって思ったところ、無かったから。亜耶ちゃんが行きたいなら、それで良いよ」

って、返したら、パッと花が咲いたかの様に満面な笑みを浮かべて。

「ありがとう、真由ちゃん」

お礼を言われた。

その笑顔にこっちが、赤面しちゃったじゃない。

チラリとはる兄を見れば、顔を真っ赤にさせて、口許を片手で覆い隠してるし…。

これで、確信できたよ。

はる兄が、亜耶ちゃんの事本気で好きなんだって…。だから、一緒に出掛ける口実に私を利用(言葉悪いかも)したんだ。

立派なロリコンだけどね。

私たちとはる兄の歳の差、十違うもの。十分ロリだよね。

「そうと決まれば、行くぞ」

はる兄が立ち上がり、私たちの背中を押した。


遊園地に行くには、公共施設を使わないと行けない。

その分、警戒をしないといけないのだが…。

何にかって?

人拐いやら、人拐いやら、人拐いやら…。

何処から狙われてくるかわからないから、余計に警戒して仕舞う。

はる兄一人に負担をかけさせるわけにいかないから、ね。

「どうした、真由?そんなに警戒心剥き出しにして?」

はる兄が、不思議そうな顔をして言う。

何で、そんなに暢気で居られるの?

逆に私の方が、不思議だった。

亜耶ちゃんには、気付かれてないみたいだけど。

「何かあったら、困るでしょ?」

私の言葉に。

「あぁ。大丈夫だよ。何も起きないから」

って、クスリと笑うはる兄。

頭に?マークが沢山浮かぶ。

「この車輌には、SPが乗ってるからね」

小声で教えてくれた。

はい?SPですと…。

私は、頭をキョロキョロさせた。

「真由ちゃん?どうかした?」

亜耶ちゃんが、小首を傾げて言う。

「何でもないよ。それより、なんで遊園地に行きたいの?」

と問いかけたら。

「笑わない?」

恥ずかしそうにして、聞いてきたから、ゆっくりと頷いた。

「あの…。今まで、行った事が…無くて…。学校に友達の話を聞いて、行ってみたいって思ってたの…」

顔を赤らめて言う、亜耶ちゃん。

「えっ!今まで行った事無いの?」

思わず、声が大きくなってしまった。

それに反応して、更に顔を赤くして頷いた亜耶ちゃん。

「じゃあ、今日は一杯遊ぼう」

私が笑ってそう言えば、亜耶ちゃんも笑顔を浮かべて。

「うん!!」

って、元気に頷く亜耶ちゃんが、可愛くてしかたがない。

そんな亜耶ちゃんをギュウウって、抱き締めるとオロオロしだした。

「こら、真由。亜耶が、困ってるだろうが」

すかさずはる兄が、私から亜耶ちゃんを引き離す。

「……ありがとう」

亜耶ちゃんの小さな声。

これ、はる兄に向けての言葉だ。

「…ん、良いよ。それより、外見てごらん。もうじき見えてくるよ」

はる兄に言われて、外を見れば、観覧車、ジェットコースターのレールが見えてきた。

亜耶ちゃんを見れば、目をキラキラさせて見いっている。

「亜耶、真由。二人は手を繋いで歩けよ。迷子になったら、大変だからな」

はる兄が、電車を降りる前に言う。

「はーい。亜耶ちゃん」

素直に返事をして、亜耶ちゃんに手を差し出せば、その上に重ねてくれた。

亜耶ちゃんの手、思ってたより小さい。

そんな事を思いながら、電車を降りた。


遊園地の入り口ゲートに着くと、亜耶ちゃんが。

「すっごーい!!」

って、口を大きく開けて、見上げていた。

ポカンとした顔をする亜耶ちゃん。

そんな姿をクスクス笑っていたら、恥ずかしそうに私の方を向いて。

「真由ちゃん。そんなに笑わなくても…」

頬を膨らませて言う亜耶ちゃん。

「二人共、ここで待ってて」

はる兄が、逃げるようにチケット売り場に行く。

はる兄、耳まで赤くなってる。

そんな姿を見ていたら。

「ねぇ、真由ちゃん。遥さんとは、どういう関係なの?」

興味本位なのか、それとも違う意味で私に対して警戒する為に聞いてきたのかは、よくわからないけど横を向けば、少しだけ顔を強わらせている亜耶ちゃん。

はる兄からは、何も聞いてないのかなと思った。

「はる兄とは、いとこだよ。うちの父親とはる兄の母親が、姉弟なの。で、私は一人っ子だから、よくはる兄に遊びに連れてってもらってるの」

私の説明に、ちょっとだけ、本の一瞬だったけど、ホッとした顔を見せた亜耶ちゃん。

えっ…、もしかして、亜耶ちゃんもはる兄の事を…。

まさか…ねぇ。

小学生が、高校生をなんて…。

あり得ない…事もないのか…な。

「お待たせ。中に入るぞ」

はる兄が、笑みを浮かべて言う。

入り口ゲートを潜り中に入れば、別世界のよう。

亜耶ちゃんのテンションがマックスになってた。

「何から、乗るんだ?」

はる兄が、声を掛けてきた。

亜耶ちゃんが戸惑っていた。

初めて来たんだから、当然だと思う。

「はる兄。私、ジェットコースターに乗りたい」

助け船になるかが、わからないけどそう告げると。

「お前、まだ身長足りてないだろうが…。他のにしろ」

って、はる兄が、私を諌める。

たぶん、亜耶ちゃんの事を心配したんだろう。

「じゃあ、コーヒーカップ」

次の提案をしたら。

「よし、それにしよう」

と言って、歩き出したはる兄に遅れないように着いて行った。



コーヒーカップでは、中央にあるハンドルをクルクル回して、はる兄を酔わせ。お化け屋敷には、亜耶ちゃんを驚かせ過ぎて、泣かしてしまい。ゴーカートでは、三人で競争して、バイキングでは、絶叫しまくり、メリーゴーランドでは、はる兄が白馬に乗って、私と亜耶ちゃんが馬車に座り楽しんだ。



「そろそろお昼にしよう」

はる兄の言葉に頷き、園内に在るレストランに足を向けた。


中に入れば、女の人がはる兄を見てくる。

まぁ、はる兄はカッコいいもんね。

客席の間を歩いて、空いてる席を探す。

「やっぱ、空いてないなぁ…」

はる兄の呟くが聞こえた。

私たちも、キョロキョロ見渡して、席を探す。

「あ…」

亜耶ちゃんが、声をあげたと思ったら、指を差した。

そこには、二席だけ空いていた。

私たちは三人、椅子が足りない。

「二人は、そこに座りな。俺は、他を…」

はる兄がそう言って、行こうとするのを亜耶ちゃんが裾を持って止めた。

「どうした、亜耶?」

亜耶ちゃんは、俯きながら。

「…一緒に座ろ。遥さん」

って、顔を赤くして言う。

一緒に座るって…。

えっ…。

「良いのか、亜耶?恥ずかしいのイヤじゃなかった?」

はる兄がそう聞けば。

「…恥ずかしいけど、でも、遥さんが居ないのはイヤ」

って、耳まで赤くして、亜耶ちゃんが言った。

ちょ…待ってよ。

この小動物は、何を言ってるの?

自分から、餌食に行くなんて…。

同じ歳の筈なのに、何でこんなに"女"を感じるの?

はる兄も、真っ赤な顔をしてるし…。

「あ~、もう…。亜耶には、敵わないなぁ…。わかった、一緒に座ろ。真由は、そっちに座りな」

はる兄に言われて、向かい側に座る。

はる兄は、椅子に腰を下ろすと亜耶ちゃんを抱き上げて、膝に座らせた。

はる兄が、やたらと幸せそうな顔をする。

亜耶ちゃんは、亜耶ちゃんで、何処と無しか嬉しそうな顔をしてる。

三人でメニューを覗き込みワイワイと決めて、楽しく食事をした。


午後も色々と回り、途中で喉が乾いたから近くにあったベンチに座る。その間にはる兄が、飲み物を買いに行ってくれた。

「真由には、オレンジな。亜耶にはお茶を買って来た」

そう言って、はる兄が、飲み物を手に渡してくれる。

何で、亜耶ちゃんはお茶なんだろう?

不思議に思っていたら。

「ジュース、飲めないから…」

亜耶ちゃんが、ポツリと呟いた。

ジュースが飲めない?

「あぁ。亜耶、果汁百パーセントのジュースじゃないと飲めないんだよ」

はる兄が、説明してくれた。

「そうなんだ」

それって、逆に言えば贅沢な気もするが…。

「そろそろ最後の乗り物にしよう」

はる兄が、言う。

「うん、そうだね」

そう答えた亜耶ちゃんが、とても寂しそうに見えた。

あぁ、相当楽しかったんだなと思った。

「そんな顔をするなよ。また、連れてきてやるから、な」

はる兄は、亜耶ちゃんに滅茶苦茶甘い。

今日一日一緒に居て、そう思った。

「本当…に」

亜耶ちゃんが、弱々しく聞けば。

「亜耶が行きたくなったら、何時でも連れていってやるよ」

はる兄は、亜耶ちゃんの目線まで屈んで、頭を撫でる。

「約束だからね」

そう言う亜耶ちゃんは、笑顔だった。

「ほら、最後に何に乗るんだ?」

はる兄が、再度聞いてきた。

私と亜耶ちゃんが、同じ方向を指差していた。

「観覧車か…。じゃあ、行こうか」

はる兄が、ゆっくりと歩き出した。

私たちも、後を追った。


観覧車に乗り込むと、私と亜耶ちゃんが隣同士に座り、はる兄が向かい側に座った。

ゆっくりと上に上がって行く、ゴンドラ。

亜耶ちゃんが、横ではしゃいでいる。

そに度にゴンドラが少し揺れる。

「すっごーい!景色綺麗」

そんな風にはしゃげる亜耶ちゃんが、羨ましい。

それに、はる兄を笑顔に…色んな表情にさせる事が出きる唯一の人だとも…。


「さぁ、帰るぞ。雅斗との約束もあるからな」

はる兄が、亜耶ちゃんに向かって言う。

亜耶ちゃんが、ビクリと肩を震わした。

どうしたんだろう?

「うん…」

日が沈む前に園を出て、電車に乗り込んだ。


「遥さん。連れていってくれてありがとう」

亜耶ちゃんが、お礼を言い出した。

「ん?亜耶が、楽しめたなら俺はそれで良いよ」

はる兄が、目を細めて亜耶を見る。

まるで、愛しい人を見てるみたいだ。

「真由ちゃんも、ありがとうね。また、一緒に遊べる?」

亜耶ちゃんが、聞いてきた。

「うん、遊ぼう。亜耶ちゃんからのお誘いなら、断らないよ」

私がそう答えると、嬉しそうな顔を見せてくれた。



改札口を出れば、雅斗さんが壁に寄りかかって、立っていた。

「お兄ちゃん、ただいま」

亜耶ちゃんが、雅斗さんの方に駆けて行く。

その後ろ姿を切な気に見つめてる、はる兄。

「はる兄。亜耶ちゃんの事好きなんでしょ?」

私は、隣に居るはる兄にそう問い詰める。

「えっ…あ…、ちょ…何を…言って…」

はる兄が、慌て出した。

うん、もうこれは、確定だね。

普段なら、そこまで動揺しないもん。

それに、亜耶ちゃんも満更でもないようだし…。

これは、見守るしかないか…。

二人の想いが、繋がれば良いなぁ…。

「遥さん、真由ちゃん。またね」

亜耶ちゃんの声。

私は、慌てて。

「うん。また、遊ぼうね」

そう答えていた。



それからと言うもの、はる兄と一緒に亜耶ちゃんと遊ぶことが多くなり、中学に入ったらお互いが忙しくなり、連絡さえ取らなくなった。


八年前のあの日から、私は二人の恋を応援してたんだ。

だから、今幸せそうな二人を見れる事、とても嬉しいんだ。

今後も、二人の事応援していくつもり。

だって、大好きな二人なんだもの。




私も、頑張ろう。

透くんと何時までも一緒に居るために…。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ