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爪先、血液  作者: 紺碧
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特に何ってない、当事者以外には退屈で下らない日常です。


ああ、もう限界だ。今日家に帰ったら、薬をお酒でたくさん飲んで首を括ってしまおう。友達と会話しながら強く決意する。何が嫌なわけでもない。大きな悩みも特にないし、家庭環境も悪くない。だが、特別なこともないしすごく楽しいこともあるわけではない。ただぷかぷか水面を漂うかのような日々。毎日決まった時間に起きて、学校へ行き、真っ直ぐ家に帰って眠る。そんな毎日に嫌気がさしただけ。よくあることだ。


「ばいばい、また明日」いつものように笑顔で友達に手を振って下駄箱に向かう。わたしは部活動をしていないので、毎日まっすぐ家に帰る。

下駄箱の靴に手をかけて取りだしたあと、上履きを脱ぐ。しゃがんだ際、隣にいる女子の足元に目を惹かれた。

黒いタイツに覆われた足、生地が少し伸びて透けた形のよい爪先に赤いマニキュアが塗ってある。校則違反のマニキュア。それはタイツの薄い布越しに、挑戦的で完璧な赤が艶めき、鮮血のようでドキリとする。


「あ、綺麗」


思わず言葉が出てしまい、はっとする。そもそもこの子、誰だろう。立ち上がって顔を確認すると、同じクラスの日高だった。そして同時にその事に少なからず驚いた。彼女はクラスの中でもかなり地味で目立たない人間である。そして、夏でも長袖のセーラーを袖を捲ることなく着て、年中タイツを着用している変わった人間だ。そんな彼女だから、校則違反を犯すなんて意外すぎたし、しかも爪先が派手な赤で塗られているのに驚くのも当たり前だ。

わたしが、何を言えばいいか考えあぐねていると、日高はわたしを無表情で見つめたあと、さっさと上履きを下駄箱に仕舞い、黒いローファーに足を滑り込ませた。わたしはそんな彼女の一挙一動をぼんやり眺めて何となく、美しいと感じた。無駄のない流れるような動き。胸にかかる程の長さの黒い髪かさらさらと肩から流れ落ちる。女のわたしから観ても、ひどく魅力的である。

最後にローファーを履き終わって立ち上がると、横目でチラリとわたしを一瞥し昇降口へ向かって歩き出した。何故だか彼女が気になって、急いで靴を履き替え彼女を追う。


とりあえず、自殺は先伸ばしだ。

読んでいただき有り難うございます。

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