プロローグ
晴天の朝、太陽が昇ってから2時間ほどしたころ・・・
遊ぶ子供たちの声や小鳥の囀りが聞こえてくる部屋で白いカーテンが舞っている。
それに覆われるように一人の青年がベッド横たわっている。
一人のナースが彼のもとに訪れる。
「失礼します。おはようございます、新宮領様」
ナースが白い衣服を着て寝ている青年に聞く。
青年は、窓の外を眺めているようだ。
「おはようございます」
青年は彼女に答える。
彼女は主治医を呼びに外へ出た。
青年、新宮領 真聡は5年前の人身事故で外傷を負い、この病院に5年前から入院している。
当時13歳であり天才音楽家少年と言われていた彼は、それにより失明と左耳の難聴そして左足を失ってしまった。
そして今日は、彼の18歳の誕生日である。
「山崎だけど、入るよ」
彼の主治医である山崎徹が病室に入ってきた。
「真聡君、君は今日何の日か覚えているかい?」
「僕の誕生日です」
彼は答えた。
「そうだ。それで君にご両親から一つプレゼントがあるのだが・・・」
「何ですか?」
「VRMMOというゲームだ。ご両親が「これならまた音楽ができるようになるぞ!」と言いながら渡してきたよ」
「本当に?」
「本当だよ!君のためにご両親が買ってくれたんだ」
主治医がそう答え、ベッドに機械を取り付け始めた。
「…」
青年はその様子をじっと見つめていたのだった。