episode-04
やっと期限の日になった。朝から私の心はうきうきはればれとしている。なんと素晴らしい事か。これで私たちの心労の種だった兄が、この世から消えるというのだ!
こんなにうれしい事はないではないか!
そんな気分が兄にも伝わったのだろう。兄も機嫌が良かった。あと数時間で殺されるというのに、おめでたい奴だ。
***
私を抱えて寝る兄の腕をすり抜けて、彼を家に呼び込む。ああ、これで苦渋の一週間が終わったのだ。あとで彼に頭をなでてもらおう。
「よく寝てるよ」
と私が言えば、彼はにやりと笑った。
彼は兄の上に馬乗りになった。拳銃をこめかみに突き付けて、そうして彼の身動きを封じる。
「この女との生活はどうだった?」
「あ? 良い女だよ」
彼が声をかければ、兄は寝ぼけながらに答えた。
「そーかそーか。たりめぇだ。俺の女だからな」
「……?」
目が覚めてしまったようだ。起き上がろうとするが、それは彼の力によって叶わなかった。
「お前!俺が殺したはずなのにっ!」
「あ? あんなので死ぬかってエんだ。狙うならあたま狙えボケが」
「おい! ぉいっ!」
兄が私の名前を呼ぶ。
兄は妹の名前も思い出せないのか――もしかしたら、妹がいたということすら忘れてしまったのかもしれない。
拳銃の持ち手で、思い切り兄は殴られた。
「てめぇにはいーおもいさせてやったろ? なにせこんな極上な女を一週間もかしてやったんだ。充分だろ? あ?」
長くなりそうな雲行きがしてきた。兄を早く始末したい私は、焦る様に彼に声をかける。
「ねぇ、そろそろ」
「あぁ。わぁってるよ。おめぇの頼みだかんな」
「早く、速く殺して」
懇願するように、私は囁いた。
それと同時に、消音機のついた拳銃はパシュと音を出して、兄の頭を貫通した。
「これで満足か」
流れ滴る血を眺めながら、すっきりした気持ちはなかった。
「んだ? 自分で引きたかったのか?」
怪訝そうに彼は私を見る。
そうじゃない。
「なんか」
「あ?」
「肩の荷が下りたような気がする」
「そーかい」
寝室に鉄臭いにおいが広がった。
「今日はどこに寝る?」
「おい。おめぇそれはないだろ」
「? あ、兄を始末してくれてありがとう」
「ちげぇよ」
「生かしておいて、臓器だけ取り出す方が良かったの?」
「引っ越さなきゃいけねぇだろ!」
みれば、壁に血がこびりついていた。
あぁ。そうか、そういうことか。
「血はシャンプーで落ちるよ」
私は笑顔でそういった。
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