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「私、今ならシュウの気持ちが分かるかも・・・」

「・・・そうか」

「うん・・・蒼鬼って大変なんだね・・・」



朝議に参加するというシュウと、白の本部へ向かう私は、王宮に入ってすぐの所で別れた。

別れ際に「仕事が終わったら、荷物を纏めておけ。俺の部屋に運ぶ」と、のたまった彼が颯爽と歩いてゆく後姿を見つめたまま、私はしばらく固まっていた。

・・・それって同棲っていうんですよね、確か・・・。

何かを振り切った様子の魔王様は、言うこと為すことが大胆になってきた気がする。

私がいちいち彼の言動に、必要以上に翻弄されているだけのような気もするけれど・・・。

向こうの世界なら、きっと両親に相手を連れてこいと怒鳴られるところだろう。

そう思うと、このまま突っ走っていいものか、急に院長に相談したくなってしまった。

そんな気持ちのまましばらく固まって、彼に言われたことを反芻していた私だったけれど、すぐに、とにかく仕事だ、と気を取り直して歩き出した。

そして、すぐに気づく。


「・・・?」

すれ違う人が驚いて目を丸くしたり、数人でこちらを見てはこそこそ言葉を交わすのが聞こえるのだ。

中にはあからさまに私を凝視しては、目が合った途端に逸らす人もいた。

・・・なにこれ。

王宮の廊下を歩きながら思う。

蒼鬼のコインを返上した次の日ですら、こんなに好奇の視線を集めることはなかったのに。

背中に何か付いてでもいるのかと、なんとなく手で背中をはたいてみるけど・・・。

「おはようございます、子守殿」

腑に落ちないものを感じながら白の本部を目指していると、唐突に背後から声をかけられた。

いつぞやの紅騎士だ。

「あ、おはようございます」

立ち止まって振り返れば、朝から爽やかな様子の紅騎士が。

・・・あれ、朝の打ち合わせ、ないのかな?

浮かんだ疑問を口にしようとするより早く、彼の方が言葉を発した。

「昨日は、ゆっくり眠れましたか?」

「え、あぁ、まぁ」

何度か廊下で声をかけられるうちに、相手は私に気安くなったようだ。

若干戸惑いつつも、それなりの返事を返した私に、彼は耳打ちする。

「・・・蒼鬼殿に抱えられて夜会からお戻りになったと、素敵な噂が流れてますよ」

「えぇ・・・?!」

心から驚いて、たたらを踏むと、すかさず騎士さんが手を添えてくれた。

「ど、どうも・・・。

 えっと、噂って・・・?」

すごく気になる。

尋ねてみると、彼は口角を上げた。

「蒼鬼が、自分の部屋に子守殿を連れ帰ったらしい、と」

間違ってない。

間違ってはいないけれども・・・!

「・・・誰がそんなことを・・・」

「きっと、何気なくもらした一言を、誰かが聞いて、それが広まったのでしょう。

 噂なんて、そんなものです。あまり気にされない方がよろしいですよ」

「はぁ・・・」

丁寧に教えてくれた紅騎士に曖昧な返事を返して、私は肩を落として歩き出した。



そして、冒頭の会話に戻るのだ。

「ほんと、針のむしろでした・・・」

遠い目をして言った私に、彼が隣から静かに尋ねる。

「何かあったのか」

「やたらと人の視線を感じたり、私を見ながら何かをひそひそ話してる声が気になって。

 ・・・まぁ、コインを返した次の日も、こんな感じだったんですけど・・・」

「あぁ・・・まあ、どちらも噂というよりは事実だったからな・・・」

私のぼやきを軽く流した蒼鬼さまは、淡々とのたまった。

二人とも前を向いて立っているから、お互い相手の表情は見えないけれど・・・きっと彼のことだ、興味もないだろうから無表情だろう。

「針のむしろなら、これからは日常茶飯事だ。相手にしているだけ体力の無駄だな」

・・・そうだった。

この人は陛下の従兄弟で、注目の的なのだ・・・。

彼と一緒にいるだけで、王宮は私に好奇の視線を投げかける。

肩を落として、ため息をついていると、彼が見かねたのか声をかけてくれる。

「・・・なんなら、他の働き口を探すか?

 お前の気に入る仕事を、いくらでも用意してやれる」

「・・・その話、前にも聞いた気がします」

「ああ、言ったな。

 お前は理解しているかどうかは、分からないが・・・」

そこまで言ってから、彼は一瞬の間をおいて切り出した。

何を躊躇したのだろう。

「・・・仕事をしない、という選択肢も用意している」

「・・・ん?」

操る言葉のレベルが高すぎて、いまいち理解できなかった私は何も言えなかった。

内心首を捻っているのが伝わったのか、彼が短くため息を吐く。

・・・何だか呆れてませんか、私に。

「・・・ごめんなさい、いまいち意味が分からないんですけど」

「お前が仕事を持たなくても、俺の稼ぎがあるだろう。

 ・・・そういう意味だ」

何てこと言うのこの人は・・・。

そこまで噛み砕いて伝えられれば私でも分かる。

思わず息を止めた私は、顔に熱が集まるのを感じて俯いた。

頬を押さえて熱が抜けるのを待っていると、隣からくすくすと忍び笑いが聞こえてくる。

思わず隣を仰ぎ見て、目に飛び込んできた彼の表情に息を飲んでしまった。

それはもう、嬉しそうに楽しそうに笑ってこちらを見ていたのだ。

一瞬首をもたげた小さな怒りの気持ちも、すっと消えてしまったじゃないか・・・。

「・・・でも私、そういうの鵜呑みにしないようにしてますから」

悔し紛れに呟いた私に、彼は「覚えておこう」と頷く。

やはり、とても嬉しそうに。

そして、それから何でもない話を2人でしていたところで、がちゃ、とドアノブの回される音が響いた。

続けて足音が、私達の方へ向かってくる。

「待たせたな」

やって来たのは、陛下。

それから、ディディアさんとジェイドさんだ。

ジェイドさんは、視線を一瞬私に投げたけれど、素知らぬ顔で陛下の隣に座る。

彼からの手紙の内容と、昨日の出来事を思い出した私は、咄嗟に俯いた。


私達が呼び出された所は朝議の行われる部屋で、円卓が部屋の真ん中に置かれている。

椅子の数から察するに、陛下と補佐官、団長3人が主に参加しているのだろう。

朝の打ち合わせが終わったところで、ヴィエッタさんからこの部屋に向かうよう言われた私は、レイラさん達に断りを入れてからやって来た。

そうしてこの部屋のドアを開けたら、シュウがいたのだ。

聞けばシュウは、朝議の後にここに残るように言われたのだそうで・・・。

そういうことがあって、私達は2人して立って会話をしていたというわけだ。

円卓にひじをついた陛下が、目の前に立っている私達を見つめている。

いまだに呼びだされた意図が掴めない私は、ただ誰かが言葉を発するのを待つしかない。

天体盤の作動する音が、やけに大きく耳に届く瞬間が続き、私は内心息を詰めていた。

そして第一声は、陛下だった。

「ミーナ」

「はいっ」

緊張感のある声に、すかさず返事をする。

すると、くすくすと声を漏らす人が、3人。

陛下の両隣に陣取った、ジェイドさんとディディアさん。そして何故かシュウだ。

最後には陛下まで小さく噴出した。

「・・・なんすか」

納得のいかない雰囲気に、自然と剣呑な空気を纏ってしまう。

仕舞いには普段絶対に言わないような台詞を吐いてしまった。

毛を逆立てた猫のような私に、陛下が苦笑しつつ言葉を並べる。

「そう硬くなるな。

 呼んだのは、昨日の離宮での出来事を聞いておきたくてな」

良く考えれば当然の成り行きに、私は一瞬でいじけそうになった頭を取り戻す。

第一、シェイナさんの取り乱しようは、誰の目についてもおかしくはなかった。

それに私が気を失っている間、彼がいろいろと立ち回ってくれたことは想像に難くない。

そういえば、あの後どうなったのか昨日のうちに何も聞かないまま眠ってしまったことに気が付いて、私は思わず隣の彼を仰ぎ見た。

すると彼も私を見ていたのだろう、目が合って頷かれる。

「だから言っただろう、彼女はほとんど覚えていないはずだと」

腰に手を当てて楽な姿勢をとった彼は、ほらな、と言わんばかりの態度を取った。

私は話が見えずに立ち尽くす。

「ミナ?」

呼んだのはジェイドさん。

いつもと変わらない表情でこちらを見ていた。

だから私も、いつも通りに返事をする。

「・・・はい」

「それでは、あなたが気を失うまでに起きたことの確認をします。

 離宮で、母親から頼まれて少年を探していたあなたは、途中で蒼鬼殿に会った。

 そして一緒に探しているうちに、一部屋だけ明かりの漏れる部屋を見つけて入った。

 中にいたのはマートン氏で、少年を拘束する彼を説き伏せようとしたところで、部屋に

 母親が入ってきて・・・そして、少年が消えた。

 ・・・大まかな流れは、合っていますか?」

これは事実確認なのだから、歴史の教科書を淡々と読む時のように痛みなど感じる必要はない、と自分に言い聞かせながら、私は昨日の記憶を辿る。

そして最後には、ちら、とお腹のあたりで組んだ手を見て、ほっと息をついてから頷いた。

「・・・合ってます」

斜め上から、視線を感じる。

きっと、今朝も寝起きに震えてしまった私を知っているから、心配してくれているのだろう。

一晩一緒に過ごしただけで、ここまで彼の機微を感じることが出来るようになったなんて、自分でも驚いてしまう。

当然そんな私には気づいていないジェイドさんが、息を吐いて頷いた。

「わかりました。

 ・・・にわかには信じがたい話ですが・・・」

「それについては、改めて史料を読むしかないな。

 単にこの世界の空気が合わない渡り人が、短命になるのだとばかり思っていたが」

珍しく陛下が真面目なカオで、真面目なことを言う。

王族関係の人たちは、それなりに渡り人に関して知識があるようだ。

きちんと史料を読み込んだ彼とは、また違った解釈をしていたようだけれど・・・。

そんな光景を半ば呆けたように見ていた私は、少ししてからやっと、陛下がいろいろ考えを巡らせるほどの事態だったのだと気づいた。

「蒼鬼殿からは、ミーナさんも消滅しかけたと聞きましたが。

 ・・・その後、何か変化はありますか?」

ディディアさんが表情を翳らせて言う。

純粋に心配してくれていることが窺えて、私は素直に頷いた。

「おかげさまで大丈夫です。

 ・・・あ、ちゃんと仕事も続けますから」

いつだったか、選んだ責任を全うするように、と言い含められていたのを思い出して付け加えると、彼女は苦笑して頷いた。

「そう思えるのなら、明日からも大丈夫ですね」

私も、彼女の言葉に頷いて返す。

「はい。

 ・・・でも、皆さんも知ってたんですね?・・・渡り人の予備知識・・・」

「ええ、」

ジェイドさんが言った。

「あなたが知っているかは分かりませんが・・・。

 この国がまだ後宮を持っていた頃、1人だけいたのですよ・・・渡り人が」

それを言われて、いつだったか彼から聞いたことを思い出した。

その時は、人前で髪を下ろしてはいけない、ということを分からせるための一例だったけれど。

「その渡り人の件があったので、当時の関係者が記録を残しておいたんでしょうね。

 王族関係者は、歴代の王族関係の事件や事故などを含めた歴史をひと通り学んで

 おくことになっているので、知ってはいたんですよ・・・」

「ただ、遠い昔の話を読んだだけだから、いまいち現実味がないというかなぁ・・・。

 後宮って・・・んな無茶な・・・」

「それはあんたがちゃんと読んでないからですよ」

ぼやいた陛下に、間髪入れずジェイドさんが言い放った。

・・・若干やつれて見えるのは、最近顔を見ていなかったせいだろうか。

相変わらず働き過ぎなのか、と思いながら、陛下と話す彼の顔をまじまじと見ていたら、頭上からの視線が私の頭頂部にチクチク刺さっているのを感じた。

ここ数日、多方面から視線を感じる機会があったから、人の視線に敏感になっているようだ。

内心ため息をついて、こちらからも質問をした。

「あの、シェイナさんやマートン先生は、どうなったんですか・・・?」

自分のことで精一杯だったけれど、落ち着いたら気になるのはそこだった。

私の発言に、陛下もジェイドさんもディディアさんを黙って一瞥する。

この質問には、彼女が答えてくれるらしい。

「マートンは蒼鬼殿によって気絶していたので、連行するのも簡単だったのですが・・・。

 シェイナさんの方は、私達が駆けつけた時には酷い興奮状態で・・・」

彼女が歯切れの悪い言い方をする。

確かに、私にシェウル君を探してくれと頼んできた時も、酷く取り乱していたけれど・・・。

思い出してまた、胸の奥が軋むのを感じて、私は短く息を吐く。

「一晩明けて、彼女がどういう状態なのかは報告を待つしかありませんが、とりあえず

 後追いをしたという報告はありませんから・・・。

 今は、夫であるウェイルズ氏が付き添って、王都にある屋敷にいます」

一区切りつけて、彼女は目を伏せた。

シェイナさんは無事だけれど、気がしっかりしているかは定かではない、というところなのだろう。

ずっと待ち続けて切望していた子どもを、あんなふうに失っては気も触れる。

まだ子を持ったことのない私には、本当には理解出来ない痛みだった。

「あの、」

息を吸って、まだ残っている疑問を思い切って言葉にする。

ディディアさんが伏せていた目を上げた。

「マートン先生は、どうなりましたか・・・?」

「彼は・・・」

元凶の先生が、今ものうのうと過ごしているのだとしたら許せなかった。自分の腹の底に、黒いものが渦を巻いているのが分かる。

それを自分の中だけに押し留めるよう努めて、私は彼女が話すのを待った。

「彼は、終わりの塔に。

 終身幽閉するようにとの、陛下の処断です」

言い切った彼女は、ちらりと陛下を伺い見る。

遠慮がちな視線を受け取った陛下は、静かに頷いた。

「あれはもう、何度か渡り人に害を与えている。

 話をしようにも気が触れている節があったので、今回の決定を下した」

陛下が治世者の顔をして言う。

横のジェイドさんも、表情ひとつ変えずにそれを聞いていた。

私の隣に立つ彼も、特別何かを感じた様子もない。

「・・・もう、決定事項なんですね・・・」

何かが腑に落ちない気分で俯いて呟くと、陛下が感情のこもらない声でそれを肯定する。

分かっている。当事者は私ではないのだ。

けれど、シェウル君と同じ渡り人として、私は知りたいと思ってしまう。

「じゃあもう、彼と話をすることは難しい、ですよね・・・?」

円卓の間に、少しの間沈黙が落ちる。

私はきっと、彼らを困らせることを言っているのだ。

それが分かるくらいには、冷静だった。

そして、誰かのため息が聞こえた。

「ミナ」

ジェイドさんが私を呼ぶ。

いつもなら、自分の名前を呼ばれて心が浮き立つのに、今回ばかりは違った。

「はい」

絨毯ばかりを見つめていたのを止めて、私もジェイドさんの方を見る。

声の割りに、彼の表情は穏やかだった。

「終わりの塔は、凶悪な囚人や、政治犯を幽閉しておくための施設です。

 例外はなく、そこへの一般人の立ち入りは許可されていません」

駄目だと言い聞かしているはずの彼の表情は、変わらず穏やかだ。

私はその裏に何があるのかを必死に読み取ろうとしながら、彼の言葉に頷いた。

「今回の件は、調査すべき点が2つあります。

 ひとつは、シェウル少年の件。

 もうひとつは、図書館の史料と、王族の歴史に関する史料が紛失した件です。

 ・・・白百合殿」

「はい」

ジェイドさんがディディアさんを見遣る。

彼女は、彼が何を言いたいのか分かっているのだろうか、静かに返事をした。

「調査要員は、もう決定していますか?」

「シェウル少年の件に関しては、白の中から派遣するので決定済みです。

 実際に、本日からウェイルズ氏宅にて事情を聞いているところですね。

 史料に関しては、管理は白ですが貴族の絡む案件なので、紅と共同の調査になります」

「ではそちらはまだ、要員を決定してはいませんね」

「ええ」

2人の事務的な会話が終わり、ジェイドさんが再び私を見つめた。

一瞬だけ目元が甘く、蕩けそうに細められる。

そこで私は気づいた。あれは病院の時に見た、私を甘やかす顔だ。

「では白百合殿、史料の調査には、ミナを人数に入れておくように。

 私も同行しますので、そのつもりで」

「了解いたしました」


仕事に戻りたくない、という陛下が白の事務官に連行されて退室すると、続いてディディアさんが白の本部へ戻るというので席を立った。

残ったのは、私とシュウとジェイドさんだ。

・・・これは、気が遠くなりそうだ・・・。

事務的な、仕事の雰囲気に満たされていた円卓の間に、言いようのない変な空気が充満しているのを感じ取って、私は静かに視線を彷徨わせた。

そして、そっと口を開く。

「・・・じゃ、じゃあ私もこのへんで。お疲れさまでした・・・」

『ミナ』

誰にでもなく言って回れ右しようとしたところで、2人が同時に声をかけてきた。

思わず、ぎくっ、と肩をそびやかしてしまう自分が悲しい。

「何でしょうか・・・?」

どちらに返事をしたらいいのか分からなくて、交互に2人を見たけれど、2人とも私を見ていたのではなかったようだ。

お互いに、何か言いたそうに睨み合っている。

そこには私の入る余地はなく、呼ばれたのに行き場のない状況に途方に暮れてしまった。

「ミナ」

「ん?」

ジェイドさんから視線を外すことなく言うシュウを、私は小首を傾げて見つめる。

けれど彼は、そんな私にはお構いなしに続けた。

「今朝の話・・・仕事が終わったら、分かってるな?」

荷物を運び出して、同棲しようという話のことだろうか。

「ええと、荷物を部屋に運ぼうっていう話のこと・・・?」

「ああ。仕事が終わったら、支度をして部屋で待っていろ」

短く言い放って、彼が隣に立つ私の頭をそっと撫でた。

今朝彼に結い上げてもらった髪は、案外しっかり出来ていて、多少触られても綺麗なままだ。

彼は不遜な言い方とは正反対に、優しい手つきで髪を撫で、頬を撫でると、そのまま頭頂部に口付けを残して去っていった。

どれだけ丁寧に心を込めてくれたのか、綺麗な音まで響かせて。

「・・・っ」

してやられた感に絶句した私は、頭を抑えて後ろを振り返ったけれど、そこにはすでに閉まりかけたドアがあるだけだった。

・・・歩幅が広いな蒼鬼め・・・。

そして再び前を向いて、どんな表情をしたらいいのか分からなくなる。

「・・・ジェイドさん・・・」

そこには、いつもの優しく穏やかな佇まいの補佐官がいた。







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