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漆黒、というよりは、近くで見ると紺色めいた輝きのある髪のようだ。

横顔に見覚えがある。

あの時は離れた所から見ただけで、絶対の自信があるわけではないけれど、たぶんこの人が、喫茶室で団長と語らっていた美人さんだと思うのだ。

気になるところではあるけれど、あえて団長との関係を聞いたりする必要もないし、普通に図書館を利用して帰ろうと胸の内で呟いて、私は口を開いた。




ゆっくりと息を吸って、カウンターの向こうの美人さんに声をかける。

「すみませーん」

そっと呼びかけると、美人さんが顔を上げてこちらを見た。

目が合うと彼女が気だるげに、緩慢な動きでカウンターまで来る。

「・・・何か」

「え、っと・・・」

穏やかとは言いがたい雰囲気に気圧されてしまって、言葉に詰まる。

・・・なんだか、怖い人だ。声も低い。

怖気づきそうになるけれど、団長の計らいで史料を見せてもらうのだ、と意気込んでいたはずの自分を叱咤する。

そう気を取り直して、言おうとした時だった。

「・・・っ」

突然、美人さんの指が私の胸元を掠めていく気配に、咄嗟に身を引く。

空を切った彼女の手が、やけに大きく見えた。

すると、私が避けると思っていなかったのか、彼女は一瞬固まる。

「・・・それ・・・」

私の胸元を指差して言った。

指の指す先にあるのは、青いコイン。

そして思い至る。

・・・私が団長の関係者だと気づいたからか。

「あの、私は、蒼の団長に後見をしてもらっている者で・・・。

 今日は、史料を見せていただきたくて来ました」

後見、の部分を強調して言うが、耳に入っているのだろうか。

彼女は、コインにじっと見入っている。

しばらく彼女の様子を見ていた私だけれど、やがて沈黙に耐えられなくなって声をかけた。

「あの・・・史料を・・・」

こちらの言葉も耳に入ってはいないのか、反応がない。

思い切って、目の前で手を振ってみると、はっとしたのか、彼女と目が合った。

「・・・あぁ!!」

ポン、と手を打って、まさに納得、といった感じで彼女が素っ頓狂な声を出す。

ずいぶんハスキーな声だ。

「君が、シュバリエルガの言ってたミーナって子?!」

・・・人を指差してはいけません。図書館ではお静かに。

もちろんそんな心の声を言葉に出す勇気はなく、私は、びしっと突きつけられた指を若干よけながら頷いた。

「・・・はい、団長に後見してもらってる、ミナです」

「はー、君が。

 なるほどねぇ・・・」

ふむふむ頷いて、彼女があごをさする。

・・・とても美人だけれど、どうも想像していた人物像と違うような・・・。

頭の先から順に眺められていることを不快に感じるよりも、感じてしまった違和感に戸惑ってしまう自分がいる。

「私のこと、団長から聞いてますか・・・?」

「うん、この間少しね」

声をかけるまでの気だるげな雰囲気はどこにいったのか、私を見つめる目がキラキラしている。

そのキラキラは、一体どんな感情を表しているのだろう。

私は彼女の視線に晒されて居心地が悪くなって、なんとなく俯き加減になる。

「大変でしょ、あいつと一緒にいるのって」

この言葉に思わず顔を上げれば、彼女は小首を傾げて、その艶やかな黒髪が揺れた。

私は、小さくかぶりを振る。

「いえ、良くしてもらってますから」

「ふぅーん、良く、してもらってるんだー」

含みのある言い方をされて、思わず顔を顰めたくなってしまう。

けれど、ここで相手を不快にさせてしまっては、団長に迷惑がかかるかも知れない。

そんな考えが脳裏をよぎって、私は敢えてにっこり笑顔を作った。

「はい。

 時々、夕食に呼んで下さいますよ」

「うぇぇ。あいつが女子と食事って・・・」

舌を出して、苦い表情をする彼女。

どうやら、割とサバサバした性格のようだ。

そうでなければ、団長も寄せ付けないだろうけれど・・・。

しん、と静寂が広がる図書館に、彼女は少し浮いて見えた。

「そういえば、自己紹介してなかったね。

 僕はキッシェ。シュバリエルガとは、王立学校の時からの付き合いだから・・・、

 まあ、腐れ縁みたいなもんかな」

手を差し出す姿を見ながら、私は自分の耳を疑った。

「・・・今、ぼくって、言いました?」

・・・まさか。

彼女だと思っていた人が、くすりと笑った。

綺麗に整った顔は、私でも見とれてしまうくらいだ。

・・・なのに。

「うん」

「これはあれですね、あなたは男性ですね」

半ば投げやりに言うと、その人はまたしても、くすりと笑う。

「うん。自称、健康な男性ですね」

・・・ああ。

額を押さえてため息を1つ。

「・・・そうですよね。

 良く考えたら、髪も結い上げてるわけじゃないですもんね。

 声だってやけにハスキーだと思ったし・・・」

・・・恥ずかしい。

頭の中を占めたのは、ただそれだけだった。

・・・だから、団長は「異性の関係など有得ない」という表現をしたのか。

思い至ると余計に恥ずかしさに拍車がかかる。

もう過ぎてしまったことだから、どうにも出来ないだけに頭の中が沸騰してしまいそうだった。

・・・団長が戻ったら、絶対笑われる・・・。

顔を赤らめて、もう1つため息をつけば、キッシェさんが声を出して笑った。



「ミナといいます。

 王宮で、皇子の子守をしています」

私は赤っ恥をため息でやり過ごして、キッシェさんはひと通り笑ったところで、自己紹介を仕切りなおした。

手を差し出して握手をすれば、彼の手は、図書館司書らしくもなく、ゴツゴツしていた。

結構な握力もあった。

・・・確かに男の人だ。団長の手に似ている気がする・・・。

「そういえば、僕に敬語は不要だよ。気安く接してくれた方が助かる」

にっこり笑って言う様子は、優しい図書館のお兄さんだ。

どうして団長と一緒の時は、女性だと思い込んだのだろうか。

・・・不思議だ。

「キッシェさんは、王族関係の方ではないですよね?」

どうしても気になって尋ねれば、彼は目を見開いて驚く。

突拍子もない質問をしてしまったとは思うけれど、これも私にとっては必要な質問だ。

何の疑いもせずにうっかり気安く接して、あとでその人のことをきちんと知って、慌てふためくのは、もうたくさんだった。

王宮に来てから、人と接して痛い目を見た記憶がまだ薄れない私は、彼女の不思議そうな表情を見て苦笑してしまう。

「・・・ごめんなさい。

 実は団長が陛下の従兄弟だと、後見の申し出を受けた後に知ったもので」

すると、私の言葉に苦笑して、キッシェさんは答える。

「ああ、それはびっくりしたでしょ。

 ・・・僕はほぼ庶民だよ。お金も地位も、それなりにしかないし・・・」

手をぱたぱた振る彼が言って、言葉を切った。

きっと団長が仲良くするくらいだから、このキッシェさんという人は、信用のおける良い人なのだろう、と私は胸のうちでひとりごちる。

そして、勢い込んで言った。

「ぜひ仲良くして下さい!」





お互いに挨拶を終えて和やかな空気になった後、私は彼の後をついて、受付カウンターの側にある扉をくぐった。

するとそこには、長い廊下。

一般の利用者は入れない区域だそうで、秘密めいた雰囲気に、私はどこか気持ちが浮ついてしまっていた。

これから史料と対面することが出来ると思うと、余計だ。

そして、案内されるままにそびえ立つ本棚の間を縫うように歩いて、私は目的の場所にたどり着いたのだった。

「このあたりの棚が古代史になってて・・・で、そっちの棚が、渡り人の史料」

「・・・はあ・・・」

彼の説明も、本の量に圧倒されて耳から逃げていくようだ。

私の背よりも高い本棚がいくつも並んで、その中に隙間なく分厚い本が鎮座している。

もともと本が大好き、というわけでもないので、正直この量をひと通りチェックしていくだけの気力は、今の私にはない。

目の前にあるだけでも、目を通すのにどれだけの時間を必要とするのだろうか。

古い本の匂いは嫌いではないけれど、何時間もここにいたら、この匂いが染み付いてしまいそうで逃げ出したくなるだろう。

すると、呆然と佇む私を見ていた彼が、気づけば苦笑いをして言った。

「ここの本は、機密性の高いものばかりだから持ち出しは出来ないんだ。

 一般の利用者の目に留まることも許されないから、この場所で閲覧してってね」

「ええと・・・」

告げられた内容に、尻込みしそうになるのを堪える。

それぞれが分厚くて重そうなのだ、この場で立ったまま読むことなど、それこそ団長のような力のある人でなければ、すぐに音を上げるに違いない。

そんなことを思いながら、私は自分の気持ちを正当化して彼に尋ねた。

「・・・椅子、貸していただけたりは・・・」

「・・・そうだねぇ・・・。

 受付の椅子をここまで持ってくるのなら、大丈夫じゃないかなぁ・・・」

虚空を見つめて、彼が言う。

明るくはつらつとしていたのに、突然声のトーンが落ちてきた気がした私は、彼の様子をじっと見つめた。

そんな私の視線に気づいたのか、彼は照れたように頭を掻く。

「あはは、ちょっと、疲れちゃったみたいだ・・・」

そしてそのまま、大きく息を吐いたかと思えば、本棚に手をついて寄りかかるように、ずるずると床にへたり込んだ。

「えっ、ちょっと、大丈夫ですか?!」

慌てて、うずくまる彼の側にしゃがみこんで、肩に手を置く。

・・・顔色が真っ青だ。

「・・・どうしよう、誰か呼んで、」

当然、私には男の人を運べるだけの力はないから、誰かを呼んでくるしかないだろう。

・・・ああでも、1人にしてしまうのもどうかな・・・。

いろいろな考えが、走馬灯のように駆け巡ってしまう。

その間にも、彼の細い息を聞いていたら、私は自分の鼓動が速く強くなっていくのを感じて、どうしたらいいのかと右往左往してしまった。

すると、うずくまっていた彼が、のろのろと顔を上げる。

「・・・いつものことだからさ・・・。

 今日は、君に会えてちょっと興奮しちゃったみたいだ・・・」

そのまま弱弱しく微笑んで、本棚に背を預けて楽な姿勢をとって、深い息を吐く。

誰も呼ぶなということなのだろう、私は彼の体調に響かないように囁いた。

「何か、して欲しいことありますか?」

なるべく目線を合わせて、彼の様子を見る。

・・・顔色は血の気を失っているけれど、少し休んでいれば大丈夫なのかな。

・・・もしかしたら貧血なのかも。

私の問いかけに、彼はやはり首を振る。

「ううん、とりあえず、じっとしてれば治るよ。

 いつものことだから・・・」

「いつも・・・。

 大変ですね・・・・どこか、悪いんですか?」

嘲気味に、彼は私の零した言葉を拾う。

何かの持病があるのかと思って、聞いてみると、彼はまた首を振った。

「・・・さあ・・・。

 でも、しばらくじっとしていれば大丈夫だから心配ないよ。

 そうだ、僕が落ち着くまで、本でも見ていてくれる?」

「うーん・・・それじゃあ、もっと体調が悪くなったら、すぐ教えてくださいね。

 その時は急いで、人を呼びますから・・・」

念を押した私に、彼は笑みを浮かべて頷いた。

「じゃあ、ちょっと見てますね」

彼の様子が気になるけれど、きっと気にして欲しくはないのだろう。でなければ、本を見ていろだなんて、言わないはずだ。

そう思った私は、視線を本棚に移して渡り人の史料を探す。

言われた通りの棚を眺めるものの、どれを手に取ったらいいのかがよく分からない。

左から右へと視線を走らせて、佇む場所一帯が、目的のもののようなのだ。

とりあえず、と手近なものを1冊手に取る。

「・・・こんなにあったら、いつまでかかるか分からないなぁ・・・」

どうやら記録を録り始めたのが、気の遠くなるくらい昔のようだ。

限られた人が閲覧するのだから、きっと順番がバラバラになったりはしていないと思うし・・・と、ぎっしり並んだ中からいくつか開きつつ、現在に近い順に見ていくことにする。

しゅるっ・・・と、紙の擦れる音と、いくらか湿気のこもった匂いが鼻をついた。

・・・一体どれくらいの間、開かれることがなかったのだろう。

最初に手に取った本には、8年前にこの国に渡ってきた人間の記録が残されていた。

「ええっと・・・」

男性が、3人。女性が、2人。

1年に5人も・・・思っていたよりも、渡り人は多いのかも知れない。

いや、この年は多かっただけなのかも知れない。

史料のほんの一部を目にしただけだというのに、私は自分の中の何かがグラグラと揺れているのを感じていた。

「・・・子どもも・・・。

 2人は、この世界の女性と結婚済み、か。

 子どもは、イルベの街にあった孤児院で育てられ・・・」

「・・・やっぱり君、渡り人だったんだね」

自分のかすかな呟きと共に、1人の世界に没頭していた私は、突然のキッシェさんの言葉に驚いてしまって、勢い良く振り向いた。

ばちりと目が合ってしまってから、はた、と気づく。

「・・・ばれちゃいました?」

気づいてから、彼が団長の友人だということを思い出した。

一瞬ひやりと堕ちてきたものを振り払って、私は微笑む。

団長が話をしてくれた人なら、別に隠す必要もないだろうし、認めてしまって大丈夫だろう。

そして私が舌をちろっと出したら、彼は肩を竦めて言った。

「・・・あのねぇ。

 あいつから相談された時点で勘付くでしょ。

 機密性の高い、渡り人の史料を読みたがってるなんて聞かされたら、そりゃあね」

「・・・そう、ですよねー」

あはは、と笑って気づく。

「そういえば、顔色ずいぶん良いですね」

力ない表情を浮かべていた彼は、言葉を紡ぐごとに元気が戻ってきたように見える彼は、私に向かって笑顔で頷いた。

「うん、少し休むと元気になるんだよね。

 本当は騎士になりたかったんだけどさ、体調にムラがあるから、落とされちゃって。

 で、事務とかは出来ないから、図書館勤務なんてやってるわけ」

「あ、それで手がゴツゴツしてたんですね。

 剣を握る手・・・団長の手も、そんな感じでした」

手をぽん、と打って言ってみると、彼は妙な間を空けて目を細めた。

「・・・あいつと手、握ったことあるんだ?!」

完全に面白がっている顔だ。

この人は、体調の落差が大きいようだ。

私はそんな彼をじっと見つめて、ニヤリと笑った。

「そんなにはしゃいで、また具合悪くなっても知りませんよ。

 今度は置いてきますからね」

すると、それはさすがに心細かったのか、彼は不満の声を上げたのだった。

その様子が可愛くて、思わずぷっと吹き出してしまう。

・・・この人とは仲良くなれそうな気がする。私が求めているのは、こういう、他愛のないやり取りなのだと思う。

「あーあ、こんな本の山の中で遭難してるから、体調も安定しないんじゃないかって

 思うんだけどなぁ。

 剣、振り回したいなぁ。斬り合いしたいなぁ」

前言撤回。

仲良くなれそうだけれど、平凡を望む私には危険な趣向のある人みたいだ。

私の不審者を見る目に気づいたのか、彼は慌てて言った。

「違う違う、そんなアブナイ奴を見るような目で見ないで!

 ただ、剣を握って汗を流すのが大好きなだけ!人は必要な時以外斬ったことないし!」

もう発言そのものに危険が充満してしまっている。

「・・・もういいです、聞かなかったことにします」

一生懸命に自分の正当性を主張する彼に、私はため息しか出てこない。

刃物の大好きな、貧血気味の友人が出来たと思うことにしよう。

・・・きっと、私が切りつけられることはないだろうから。

前向きに考えを纏めて自分を納得させたところで、私の耳に彼の言葉が耳に入った。

「それで、君はこんなにたくさんの史料を読んで、一体何を知りたいの」

突然核心を突く。

単純な興味なのか、それとも、団長からの探りなのか・・・どちらにしろ、私には知る由もないところだ。

とことん平凡に生きてきた私は、これまでの人生で言葉の裏に隠されたものを探ったりした経験は、ほとんどない。

だからきっと、問われたことを正面から受けて、答えるしか能がないのだと思う。

彼の真面目な表情につられて、私も口元を引き締めた。

「帰りたい、って言ったら・・・笑います・・・?」

口にしてから、なんとなく腕をさする。

自分の台詞に、自分の鼓動が強く鈍くなっていくのが分かった。

私のそんな、まだ口にしていない思いを見透かしているのか、彼はじっと黙って続きを待っている。

その沈黙に耐えられなくて、私はさらに続ける。どこか、自分と対話するように。

「・・・史料があるって知った時、浮かれました。

 もう2年もこっちで生きてきたのに・・・今さら帰る方法を探せるかも、なんて・・・」

静かに、言葉が本棚に吸い込まれていく。

だんだんと背筋が寒くなってきて、私は顔が強張り始めているのを感じていた。

「でも・・・こっちで自立しようって、思ったはずなんですよね。

 もといた場所に置いてきた人生を、しっかり生きたいと思ったはずなんです。

 帰る方法なんてないって、もう解ってるはずなんです。

 だから・・・」

「だから・・・?」

彼が静かに問う。

私は、同じように静かに息を吸った。

どうしようもなく、自分の存在が頼りなく思えてしまって、両手で自分を抱く。

肌寒く感じるのは、図書館ゆえか。

勝手に口が開いてしまうのを止められないのはどうして。

この人にこれ以上話してはいけないと思うのに、止められないのはどうして。

「・・・だから、こっちで生きていくべきだって、解ってるんです。

 でも・・・そう思う気持ちと同じくらいの強さで、時々、感じてしまうんです」

そう、ある時の鏡の中の自分を見て納得した自分。

院長に一戸建てを買って、老後の面倒を見ようと思った自分。

団長の言葉に甘えて、王都で自立しようと思った自分。

どの自分も、結局は、こっちでの居場所を作るために一生懸命だった自分だ。

私はいつも、その裏を返す。特に心の弱った時に。

「・・・私には、この世界に生きる理由だって、言えるものが・・・ないって・・・」

言った瞬間、くにゃ、と視界が揺れた。

視界が歪んで、天井と絨毯が入れ替わろうと溶け始める。

足から力が抜けていくのが怖くて、本棚に手をつこうとするけれど、距離感がおかしくなっているのか、なんとか伸ばした手も宙を泳いだ。

がくん、と膝と手をついて、頭を打たずに済んだことに息を吐いて、私はぎゅっと目を閉じる。

そして、ぐらぐらする頭をなんとかもたげた。

「大丈夫?!」

キッシェさんが駆け寄ってくる音がするけれど、彼は大丈夫なのだろうか。

私は手をひらひら振って、彼の問いかけに応えた。

・・・なんだろう、今のは・・・。

そっと目を開けると、目の前に彼の心配そうな顔があった。




・・・一瞬、目の前が遠のいたけれど・・・貧血、かな。寝不足かも。

今日は帰って、ゆっくり休んだ方が良いかな・・・。

明日も仕事だし。







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