僕のジョブは「マッパー」
10年前のことだ。
僕の住んでいた街のダンジョンからスタンピートが起こったんだ。
まだ5歳だった僕はスタンピート自体の怖さはよくわかっていなかった。
ただ、大人たちの雰囲気や怒声とかで怖いことが起きているのはわかってはいた。
とは言え、やっぱり、子どもだったんだ。
親が目を離した隙に避難所から出てしまった。
目の前には火の手が上がる町並み。
どこからか聞こえてくる叫び。
非現実的な光景だったせいか起こっている事が理解できなかった。
そして、立ち止まったまま街を見ていた僕はゴブリンに襲われてしまった。
たまたま、近くにいた探索者の人が僕とゴブリンに気がついてくれたおかげで僕は頭を少し打っただけで無事にすんだ。
ただ…彼がゴブリンの首を切り飛ばしたのを見ていたにもかかわらず、やっぱり、現実感はなくて…
きっと、その時に何かが壊れてしまったような気がする。
だから、僕は探索者を目指して努力することにしたんだ。
15歳になった今、僕は探索者に登録しようと思っている。
ギルドに設置してある水晶に手をかざすと人はジョブを得ることが出来る。
某RPGみたいだけどジョブの変更は基本的にできないので変なジョブになってしまうと探索者になる事を諦めなきゃいけなくなってしまう。
そこが辛い所だけど、僕はどんなジョブでも諦めずに強くなってみせる!と意気込みを入れて、水晶に手をかざした。
受付のお姉さんが残念そうに「あなたのジョブはマッパーよ。気を落とさないでね」といってきた。
周りの人達もみんなが僕を笑っている。
マッパー…そうなんだ…
次の日、僕は初心者ダンジョンに来ていた。
ここに出てくるモンスターは最弱のスライムのみ。
意を決してスライムと戦う。
せいやーーーーーっ!!
はい。ズタボロにされました。
ちゃんと鍛えていたんだけど、やっぱり、ダメだったかぁー。
その3日後、僕はまたしても初心者ダンジョンに来ていた。
かなり恥ずかしいけど…やるしかないんだ。
10匹めのスライムを倒した僕のレベルは4になった。
そして、みんなが笑った理由がわかってしまった…
やっぱり、このジョブはマッパ(真っ裸)じゃないと戦えないジョブだったんだ!
全裸になった途端にこのダンジョンのすべてがわかったような気がしたんだ(気の所為)
スライムの動きやいる場所、それどころか隠し通路まですべてが僕の手の内だった。
それからはバンバンスライムを倒していけた。
隠し通路にあった宝箱に入っていたパピヨンマスクだけは装備しても問題はなかったので装備している。
きっと初日は恥ずかしさのせいもあって水着を穿いてしまっていたからスライムにやられてしまったんだろう(勘違い)
あれから2年の月日が流れた。
努力した僕のレベルは2500を超えていた。
まあ、僕なんかがたった2年頑張っただけなんだし、きっと他の人達は5000とか余裕で超えているんだろうし、トップクラスの人達なんかは10000とか超えているんだろうなぁ…
もっと頑張ろう。
「きゃああああ!」
ある日、ダンジョンの下層に悲鳴が響き渡った。
獄層に向かっている最中だったが放ってはおけない。
助けよう。
ーーダンジョン配信者視点ーー
「なんで…なんでこんな場所に火竜なんて…」
:逃げてー
:ここって下層だよね?なんで深層ボス級なんて…
:誰か助けにいけないの!?
私の目の前には10mを超える火竜がいた。
目があってしまったし、完全に標的になってしまっている現状では多分逃げることも出来そうにない。
若手では最強格と言われている私でもレベル300になったばかりだし、深層ボス級である火竜をソロで討伐するには相性もあるが最低でもレベル1000以上は欲しい所…
ましてや、私のジョブは剣聖で空を飛べる相手には断然不利としか言いようがない。
「ぐぅ…くぅぅ…」
火竜のブレスを歯を食いしばりながらなんとかギリギリで躱していく。
回避に専念していてもギリギリでしか躱すことが出来ない。
そのせいもありブレスの余波でどんどんHPの値が削れているのが見るまでもなくわかってしまっている。
HPが尽きれば動けなくなってしまうため、そうなったらもう…
焦りばかりがどんどん積み重なっていく…そして、それが集中力を削いでいく…
「しまっ…きゃああああ!」
削がれた集中力では完全に躱すことが出来ずに火竜のフェイントからの尻尾での攻撃が掠ってしまった。
掠っただけ…でも、それは私のHPを消し飛ばすには十分だった。
火竜の口から炎が漏れる。
ブレスだ。
やられる…そう思った瞬間、私は目を瞑ってしまっていた。
だけど、ブレスが吐かれることはなかった。
ずずーんと大きな物が倒れるような音が響いた後に優しそうな声が聞こえた。
「大丈夫かい?」
恐る恐る私が目を開けるとそこには全裸の変態がいた。
「ぎゃあああああああああああああ!!」
火竜にやられそうになった時よりも大きい悲鳴が出てしまい、私の意識はそこで途切れてしまった。
「あれ?気絶しちゃった?まあ、同い年くらいに見えるけど弱そうな娘だし、雑魚とは言えモンスターに襲われたら怖さで気絶しても仕方ないか」
うんうんと頷きながらもこんな所に弱そうな彼女を置いていくわけにもいかないし、ダンジョンから脱出するしかないのでとりあえず、横抱きにして外へ向かうことにした。
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:コメント飛んでて草
:…はっ!草食ってる場合じゃねぇ!
:アイエエエ!?ゼンラ!?ゼンラナンデ!?
:あ、でも、意外と紳士っぽい?
:いや、紳士は(変態)紳士だろ
:パピヨンマスクが…また…
:フルフルバーサーカーか…
:いや、草
:ま、まあ…配信中だし、変なことしたら即お縄だから(震え声
:ドラゴンをワンパンで沈めたやつをどう捕まえるってんだよ…
:いや…ほら…せんしちぶ判定で謎の光があるからおぱんちゅかもしれんし(目そらし
:それでもアウトなんだよなぁ…!
これはただの「マッパー」の僕が伝説になるお話。
え?ただのって嘘ついてんじゃねぇ?
いやぁ~、そんな~、まさか~。
マッパーが真っ裸で戦う職じゃないって言うなら僕はただの変態じゃないか。
失礼だなぁ。
主人公がマッパで強くなっているのはただの思い込みです。
もちろん、普通に装備したほうが強いです。
火竜ワンパンはただのサポート職とは言え、レベル2500もあればレベル1000程度はワンパン出来るからですね。
とは言え、戦闘職に比べたら攻撃用スキルとか一切ないんで、ただの物理攻撃しか出来ないんですが。
それでも、マッパーの感知能力とかを極限まで高めているので相手の弱点を問答無用でぶち抜けるので物理無効の敵にもダメージ出せたりする感じです。