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魔装十二騎士  作者: カサ
1章
9/22

仮面の者vsアクリエアス

その現場に憲兵団が訪れたのは、全てが終わった後であったそうだ

犯人達は既に、バインドで拘束された状態で気絶していた。気絶した原因は魔装銃によるビーム弾であると憲兵達は判断

現場にいた女性は「犯人達に誘拐されそうになったところに、アクリエアス様が助けてくれた」という証言であった

憲兵達はアクエリアスを称える者が大多数であったが、中年の憲兵隊長は少し不信に思っていたとか


「アクエリアス様が誘拐事件という、小規模な事件を未然に防ぐなんて珍しい」


ということ。

その現場か数キロ離れた、月夜が美しく見え、人気のない区画の廃墟の屋根にて、アクリエアスの鎧を纏う者は降りたつ

アクリエアスを迎える、二人の人影


「首尾は良さげね、グラン」

「ご無事で何よりです、グラン様」


ユキナとナナコの前に降り立ったアクリエアスは、変身を解除し、その真の姿を現す


「…今回は随分、簡単だったというか…いやまあ、女性の人が助かって良かったというべきか」

「いいじゃないグラン。活動化のデモから、こういう気付き難い誘拐事件も探知出来るんるだから、流石、セルゲイ先生が設置した監視魔石…そして、セルゲイ先生のアクリエアスの魔装鎧」


グランは懐からカードを取り出し、改めて眺める。それはアクリエアスの魔装鎧を収納し、瞬時に装着出来る術式が刻まれているものであった


「十二騎士の一人、極光のアクリエアスからセルゲイ先生は譲り受けた魔装鎧…それを勝手に持ち出した上に設置した魔石を利用して、アクリエアスとして活動して、悪人退治…バレてそうだけど…破門だよなぁ…」

「今更ビビッても仕方ないでしょ?セルゲイ先生が倒れた途端に過激派の活動家達が活発になったんだから。セルゲイ先生には魔装鎧の空戦機動を教わり、セルゲイ先生の代わりにアクリエアスとして戦えるのは私とグランだけなんだから…」


それは一か月前の話になる。アクリエアスとして活動していたセルゲイ・ローレルが倒れて、面会謝絶の長期入院をせざるを得ない状況になり、アクリエアスとして活動をしていることを知っていたグランとユキナ。特に正義感の強いユキナは、アクリエアスの魔装鎧と監視魔石の受信魔装具を持ち出した


「ユキナ様がセルゲイ様の所から色々持ち出して、アクリエアスとして活動する…そう申し上げた時は目まいがしたものです」

「それでも、私達に協力してくることに感謝しているよナナコさん。グランと私だけじゃ、素性を隠したり、お父様達を誤魔化すことが出来ないから」

「ユキナ様は一度決めたことは簡単には曲げませんし、正義感の強く、虐げられている者がいれば放っておけない…そういう性格は重々承知していますから。あれから一か月、慣れたものです」


ナナコの担当は、主に監視魔石の受信とグランとユキナの素性を隠すための裏工作を色々行っている


「グラン様、ユキナ様。このことはカノン様にはお話はしないんですか?」


グランとユキナは、自分たちがアクリエアスとして活動しているということはカノンには話はしていない。というよりも


「カノン先生はあくまでもセルゲイ先生が復帰するまでの面倒役、お互の事情を深く知る必要は無いって…そう言われたらねぇ…」

「サイク家としても、余り話してはいけない内容もあるからって言うのもあるだろう。教えてはいけない魔法、まだ世間には知られていない情報を色々抱えているって…だから、自分の得意な魔法すらユキナやオレに教えてくれない有様だし」

「傍から見れば、二人ともカノン様とは良好な関係だと思っていましたが…」


あくまでも雑談程度、一般的に知られている魔法の話はしたり、年上らしいアドバイスはすることがあってもカノンは深入りはしてこない

ユキナがカノンに切り込んだ質問、恋人とかそういう家族構成すらも上手く躱される程、カノンの会話スキルが高いのもある


「…そもそも、カノン先生はセルゲイ先生に不信感があると思う。これは本人も言っていたけど、セルゲイ先生に一度も会ったことないのに、何故かオレたちの面倒を任されたって…」

「あのデタラメな強さを見れば、私達の模擬戦相手には丁度いいと思うけど…今までセルゲイ先生が一度もカノン先生を話題にだしたことが無いし…」


ナナコはここまでのグランとユキナの会話を聞いて、一つの可能性を推測する


「…もしかして、セルゲイ様はカノン様にアクリエアスとして活動して欲しいとか?グラン様とユキナ様を同時に相手にしても、圧倒してるだけの強さなら」


カノンはグランとユキナを同時に相手に模擬戦を行っている、というよりそうでもしないと勝負にならないぐらいにカノンは二人を圧倒しているのだ、ナナコは傍か見ている程度だが、それでもわかるぐらいにはカノンは強い。ナナコはそう判断している


「…なんならカノン先生、アレでまだ全力じゃなさそうなんだよな。しかし、カノン先生がアクリエアスか…」


グランはそれはそれで悪くないのでは?と思っていたが


「いや、コレは私たちがやるべきことだと思う。誰かにはそれを譲りたくない、今更、後には引けない」

「…ユキナがそう言うなら、そうするか」


グランはユキナの性格を良くわかっている。普段は礼儀正しいが、正義感が強く、強情で、一度決めたことはそう簡単に曲げない。付き合いが長いグランがどういっても、無駄なのである

だったら、せめて共犯として協力してやる方がいいと判断している


「なるほど、十二騎士の一人、アクリエアスの正体がそんなガキだったとはな」


突如聞こえた、声の方向に振り向くグラン、ユキナ、ナナコの3人

そこには仮面…禍々しい表情の仮面を被り、青龍刀を持った者がいた。明らかに敵意を感じさせるほどの気配を漂わせながら

グランは咄嗟に魔装銃を、ユキナは剣を抜く


「…動くな、動けば…」


グランが警告した瞬間に、その仮面の者は3人の視界から消える…消えたと認識した瞬間、既にグランの懐まで接近していたのだ


「!?バリアブルライズ!(変化魔法)


グランは反射的に魔装銃を変化魔法で、銃身部分を刃に変化させて、青龍刀を受け止める

この時点でグランはこの仮面の者が只者ではないと感じ


「ユキナ!ナナコさんを安全な場所に!!こいつはオレが引き受ける!」


グランとユキナと違い、ナナコは魔族であってもそこまでの戦闘能力はない為


「わかった!グラン、そいつは任せたわ!」


ユキナはナナコをお姫様抱っこして、その場から離れる

残ったグラン、そして仮面の者

グランは近接戦は相手の方が上手とは判断し、 鍔競り合いしていた相手を蹴り飛ばし、少し距離を開けさせると間髪入れずにビームを連発する

仮面の者は、機関銃のように発射されてきたビームを青龍刀で全てたたき斬る


「マジかよ…だったら!」


グランはもう一つの魔装銃を取り出し、2丁魔装銃を構え、片方の魔装銃でビーム弾、もう片方で凍結弾を撃ち込むが…仮面の者は予期していたのか、凍結弾だけは避けてビーム弾を切り払いつつ


「その程度か?」


再びグランは懐に接近され、青龍刀を魔装銃の銃身の刃を受けるが、そのまま押し切られて、グランは廃墟の屋根から落下してしまう

上手く着地するが、仮面の者の降りてきて追撃は止まらない


「どうした?アクリエアスの魔装鎧を使わないのか?」


仮面の者は、2丁の魔装銃の銃身の刃で青龍刀を受け止めれられながら、挑発するようにグランに問いかける

グランも挑発に乗る気、思惑を乗る気は無いのだが、この実力差を埋めるにはアクリエアスの魔装鎧を使わざる得ないのも痛感していた

グランは青龍刀を押し返し、仮面の者から距離を取り、カードを取り出し、魔力を込める

グランの魔力を通したカードは輝き始め、刻まれた術式が機動し始める


キャストアップ(我が身を纏え)…!」


カードは、術式を発動し、グランの周囲に防御術式が展開されると共にアクエリアスの魔装鎧もグランの目の前に現れ


「変身!!」


アクリエアスの魔装鎧が、グランを纏う

それはかつて、100年前の妖魔大戦を終結に導いた十二騎士の一人。かつては圧倒的な光を放ち、妖魔を薙ぎ払ったというその光はまさに極光

同一人物であるかどうかは定かではない、だがここに、アクリエアスの魔装鎧を纏う者がいた

挿絵(By みてみん)


「そう来なくてはな、こちらも楽しめない」


仮面の者は、懐から魔装銃と取り出し


バリアブルライズ(変化魔法)…」


左手に持った魔装銃を剣にしたが


(なんだ…あの独特な剣は?)


グランから見ても、なにか異質な感じさせる剣であった

この異質な剣で、様子見をしようとは思ったものの、空戦能力を有した魔装鎧を纏ったこちらが優位だと判断し、一気に攻勢にしようと思い動き始めたが、先に先手を打ったのは仮面の者であった

左手に持った剣を振った、その刃は伸びる、ムチ、まるで蛇のように動いたその刃の直撃を受けてグランは遠くまで吹っ飛ばされた


「ぐぁぁ!?け、剣が伸びた!?」


蛇腹剣。東の大陸で扱わている武器であるが、グランはそんな剣の存在なんて知る筈もなく、蛇腹剣で追撃をかけてくる仮面の者


「ちぃ…舐めるな!!」


グランは舌打ちを打ちながら立ち上がり、カードを2枚取り出す


「トライアドサンダー!!」


無数の電撃を周囲に放ち、動きが読めない蛇腹剣の動きを封殺する


「ミラージュフォー!!」


続けて使ったカードは、自らの魔力で分身を作り出す魔法であり

グランを含めた5人で仮面の者を攻撃する。近接戦と遠距離よる魔装銃による攻撃で、大概が対処が難しい筈なのだが、仮面の者は華麗に5体の捌ききり、分身の一体を両断する


(マジか…!この攻撃にも対応してくるのかよ!?)


ミラージュフォーの分身体は、攻撃火力自体は本体と変わらないが、耐久性はなく、剣の一振りをまともに受けただけで消滅する

仮面の者は、指を鳴らすと、他の3体の分身体が青い炎に包まれる


(!?なんだ!?あの仮面は一体何をした!?)


グランが分身をよく見ると、見慣れない文字で書かれた札を張られていた


「東の魔法を見るのは初めてか?魔力に反応するモノでな、魔力そのものお前さんの分身体には効果は抜群のようだな」


グランの分身体は、青い炎に包まれて消滅する

仮面の者の攻撃は激しくなり、魔装銃による射撃攻撃手段を潰し、魔装鎧の高機動も簡単に活かせない地形まで追い込まれ行く。ムチのような蛇腹剣の攻撃と、青龍刀による攻撃を魔装銃と防御術式で凌ぐ

距離をとっての魔装銃に射撃攻撃は、カードを発動させた仮面の者は、その射撃攻撃を反射させて逆にグランにビームの直撃を受ける

空に飛んで一度距離を取ったが、蛇腹剣に足を絡み取られ、そのまま空まで追撃してきた仮面の者は跳び蹴りをお見舞いされて、地上に叩き落される


(なんなんだコイツ!?魔力自体は大したことないようだが…魔装鎧相手の戦い方に慣れている。こちらの動きを完全に潰してくる。魔法も、こちらが知らない魔法を使ってくるから対処も難しい上に、カードの大規模な魔法は悪手になる…!)


「どうした?十二騎士の一人、アクエリアスはその程度か?この悪党一人もまともに相手に出来ないのか?」


仮面の者の挑発に、グランは何も反論が出来ない。完全に魔法においても遅れをとっている事実を痛感せざる得ないのだ

だが、グランは決して諦めてはいない。なぜなら自分は一人ではないと


「確かに…だが、オレだけならな?」


グランの発言の後に、仮面の者が立っていた側面の廃墟の壁を、大きい盾で勢いよくぶち抜いて来たユキナが仕掛けてきた


「とった!!」


ユキナが右手の剣を仮面の者に向けて振るが、仮面の者はまるで動きを読んでいたかのように避けて、そのままユキナに回し蹴りのカウンターを入れる


「ユ、ユキナ!?」


まともに回し蹴りを受けたユキナは、反対側の廃墟の壁に叩きつけられる


「…そこまで強い魔力、探知出来ないと思ったか?愚か者。まあ、足手まといを逃がして、戻ってきたことには褒めてやろう」


少し悶えながらも、ユキナは立ち上がる


「だけど、これで2体1だよ。私とグランの二人なら、あなたを捉えれる」

「それはどうかな?」


仮面の者は何かの紙を折ったモノ、魔石が埋められた折り紙を取り出し


「分身がお前だけものではないぞ?『式神、展開』」


仮面の者は、グランとユキナがわからない言語を詠唱させて折り紙の魔法を発動し、自分の分身体を作り出す


「な…!」「マジかよ…」


タダさえ一人でもグランは一方的に押されていたが、まさかの2体になると思わなかったのか、ユキナとグランは絶句する

仮面の者は、蛇腹剣を分身体に渡すと、蛇腹剣持ちがユキナに、本体の青龍刀持ちがグランに襲いかかる

遠距離が得意なグランには、近距離かつ魔装銃の間合いに入りづらい青龍刀、逆に近接戦の得意なユキナには変則かつ近、中距離まで対応できる蛇腹剣で対応してくる


(この剣、動きが読みづらいくて剣で受けるのは難しい!だったら!!)


ユキナは左手の盾を自分の身を隠せる程大きくし、盾のみで受け止められるようにし、右手の剣にありったけの魔力を込め


「これで…どうだぁ!!!」


下から上に剣を振り上げ、地を這うようにありったけの魔力を込めた斬撃波を放つ。一直線の斬撃波は、廃墟を薙ぎ払いながら、蛇腹剣持ちに迫る

が、蛇腹剣持ちは上に跳んで避ける…だが、それはユキナも読んで、盾を捨てて蛇腹剣持ちに跳んでいき


「今度こそ!」


魔力を込めた剣で、蛇腹剣持ちに斬りかかる

蛇腹剣持ちは、蛇腹剣で防御したが、それごと叩き切られて蛇腹剣持ち切り伏せた

が、その瞬間に蛇腹剣持ちは爆発を起こして、ユキナを巻き込む


「うわぁ!?」


爆風で受け身をまともに取れずに、ユキナは地面に叩きつけられて気を失う


「ユ、ユキナ!?」

「…そろそろ終わらせてやる」


ユキナを心配したグランは、動揺で隙を作ってしまい


バリアブルライズ(変形魔法)


仮面の者は、青龍刀を()()()()


「え!?その杖は!?」


それはグランには見覚えのある杖であった。この一週間、辛酸を舐められたその杖

その動揺と、仮面の者の杖捌きはグランには到底対応出来ずに、魔装銃2丁とも叩き落され

トドメにありったけの魔力を込めた杖の打撃を腹部に受ける


「ぐぅ!?」


想定以上のダメージをうけたことで、アクエリアスの魔装鎧は解除されて、グランは倒れ込む

倒れ込んだグランに仮面の者は杖を目の前に突き立てる


「やれやれ、アクエリアスがこの程度じゃいかんぞ?ましてや魔装鎧を纏っていない相手に押し切られてはいかんぞ?」


グランを諭しながら、仮面の者は仮面を外し、その素顔を晒す


「カ、カノン先生!?」


その仮面の者の正体は、カノンであった


「杖の時点で、まさかだと思いましたが…な、なんで?」


困惑しているグランに、カノンは笑顔で、そしてドスを効かせた声で


「…あ?そりゃあ、こんな夜中に出歩いてる未成年のガキ二人を説教しに来ただけだが?」


カノンはグランに頭にゲンコツを叩き込み、気絶させる


「さて、色々聞かせてもらうか。お前さん達の危ない火遊びについてな?」

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