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魔装十二騎士  作者: カサ
1章
8/22

憶測と推測

「あ、このお酒、不思議な風味というか…独特な味ですね?」

「老酒…だったかな?同じ東の大陸だけど、ジパンとは異なる文化圏の国のお酒でな、これまた面白い味というかなんというか」


カノンが借りている宿で、カノンとメノンは晩酌を嗜んでいた

カノンが借りている宿屋は、一軒家で家を丸ごと宿屋として借りている。これはメノンが張り切って借りてきたのだ


「聖王都に来てから一週間以上経ちますが、それなりに魔法省にも話は聞いていますが…慣れましたか?叔父様」

「不釣り合いなことをしてる実感はあるが、それなりにやっているよ…って答えるべきか。セルゲイの弟子二人とその家族とかは良好な関係は築けているって所か」


カノンはこの一週間の話をメノンにしていた。そしてこれからの相談も兼ねて


「講師として、セルゲイの弟子二人の面倒を見るという役目は何とでもなっているが…二人のある程度の相談相手までなら構わないが、あくまでも魔法戦闘の模擬戦相手、練習相手だけで、絶対に得意魔法だけは教えるなって紅様からは厳命されたがな」

「あー…叔父様の得意魔法って、確かに法的にアウトですもんね」


魔法使いの中でも、取り扱ってはいけない魔法もある。魔法使いとして資格を失うまでならともかく、最悪極刑に処されることもある


「元よりも教える気も無いし、余程じゃない限りは使うことはない魔法だからな。グランもユキナ相手なら、別に本気を出すまでもない」

「話を聞く限り、その二人結構な実力者だと思うんですが…そこは流石、叔父様というべきか」


本気を出してもらえないのは、グランとユキナの二人に少々哀れな同情を感じるが、叔父であるカノンを誇らしと思ってしまっているメノンであった


「しかし、セルゲイ・ローレルの真意がわからないのがな…」

「現在も面会謝絶状態なんでしたっけ?」

「どうにも話せる状態じゃないって、紅様経由で会えるか試したが、駄目だった」

「うーん…確かに年齢が年齢なだけにいつ倒れてもおかしくないかもですけど…セルゲイ様に限ってはそんなことあり得ないというか…以前、お会いしたことがありますが、とても病気で伏せるようなタイプじゃないんですよね」


メノンが知りうるセルゲイ・ローレルという人物は、実に真面目であるが柔軟性な思考、少し茶目っ気のある好好爺という印象であり


「こう考えると…叔父様に似ている?」

「…ほう?メノンもそれを言うのか。実はな、グランとユキナにも同じことを言われたんだよ」


それは、カノンがグラス氏に招かれたティータイムの場でグランとユキナに言われたことだ

『やり方も魔法知識も異なる分野なのに、なぜかセルゲイ先生に似ている』ということ


「…この1週間、グランとユキナと接して、戦闘魔法の練習相手してきて、それぞれが異なるタイプというか…典型的な現代の魔装魔法使いのグラン。天性の魔力と剣才を持つ魔法剣士なユキナ。ただ、それぞれ共通しているのが、空戦機動をベースにした動きをしている」

「空戦…機動?」

「その反応で正しいぞメノン。現代では廃れた技術だからな」


空戦機動は妖魔大戦時代の魔装鎧での戦闘技術。高機動かつ自在に飛び回れる魔装鎧の特性を活かした戦いだが


「空戦能力を有した魔装鎧が存在しない以上、廃れて仕方ない技術がなのだが…どういう訳かあの二人、グランとユキナはそれを会得してる」


メノンは少し考え


「…妖魔大戦時代を知る、セルゲイ様ならその技術を教えることは出来るのでは?」

「だろうけど、空戦機動は空戦能力を有する魔装鎧があって戦術として成立する。わざわざ教える必要のない技術。しかも、実戦レベルまで使える程に教える理由が現代には無い」

「引き出しが多いことに越したことがないから、教えたとか?もしくは新しい技術の開拓だとか?」

「まるっきり否定はしないが…オレとしては、この非効率な戦闘技法を教えるのは、彼らに必要だからだとしたら?」


カノンはメノンに問いかけるように、自分の憶測を語っていく。少し酔ったテンションで


「今の魔法使い…というか騎士団でも扱うことがない空戦機動の技術。でも今、現在これを必要とする者がいる」

「妖魔大戦時代に廃れた技術を必要とする…でも、空戦能力を有した魔装鎧、開発方法も秘匿にされて新規開発は出来ないし…現存しているとしてもまともに動くかどうか…」

「おそらく、現存して、まともに動くであろう魔装鎧は、このオリュートスにおいて12基存在している。そしてそのうちの一基はこの聖王都にも今でも稼働して、何者がかが纏っている」


カノンがここまで語ったことで、メノンは察する


「…まさか!?いやでも、そんなことって…」

「あくまでもオレの憶測だが…おおよそは外れていないと思う。一体どういう経緯であの魔装鎧が渡ったのかはわからんがな。いずれは問いただす、アクリエアスの魔装鎧を纏っている者にな…」


カノンは老酒の入ったグラスを飲み干して、もう一杯注ぐ


「でも叔父様、それがわかった所で、セルゲイ様が叔父様を呼んだ理由がまだ不明のままですが?」

「いや…オレの憶測が当たっていれば…というか、外れて欲しいという希望もあるんだが…こいつが妖魔絡みであるならオレをここに呼び出した理由としては納得する」


実のところは、カノンはここに来た当初からはこの可能性は考えていた。妖魔絡みの可能性があると


「妖魔相手なら、確かに叔父様の出番でしょうけど…このカリバーン王国、その首都である、ここ聖王都でここ数十年、妖魔の目撃情報は無かった筈…というより、100年前に妖魔自体は壊滅したのでは?」

「主力の妖魔はな…だが、地下に潜っていたり、廃村、廃墟を根城にして生き長らえた妖魔の残党は各地からは報告はあるだろ?まあ、そういう個体は大幅に弱体化しているから、各地の騎士団で対応できる筈だがな」

「わざわざ叔父様を呼び出すまでもない?」

「メノン。残党だとしても、弱っている個体だとしても妖魔は脅威だからな?そういうケースで呼び出したって言うのも間違いじゃないんだがな…」


妖魔の残党では無い、もっとそれ以上に複雑で想像以上の可能性が起きているのでは?ということをカノンは考えをしていた

ただ、それだけじゃなく、ここまでセルゲイ・ローレルが自分の前に表さない、事情を話さないことに少なからずの不信感はあり


(あんまり考えたくないし、メノンに言うことじゃないことだが…セルゲイ・ローレルはオレを嵌めよとしている可能性もゼロではない…限りなくゼロに近いが)


「そういえば、セルゲイ様の弟子達も何も事情を聞かされていないんですか?叔父様のこととか…」

「マジで聞かされていない様子なんだよな。セルゲイ・ローレルから、オレ、カノン・サイク。ましてやサイク家の話なんて、話題に上がることがあってもそこまで詳しく聞いたことが無いって程だ。一般的に知られているサイク家の事情ぐらいだ」


世界各地の失われた魔法を書き記す魔導書作成をする魔法使いの一族、サイク家の名前自体は魔法を専攻して学ぶ者は耳にする程度には少し変わり者の魔法使い達という認識である

ただ、その中で名前を良く知られているのは現在のサイク家の当主ぐらいであり、カノンの存在は、サイク家、サイク家に関係者ぐらいしか知らない。もしくはカノンが魔導書作成の旅に関わったものぐらいである


「…もっと遥か以前に叔父様とセルゲイ様が出会っているとか?」

「…セルゲイのような名を残すような優秀な魔法使いをオレが忘れるとは思えないんだが…」


メノンの何気ない推測は、カノンも考えてはいたが、これもどうにも心当たりが無いのであった

近況報告交じりの推測と雑談の会話は、カノンの懐が光り出したことで終わりを告げ始めた


「叔父様、何か光ってますよ?」

「おや?こりゃ、思った以上に早かったな…」


カノンが懐から取り出しのは、手のひらサイズの綺麗な魔石であり、何かに反応するように光を放っていた


「…これは、探索系の魔石ですか?」

「ああ、ここに来るときにアクリエアスが活動家達を退治する現場に居合わせただろ?あの広場の現場を良く調べてみたら、この魔石が見つかったんだ。解析したら、これは騒ぎや強い攻撃的な魔力に反応する魔石でな、監視魔石って言った所か?広場にはこの魔石以外にも数個隠す形で配置されてたし、広場以外のこの聖王都の各所に配置されていた」

「もしかして、アクリエアスが現場に駆け付けることが出来たのは、この監視魔石によるもの?」

「だろうな。んでこの拾った監視魔石をオレがイジくって、アクエリアスを逆探知出来るように改造したものだ。んで、どこかで何か騒ぎが起きてる様子だな。そこの現場に行けば…」

「アクエリアスに遭遇出来るということですか…」

「その通り。こんな夜な夜な危ないことをしている悪ガキ共の現場を抑えて、お説教出来るって訳だ」


カノンは意地悪く微笑む。まさか、こんなに早くアクリエアスと再び会えるとは思わなかったのもある


「メノン、悪いがお開きだ。本来だったら、姪っ子をこんな夜に一人で帰すのは心苦しいが」

「そう思うなら、泊めてくださいよ?待っていますから」

「馬鹿言え、姪であっても立派な女性だ。男性の部屋に無暗に泊まろうとするんじゃねーよ」

「叔父様なら問題ないのでは?血縁関係がないから、私としては叔父様に抱かれることには満更では無いんですが?」


元々カノンは農民の家の生まれであり、サイク家には養子として迎え入れられている。サイク家としては血縁関係のないカノンが、サイク家の誰かと結ばれることは満更でもないという方針でもある


「絶賛喧嘩中。別居状態だが、オレには一応妻はいるんだが?」


カノンは宿の窓から、飛び出して、建物を屋根等を駆けていていく。アクリエアスがいる現場に向かう為に

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