百年祭 太極図/聖剣のレオ
東の大陸にはかつて仙人と呼ばれる者達がいたとされている。しかし妖魔たちの襲撃によってその大半は死絶え、それらを操る仙術と呼ばれる超常現象を起こす術も大半が失われていた
残された僅かな資料から仙術をなんとか翻訳し、僅かながらも魔法技術で再現出来るようになったものの、失われた言語による詠唱、複雑な魔方陣の構築などの行使に非常に手間がかかりすぎる為に、魔装魔法や略式詠唱によるスピードのある魔法行使が一般的な現在のオリュートスで、仙術を知りえて、行使できる魔法使いは一握り、サイク家の人間ぐらいであった
逆を言えば、余りにも知られていないが故に仙術やジパンの魔法に対しての対抗策が現在魔法には皆無に等しい
「来た…!!」
カリバーン城から離れた郊外の森。メノンは術の魔方陣を描き切り、詠唱の用意をしていた
万が一の衝撃に耐えきれる材質の床を錬成し、その上に魔方陣と魔石などを一定間隔に設置、既に魔方陣は少し光っていた
メノンは上空の視界に、何かがこちらに飛来してくるものを確認し、おそらくユキナかカノンがミーラ王妃を連れてきたのだと確信していた
「落ち着けメノン…タイミングだ…おそらくあのままの勢いで落下してくる…それに合わせて詠唱開始…落ち着け私、落ち着けメノン…!」
元々は鉄火場向きではないのメノン自身はわかっている。魔法の知識ならともかく、戦闘魔法になれば到底グランやユキナの足元には到底及ばないのよくわかっている。妖魔や怪人と対峙すれば間違いなく、なす術もなく殺されるか、最悪人質にされる
しかし、敬愛するカノンに任された以上、メノンは覚悟を決める
「チェイナ言語をイング言語に変換、詠唱開始…風よ大地よ木よ森よ、森羅万象の力を我に力をお貸しください…」
メノンが詠唱している間に、暴れる妖魔と共にレオの魔装鎧を纏ったユキナが陣の中心に飛び込んでくる
「メノンさん!!」
メノンは目の前のことに驚きつつも、詠唱を続ける。魔方陣がさらに反応をして、辺りの雰囲気も変わっていくが、ユキナが取り押さえていてる妖魔は暴れ、電撃を周囲に放ち、木々を辺りなぎ倒し、万が一に自身の周囲に防護魔法を敷いていたメノンにも、防護魔法で電撃の威力が減衰するものの、貫通してメノンの頬や足に当たる
「く…このぉ、母さま…!お願いだから落ち着いて…!!」
メノンは電撃が当たって痛みを感じつつ、恐怖を感じ涙目になっていた。だが構わずに詠唱を続ける
目の前で自分の母親を助ける為に、必死に取り押さえているユキナに応える為に、今何処かで蜘蛛の怪人と戦って聖王都を守ろうとしているグラン、そして何よりも敬愛するカノンに応えたい為にメノンは全力を尽くす
「—理を乱す現象を正しき姿に戻したまえ!!術式展開!仙術!太極図起動!!」
メノンが詠唱が終わると魔方陣、太極図が起動し、陣の中心から辺り一帯が強い魔力反応と共に強い光に包まれる
暴れていた妖魔がピタリと止まり、ユキナのレオの魔装鎧が強制的に解除される
仙術太極図。東の大陸の仙人が編み出した仙術であり、ありとあらゆる超常現象を強制的に解除、無力化する魔法になっている。サイク家の解析が未だに不完全な為に本来のスペックを引き出せてはいないものの、これに対する超常現象、魔法は問答無用で無力化、妖魔の力は条件次第で無力化することは可能である
陣の中心にいた妖魔に変化が訪れ、徐々にミーラ王妃の姿に戻っていた
「母さま…やった!!」
ユキナは喜んでいたが、メノンは見逃さなかった。ミーラ王妃の体、心臓の位置から黒いカードが排出されていた
不完全故に太極図が展開できる時間が短く、せいぜい10秒程。太極図の効果が切れればウロボロスカードがミーラ王妃の体に戻る恐れがあると思ったメノンは
「ユキナちゃん!その黒いカード!ウロボロスカードを叩き斬って!!!」
メノンがユキナに叫び、ユキナもウロボロスカードの存在に気付く
自分の母親を苦しめた存在、恩師であるセルゲイの死因となった存在、様々な怒りの感情を持っていたムーンダイトを強く握りしめ、ウロボロスカードの小間切れに斬った
小間切れにされたウロボロスカードは、まるで霧のように消滅していったのだ
ウロボロスカードが消滅したタイミングで太極図の効果が切れて、辺り一帯が元に戻る
「…上手く…いった…?」
事態が解決したことに、メノンは緊張の糸が解け、腰が抜けてその場で尻もちをつきながら崩れる
「母さま…よかった…!」
元に戻って気を失っているミーラに息があることにユキナは安堵し、自身が来ていた上着を下にしてその場にミーラを寝かせる
最悪のミーラを殺して、止めるという事態を避けられてことでユキナとメノンの二人は安堵し、気が抜けていた
その気が抜けていた静寂の間で、手を叩く音…拍手の音が唐突に聞こえてきたのだ。まるで賛辞を送るように
腰が抜けていたメノンは立ち上がれず、ユキナはすぐさま音の方向にムーンダイトを向けて構える
メノンとユキナに二人の視界に映った、拍手を送っていた相手、メノンは初対面であったが写真でその姿を知っている。そしてユキナはよく知る相手であった。昔からユキナを面倒を見てきた者、そしてミーラにウロボロスカードを埋め込んだ実行犯の一人
「ナナコ…!!」
ナナコは笑みを浮かべ、拍手をしながらユキナに近づいていく
「やっと、聖剣を手にすることが出来たのですね。ユリカ様…こんなにめでたい瞬間に立ち会えたことに、私は感激しております」
剣を向けられているのに関わらず、ナナコはユキナに近づく、それはユキナであれば一振りでナナコを容易く両断出来る間合いに
そしてナナコは、ユキナではなく、本来らの名前であるユリカと呼びながら
親しげに近づいてきたナナコに対して、ユキナはナナコを強く睨みつけていた…だが、そこには迷いはあった。あったが故にユキナはナナコに問う
「ナナコ…どういうつもり!?母さまをこんな目に合わせるなんて!」
「それは全てはユリカ様の為です…私の行動全てはユリカ様の為なんです」
剣を向けられているのに関わらず、臆して接してくるナナコにユキナは恐怖を感じていた。幼い頃から自分の世話をしてくれたナナコのことが理解できないことが
「ユリカ様は王になられる方です。私はユリカ様が王になる為の行動…その為なら必要となれば、ユリカ様が王になるのに障害となりえる者がいれば、利用もするし、最悪排除もします…例えミーラ様であっても」
「…ふざけないで…ナナコ…!私は王になんてならない!」
「いえ!ユリカ様は王になるに相応しい人物です!王家の血を引き、聖剣に選ばれし者。例えユリカ様が望まないのであっても、私がその舞台を整えます…ユリカ様が王にならざる得ない状況を作る」
ここに来て、ユキナはナナコの企みの少しわかってしまった。王にならざる得ない状況、これにはユキナには心当たり…というより懸念があった
現在のカリバーン王国の治安は決して良いとは言い切れない。カノンが過激派を見せしめに一掃したとは言え、一時のものであるのはユキナは理解している
第七王女のユリカ・カリバーン、聖剣の担い手が世間的に死んだということを理由付けとして、国民の不安を煽り、過激活動家の動きが活発となった、カノンの推測ではウロボロスが過激派に糸を引いているという話ではあったが
今回の怪人の事件は民衆に晒され、国民の不安をさらに煽り、今は大人しくなっている過激派がまだ動き出す可能性が出てくる
しかし、これを収める可能性としてユリカ・カリバーンを生存明らかにし、ユリカ・カリバーンをカリバーン王国の王にすること
「…ウロボロスという想定敵を作り出して、聖剣の担い手の王として私を立たせる為に…」
「ご明察ですユリカ様…希望をもたらす王、聖剣の勇者には、倒すべき絶望をもたらす悪が必要だからです…私はユリカ様の敵になっても、いかなる犠牲を出してでも、私はユリカ様を王にさせる為ならミーラ様を手にかけるのも躊躇いません…現に、ユリカ様は見事に聖剣を手にしました…ユリカ様は追い詰めれば追い詰めるほど強くなる、そしていずれは強き王として君臨し、弱きものを虐げる者を許さないユリカ様は、その者達を討ち滅ぼし、いつか人と魔族に平和を作れる…私の目的はそれだけですユリカ様」
ナナコの目的、話を続けている内にユキナは困惑を通り越して、混乱しかけていた
怒りの感情もある、しかしユキナはナナコの魔族として冷遇されたことを知っているが故に感情移入してしまっていた
自分が王になれば、少なくともナナコはこんな馬鹿な事をしないのか、そんなことまでユキナの脳裏によぎっていた
だが、そんなナナコを否定する一撃が飛んできた
風の弾丸がナナコの頬を掠めた、それは先ほどまで腰が抜けて、今も相当ビビッていながらも立ち上がったメノンが、魔装銃でナナコを狙ったのだ
「ユキナちゃん…この人の言葉を真に受けちゃ駄目だよ。ナナコがやっている行為、やろうとしている行為は到底許されることじゃないし、余りにも浅慮過ぎる」
メノンはこの二人の会話の中に割って入るのは無粋かと思っていた。現にナナコの視線はそう言いたげにメノンを睨んでいた
「初めましてナナコさん。こんな形で会うのは不本意だけど…私はメノン・サイク。叔父であるカノン・サイクと同じサイク家であり…ユキナちゃんの友人よ」
「カノン・サイクの…そうでしたか、道理であらゆる解除魔法を無効にする筈のウロボロスカードを解除出来たのも、こちら以上に魔法知識の所有するサイク家の知識によるものでしたか…ユリカ様、随分心強い味方も付いたものですね」
ナナコはウロボロスカードが解除出来た理由が、こちらの想定にない魔法を使うサイク家の人間なら可能であることに納得する。ナナコの雰囲気に、メノンはこちらに危害を加えてくるのではと思い
「最初に言っておくと、私を始末するのはやめた方がいい。私に何かあれば叔父様…カノン・サイクは全力であなたを殺しに来る」
「…脅しですか?」
「割と洒落にならないから言っている」
メノンは得体の知れないナナコに、心の中では相当に恐れを感じながらも、それでも勇気を振り絞って吹っ掛ける
困惑しているユキナに、僅かでも落ち着かせる間を与える為に
「なるほど…なら試してみますか?キャストアップ」
それはメノンは勿論、眼前で剣を向けていたユキナですら反応出来なかった
まるで瞬間移動のようにユキナの前から消えて、メノンの目の前に現れる
「え?」
逃げることも避ける動作も出来ずに、メノンは片手で首を絞められて、そのまま持ち上げられる
「が!?…ぐ!?」
「メノンさん!?」
ユキナは急いで振り返り、状況を把握する
それは異形の姿の怪人と呼ぶには、美しい姿…どちらかというと魔装鎧の騎士に近い姿であった
「ナ…ナナコ…なの?」
可能性はあった。ナナコがウロボロス側に付いているのであれば、怪人に変身する可能性があったことも…しかしその姿のは怪人とは異なる美しい何かにユキナは見惚れて、動きを止めてしまう
「メノン・サイク…あなたを殺せばカノン・サイク…刃のジェミニアが本気を出すかどうか、あなたの死を以て、確かめて見ましょう…安心しなさい、あなたはユリカ様が王になる礎になる」
ナナコが本気でメノンを絞め殺す…というより首をへし折ることに気付いたユキナは、ナナコに向かっていくが
(間に合わない!?)
ユキナが先に切り込むよりも、ナナコがメノンを絞め殺す方が早く、間に合わないと判断するユキナであったが
一発の銃声と共に、メノンの首を掴んでいたナナコの片腕が吹き飛ばされた
ユキナは反射的に、落下するメノンを受け止めてナナコから距離を取る
「ゴホゴホ!!!」
「無事ですかメノンさん!?」
「な…何とか…」
ユキナやメノン、そして片腕を吹き飛ばされたナナコも一体に何が起きたか理解できなかったが、その答えがやってきた
「…正直、引き金を引く気がなかったが…ナナコ。私の国民に手をかけるなら私とて容赦が出来ない」
「…国王陛下」「父上!?」
それは先ほど発射したことで、銃口から煙を出しているライフル銃を持った、カリバーン王国の国王、ユーダ・カリバーンが現れたのであった。ただその姿は国王の装いとは思えない、森の色彩に合わせた迷彩柄の軽装鎧を纏っていた
吹き飛ばされた腕が再生しつつ、ナナコはユーダに視線を変える
「よもや陛下がこんなところに…しかもお一人で来るとは…というよりいつからいたんですか?」
「一人?どうやら私の騎士達がやはり優秀のようで何よりだよ、ジェミニア様は勘付いていたようだが…」
ユーダが合図を送った瞬間、次々と銃声が響き渡り、あらゆる方向から銃弾がナナコを襲う
ナナコは避けつつも、初動が遅れて数発当たる。ユーダが使用しているライフルより口径は小さいものの、怪人の体を貫通させるほどの威力はある
「ぐ…兵士たちを潜ませていたということですか陛下」
「ライブラ様を通してジェミニア様達の動向はある程度は把握していたからね…ミーラとユキナが接触すれば、確実に君も現れると思っていたぞナナコ。ミーラを回収するだけのつもりだったが…万が一に備えて良かったよ」
ユーダはユキナとメノンに方に視線を向ける
「我が愛するミーラを助けた恩人…そして我が国の民に危害を加える以上見過ごすわけにはいかん…ナナコ、君には情もあるし負い目もある…なんであれ、私は我が娘を捨てた親であり、その面倒を君に任せた…だが、私は今の君に引き金を引くことに何の躊躇はない。我が民を泣かせるのであれば、私の総力をもって君とその組織を潰そう」
ユーダはナナコに片手でライフルの銃口を向けながら宣告する
「…それだけの力と権力を持っていながら、なぜユリカ様を守ってくれなかったんですが?そこまでしてあなたは王の座を固執したいんですか?ユリカ様に王の座を奪われるのがそんなに怖かったんですか?」
「…数年前、君は私に似たようなことを言っていたな…君の言う通り、確かにユリカは王として素質と才能は私よりよっぽど上だ…将来この国の未来を背負うに相応しい王になるであろう」
ユキナは驚いてた、まさか国王であるユーダからこんなことを言われるとは思っていなかったからだ。ユキナとしては父であり、国王であるユーダこそある意味理想的な王である評価をしていたからだ
「だが、ユリカがそれを望むかどうかだ…どうにも私の娘のユリカと私の義弟の娘のユキナは、悪い人を退治する方が生き生きしているようでな…そして、今はこの場にいるのは私の可愛い義弟の娘のユキナ・グラスであり…そして」
ユーダはニヤリと微笑みながら、続ける
「聖剣の封印を己の力で引き抜き、破戒のレオの魔装鎧を受け継いだ新たな十二騎士だ。カリバーン国王、ユーダ・カリバーンが認め、そして祝おう!ここに新たな十二騎士の一人が誕生したことを!!」
ユーダ・カリバーンが、カリバーン王国がユキナを十二騎士として認めたのだ、ユリカ・カリバーンではなく、ユキナ・グラスとして
ユキナは静かに立ち上がり、ユーダの隣に立つ。ユキナはナナコの前で覚悟を決めていた、今度こそ
ユキナはムーンダイトを地面に刺して置く
「…ナナコ、あなたが私の為に、私を王にする為に人々を泣かせるというのであれば…私はあなたを倒す、ユリカ・カリバーンとしてではなく、ユキナ・グラスとして」
ユキナは少し微笑みながら、自分の名前について思っていることをナナコに言う
「それにねナナコ…私はユリカ・カリバーンより、あなたが名付けてくれたユキナという名前の方が気に入っているの」
「…ユキナ様」
ベルトのドライバーを起動させて、ユキナはポージングを取る〈キャストアップ〉
ジェミニアの魔装鎧同様に、ベルトから起動音声が流れる
魔装鎧を纏う際に、一定の動作、ポージングを行う騎士が多い、別にしなくとも魔装鎧を纏い変身することはできる。しかし、ポージングを行う理由は魔装鎧を纏う儀式であり、覚悟である
悪を倒すという意思表示、覚悟の現れ
「ナナコ、あなたを止める…例え戦うことがあなたの思惑通りだとしても!変身!!」〈ヘンシン〉
ポージングを決め、ユキナはレオの魔装鎧を纏う
それは、妖魔大戦時代に亜人族の王が纏いし金色の鎧
その咆哮で妖魔を一網打尽に破壊したとされる十二騎士の一人、破戒のレオ
その魔装鎧は作り直され、今はこの時代の聖剣の担い手に纏う
カリバーン王国の国王、ユーダ・カリバーンが認めし、新たな十二騎士
「祝いたまえ…新たな十二騎士、聖剣のレオが誕生した瞬間を!!」
ユキナは地面に突き刺していたムーンダイトを抜き、ナナコに構える
「どうするナナコ?ウロボロスから手を引くか…それとも今ここで私に斬られるか…」
ユキナの周りが歪んで見えるほどに、ユキナの魔力は高ぶっていた。それを察知したナナコ
周囲に潜んでいる銃を持った兵士たちとユーゴを相手になると、到底勝ち目がないと判断し
「そうですね…この状況は勝ち目はありませんね…ですが現状の私の目的は果たされましたユキナ様。あなたが戦う覚悟をしていただいだけで、今はそれだけで」
ナナコは先程同じく、瞬間移動し、その場から離脱した
「逃がした…!」
ユキナはすぐにナナコを追うつもりだったが
「いや、この場から逃げたのならそれに越したことはない。レオ様。今はナナコと戦っている程の余裕はない…正直、今この場にナナコ以外の怪人が潜んでいたら対応が難しい…倒れているミーラと腰が抜けているメノン殿を庇って戦えるほど戦力はない」
ユーゴに止められ、ユキナは静止する。ユキナは現状を確認するが、気を失っているミーラ、腰が抜けつつも息を整えているメノン
ユーゴの言う通り、ここでナナコとやり合わなかったのは幸いだったかもしれないとユキナは判断し、納得する
「父う…陛下、ありがとうございました…陛下がいなければメノンは助かっていませんでした…で・す・が」
ユーゴに感謝しているが、ユキナというより、一人の娘として国王としての父親の行動に思うところがあり、ユキナはユーゴに迫り
「陛下が前線に出てくるなんてそんな危険な真似していいわけないでしょうが!!!ナナコが本気で殺しに来たらどうするつもりだったんですが!!!」
「いやー…この手しかなかったというか…ジェミニア様ならミーラを戻す手段があると言うし…射撃の援護なら私でも出来るかなーって」
問い詰めたきたユキナに、押されて、ユーゴを目を逸らしながら言い訳を並べる。ユーゴ・カリバーン、国王として政治的手腕もあるが、射撃の名手であるという側面を持つ王様でもある
ユーゴは咳ばらいをして、雰囲気を変える
「ごほん!レオ様、現状はまだ芳しくない。ミーラの一軒はどうにかなったが…市街地の私を襲った怪人はライブラ様達が対応中、城ではジェミニア様とメリーが対応…そして、紅様がもう一体の怪人を廃墟区にて対応している…レオ様は紅様の援護をお願いしてもいいでしょうか?」
「紅様が対応している怪人って…母さまにウロボロスカードを埋め込んだ張本人…!」
自分の母親を酷い目に遭わせた相手に、ユキナのムーンダイトを握る手が強くなる
「わかりました陛下…でも陛下、一つお聞きしても?」
「なんでしょうかレオ様?」
「いや…なんで”様”呼びなんですか?」
ユキナの疑問にユーダは”お前は何を言っているんだ”という顔で答える
「当然でしょう?十二騎士の方が私より立場が上なんですから…まあナナコも意図していないと思うが、ナナコの望みがある意味叶ったようなもんなんだよな、王様より偉い十二騎士になったのだから」
「…そういえばそうだった…私が十二騎士なんて…」
ユキナは相応しくないと言おうとした時、ユーダはユキナの頭…魔装鎧の兜になるが、撫でる
「大丈夫だ、お前は私が誇る娘だ…自信を持ちなさい…大きくなった、そして美しく、そして強くなって育ってくれたなユキナ…今のお前なら聖剣も十二騎士の力を正しく使える筈だ、自身を持ちなさい」
カリバーン王国の国王としてではなく、ユーダ・カリバーンとして、父親としてユキナを励ます
その言葉とその口調はどこか安心させて、そして自信を与える、勇気を与えられるような温かなものであった、魔法でないのに魔法のようなユーダ・カリバーンの不思議な雰囲気
「…父さま、ありがとう…」
本来ならそう呼んではいけないのはわかっていても、ユキナは父に感謝の言葉を言う。
そしてユキナは聖剣ムーンダイトを持ちながら、空に上昇し、廃墟区の方向に飛んで行く、金色の光跡を描きながら




