百年祭 聖剣抜刀
現在の状況
リーノ、グラン、裁定者のライブラは聖王都市街地にて妖魔獣と蜘蛛の怪人と交戦
蜘蛛の怪人を一時的に追い詰めたものの、妖魔化され、プラズマレーザーをまともに受けたグランは消息不明
カノン、マリー王妃率いる近衛騎士団はカリバーン城庭園にて、飛蝗の怪人と交戦
ユキナ、妖魔化されたミーラ王妃とハザマと交戦
話は少し前、カノンがカリバーン城を襲撃、ユキナが侵入する前の話に戻る
「最初に言っておくが、おそらくミーラ王妃の妖魔化は防げれないと思った方がいい」
カリバーン城から相当離れた郊外にて、カノンとユキナとメノンの3人は打ち合わせをして、カノンは絶望的であることを前もって言う。ユキナとメノンの表情は険しくなる
「それはどうしてですか?カノン先生」
「奴らの行動の不自然さ動きから推察になるが…まず妖魔化させてカリバーン王国を混乱させるならわざわざミーラ王妃を狙う必要はないし、その場で百年祭で妖魔化させるという宣告する必要もない。では何が目的か?」
「…ユキナちゃんを誘き出す為ですよね叔父様」
「十中八九、その通りだと思うだがなメノン…だぶん、それだけじゃない」
メノンの推測はあながち間違っていないとカノンも同じ判断であった。先月の鉄塊の怪人の事件の時も彼らはユキナを狙っていた。どういう目的があってユキナを狙っているかは未だ不明であっても、今回もそれが狙いであるのはナナコが絡んでいる時点で明白であった
だが、カノンはこの行動にもう一つの推測があった
「…おそらく、奴らの趣味なんじゃないかなって思っている」
「「…趣味?」」
ユキナとメノンはカノンの推測に、同じワードが被る。カノンが聞いていたミーラ王妃にウロボロスカードを埋め込んだ実行犯、空間移動の魔法、裁定者のライブラと同様の魔法を行使する者
「狭間使いって言った所か?年齢は10代前半そこそこのガキらしいが…少ない証言からでもどういう性格はある程度の推測になるが…おそらく奴はこの一週間、ミーラ王妃を監視していた…というか宮廷魔法使い達がなす術もなく慌てた姿を見て…さぞ楽しかったんじゃないかな?」
「そんなことあります叔父様?」
「まあ、邪推かもしれんがな…だが、ミーラ王妃が万が一自殺しないように監視はしていたと思う…もしユキナがミーラ王妃の前に現れれば、確実に奴は現れる…だけど、戦力がそれだけだとは考え辛い。だからオレが騒ぎを起こして、奴らの戦力を引き出す…ユキナ、もしかしたらお前は下手したら妖魔と狭間使いの二人を相手にすることになる…後は、出たとこ勝負って所だな」
「結構な無茶振りじゃないですかカノン先生?私も鉄塊の怪人に、なす術が無かったのは知ってますよね?」
ユキナは鉄塊の怪人との戦いを思い出し、少なくとも挟間使いはそれと準ずる戦闘力に妖魔の+αということを想定していた
「そいつはどうかな?少なくともあの時よりはマシだろ?散々オレとやり合っていたんだし…お前は聖剣の担い手だぞ?自信を持て…あの城には二つの聖剣と、二つの魔装鎧があそこにはあるんだ。使えるものは使っていけ」
「まさか…聖剣を?」
「ユキナ…目の前でミーラ王妃が妖魔になっても、落ち着いて対応していけ…後は、オレとメノンを信じてくれ」
ユキナに諭すように、冷静になることをカノンはアドバイスを送っていた
「無茶振りって言ったら、叔父様。私の方が責任重大じゃないですか?一応やり方は知っていますが…太極図、一度もやったことが無いですよ?」
そして現在、ユキナは狭間使いと妖魔にされたミーラ王妃と対峙
カノンはマリー王妃率いる近衛騎士達と共に、飛蝗の怪人と対峙していた
ユリカ・カリバーンもとい、ユキナ・グラスの身体能力は常人を遥かに超えており、体の頑丈さで言ってしまえば魔族や亜人より遥かに頑丈であり、大型の車に轢かれた程度、高層の建造物に叩き落されてもピンピンしているほどで、カノンの風の剣でもかすり傷程度で済むほど
「いたたた…」
至近距離からプラズマレーザーを受けたユキナは、咄嗟にもう一本の剣で直撃を避けたものの城の地下の最深部まで押し落とされたのだ。身を守るために使った剣は完全に壊れてしまった為に、そのまま投げ捨てる
「ここは…」
カリバーン王国の地下最深部は立ち入り禁止であり、例え王族であってもみだりに入ることは出来ない。ユキナは一度だけここに入ったことはある。そしてここにある剣を一度だけ使ったことがある
「聖剣の間…まさか最上階からここまで貫くなんて…」
聖剣の間、ユキナが台座の方を見ると聖剣デインダイト、聖剣ムーンダイトが台座に突き刺された状態で安置されていた。しかし幼い頃に入ったことがあるユキナが当時とは違うことに気付く
聖剣デインダイトには聖剣のゴートの魔装鎧が、聖剣ムーンダイトには破戒のレオ…らしき魔装鎧がそれぞれ抑え込んでいるように聖剣を封印していた
「カノン先生の言う通り、十二騎士の魔装鎧で聖剣を封印していたんだ…」
事前に話を聞いていたとは言え、こんな形で封印されていたとはユキナは思ってもみなかったのだ
「へぇー…こんなところに聖剣があったんだ…これは丁度いいや」
プラズマレーザーで撃ち抜かれた穴から、ゆっくりと妖魔と共にハザマも降り立つ。
ハザマは魔装銃をユキナに向け、ユキナの周囲に4つのワームホールを発生させると、そこから鎖は射出してユキナを拘束する
「ぐ…!」
「さて、ユキナお姉ちゃん?聖剣を持って僕らと来てもらおうか?そうすればママを戻してあげるよ?」
ハザマはニヤニヤしながらユキナに交渉をしてくる。ユキナはこのハザマのふざけた表情と口調は、”コイツは交渉する気が無い”と即座に判断し、ユキナは力を全身に込めて、拘束していた鎖を引きちぎる
「マジか」
二ヤついて余裕を見せていたハザマも、ユキナの鎖をちぎる怪力に驚かさせられる
「錬金魔法、ソード!」
ユキナはカードから剣を実体化させながら、ハザマに急接近し斬りつける
しかしハザマの空間移動にまた避けらると、ハザマは反撃と言わんばかりにユキナにワームシュートを撃ち込んでくる
ユキナも反応して剣で弾くものの、何処から飛んでくるのかわからないビーム、そして妖魔もユキナに襲い掛かってくる2体1の状況下では分が悪く、再び剣はへし折られて、あっという間に追い詰められて壁に叩きつけられ、そのまま妖魔に壁に押し付けられるユキナ
「ぐぅ…母さま…!!」
「困ったね…ユキナお姉ちゃん思った以上に頑丈で困るな…紅のおねぇさんはすぐに立てなくなったのに…まあ仕方ないや」
ハザマは妖魔に合図する仕草を送ると、妖魔は口を開きエネルギーを溜め込む
「マグスは多少壊れてもいいって言ってたからね、やっちゃえ」
再びプラズマレーザーが撃たれようとしていた。先ほどのユキナは何とか剣で直撃は避けたものの、今度は避けられない。絶体絶命、その時ときであった
『術式展開!!プロミネンス!スラッシャー!!』
炎の斬撃が、ユキナを拘束していた妖魔を吹き飛ばしたであった。反響音のあるダサい詠唱をした何者かが
「え!?」「なんだと!?」
ユキナとハザマはその何者、そのダサい詠唱をした人物…じゃなく、その魔装鎧に驚く
聖剣のゴートの魔装鎧が一人でに動いていたのだ。先ほど技を放って刀身が真っ赤になっている聖剣デインダイトを持ちながら
『オイオイ、この時代の聖剣の担い手は越材だと思ったら、何手こずっていやがるんだ?見てられなくて起きてしまったじゃねーか』
語りかけてきたゴートの魔装鎧に、ユキナは言葉が出なかった。あまりにも唐突かつ奇天烈な状況に、理解が追いついていなかった
それはハザマも同様だったが、すぐさま攻撃に移り、ゴートの魔装鎧周囲にワームホールがいくつも展開された
『オイオイ、人話してる時に割り込むも無しじゃないか?それともこんな状況は想定外だったか?坊主?』
「うるさいな…!壊れちゃえよ!!」
ワームホールからビームが放たれようとしていたが、ゴートの魔装鎧は慌てることなく、左手に魔力を込めて輝きだし
『へへ…悪りぃが魔王モドキの攻撃なんざオレに通用するかよ!!術式展開!!フォトンゲイザー!!』
魔力を込めた左手を地面に叩きつけて、ありとあらゆる無数の方向に拡散させた光弾で展開してたワームホールを打ち消し、さらにハザマにも当たる
「ぐあああああ!!」
『へへ…どうだこの野郎!!』
出鱈目な攻撃を行使しするゴートの魔装鎧に、ユキナは唖然とするしかなかった
悲鳴を上げて悶えたハザマであったが、ハザマの周囲にドス黒い光を放ち
「キャストアップ!!」
ハザマは異形の怪人の姿に変えた、表情は分からないものの、それは怒りに満ち溢れた雰囲気を出していた
「貴様ぁ!!よくもこの僕に!!この姿にさせたなぁ!!」
『なるほど…状況はよくわからねーが、この時代には人間が妖魔に…というか怪人かこりゃ?変身するのか』
怪人になったハザマに、ゴートの魔装鎧は慌てる仕草も無く、冷静に状況を把握する
壁に叩きつけられた妖魔も攻撃から回復し、立ち直る。怪人と妖魔、ユキナとゴートの魔装鎧を動かしているナニかという状況。決して戦況は有利とは言えないものであった
『こりゃ、良くない感じだな。お荷物な聖剣の担い手と、魔装鎧を動かしている亡霊の二人じゃキツイな』
「いや、余裕をぶっこいている場合じゃないでしょ!?」
ユキナはどこか自分とシンパシーを感じるこのゴートの魔装鎧を動かしているナニかに、思わず意見をする
「決まっているよ…二人とも僕の目の前から壊してやるよ!!」
本来の目的を忘れたであろう怪人と妖魔は臨戦態勢に入り、それを感じ取ったユキナは身構えるが、ゴートの魔装鎧は動じずに、別の方向に視線を向けていた
『悪いが、お前の相手はあの人に任させてもらうよ…頼むぜ、紅の魔女様!!』
「まかされたわよ!!ユーゴ!!」
出入口から炎が放たれ、それは怪人を襲う。怪人は炎に包まれて悶える、それは怪人にダメージを与えるほどの熱量であった。そして出入口からその炎を発射した人物が現れる
それは妖魔大戦時代、かつては紅の魔女の弟子であった焔の魔女が纏い魔装鎧
それは数多の妖魔を爆発的な火力で消し飛ばしたとされる
それはありとあらゆる炎と爆炎の魔法を行使したことで、爆裂と評された魔女
十二騎士が一人、爆裂のスコーピオンの魔装鎧は師である紅の魔女が纏って現れる
「あれは爆裂のスコーピオン!?」
『いーや、爆裂は紅の魔女には似合わないさ、十二騎士が一人として新しい名付けるとしたら…紅のスコーピオンって所かな?』
「そうね…ユーゴ様から認められたからには、名乗っても罪にはならないわね?」
スコーピオンは咳ばらいし、名乗りを上げる。それは礼儀、儀式のように
「十二騎士が一人、紅のスコーピオン。弟子の意思を継いで、燃やし尽くして上げる」
炎を払い除けた怪人がスコーピオンにワームホールの攻撃を仕掛けてくる
「おねぇさん!わざわざ僕のオモチャになりに来たのかい!!」
怪人は紅の魔女だとわかったのか、無邪気に笑いながら攻撃を仕掛けてくる
スコーピオンは避け、防御しながら怪人のワームホールのオールレンジ攻撃を凌ぐ
「誰が!!こっちは魔王に叩き起こされて助力に来ただけよ!!ただ、アンタに手足を撃ち抜かれた借りは返させてもらう!!術式展開、イグニッション!」
スコーピオンは魔法で自らの魔装鎧を炎を纏いながら、ユキナに言葉を送る
「ここは任せるわユキナ…お母さんを救って上げなさない…行くわ!術式展開、ブースト!!」
スコーピオンは怪人に向かって、爆発的な加速による体当たりを行う。その勢いのまま、壁と天井をぶち抜いていき、城の外まで押し込んでいく
「紅様が…怪人を引き受けてくれた…!これなら…」
『どうにもそう簡単にいかないようだぞ?』
残された妖魔の様子変わっていた。頭を抱えて苦しみながら、悲鳴を上げながら周囲に電撃をまき散らす
ユーゴはデインダイトで電撃を弾きながらユキナを守る
「母さま!?どうしたというの!?」
『…おそらく、あの怪人が近くで制御していたんだろうな。元々は制御出来るようなものじゃない…』
ユーゴは剣で弾きながら妖魔の様子をよく見て、少し違うことに気付いた
『違うな…抗っているのか、妖魔の力に…お前さんの母親が』
「母さま…母さまも戦っているんだ…なら!」
ユキナは立ち上がる、ミーラ、自分の母親を助けられる可能性を信じて奮い立つ
『何か策があるのかい?後輩?』
「…ある!母さまを元に戻す方法が!仲間が…カノン先生が!」
『カノン…ジェミニアがこの騒動に関わっているのか…ジェミニアが妖魔を元に戻す手段があるっていうなら、信じようじゃないか』
ユーゴは、妖魔に向かっていくと暴れまわる妖魔を取り押さえる
『ちぃ…オレもそんなに長く抑えられねぇ!だから、お前はさっさとそいつを抜け!聖剣ムーンダイトとそれを封印しているレオの魔装鎧ごと!お前の母親なんだろ!お前が救え!』
ユーゴに言われて、ユキナは聖剣の台座に刺さっている聖剣ムーンダイトに手をかけるが、強力な魔力反応で拒絶されて手が弾かれる
「痛ぅ!?なんて強力な封印を!?」
『何やってんだ?そんなもん、気合で…力づくで抜いてしまえ!!聖剣の担い手ならそのぐらいやってみやがれ!!』
ユーゴに言われて、ユキナは再びムーンダイトに手をかける。激しい魔力反応でユキナを拒絶する封印、だが痛みに堪えてユキナは手を離さない、しかし強固な封印で台座からそう簡単に抜けない
聖剣の封印がここまで強固になっているのはカリバーン王国の中でも過去一であり、ユキナに力なら簡単に聖剣を呼び出してしまう為に、当時の若すぎるユキナには過ぎた代物だった故と、ユキナの素性を守るため
そして、これは試練でもある。ライブラ曰く、”この程度の封印を力づくで抜けなければ今の聖剣の担い手としては力不足”という期待
そしてその期待通りのことが起きていた。母親を救いたいという思いがユキナを奮い立たせる、ユキナが力を入れれ入れるほど魔力反応が強くでて拒絶するが、ユキナは無意識に自身の魔力を放出させて身体能力をブーストさせて、雄叫びを上げながら抜こうとする
その雄叫びはもはや獅子の咆哮のごとく、その声と共にユキナの強力な魔力が地下の聖剣の間の部屋…どころか城全体に地震のような震えを発生させていった
聖剣の台座に亀裂が入り始めて、聖剣の間の部屋のあっちこっちに亀裂が走る
(聖剣ムーンダイト…母さまを救うために、私に力を貸して!!)
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ユキナはついにムーンダイトを台座を抜いた。しかしその反動で地下が完全に崩落し、城の一部が崩れ倒壊してしまい、ユキナ、ユーゴ、妖魔は瓦礫に埋まってしまう
瓦礫の山から、妖魔は出てきて飛んで行こうとした
しかし同じく瓦礫の山を吹き飛ばし、聖剣ムーンダイトを掴み、金色の獅子の魔装鎧を纏ったユキナに頭を捕まられる
「これは…レオの魔装鎧が私に纏った?」
『どうやら、聖剣が抜かれたら自動的に纏われるように仕組まれてたっぽいな』
頭を掴まれた妖魔は電撃を出して暴れるが、ユキナの纏うレオの魔装鎧には通用しない
「母さま…ゴメン!!」
ユキナは妖魔の頭を掴んだまま地面に叩きつけて、抑え込む。それでも尚暴れる妖魔
『…手を貸してほしいか?後輩?』
ユーゴの申し出に、ユキナは首を横に振る
「ううん、私の母さまは私で何とかする…それに…」
ユキナは手に持っている聖剣ムーンダイトの様子がおかしいことに気付く。手で持っているから抑え込めているが、ムーンダイトは何か強い反応をしていた。目の前の妖魔に反応している…訳ではない
(何…?ムーンダイトは何に反応しているの?)
『どうやら、ムーンダイトも、そしてデインダイトも同じ反応しているようだな…妖魔以上の存在に敵意を向けている…オレは聖剣が敵意を向けている奴の相手をしてくる…母親を絶対に助けろよ後輩!仮面の騎士は悪党には負けられないんだからよ!』
ユーゴは聖剣デインダイトに導かれるように、何処かに飛び去って行く
ユキナはいまだに暴れる妖魔は強く抱きしめて、飛んで行く
「母さま!もう少しの辛抱だから!」




