百年祭 くもの怪人討伐戦/ミーラ王妃誘拐作戦
前回のあらすじ
百年祭で国王を暗殺しようとした蜘蛛の怪人
ウロボロスカードを埋め込まれて今にも妖魔にされそうにされているミーラ王妃
二手に分かれて、グランとリーノは蜘蛛の怪人の討伐
カノン、ユキナ、メノンはミーラ王妃のウロボロスカードの解除の為、ミーラ王妃の誘拐作戦を試みていた
『串焼き屋の女将?』
「ああ、あの蜘蛛の怪人の正体はその人だ…正確には店主さんだけど、魔法の学生達からは女将さんってあだ名で呼ばれているんだ」
グランは歩きながら聖王都の商店街の一つの方に向かっていた。それは百年祭の会場から離れ、グランやユキナが通う魔法学校に近くであった
「学生の間…というかこの方向から通う聖王都魔法学校出身者ならほとんどが知っている老舗の名店なんだ。父の世代からあったらしく、魔族である女将さんとその旦那さんが営む串焼き屋…特に牛串は絶品なんだ」
『絶品って言葉が出るとはねぇ…是非とも私も食べてみたいものね…というか叔父上とメノンは、美味しいものを味わい過ぎなのよ』
カノンと意識を繋げているリーノは、カノンとメノンが百年祭を楽しんでいることも筒抜けである
「…その店は旦那さんが亡くなった後も、女将さんと看板娘二人が頑張って盛り上げていて、見るたびにいつも賑わっていたよ…少し前まで…というより3か月前まではだけど」
グランが目的の建造物の近くになると、歩みを止める
『…これは…全焼した建物?』
グランが目的地には、焼け落ちた建造物の跡地であるのがリーノでもわかるほどであった。周囲の建物も巻き込まれたのか、壁や屋根が焦げている形跡があった
「3か月前、魔族を気に入らない活動家連中が店を襲って、火を放ったんだ…女将さんも火傷を負ったものの命に別状はないものの、看板娘の二人は重体って話だ…あれから色々立て込んでいたから、気にかけていなかったけど…」
店が焼け落ちた跡地の前に、フードを被った人物。広場にいた姿と酷似する人物がそこに立ちすくんでいた
『…マジか、いきなり当たりを引くとは…やるじゃないグラン』
「…正直な話、当たりたくなかったのもあるよ…ねぇ、女将さん」
グランに話しかけられたフードを被った人物は、ゆっくりグランの方向を向く
「…グラス家のご子息のグラン君?」
「お久しぶりです女将さん…以前にお見舞いに行ったきりですかね?」
女将はフードを脱ぎ、グランに顔を見せる。魔族の女性というだけあって、見た目は20代にも見えるほどに若々しく見えるが、相当やつれた顔をしていた
「先ほどはすみません、女将さんだろうなって思ってはいましたが」
「…そうか、あの時の私を止めてくれてたの、グラン君か…」
グランとリーノは女将の言葉に違和感を感じた、おそらく蜘蛛の怪人はこの人で間違いはない。だが、女将の反応はどこか他人事のような口ぶりであった
「…広場でのこと、覚えていないんですか?」
「……何かを持たされて、何か暴れた覚えはある…そこからは…」
女将は自分自身が何をやったのかよくわかっていない様子であった。国王を暗殺しようとしたことに
「一体何があったんですか?女将さん、娘さん達はどうしたんですか?」
「…娘…?」
自身の娘のことを聞かれて、一層女将の様子がおかしくなる。頭をかきむしりながら、何かを思い出すように
「そうだ…私は、あの子達の為に…あの子達の為に!…アノコタチノノタメェ二ィィィ!!!」
女将は頭を抱えながら苦しみ始める。涎を垂らし、白目を向いて苦しむ姿は、美人で評判の女将の面影が無いほどに
女将の豹変にグランとリーノは恐怖を感じる、何らかの異変の予兆、もしくは怪人か妖魔に変身する予兆なのか、グランは懐のホルスターにある、魔装銃に手をかけつつも、グランとリーノは女将の様子を観察する
(…もしかして、洗脳系の魔法の副作用か?)
『おおよそ正解かもねグラン…だけど、ここまで酷い症状はなかなかというか、聞いたことがない…あのままだと、あの人心臓止まるかも』
(解除系の魔法なら…)
グランは魔装銃を抜こうとした時、リーノは勘付く
『待って…反応が6つ…来るわよグラン』
リーノがグランに警告した瞬間、女将は何かに拘束されて動けなくなり、舌を嚙まないようの配慮か猿轡まで装着される
(…透明な糸?これは、人形使いが扱う魔法?)
女将を拘束している魔法を看破するグランの目の前に、二人の男が女将の隣に降り立つ
一人は片手で何かを操っている仕草、もう一人は本を片手に持ち、グランの顔を見て拍子抜けした表情をした
「おやおや?その特徴のある帽子をかぶっているのはカノン・サイクかと思ったら…とんだつまらないモノを引くとは…餌として役割を果たしていないんじゃないかな?ドドーン君?」
「貴殿が”カノン・サイクなら探し当てる”と申したのであろう?マグス殿?折角の人形を、下らないことで壊されてたくもないんだが?」
透明な糸を操るドドーンと、本を持っているマグスの会話に、どこか不快感を感じるグラン
一つだけわかることは、こいつらは敵であるという認識をグランは持つ
「ふーむ…本当ならカノン・サイクとお会いしたかったのですがねぇ…とは言え、探し当てたことだけは敬意を表して、自己紹介をしましょうか」
マグスは咳ばらいをし、本をめくりながらグランに語り掛ける
「我の名はマグス!ウロボロスの幹部の一人にして、此度の悲劇を演出したもの…そしてこちらはドドーン君、我々の優秀な人形使い…まあ、蜘蛛の怪人とその素体の制御をしている者だと思っていたたければ幸いかと」
まるで俳優のような振る舞いをしながら、自分たちの素性を語るマグスに、グランもリーノもさらに不快感を持つ
いまにも魔装銃を抜きそうなグランであったが、抑えて、彼の素性をもっと引き出そうと会話をする
「…女将さんに一体何をした?」
「おお、これはこれは怖い顔で見てきますねぇ…彼女には我々の実験の一つに協力してもらう代わりに、彼女のお子さん達の治療を我々が引き受けたんですよ…かわいそうなことに、彼女の看板娘達が入院した病院では手が付けられない…そんな絶望していた時に、我々が手を差し伸べた…それだけの話ですよ?」
「実験…女将さんの体にウロボロスカードを埋め込んでか?」
「…おや?そこまで知っていたのかですか?」
しまった、グランは迂闊に口を滑らせてしまったことに気付く。ミーラ王妃がウロボロスカードを埋め込まれたということから、女将も同様にウロボロスカードを埋め込まれたものだと思ってしまったのだ
「ふーむ?ほうほうなるほどなるほど…カノン・サイクとユキナ・グラスはミーラ王妃の所に向かっているということか…それはそれで面白い!自らの手で妖魔となった母を殺すか、師である者に殺されるか…どの道にユキナ・グラスの悲劇に満ちた物語がまた綴られることになる!」
マグスのおおよその推測があっていることより、何が嬉しそうななのか、グランとリーノにはこの男のことは理解出来ないでいた
「ありがとう、せめてのお礼に我が物語の一ページに君の名を綴ろう!”グラン・グラスは悲劇的な今度こそ死を迎える”」
「…今度こそ?」
「ええ、私が書いたこの本によれば、グラン・グラスはセルゲイ・ローレルと共に鉄塊の怪人に殺される。そういう話だったんですがね…君は所詮脇役、そこで退場する予定だったんですが…全く、カノン・サイク…いや、刃のジェミニアによって私の書いた本は大幅な改訂せざる得なかった…だが、一層に物語は面白くなる!悲劇的に!壮絶に!!」
マグスがドドーンに合図を送ると、ドドーンは女将に魔力を注ぐと、女将は苦しみながら変身の反応を見せる
「彼女も可哀そうなことをしましたよ本当に…我々が差し向けた活動家達に店は焼かれて、助かっている思っている娘達も、まさか自分より酷い扱いされているとは…夢にも…いや、もはや今が現実なのか夢なのかすら理解すら出来ていない…ですが、この悲劇の物語も私の本の一ページとして…」
マグスが嬉しそうに本に何か書こうとした瞬間、本とマグスとドドーンの頭部に火炎弾が直撃する
そのまま本は燃えて焼失し、マグスとドドーンの体は炎に包まれる
「…何が嬉しんだよ…ふざけるな」
マグスとドドーン、そして意識を繋がっていたリーノですら、認識できない速度でグランは魔装銃を抜いて火炎弾を撃ったのだ
「何も罪もない者から大事なものを奪って壊して、あまつさえ大罪を犯させようなんてこと、何が面白いんだ!!」
マグスに対して激昂するグラン対し、マグス達は
「…やれやれ、セルゲイの弟子の癖に随分短気で短慮というべきか…私のこの崇高な行動を理解出来ぬとは、やはり君は三流以下の脇役だよ」
マグスとドドーンは炎を払いのけて消火する、全くのダメージは無いわけではなく、肌が焼けて筋肉組織が見えていたが、それは徐々に再生していた
『やはり、こいつらもウロボロスカードを何かしらの方法で行使しているか…怪人状態じゃないのに、肉体の再生…』
「だとしても、引く理由にはならない…こいつらは絶対に許すわけにはいかない」
グランは魔装銃を一層に強くに握るこんで、マグス達に向ける
「生憎、私とドドーン君は荒事は得意ではないのでね…君の相手は彼女と、ハザマ君のペットに相手してもらおうか」
マグスは指を鳴らすと、建物の屋根から3体の動物…グリズリーらしきものが現れ、飛び降りてきて、グランを囲むように降り立つ
『残りの魔力の反応はこいつらか…グリズリーを改造したものかしらね?』
リーノの言うとおり、グリズリーの見た目は異様な姿をしており、おそらく怪人同様の存在だと推測する
「妖魔獣…まあ、我々の実験段階で生まれたものですが…ただあまり細かい制御が聞かないから困った話ですが」
グリズリーは立ち上がり、グランに視線を向ける
「君を始末することはできる!妖魔獣と蜘蛛の怪人!悲惨な死は必然!安心した前グラン君!脇役である君の悲劇は私の一ページに乗ることを誇りたまえ!!」
女将は苦しみながら、蜘蛛の怪人に再び変身する
蜘蛛の怪人に妖魔獣3体、グランを今にも襲い掛かりそうに囲む。マグスの言う通り、このままでは悲惨な死は確実な状況、絶望的な状況にリーノはさらに絶望的な情報をグランに言う
『…あの妖魔獣とやら、おそらく怪人同様に空戦能力を持っている。どうするグラン?女将さんを助ける余裕があるとは思えない状況だけど?』
「…決まっている、オレは女将さんを助ける」
グランは覚悟は最初から決まっていた、どんな絶望的な劣勢でも
「女将さんは被害者だ。誰がなんと言うと救われないと意味がない、オレはあのマグスの企みがよくわからないが、それでも奴らの思い通りになる展開なんて真っ平ゴメンだ…それに、この程度が出来ないとセルゲイ先生とカノン先生の弟子として失格だ…!魔法に苦しめられている人を魔法で救わなちゃいけない」
「グラン君…一人で何が出来るというのかね?魔装鎧も持たぬ君が?」
マグスは知らない、グランは魔装鎧を持っていることを
「そいつはどうかな?少なくともここにもう一人、貴様たちの敵対者がいる。術式展開、ワームシュート」
マグスは知らないのである、この綺麗ごとが好きな騎士がいることを
何者かの声が聞こえた瞬間、何処からともなくビーム弾の雨がマグス達や怪人達に降り注ぐ
怪人達は身を守りつつ、グランから離れ、マグス達は直撃を受けて住宅の壁に叩きつけられる
「これは…時空系の魔法!?」
グランが驚くの無理もない、時空を操る魔法は現代魔法でもそうそうお目にかかれないものである
『空間を繋いでの攻撃…ワームホールを作り出すなんて芸当、そして今私たちの味方になってくれる人物は一人しかいない』
それは空間を引き裂いて、グランの目の前に現れる、漆黒の魔装鎧を纏い、マントをなびかせ、大剣を持った騎士
それはかつて妖魔大戦時代、時空を操る魔法を行使し、数多の妖魔を葬った
それはかつて妖魔大戦時代、魔族をまとめ上げた王であり、聖剣のゴートの盟友
「十二騎士が一人、裁定者のライブラ」
そして、十二騎士の一人でもあり、魔族の王、魔王
「またの名は、魔王ライブラ、最高の魔王を今も目指している者だ…そして貴様らの罪を、断罪するものだ」
グランとライブラが蜘蛛の怪人と遭遇している間、王城の正面の門
轟音と共に門が破壊され、門番の騎士数人が門から広場にぶっ飛んで来た
「な、なんだ!?」「例の怪人の襲撃か!?」
広場に駐在していた騎士達が、魔装鎧を纏い始める
土煙と共に現れたのは、仮面を被り、青龍刀を持った魔法使い…というよりカノン・サイクが現れた
カノンは息を吸い、騎士達の前に宣言をした
「…我々は聖剣の正統な後継者!聖剣をいただきに参った!」
カノンはあながち間違っていないことを宣言し、騎士達を挑発する
こうしてカノンと王城の騎士達の交戦が始まっていた
広場に騒ぎは、ミーラ王妃の部屋にも聞こえた
「…どうやら来たようね」
ミーラ王妃を護衛についていたマリー王妃が広場の状況を察する、それはそれは嬉しいそうに
「マリー様、なんだか楽しそうですね」
「そうね、ライブラ様の推測通りなら刃のジェミニアはここを襲撃にくる…私は近衛騎士団長として迎え撃つ…かのジェミニア様と剣を交わるなんて、騎士としてこれほど嬉しいことはないわ」
ミーラの心配を余所に、マリーは高揚していた
マリーの世代でも、伝説に謳われる十二騎士の一人を相手に出来るなんて夢のようであった
「私はこれから迎え撃ちにいくから、少しの間貴女の元から離れる…怪しい人について行っちゃダメよ?」
マリーはとてつもなく悪い顔をして、ミーラに語る
それは、これからミーラの元に誰が来ることをわかって、まるで誘拐されろと言わんばかりに
「マリー様…」
「…信じなさい、十二騎士と彼女を」
マリーは部屋の窓から、広場に降りていく、数十mの高さもある所のミーラ王妃の部屋から
カリバーン王国の騎士達が纏う魔装鎧は、空戦能力や突出した能力を有していないものの、基本性能だけなら十二騎士の魔装鎧とさほど変わらない
にも関わらず、近衛騎士達は魔装鎧を纏っていないカノン一人に圧倒されていた
決して近衛騎士達が弱い訳ではない。カノンが突出して戦闘能力が高いのである。
自前の反応速度と魔力感知によって、動きを読み、魔装鎧の弱点、騎士たちが馴染みのない近接戦闘術にそれを補助するように魔法も駆使してくる。それよりになによりも、妖魔大戦の最前線で戦い続けた場数が圧倒的に違うからである
しかし、現代の騎士の中にはカノンと互角に渡り合える者もいる
(上から!?)
カノンは青龍刀と蛇腹剣で、ミーラ王妃の部屋か飛び降りてきたマリーの剣を受け止める
受け止められ、押し返されたマリーは宙返りで広場に着地する
「団長!!」
マリーを見た近衛騎士の一人、マリーのことを団長と呼んだ
(団長?…そうか、この人が)
「やるじゃない仮面の魔法使いさん?まさか魔装鎧を纏わずとも、我が騎士達を圧倒するとは…これは、私が相手をするしかないじゃない…キャストアップ」(キャストアップ)
マリーは腰に巻いている魔装鎧のドライバーの起動させる
「カリバーン王国第一王妃であり、そしてカリバーン王国近衛騎士団長、マリー・カリバーン!いざ参る!変身!!」(ヘンシン)
マリーは魔装鎧を纏った姿になる。近衛騎士団が纏う魔装鎧は見た目はほとんど同じであるが、マリーが纏う魔装鎧は装飾やデザインが異なり、見た目で特別であるのが一目瞭然であった
「…なるほど、他の魔装鎧とは出力も違うようだな」
そしてそれは見た目だけじゃなく、性能も違うこともカノンは見抜く
「さて、他の者は手出しは無用!!この者の相手はこの私が相手をする!!いざ!!」
マリーは二刀の剣に魔力を込めて、カノンに襲い掛かる。茶番とわかっていても、本気でマリーはカノンに挑む
裁定者のライブラ スペック
パンチ力 40トン
キック力 20トン
装備 大剣
使用魔法
次元や空間、重力を操る、分類的に時空系の魔法を得意とする
ワームホール
ワームシュート
ディメンションウォール
グラビティウォール
グラビティフィールド
次元斬
魔装鎧の特殊機能”フルドライブ”を実装
最高速速度
マッハ2




