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百年祭 どちらも救う

広場はまだ逃げている市民や、避難を誘導している憲兵がいるものの、蜘蛛の怪人とジェミニアの周囲には何もない状態

倒れていた騎士も、他の者達に抱えられて離れ、国王もユキナとグランが足止めしている間に何処かへ避難している


(とは言え、こいつと市街地で空中戦、遠距離戦をやるのは被害を広げる…近接の地上戦で仕留める)


ジェミニアは左手に風の剣、右手に杖。蜘蛛の怪人に仕掛ける

蜘蛛の怪人も反応するが、ジェミニアの速度には到底及ばず、風の剣と杖の二刀流の攻撃を8本の脚と鋭利な爪の両手で凌ぐのがやっとである

反撃に移ろうとしても、ジェミニアの反応速度で対応されて回避か凌がれて、手痛いカウンターを叩き込まれる

蜘蛛の怪人は一度距離を取ろうとするものの、ジェミニアはそうはさせない。なにが何でも空中戦に持ち込ませないように攻撃を叩き込む


(やはり妖魔以上に再生能力が高い上に頑丈か…!隙を作らせて、強力な一撃を叩き込むのが最善策か)


蜘蛛の怪人の押し留めながら、ジェミニアはカードを取り出し、魔力を通して黒いナイフを出現させる


術式展開(シーケンス)、陰陽術、影縫い!」


ジェミニアは地面に映る蜘蛛の怪人の影に黒いナイフを刺す。蜘蛛の怪人はその場から足が動けなり困惑の反応をする

東の大陸の魔法、影縫い。対象者の影に刺すことで、相手の動きを止めることが出来る


〈マキシマムチャージ…シーケンス〉


動きを止まった蜘蛛の怪人に、ジェミニアは最接近し、左手に掌底の構えを作り魔力と風を収束させる

速度を活かして威力を叩き出すウインドストライクは、この状況下では活かせないが、速度に依存しない威力を叩き出す攻撃手段もジェミニアはいくつか持ち合わせている、竜巻を発生させて回し蹴りを叩き込むトルネードインパクト、そして東の大陸の体術を組み合わせた風と魔力を込めた一撃


術式展開(シーケンス)、ウインドインパクト!!」


ジェミニアは風の魔法で強化された発勁を蜘蛛の怪人の腹部に叩き込む。凄まじい轟音ともに蜘蛛の怪人をぶっ飛ばし、倒れこませる

妖魔の鎧は先ほどグランのパイルバンカーを叩き込まれた以上にボロボロになり、蜘蛛の怪人は苦悶の声を上げつつも、立ち上がろうとしている。ダメージが大きいせいかなかなか起き上がれずにいた


(叔父上、この怪人ってもしかして…)


リーノがジェミニアの頭に語り掛けてくる


「十中八九、操られているんだろうな…可哀そうだが、これ以上被害を広げるわけにはいかんだろう…オレが始末する」


この蜘蛛の怪人の正体は、何らかの理由で操られていることにはリーノとジェミニアは戦闘の最中で分析をしていた。しかし、これ以上の長引かせるのは得策ではないと判断し、覚悟を決めたジェミニアは風の剣を発生させながら、倒れている蜘蛛の怪人に近づいていく

しかし、蜘蛛の怪人の体が大量の黒煙が発生し、自身の周囲に黒煙をまき散らす


「な…!?」


流石のジェミニアも想定外であったが、この状況に勘付く


(逃げられる!)


そう思ったジェミニアは、指を鳴らし風の刃で倒れていた蜘蛛の怪人を打ち込むが、手ごたえがない


「ちぃ!…術式展開(シーケンス)!ウインドボム!!」


爆風を発生させて、黒煙を強引に晴らすが、そこには倒れていたはずの蜘蛛の怪人の姿は無かった

ジェミニアは急いで上昇し、街中に見渡しながら魔力探知を行うが


「…リーノ、どうだ?」

(…ダメだ叔父上、完全に見失った…)

「オレもだ…しくじった」


まさか自分が仕留め損じることに落胆をしつつも、ジェミニアは広場から離れ何処かへ飛んでいく


白昼堂々かつ、百年祭のめでたい日に行われたカリバーン国王暗殺未遂事件。これまで隠していた怪人の姿も民衆が目撃し、存在を認知される。パニックになって逃げ出す民衆に怪我はあっても、憲兵達の誘導による迅速な対応によって奇跡的に死者は出なかった

だが、百年祭は一時的に中止、広場や周辺数キロは避難地区となり、関係者以外立ち寄れない状況になっている

これが国王暗殺未遂事件が起きて、1時間で行われた対応であった

まるで、この暗殺が起こること、民衆がパニックになること、怪人が出てくることが想定されたかのようなカリバーン王国側の対応であった


「…流石に手際が良すぎないか?騎士団といい、憲兵団も…というか関係各所がそれを想定して用意されていたというか…」


以前、カノンが宿屋として使った場所にカノン、メノン、ユキナ、グランは集合していた。万が一の合流場所として以前から提案をしていたのだ

カノンは現在の状況をメノンから聞かされて疑問を持つ


「最初は大規模なお祭りだから、このぐらいは想定されていたのかなって感じで警備状況は魔法省から聞いてはいましたが…」

「だとしても、こんな迅速に対応できるのは予め暗殺が行われることをわかった上での速さだぞメノン…まるで国王陛下を囮にでも使ったような…」


囮を口にしたことにカノンは何か気付く。この手の手法に心当たりがある、正確にはこの手の手口を使う者の存在を知っている


「…あえて大物を囮として炙り出す手口…リスクを承知で、万全な布陣を取る…そんなことをやるとすれば奴か」


カノンは宿屋の外の扉の前に誰かいることに気付き、答えを言葉にだす


「裁定者のライブラなら、そういう作戦を立案する…そうだろ、ライブラの従者、セバスチャン。遠慮せずに、入ってきなよ」


カノンが閉まっている扉の方に語り掛ける。少しの間があった後に


「流石はジェミニア様…いえ、カノン様と今はお呼びするのが正しいでしょうか」


扉を開けて入ってきたカノンにゼバスチャンと呼ばれた者は、カノン達より小柄で、肌色も緑色。それは身なりがしっかりとしたスーツに、それに相応しい立ち振る舞い、立ち方をしている魔族、ゴブリン族の者であった


「ユキナ様、グラン様、メノン様、お初にお目にかかります。私は裁定者のライブラ様の従者であり、そして使いの者として参りました、セバスチャンと申します。以後、お見知りおきを」


丁寧にあいさつするセバスチャンに、名前を呼ばれた3人も思わず丁寧にお辞儀をして返す


「2年振りだなセバスチャン、あなたが来たということは、ライブラの奴がオレに何か頼み事ということか…それもかなりひっ迫した状況だと伺える」

「そうなんですか?カノン先生?」

「ああ、そうでなければライブラの奴は直接ここに赴くはずだ。ということはライブラ自身も何かしら動いているということなんだよユキナ」


ライブラの行動理念を理解しているカノンに、セバスチャンは頷きながら返答をする


「お話が早くて助かります…実は、ミラー王妃のことです」


セバスチャンは、ミーラ王妃の身に起きたこと、紅の魔女が負傷したことをカノン達に話し、カノンは現在のカリバーン王国の状況が、非常に危険な状態であることを理解したのだ


「ミーラ王妃…母様が…そんな…」


ユキナは強く拳を握りるこむ。余りにも力が入りすぎて震えるほどに

実の母親が命の危機に晒されていること、そしてそれを手引きしたのがナナコであることに様々な感情がユキナに渦巻いていた

今すぐにでも母の元に行きたい。だけど冷静にならなければならない

少し前までのユキナであれば、ここから走り出して母の所に向かっていた


「…ユキナ」


ユキナの並々ならぬ気持ちに気付くグランは、釘を刺すように名前を呼ぶ

ユキナは深呼吸をし、震える右腕を左手で抑えながら


「大丈夫だよグラン…ここでジタバタしても事態は好転はしない…それに、ここにはカノン先生がいる」


ユキナはカノンに目線を送る。この人なら何とかしてくれるという期待の眼差しを


「やれやれ…期待されたら、応えたくなるじゃないユキナ」


カノンは苦笑しつつも、嬉しそうに返す。だが、カノンとしてはこの状況は想定より劣勢していることは感じていた


「…精鋭の宮廷魔法使いでもウロボロスカードの存在を暴けないとは…それに解除も出来ないと来たか…まさかだと思うが、ミーラ王妃に埋め込まれたウロボロスカードを何とかしろってことか?セバスチャン?」

「その通りですカノン様。ライブラ様は、カノン様であればウロボロスカードを解除する手段を持ち合わせている可能性があると」

「そして最悪は、オレの手でミーラ王妃を始末しろってことか」


カノンの言葉に、3人は驚く反応をする。躊躇も迷いもなくそれを言うかという


「…安心しろ、もとよりそんなつもりは無い。折角ユキナと仲直り出来たというのに、わだかまりが出来るようなことはしたく無い…それにな、妖魔の力を利用する悪党共の好きにさせるつもりは無い」

「流石カノン様、そう言うと思いました」


セバスチャンはカノンはそう言うと信頼し、微笑む


「だが、セバスチャン。陛下を狙った連中はどうする?今の話と、陛下達の行動を見て何となく何を狙ったのかはわかったが…ミーラ王妃に…ウロボロスの連中とというべきか、そいつらがミラー王妃にウロボロスカードを埋め込むだけが目的とした訳じゃない可能性を想定して、別の目的を炙り出す為に陛下を囮として、結果的に怪人が現れた訳だが…そいつを放置する訳にはいかないだろ?」


セバスチャンは、カノン達にはミーラ王妃のウロボロスカードの解除を頼んできたが、聖王都の何処かに潜んでいる蜘蛛の怪人も脅威に変わらない


「かの怪人は我々とライブラ様の方で対処いたします、ご心配なさらず…と、言いたいのですが、素性も所在もわからぬ相手故に総当たりで調べてもかなり時間がかかる上に、おそらく聖王都の被害もかなり大きくなると思われます…何せお互いに空戦能力を有した者同士が街中で本気で戦えばどうなるか…カノン様はご理解されていると思われますが」

「だな、建造物だけじゃなく、市民にも被害が及ぶ。あそこで仕留めれていればセバスチャン達にも苦労を掛けずに済むが…だからと言ってミラー王妃を放置するのもマズイ…どちらにせよ後手に回った以上、被害は避けられない…せめて相手の位置がわかれば、戦闘行為の地区を絞り込んで、周囲を立ち入り禁止なり出来ればいいんだがな」


頭を悩ませるカノンとセバスチャンの会話に、グランを静かに手を上げながら会話に割り込む


「カノン先生…もしかしたら、あの怪人の素性、オレとユキナはわかったかもしれません」

「何!?本当かグラン!?」


グランが情報を持ってことが想定外であり、カノンは驚きを隠せなかった


「フードで姿を隠れていましたが、少しだけ見えた横顔…オレとユキナは見間違えません。だよなユキナ?」


グランはユキナと顔を見合わせて、お互いに頷く


「うん…私とグランは昔から知っている人物です、一応、何処に住んでいるかのも知っているぐらいには…」

「そこから相手の所在を絞り込める可能性がある?」

「あくまでも可能性での話ですが…」


ユキナとグランの回答に、カノンは頬杖付きながら思考を巡らせる。ミラー王妃と蜘蛛の怪人、この二つの事案に考えられる最善策を導き出す

そして、答えを思いついたカノンは帽子を脱ぎ、グランに被せる


「え?カノン先生?」


困惑するグランに、カノンは懐から魔装鎧をカードを取り出し、それを渡す


「グラン、その二つを貸してやる。蜘蛛の怪人、お前に任せる…お前達で蜘蛛の怪人を倒すんだ」

「な…」


さらに困惑するグランであったが、カノンはお構いなしに続ける


「その帽子は魔力探知能力もあるし、リーノ・サイクと意識を繋げることが出来る…リーノと協力して、お前がジェミニアとして戦え。お前はセルゲイの弟子だ、そしてリーノは魔法知識と分析能力、演算能力においてはお前の助けになってくれる。グラン、お前なら上手くやれる」


グランは無理難題だと思っている、それはセバスチャンも同様であり


「カノン様、いくら何でもそれは…」

「どのみちライブラだけに押し付けるのもリスクがある。それならセルゲイの弟子であり、空戦技術を有している戦力が一人でも多い方がいい、ミーラ王妃に蜘蛛の怪人…どちらとも救える手段はそれしかない」

「カノン先生は、蜘蛛の怪人も救おうとしていたんですか?」

「あれは何かしらの手段で操られている…広場でやりあったときは始末するつもりだったが…グランとユキナの顔馴染みであるなら救えた方が目覚めがいい…それにな、オレとしては悪党ども好きにさせるのが気に入らない…仮面の騎士は悪党に屈しないのさ」

「…仮面の騎士は悪党に屈しない…ユーゴ様なら、確かにそう言う事を言いますねカノン様」


セバスチャンはカノンの懐かしいワードに思わずに微笑む。かの勇者であればやるであろう行動。この言葉出た以上、セバスチャンは反論する言葉がなかった


「ミーラ王妃は、オレとユキナ…そしてメノン。今回はお前の力を借りたい。サイク家であれば、オレが使う魔法はもうわかっているだろ?」

「ええ、既存の解除の魔法が効かないとなれば、アレしかないですもんね叔父様」


メノンはミーラ王妃の状態から、カノンがどの魔法を使うかは既に想定出来ていた


「ユキナ、お前には城の案内…というかミーラ王妃を連れ出してこい」

「…ん?王妃様のウロボロスカードを解除するのに、連れ出さないといけないんですか」


ユキナはいま一つカノンの言葉を理解できずに、聞き返してしまう

なのでカノンはもっとハッキリと物騒なこと言う


「ミーラ王妃を拉致し来いって言ったんだが?お前ならミラー王妃も大人しくついてくるだろ?」

「いやいやなんでわざわざ…」

「ダメもとだが…連中の目を欺く目的だ。オレたちがこの混乱に生じてミラー王妃を誘拐しに来たテロリストを演じる。上手く行けばウロボロス連中がミーラ王妃を妖魔にする前に解除できる」


とんでもないプランを出してきたカノンに対して、現在の想定される王城内の警備を知っているユキナはこれは無謀であると考える


「いやいやいや、カノン先生…流石に私でもミーラ王妃を連れ出すは難しいですよ…絶対近衛騎士団が護衛しているだろうし…話を聞く限り事情を知っている騎士団長でも、今からこのプランを伝える時間もないのでは?」

「そこは正面からオレが暴れてやる。オレが近衛騎士団、そしてその騎士団長相手に足止めする。その間にミーラ王妃と接触するんだ、王城内に詳しいユキナなら、警備が薄ければいけるだろ」

「いやまあ、確かに…」


ここまでやらないといけないかとユキナは思うが、カノンの立てたプラン以上に方法が思いつかないのも事実であった


「正直、これがうまく行くとは思わない…必ずミーラ王妃にウロボロスカードを埋め込んだ奴も現れるだろし…ナナコも現る可能性もある」

「…カノン先生、もしかしてその為に?」

「今のお前ならナナコと接触しても大丈夫だろし…どのみち、この戦いはユキナが用いる全ての力を使うしかない。そのために王城に行くしかない」


ユキナが王城に行く理由、ユキナの力、そして武器がそこにあるからである


「ミーラ王妃誘拐、そして蜘蛛の怪人退治…二手に分かれてことに当たる。そして両方とも必ずに救う…悪党の相手に、仮面の騎士は負けられないからな」




蛇足


カノンが被っていたトンガリ帽子は、リーノ・サイクと意識を繋げている為、グランはリーノと会話が出来るようになる

以前にサイク図書館に招かれて以来に聞く声の第一声


(さて、初めての共同作業ねダーリン?)

「…せめてちゃんと名前で呼んでくれませんか?」


囁くように語り掛けてくるリーノに、グランは顔が赤くなる


(ちゃんと、私の名前を呼んでくれた考えるわ…それと敬語は不要よ。いざという時にノイズになる)

「…わかったよ、リーノ…」


リーノにからかわれることはわかってはいたグランだが、気が思いやられていた

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