百年祭 食べ歩き
百年祭
妖魔大戦終結から100年を祝ったカリバーン王国、国中がそれを祝って様々な露店や催しがしており、十二騎士達の銅像が飾られている広場では音楽隊の楽器での演奏、露店のあちらこちらでは子供たちにウケているゲーム、射的や輪投げが行われ、お面売り、普段お目にかかれないような料理を提供する露店でにぎわっていた
「叔父様!!あそこの屋台!何でもタコという海洋生物を小麦の丸状に提供している変わりものの料理が!!」
「なに!!あの面妖なタコを食せるというのか!?行くぞメノン!!」
黄金のサジタリアスのお面を頭に付けたカノン、刃のジェミニアのお面を頭に付けたメノンは百年祭の露店の料理に夢中になっており、子供のように…子供以上にはしゃいで駆け抜けていた
「大人たちが一番はしゃいでいる…」
「ユキナは知らないだろうが、カノン先生、滅茶苦茶百年祭楽しみにしていたんだよな…何が何でも楽しんでやるっていきこんでいたからな」
はしゃいでいるカノンとメノンに呆れてる、ライブラとレオのお面を頭に付けているユキナとアクエリアスのお面を頭に付けているグランは、二人に逸れないように露店で買った果実飴を舐めながら歩いていた
「しかし、カノン先生色々と顔があるというか…普段は余裕のある大人って感じだけど、怒るときは物凄く怒るし、…こういう感じに無邪気で目をキラキラして子供みたいな行動をするというか何というか…」
「…どうやら、カノン先生と仲直りしたようだなユキナ?」
今の言動だけでグランはユキナの様子、心境の変化に気付く。カノンとユキナ…というよりユキナがカノンに寄り添ったことに気付く
ユキナはグランの指摘に、少し驚くが、すぐに納得して答える
「…まあね、いつまでもいがみ合っても仕方ないし…カノン先生の本音が聞けたから…仕方なく寄り添ったの」
「素直じゃないな…それがユキナだしな」
長い付き合い故に、お互いに多少の失礼な言葉には気にしていない…そう、長い付き合いだからこそ、勘づく。ユキナは勘づく
「…もしかしてだけど、グラン。アンタ、カノン先生に何か入れ知恵でもした?」
勘づいたユキナはジト目でグランを見る。グランはそれを聞かれることを想定内だったのか、さほど表情を変えずに
「…ユキナはお涙頂戴の話にチョロいから、そういう話を持っていくなら、仲直り出来るという助言ならしたがな」
「チョロい…まあ、確かにそうだけどねぇ」
「その様子だと、随分感動的な話だったそうだな?」
「教えてやるもんか」
少々不貞腐れながらも、そもそも話題を振ったのはユキナ自身であり、カノン自身も話自体は大袈裟に語る訳でもなく、正直な事実を語ったということはユキナは理解している…というより信じている
「まあ、いい機会だからオレたち同士でも話会おうじゃないかユキナ。カノン先生とメノンさんを見失ってしまったし」
グランの言う通り、カノンとメノンは祭に賑わう人ごみの中に入ってしまい、二人には視認が出来ない程離れてしまった
探すのも面倒だと判断した二人は、広場のテーブルにつく
「ユキナはたぶん聞いていないと思うが、カノン先生はオレ達の魔装鎧を何とか用意出来ないか色々手を打っているらしいんだ」
「魔装鎧って…アクエリアスの魔装鎧以外の?」
「それも空戦能力を有した魔装鎧を…マジでカノン先生はオレ達を新しい十二騎士にするようだ…とは言え、空戦能力を有した魔装鎧は作るのは難しいから、既存の魔装鎧をらしいけど」
空戦能力を有した魔装鎧は、グランがカノンに聞かされた限り、現存するのは12基
「十二騎士の魔装鎧、使用されていない物を何とか出来ないか色々調べたらしいが…調べている内に一つの魔装鎧の行方がわからないという事実が発覚して、別の問題が発生したらしい」
「…そりゃ…十二騎士の魔装鎧の行方がわからないというのは、仕方ないんじゃないの?元々は100年前の代物なんだから」
ユキナの言葉はごもっともであり、数年ならともかくとしても100年の時が経過していく中で、十二騎士の魔装鎧が紛失や行方がわからなくないケースがあっても不思議ではない
なので、グランはもっとこの行方がわからないという意味を語る
「カノン先生の言葉と理屈を借りるとすれば、例え行方がわからなくなってもそれまでの痕跡は辿ることが出来るらしい…だけど、カノン先生が行方がわからないという魔装鎧…月光のピスケスの魔装鎧は、ある日を境にパッタリ行方をくらました…妖魔大戦が終結して数年程で、月光のピスケスとその魔装鎧の所在、それに関する痕跡が消えているらしんだ」
月光のピスケス、かつての十二騎士の一人であり、カリバーン王家の聖剣の一つであるムーンダイトを振るい、妖魔を切り伏せてきたと伝えられており、妖魔大戦終結後にムーンダイトはカリバーン王国に返還された…というのはユキナとグランは歴史の授業で聞かされていた程度だが
「ユキナ。月光のピスケスに関しての記録や逸話…というより妖魔大戦終結後にどうなったって聞いたことってあったか?」
ユキナは少し考え込み、気が付く
「…言われてみれば…カノン先生達…ジェミニアや最終決戦に赴いた6人の十二騎士が妖魔大戦後の記録が無いは納得出来るけど…それ以外の6人…確かに、月光のピスケスだけ聞いたことがない…」
十二騎士はその功績から、創作物や物語の英雄譚を綴られ、吟遊詩人が謳うことで様々な解釈、カノン曰く当人たちも全く身に覚えのない英雄譚まである
だが、そこには事実、歴史として記録に残っている痕跡もあり
例えば裁定者のライブラ、破戒のレオは魔族と亜人達をまとめ上げて、人類や他種族と友好的な関係を築き上げて、現在もカリバーン王国の政治に関わっている
「戦艦のタウラスは海の街を統治し、星読みのアリエスはルドン帝国の政治に貢献した…というのは歴史の授業で習ったよな?ユキナ」
「そして極光のアクリエアスはセルゲイ先生と共に魔装具開発に貢献し、現在は隠居している…確かに月光のピスケスだけその後の話は聞いたことがない…」
「カノン先生に指摘されるまで気付かなかったけど…何せ100年前の人物であることと、そもそも十二騎士達が自身の素性を極力伏せていたこと…そもそも十二騎士の半数が異次元空間の決戦に赴いたなんて話すら聞いたことがなかったから…月光のピスケスの行方、その痕跡が途絶えたことに気付くのは難しいと思うよ、ユキナ…それに、月光のピスケスも長命種の種族だから、100年経過していても昔と変わらない容姿の筈だって、カノン先生は言っていたよ…何者かは語らなかったけど」
「その辺は本当に徹底してるよね、カノン先生は…月光のピスケス…一体何者だったんだろう?」
月光のピスケスでわかっていることは、絶世の美女であったのが民衆が知るピスケスの人物像の一つである
ユキナにとっても興味のある人物であった。ピスケスはかつて聖剣ムーンダイトに選ばれた担い手として、同じく選ばれた担い手としてどういう人物だったのか
「他におおよその所在がわかっているけど、連絡が付かないのが裁定者のライブラと破戒レオ…破戒のレオに関しては、彼の関係者にコンタクトは取れたらしいけど…」
「当人には辿り着かなかったって所?」
「どうにも10年前から隠居生活しているらしいけど…聖王都の何処かにいるって話らしい」
「随分とまあはぐらされてない?…でも確かに破戒のレオが、最近表舞台に出ることは無かったよね…亜人族の代表もいつの間にか変わっていて…今は聡明な女性の人だっけな?」
亜人族も妖魔大戦時代に魔族同様に大打撃を受けて、絶滅の危機に瀕した種族であったが、妖魔大戦とその後の混乱を機に、魔族同様にカリバーン王国と共存する道を歩んでいる
亜人族に関しては、妖魔大戦時代以前から人類と友好的な関係だった為に、魔族よりは人類に受け入れらている傾向はある
「裁定者のライブラは多忙故らしい…どうにもカノン先生と時間の折り合わないらしいな…元々魔族代表の政治家の一面もあるからな…ユキナとしては一番の気になっている人物だよな」
「…まあね…一番の憧れだからね」
グランが言うことに、ユキナは素直に認める。ユキナは裁定者のライブラに憧れている
「幼い頃に、私はライブラに助けられた…」
「その辺は耳にタコが出来るぐらいに聞いたよ。当時、ユキナ…ユリカとミーラ王妃を狙った賊に、ライブラが助けてくれた…さぞ、カッコ良かっただろうよ…あの時のジェミニアに変身した、カノン先生のように…その時のユキナの気持ちが少しわかった気がする」
「十二騎士の魔装鎧の姿って、カッコいいからね…幼い私にとっては劇薬だったし…カノン先生のジェミニアに変身した時姿は、本当にあの時のライブラと思い出すようだった」
ユキナが幼い頃に映る裁定者のライブラの勇姿、漆黒の魔装鎧にマントをなびかせ、片手で大剣を軽々しく振るい、賊を切り伏せた
その姿は幼いユキナにとっては、賊に襲われた恐怖よりも、ライブラの勇姿に興奮を覚えた程であった
「あ、いたいた」
ユキナとグランからはぐれていたメノンは、二人を見つけて、座っているテーブル付く
ユキナはメノンだけ来たことを不思議に思い
「あれ?メノンさんだけ?カノン先生は?」
「それが…叔父様、知り合いを見つけたから、とっ捕まえてくるって…」
メノンは買ってきたタコ焼きを、テーブルに広げる
「叔父様の分も食べてしまっていいって言われたけど…」
「量多くないですか?メノンさんとユキナとオレで食べても余りそうな…」
広場から離れた露店、亜人族が鉄板で調理しており、そこにはひときわ目立つ巨体の亜人族がいた
「大将!追加で5つ入りましたよ!!」
「おうさ、任せな!!」
看板娘の亜人の注文に、威勢よくその巨体…獅子の姿の亜人は答えた
「随分繁盛しているじゃないか、レオ」
獅子の亜人はその懐かしい声、100年振りに聞く声を聞いて調理の手が止まる。そしてその声の主のいる方向を向く
そこには時代遅れの魔法使いの帽子を被った、魔法使いがいた
「…ジェミ…いや、カノン・サイクか?」
「久しぶりだな、レオ…レオナルド・ライオス」




