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百年祭前日6 昔語り

オレがユーゴ・カリバーンと出会うのは、彼がとうに聖剣の担い手で聖剣のゴートとして魔装鎧を纏い、妖魔の軍勢と戦っていた

彼の生い立ちや聖剣に選ばれた経緯や、妖魔と戦うようになった経緯は彼当人やユーゴを良く知る者達から聞いた話だからその辺はあしからず

ユーゴ・カリバーンを表す言葉は、まさしく勇者という言葉が似合う。妖魔に果敢に挑み、妖魔を蹴散らし、妖魔に苦しめられた人々を救い、困っている人は見過ごさずに手を差し伸べる

光り輝く”聖剣エクスカリバー”を振るう姿は様になっており、人々に愛され、そして時代が求めた救世主…当時のカリバーン王国の評価はそうだった…そして実際のユーゴもそんな奴だった

余計なことを補足すれば、立場や我を忘れて敵陣に単身で突撃したりする無鉄砲かつ破天荒な一面もあり、惚れた女の為に王の継承権も放棄するのも辞さない、やたらと子供に好かれる、頑固で負けず嫌い、少しナルシストな部分もある…到底、王子様とは思えない振る舞いをする印象が強いやつだった


「…なんだか親近感があるというかなんというか…」

「そういう所でもユキナ、お前はユーゴに似ているんだよな」


ユーゴが聖剣に選ばれたのは10に満たない年齢の頃。妖魔大戦戦時中にも聖剣の担い手はいるにはいたが、カリバーン王家で担い手に選ばれたのは戦時中にユーゴだけだった

かつてカリバーン王国の脅威とされた魔王を倒した聖剣の勇者は、当時ですら…いや、当時だからこそ民衆の平和をもたらす象徴となっていた。ましてや王家の聖剣の担い手は次期国王の最有力候補とされる程の民衆の支持は大きかった。側近や当時の国王はユーゴを英雄と仕立てようとしていた…まだまだ若いユーゴに


「…私とは状況が少し違う?」

「だな、ユキナの場合は国王も慎重な判断をしていたようだが、あの時代は相当追い詰められていたからな、しかも当人も割とノリノリだったのがな」


幸いだったのが、ユーゴの周囲には信頼も出来て、頼りになる者達がいた。特に幼馴染で恋仲である生命のクラブ、そしてユーゴの幼い頃からの教育係で魔力の使い方を教えた焔の魔女の存在が大きかった


「…焔の魔女?」

「焔の魔女は今は魔法学校の理事をやっている紅の魔女の弟子なんだよ…そして十二騎士の一人、爆裂のスコーピオン、その人だ…ホムラって呼んでいたがな」


当時としてユーゴは非常に高い魔力を持っていただけあって、それを正しく間違った使い方をさせないように導き教えたホムラは、ユーゴにとっても相談役の一人として頼りにしていた。もしもホムラがいなければ、ユーゴは大人の事情に振り回されていただろうな

そんなユーゴが戦場に立ったのは13歳の頃、聖剣エクスカリバーとドワーフ族が作り上げた当時最新鋭の魔装鎧を纏い、ユーゴが振るう光り輝くエクスカリバーの一振りは数多の妖魔を薙ぎ払い、たった一人で妖魔の軍勢を壊滅させる程の強さだったらしく、その活躍はカリバーン王国に民衆に希望をもたらした

ユーゴ・カリバーンはこの妖魔との戦争を終わらせる…それだけユーゴの活躍目覚ましかった

それだけじゃなく、ユーゴの教育係であったホムラも魔装鎧を纏い、魔法使いとしてユーゴと共に戦い

生命のクラブも僧侶としてユーゴとホムラを支えた

3人の活躍から、三勇士なんて呼ばれ、隣国のルドン帝国の辺境の地ですらその話が届く程だった。まだ魔装の通信技術が発展していない時代にも関わらずにな

カリバーン王国の首都である聖王都の自衛なら確かになんとかなったんだが…妖魔相手に討って出るということはこの時はまだ出来なかったことで、周辺の国や他種族の被害が拡大していく一方で、特に魔族達が妖魔に狙われ、次々と魔族の集落どころか国そのものが壊滅しかけていた


「この辺りなら歴史に習いました。妖魔は魔族を一方的に狙うと…所説は色々あるけど、魔力の平均値が高いが故に捕食、捕らわれりして妖魔に変えられたりしていたって…」

「その通り。どうにも妖魔にとっては魔族はカッコウの餌でもあり、妖魔達の個体を増やす苗床として相性が良かったらしい。このせいで現在は魔族は人類と共存しなければ生きていけないレベルまで落ちてしまった」


当然、正義の味方であるユーゴがその事態を見過ごす筈もないんだが…ユーゴがその状況を耳にしたのは魔族が絶滅寸前だった時であった

当時、カリバーン王国領土に妖魔が侵略してくる前まではカリバーン王国と魔族は小競り合いが絶えない程に仲は悪かった

当時の魔族のトップであったライブラは何とか停戦まで交渉、魔族側を制御していたんがな…大昔にカリバーン王国を恐怖の存底に陥れた時代があったせいもあってだな、カリバーン王国としては魔族は滅んでも良かった…妖魔が魔族を滅ぼすなら見殺しにしてしまえばいい、当時の騎士団やそれを指揮する者や大臣の大半はそういう考えであり、ユーゴが知れば必ず魔族も救い出すと言いかねないから、耳に入れないようにしていた、偽りの情報を耳に入れていたんだが…真相を知ったユーゴはスコーピオンとクラブを連れて魔族の領土へ向かい、現地の魔族と協力しながら妖魔の主力を撃退し、魔族の壊滅を阻止した

その後にユーゴとライブラが話し合いの結果、生き残った魔族は妖魔打倒の為に協力、カリバーン王国と共存する道を選ぶことになり、ユーゴの行動が現在の魔族との関係を築き上げたんだ

結果的良かったとは言え、ユーゴ達の行動も軽率だったと糾弾された。というのも当時のカリバーン王国の軍部は騎士団が実質的な指揮権を持ち、ユーゴ達はこのしがらみに悩まされていた

魔族達と協力することになったのも、当時の騎士団は到底受け入れられないとして揉める原因となった

このまま内部分裂している隙を付け入れられるのはマズイと判断したライブラが、ユーゴに提案をだした

『だったら、ユーゴだけの騎士団を作り上げてしまえばいい』

その言葉が、十二騎士を誕生させるキッカケとなった


「もしかして、十二騎士は元々ユーゴ様が結成した?」

「母体と言える組織をだな。ユーゴが自分の意思で動ける遊撃隊、これがユーゴが望んだ組織であり、自身の聖剣の担い手を最大限の戦力として使える環境を作ろうとした」


ユーゴ・カリバーンが16歳の頃に、各地の妖魔を討伐する遊撃隊を結成された

魔族とユーゴを慕い信頼できる騎士達と側近、そしてその噂を聞いた亜人たちも合流した。とは言え騎士団の組織としては小規模かつ少数だったが、この時点でユーゴ・カリバーンこと聖剣のゴート、爆裂のスコーピオン、生命のクラブ、そして裁定者のライブラ、破戒のレオが加わりその一人一人が一騎当千のつわものであり、各地の妖魔を退けていた

ただ、妖魔側も全くの対策しない訳でもなく、日に日にカリバーン王国領土内の妖魔側も手強くなった

その上にこの頃はユーゴが魔族や亜人と手を組んだことを快く思っていない国民が多かったのも事実で、騎士団の上層部もユーゴに協力しなかったせいで、ユーゴの率いる遊撃隊は孤立しかけていた…というかしていたか

そこでユーゴはルドン帝国とも協力することを決め、当時のルドン帝国の辺境でありながら激戦区で妖魔達と戦っていた一団と合流することになった

その一団はその辺境を統治していたサイク家を中心とし、サイク家の魔法使い、エルフの王女様とその協力者、ジパンの剣士、ジパンの魔法使いの少数が徒党を組んで激戦区の最前線で戦っていた


「サイク家の魔法使いって…もしかしてカノン先生?」

「ああ、それがオレとユーゴが最初に出会った頃だった」


オレたちの一団は勇士団と呼ばれており、ルドン帝国の皇帝のお墨付きをもらった少数部隊であった

そこにユーゴの遊撃隊を合流し、妖魔相手に互角以上に戦える戦力が意図せずに集結した。コレを好機と考え、東の大陸の奪還する為に遊撃隊と勇士団は進軍した

ユーゴは東の大陸での戦いでも前線に立って…というより基本的にユーゴが切り込んで最前線で暴れまくる戦い方するから、付き合わされたこっちが苦労したな


「マジでユーゴは暴れん坊王子様だったんだよな…そのせいで何度死にかけるは、それに付いていくスコーピオンとクラブ諸共、妖魔にやられそうになってはオレが背後でカバーすることになるし…」

「結構、カノン先生ってユーゴ様達と一緒にいた感じなんですか?」

「東の大陸の戦いをきっかけに、ユーゴの奴に気に入られたんだよな…『背後は任せる』とか言い出すし…光栄って言いたくもないんだが、ユーゴの奴には信頼されていたんだよな」


そして数か月に渡って、東の大陸を支配していた上位種の妖魔を討伐に成功し、東の大陸を解放することに成功した

妖魔がオリュートスに襲来して数十年来の快挙であっただけあって、東の大陸との交流が深かったルドン帝国だけじゃなく、その活躍はカリバーン王国や諸国にも伝わり、カリバーン王国の国民たちはユーゴや

それに協力した者達、魔族や亜人も認める姿勢になり、大臣や騎士団もユーゴのことを無視することが出来なくなった

その後も紆余曲折があったが、ユーゴはルドン帝国で協力した勇士団も自分の遊撃隊として迎え入れ、後に隣国の大富豪とユーゴの兄当たる、第二王子の婚約者も遊撃隊に加わり、妖魔と互角以上に戦える突出した戦闘能力を持った12人がユーゴの元に集まり、ユーゴ遊撃隊改め、ユーゴは新たな組織の名前を付けた


「…それが、十二騎士?」

「その通りだユキナ…十二騎士の始まりは、ユーゴが全てのキッカケだった」


ユーゴ・カリバーンという王子様は、聖剣を振り回し、戦術も作戦もへったくれもなく最前線で切り込んでいく。呆れた戦い方だと思った。無鉄砲でごり押しの頭の悪い戦い方

だけどそんな姿は必死で、誰も不幸にしたくない、一日も早く妖魔の脅威のない、安寧のある日々を作りたい、決して最後まで他者の命を救えることを諦めない

そんな奴だったからこそ、オレも他の十二騎士も、かつては人類と敵対していた魔族や亜人達も、ユーゴ・カリバーンという男に魅かれた…奴は天性のカリスマを兼ね備えていた

少なくとも十二騎士を結成した頃のユーゴ・カリバーンはそういう奴だった。彼の元に戦いたい、彼の為に戦いたい…そんなことを思わせる天然タラシな奴だ

本当に王様に相応しい、資質を持っていた

誰よりも勇敢で、後先は本当に後で考えて、子供たちを泣かせるような大人は許さない、時にはなにも出来に無力に打ちのめされても立ち直り、幼馴染である生命のクラブと相思相愛のお似合いのカップル…



「……」


カノンは語りを止めてしまい、目元を抑える


「…カノン先生…泣いているんですか?」

「…そうだな…まだ吹っ切れて語れる程の過去の話じゃないからな…オレにってはまだ、ここ数年前の事だったからな」


サイク家の当主であるリーノ・サイクから、聖剣のゴートは異次元空間の最終決戦で戦死したとユキナは聞かされている。それにカノンのここまでの会話で、ユーゴとカノンの関係性が見えてきたからだ

少なくとも、ユーゴとカノンは友人としての関係を築き上げていた

一時的な臨時講師の時も、ユキナ達の話の話題にもカノンは十二騎士の話題を避けてきた。自分と他の十二騎士の素性をバレるのを避けるだけじゃない

まだ、カノンにとっては辛い話題でもあったからだとユキナは察する

カノンは目元を抑えながらも、話を続ける


「ユーゴ、スコーピオンとクラブの3人は異次元空間の決戦で死んだのはリーノから聞いていると思う。妖魔達の策略で、オレや黄金のサジタリアス、閃光のバルゴスはその3人と分断された。ユーゴ達は上位種の妖魔達と交戦し、オレが駆け付けた頃には3人は自分達の命を賭して上位種の妖魔達を相打ちする形で死んだ…ユーゴ達を結果的に看取ったのはオレだ…ユーゴから『妖魔王を倒して必ず生きて帰れ、聖剣とオレたちの魔装鎧を持って帰っていくんだ』…それが、奴の最後の言葉だった」


カノンは声が少し震えながら話す。カノンは涙腺が限界だった


「カノン先生は…もしかして後悔をしているんですね…もう少し早く駆け付けられていたら…」


釣られてユキナも涙を流してしまっていた


「だけど…それはカノン先生せいじゃないのでは…ユーゴ様もスコーピオン様もクラブ様も命を落とす覚悟があった」

「…そうだな、わかってはいるんだよ…その後悔はおごがましい、思い上がりだって…だけど、それでもオレは、全員生きて帰りたかったし、ユーゴにこの世界を見せたかった。ユーゴが過去に魔族と亜人と手を差し伸べた答えが、今も共存という関係を気付き上げたこの光景を、このカリバーン王国を」

「そうなんだ…私は生まれた時から魔族や亜人の種族の違う人たちと共に暮らすのが当たり前だとおもっていたけど…ユーゴ様がキッカケになるんだ」


妖魔大戦時点ではそこまで仲が良いという訳でもなかった魔族と亜人、大戦後も度々衝突があったが、ユキナが生まれた頃には手を取り合う関係に落ち着いた

それは妖魔大戦時代に、窮地に陥いたユーゴ・カリバーンが救いの手を差し伸べ、信頼を勝ち取ったことが現在に繋がっている

カノンは見せたかった、人間と魔族と亜人が笑い合っている世界を


「…もしかしてだけど、カノン先生は私を死なせたくないからかなり強引なことをしている?」


ユキナの問いに対して、カノンは目を丸くする。自覚がなかったが、ユキナの指摘でカノンとしては思い当たる節があった


「そう…言われれば、そうかもな…どこかユーゴと重ねていたかもな。セルゲイの願いだけじゃなく、そっちの私情の方が傾いていたかもな…当初こそはそうそう危ない目に合っても死ぬことは無いと高を括っていたから放任していたが、ウロボロス存在は想定外だったからな…やっぱ、過保護だったかな」

「少なくとも女の子をぶん殴って止めるのを、過保護とは言わないのでは?」


ユキナは苦笑しつつ言う

ユキナは息を吸って、気持ちを整えてから口を開く。カノンがここまで語ったユーゴ・カリバーンの話を聞いた上で


「カノン先生。私は死にません、少なくともカノン先生が負い目を感じさせる死に方はしません」


ユキナは宣言をする、カノンに対して、カノンが望むであろう言葉を


「なので、これからもご鞭撻お願いしますね?」


ユキナは手を差し出し、カノンに握手を求める

ユキナとカノンは、これまでは意見が合わずに口を開けば喧嘩腰での会話であり、最終的には殴り合いになり、険悪な状態から修行を行っていた

そんな関係性からユキナの方から歩み寄ろうとしていた。ユーゴ・カリバーンの話を通して、カノンの思いを理解したことで

そのユキナの様子から、再び目を丸くしてしまうカノンであったが、思わず笑みを浮かべる


「やっぱり、お前はユーゴにそっくりだよ。この人たらし目…そりゃ、ナナコのような近くにいる人がお前を王様にしたがるよ」


皮肉を込めながらも、ユキナの握手に応じるカノン。この隠れ家生活で、ユキナとカノンは和解することになったのだ



余談


「そういえば、カノン先生はユーゴ様から聖剣エクスカリバーを託されたんですよね?」


二人分のティーカップを洗っているカノンに、ユキナは思い出したように問う


「ああ、他にゴート、スコーピオン、クラブの魔装鎧も一緒にな。聖剣エクスカリバーとゴートの魔装鎧はカリバーン王国に返却している。スコーピオンとクラブの魔装鎧もそれぞれの故郷に返している」

「ということは、今の聖剣はエクスカリバー、デインダイトにムーンダイトがカリバーン王国が保管しているということですか?」

「そういうことだな、妖魔大戦時ももっと他の聖剣も有ったらしいが…今じゃその3本しか存在していないな」


カノンは洗い終わったティーカップを、棚に戻しテーブルに戻る


「2年前にゴートの魔装鎧とエクスカリバーをカリバーン王国に返却は、裁定者のライブラの配下を通して秘密裏に返されたと聞いている。知っているのは国王と信頼できる側近達ぐらいらしい」

「民衆に知らせなかったのは、テロ行為に利用される可能性があったからでしょうか?」

「カリバーン王国の聖剣をそう簡単に盗めるとは思えないが…エクスカリバー自体が別格の強さだからリスクを減らしたいのもあるだろうが…そもそも、聖剣に認めなければその力を発揮することができない、なまくら以下になるだけだしな」


ユキナは少し考え込み


「私ならエクスカリバーも使える?」


デインダイトとムーンダイトに選ばれた自分なら、エクスカリバーも使えるのではと思ったユキナであったが、カノンは否定する


「いや…ユキナを認めた聖剣はデインダイトとムーンダイトだろ?エクスカリバーが認めれば使える可能性はあるが、そういう訳でもないだろう」

「そういうもの…なんだ」


ユキナは否定されてものの、落ち込んだ様子でもなかった。単純な興味本位で聞いただけであった


「…オレからも質問していいかユキナ?」

「どうしました?」

「お前がデインダイトとムーンダイトを…まあ事故的な感じで自分の手元に呼んだらしいが、その後はどうしたんだ?今でも呼べばデインダイトとムーンダイトはお前の手元に飛んでくるのか?」


カノンはユキナの才能であれば、デインダイトとムーンダイトと今でも呼び出すのもは容易であると思っており、少なくともユキナになってから聖剣を振るったという話を聞いていないカノンは疑問に思っていたのだ


「それは、私が不用意に聖剣を呼び出せないようにより強固な封印を施しているらしいです。カノン先生の言うう通り、その気になれば私は聖剣を呼び出せるらしいですが、そうしないようにお父様…国王の命令でそうしたらしいですが」

「…なるほど?」


ユキナから聞いてもカノンのは疑問に思っていた


(ユキナの魔力と才能なら、いくら封印を施してもユキナの危機に聖剣が飛んできそうだが…一体、どんな封印をしたんだ?)

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