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百年祭前日4 雪

ユリカ・カリバーン

カリバーン王国の第七の王女、物心がつく頃からこの王女様はお転婆姫と呼ばれていた

到底王女とは思えないほどアグレッシブで、木の上に乗ったり、同い年ぐらいの男の子とかっけこして遊んだり、剣に興味を持ち始めれば道場に通いつめ、従兄であるグランをあっちこっちに振り回していたのをよく覚えている

そしてなによりも正義感が強く、弱い者いじめをするものを決して許さなかった

なぜ、ユリカ・カリバーンがここまで正義感を持っているのか?それは忘れられない背中と光景を覚えているからだ。私と母様が出先で魔獣に襲われた際に、漆黒の魔装鎧を纏い、大剣を振り、魔獣を追い払った騎士の姿…その力強さとまるで正義の体現者のような姿に、ユリカ・カリバーンは憧れた

その頃からだろう、剣に興味を持ったのも

そんなお転婆で、剣に興味を持ったお姫様の付き人だったのはナナコだった。ナナコは魔族であり、色々と苦労してきたという話を聞かされてはいた

ユリカ・カリバーンとナナコ、主と使用人という関係ではあったが、私からしたらもう一人の母親であり、姉のような存在であった。悪いことをすればしっかり叱る、良いことをすればちゃんと褒める…今とは少し違う感じではあった

平和な日々だったと思う…でも、私達の関係…というより、カリバーン王国の王女の付き人に魔族がいることに少なからず快く思っていない者達がいたのは事実であった

今の私から見ても、カリバーン王国の王である父上や母様を含む妃達、兄姉たちはさほど偏見な目や考え方をしない、誰であっても分け隔てなく接する、人格者であると誇らしく言える

でもその側近たちまで制御出来たかというと、そういう訳でもなく、優秀だが魔族や亜人を快く思わない者が少なからず存在はしていた

ナナコもその標的にされており、普段なら軽くあしらうなり相手をしないらしいが…その時はその輩達の機嫌が悪かったのか、ナナコの対応に癪に障ったのか…ナナコに暴力を振るったのだ

その現場を偶然見てしまった私…その日、その時、運命が狂わされた日であった

ナナコに暴行を加える者を私は到底許すことが出来なかった、怒りを抑えることが出来なかった。その怒りの感情の衝動が、王城の地下で眠っていた聖剣の2本、デインダイトとムーンダイトを目覚めさせた

…その時のことは私はよく覚えいない。覚えているのは、両手に握られていたデインダイトとムーンダイト、そして部屋ごと吹き飛んで、降りしきる雪が見える程の曇天の空…そして辺りにはナナコに暴力を振るっていた輩の達の無残な死体があり…部屋の隅で震えているナナコが私の瞳に映っていた気がする。その時のナナコは恐怖で震えているとか、そういう訳でもなかったように見えた

私は聖剣の力を持って、ナナコに暴行を加えた者達を殺したのだ

その騒ぎは当然周囲に知られることになる。私が人を殺したとか、ナナコが暴力を振るわれたとかそういうのは些細な問題の如く…100年振りに王家の者から聖剣の担い手が現れた

その事実の方が重大だったのだ…特に側近達には

カリバーン王国おける聖剣の存在は、妖魔大戦以前の遥か昔、オリュートスの脅威となっていた魔王を倒し、カリバーン王国の建国の祖であり、聖剣で魔王を倒した初代国王であり最初の聖剣の担い手。そして妖魔大戦においては十二騎士の一人、聖剣のゴートが数多の聖剣使いこなし、妖魔を討ち滅ぼしてきた

カリバーン王国の歴史にも、そして国民からも聖剣の担い手は救世主に等しい象徴であり、ましてやカリバーン王家の血筋の者が聖剣の担い手となれば、その者を国王に据える。そういう風習というべきなのか、傾向がある。それと、聖剣が担い手を選ぶということは近い将来、脅威が迫っているという意味合いでもあると伝えられているからである

なので、側近や国民の多くが私を国王にしたがっていた…だけど、私自身が国王になる未来が想像出来なかったし、正直嫌だったのもある…それ以前に、その時の私はまだ10代にすらなっていない小娘だ。父上も母様、兄姉達も私に王になれとは言わなかったのが幸いだった

だけど、過激な者は身近にもいる者であり、私を王にする為に父上が暗殺されかかったり、兄姉も毒を盛られる、脅迫状が届く等があったらしい…そして私も一度毒殺されそうになった

聖剣の威力、聖剣の存在を脅威に思った者もいたらしく、私を排除する者もいたのだ

…正直、この時が一番精神的に辛かった時期かもしれない。私のせいで家族に迷惑をかけている…そう思う程であり、慰めの言葉もこの時は何も響かなった

新たな聖剣の担い手どころか、家族の命の危機であると悟った父上は十二騎士の一人、裁定者のライブラ様と一つの案を出した

第七王女を事故死に装い、ユリカ・カリバーンは王家と離れて別の人間として生き、聖剣の担い手として成長する環境を整える。これが父上とライブラ様が出した計画であった

当時としては相当精神的に参っていたから、私としては有り難い話はなかったと思った…ただ、反対する者も少なくなく、特にナナコに関して言えば猛反対していた程

ただこれ以上に状況を打開する手段が思いつかなった為に、ナナコは私のお付きを継続する折衷案でやむ得ず折れた形で納得させた

私は母様の親戚、グラス家の次女として迎えられた。ユキナ・グラスとして、従兄であるグランの妹として、おしとやかで大人しい貴族のお嬢様…そういうキャラ付けで、髪色も魔法薬で染め、目もカラーコンタクトを入れて…ユリカ・カリバーンの振る舞いをしないように

グラス家の次女として迎えられただけじゃなく、私の護衛と秘密を守り、私の能力を開花させる師として、既にグランの師匠としてグラス家に出入りし、カリバーン王家にも強い信頼を持つ人物、セルゲイ先生が私を弟子として迎えてもらえた

…正直、本来の王家のユリカ・カリバーンではなく、貴族のお嬢様のユキナ・グラスとして振る舞っている方が楽しかった。自由に聖王都の市場を練り歩いたり、魔法学校に通ったり…同じ年相応の人たちと接する機会は、王女では体験出来なかったことだから、新鮮であったし、私にしても空気が合っていたんだと思う

後、良くも悪くもグランと意見が合う…たまに衝突して、喧嘩することはあるけど

そしてセルゲイ先生と一緒にグランと魔法を学び、実戦的な戦闘魔法の修行は面白かった…だけど、年齢を重ねて成長していくたびに、私の身体能力と魔力がとてつもなく優れていることが判明していき、声代わりがする頃にはセルゲイ先生相手に互角以上に戦える程の強さになっていた

『聖剣に選ばれる程の才を秘めている、やはりユリカ様は王になるべきだ』

ナナコによく言われるようになったのも、この頃だった

…今思えば、ナナコはあの日、私が聖剣を振るったあの日から変わったのだろうか、降りしきる雪が降り注いだあの日に…

ユキナとして名を変えた頃には、ナナコは私の行動に対して否定的なことを言うことは少なくなっていた、何せ私がセルゲイ先生からアクエリアスの魔装鎧を無断で持ち出し、治安活動をしているのを率先して手助けしていたぐらいだ

本当にナナコは私を裏切ったのか?その為にアクリエアスとして活動している私とグランを泳がせて、聖剣の担い手として、私を王にする為に?

正直わからない…幼い頃かずっと私と共にいたナナコのことが、私には理解出来なくなっている…ナナコの真意を確かめたい…ナナコと話をしたい…ナナコが裏切ったなんて…思いたくない

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