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魔装十二騎士  作者: カサ
1章
2/19

聖王都魔法学校

「マジで今日の夕方に着くなんて…そんなことある?」


カノンが手紙を受け取ったその日の夕方、聖王都の魔法学校の理事長室にて、カノンを呼び出した張本人である紅の魔女は呆れながらも、感心していた


「とりあえず、来てくれたことには感謝するわよカノン」

「紅様もお元気で、相も変わらず目のやり場の困る服装でなによりです」


紅の魔女。本名、年齢不詳、魔女という人間を超越した魔力と不老たる存在。容姿は20代の美人である


「ところで一体何の用事なんですか?一か月もオレを探していたって…」

「ええ、アンタにこの魔法学校の臨時講師をお願いしたくってね」

「…やっぱりか」


大方、そんなことだろうなとカノンは考えていた。魔法学校、教育機関に呼び出すということはそういう用事なのだろうと


「理解できないな、オレみたいな三流程度の魔力しか持っていない魔法使いがエリートに何を教えろと?」

「だとしても、アンタはそれ以上の魔法に対する知識を持っている。伊達に世界中の魔法を調査しているサイク家の人間じゃないでしょ?」

「だったらオレじゃなくてもいいだろう?帝国に属しているサイク家の人間も、この聖王都に何人かいる筈だ。確か一人は魔法省に勤めている、アンタのツテなら引っ張り出すのは難しくないだろ?」


カノンのサイク家はルドン帝国と呼ばれる国に属しており、聖王都のカリバーン聖王国とは隣接している国である。

国同士は仲は悪いわけではなく、むしろ良好であり、盛んに交流と貿易もさほど揉めることがない

なので、そういうことならサイク家の人間なら誰でも協力する筈だとカノンは思っている

カノンとしても他にも適任者と、スケジュールの調整の出来る者は心辺りがあるからだ


「随分とつかかって来るじゃない…まあ、理由はわからない訳じゃないけどねぇ」

「2年前に紅様に相当罵倒されましたからね。何を思って紅様がオレにそんなことを頼むのか…」

「いや、私がアンタを選んだわけじゃない。アンタを臨時講師としてえらんだのは、セルゲイ・ローレル。うちの戦闘魔法講師であり、現在の魔装魔法を成立させた大魔法使い」

「…はい?」


意外な人物、というより超大物の有名人が自分を呼び出したことにカノンはさらに困惑する


「でしょうね、そりゃ困惑するよね?私もセルゲイがアンタを指名したのは心底驚いたのよ?というより、その反応を見るからに、やっぱり面識は無いのね?」

「…そりゃ勿論。オレは魔法の教育機関に関わったってことは無いし…サイク家の作成した魔導書関連で知ったにしてもその線は無い。オレが関わった、オレが書いた魔導書は全部サイク家の当主の名義で出版、魔法省に報告をあげている。オレの名前を知ることは無い筈だ」

「…それってここ数年の話よね?それ以前なら?」


カノンは少し考え込むが、どうにも心辺りが見つからない様子


「わからないな…というより、その当人、セルゲイ・ローレルはどうしたんだ?推薦人である人物はどうしてこの場にいない?」

「それが…一か月以上前に倒れて療養中、現在は面会謝絶状態…年齢も100歳越えてるから、人間にしても相当長生きだし、ここまで魔法の発展に貢献してきたけど…やっぱ老いにはどうにもならないものね。たぶんこのまま…」

「それでオレを急いで探していた訳か…だとしてもセルゲイ・ローレルの代役がオレが務まるものじゃないだろ?戦闘魔法の講師なんだろ?セルゲイ・ローレルは」

「無論、アンタに戦闘魔法の講師をやらせる気は無い。私だって帝国と王国の政治絡みに巻き込まれるのはゴメンよ。だからアンタには歴史の講師の方をお願いすることになる。少なくとも私やこの魔法学校の講師以上に魔法に対する知識だけじゃなく、その背景や歴史に詳しいアンタなら勤まる。無論、報酬も弾ませてもらうわ」


カノンは、どうにも紅の魔女は何が何でも自分をこちらに引き込みたいと感じていた。この講師という仕事以外にも何かやらせたいのでは?という疑念


「…紅様、本当は何をさせたいんですか?講師をさせたいだけなら、ここまで必死にならないと思うんですが?」


カノンの切り込んだ質問に、紅の魔女はバツが悪い表情をする


「察しが良すぎるのも嫌ね…確かにアンタに講師をさせたいのと、セルゲイの弟子二人の面倒もお願いしたいの」

「…大魔法使いのセルゲイ・ローレルの弟子?しかも二人?」

「グラン・グラスとユキナ・グラス、うちの優等生でセルゲイのおそらく最後の弟子となる者達」


現在の魔法使い、正確には魔法を使うのは免許制度であり、習得にはいくつか方法がある。手っ取り早いのが魔法学校に通い学問を修める。魔法使いの弟子となり魔法の修行、もしくは通学と弟子入りの両方のパターンも珍しくない。レアケースで独学というのもある


「弟子ということは、セルゲイ・ローレルの後継者になるということか?」


今回の両方のパターンになれば、見込みのある優等生を自身の後継者として弟子として迎え入れた


「まあ…そういうことになるかしらね。この二人の面倒、というよりセルゲイの代わりに彼らの師匠になって欲しい。が、セルゲイが言っていたのよ」


無責任じゃないのか。カノンは最初はそう思ったのだが、ある疑念が浮かんでいた


「…セルゲイ・ローレルはオレの素性を知っている?」

「それを聞く前に症状が悪化して、面会謝絶になったから詳しくは…私としてはセルゲイの選択は間違いではないと思う。アンタならあの二人の師匠としては適任だと思う」

「…」


カノンは少し考え込む。講師になるまでならまだ引き受けても構わないと思っていたが、弟子を引き継いで教育には抵抗を感じざる得ない。もし自分が弟子立場なら見ず知らずの者をいきなり師匠と仰げと言っているものだと

だが、大魔法使いセルゲイ・ローレルの頼みとあれば、断るのも…という葛藤に悩み、考え


「確認だが、その弟子二人。グラン・グラスとユキナ・グラスと言ったか?そいつらはセルゲイの後任がオレということは?」

「いや、知らないわ。アンタが引き受けること確約したら、伝えるつもりだったけど…」

「つまりは、その二人に断られる。拒絶する可能性…権利がある訳だな」

「あ…」


紅の魔女は、思い出したような反応をする


「その反応…まさか弟子二人の意思を尊重しようとすることを忘れていた訳じゃないだろうな?」

「いやー…アンタをどうやって探すかとか、どうやってこちらの提案に乗ってくれるのか、そんなことしか考えていなくって…」

「とんでもねぇな。オレが弟子の立場ならその後継人をぶん殴ってるぞ」


だから人の理から外れて、長生きしてる魔女は人間の気持ちに乏しいんだよ。っとカノンは心の中で思いつつ、続ける


「やれやれ…まず、講師の件は引き受ける。そして弟子二人の件、コレを決めるのはオレじゃない。その二人が決めるべきことだ。是非ともセルゲイ・ローレルの弟子に見極めさせて貰おうじゃないか。オレが二人の弟子に相応しいか否かを」


カノンとしては、この弟子達が断るなら体裁が保てると思惑がある

それにカノンは、魔法使いとして欠点がある


「まさかアンタは、アンタの魔力の低さで実力を測ると思っているのかしら?」

「紅様はご存知でしょうけど、オレ自身の魔力自体は平均程度かそれ以下。正直、魔法使いを名乗るのも怪しいぐらいのギリギリの魔力の低さですからね」


魔力はある程度生まれ持ったモノ、遺伝子に依存するケースが多い

カノンは魔力だけで言ってしまえば、三流魔法使いという評価の認識される


「一定レベルに至った魔法使いは、まずは相手の魔力で実力を測る」

「…舐められたものね、うちの優等生はそれだけで相手の実力を測るとでも?安心しなさい、アンタの想像を越えて優秀よ。ウチの…いや、セルゲイの最後の弟子は」


紅の魔女は自信満々に、カノンに堂々告げる


「断言してもいい。あの二人はアンタを選ぶし、アンタもあの二人を放っておけない」

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