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迫る魔の手

これまでのあらすじ

100年前の妖魔大戦を終結させて、100年後の現代に帰ってきた十二騎士の一人、刃のジェミニアこと、カノン・サイクは、サイク家の使命の魔導書作成の為に旅をしていた

一段落ついた頃に、カリバーン国王聖王都魔法学校の理事長をしている紅の魔女から、現代魔法の祖である大魔法使いセルゲイ・ローレルの弟子二人、ユキナ・グラスとグラン・グラスの面倒を見て欲しいと頼まれ、遥か遠方の東の大陸から、カリバーン国王の首都、聖王都に赴くことになった

セルゲイの弟子二人と交流していく日々であったが、ユキナとグランが過激派活動家、聖剣支持派に拉致されてしまう

ユキナとグラン、それと助けに向かったセルゲイを救出するために、聖剣支持派と戦うことになったカノン。聖剣支持派の魔法使いがウロボロスカードと呼ばれる妖魔の力持つ魔装具で、妖魔の力を持つ怪人へ変貌、カノンは魔装鎧を纏い、刃のジェミニアに変身し、それを撃退

事件後に、カノンは死に際のセルゲイ・ローレルからこれまでのことやこれからの聞き、新生十二騎士計画を託されることになる

現代魔法の礎を作った第一人者である大魔法使いセルゲイ・ローレルの死去は、カリバーン王国の首都、聖王都の人々に衝撃を悲しみを声に溢れ、魔法省、ルドン帝国等の他国の関係機関等も対応に追われていた

セルゲイ・ローレルの葬儀は、魔法省やセルゲイが作り上げた聖王都魔法学校の生徒や卒業生、カリバーン王国の国王とその妃達、ルドン帝国の皇帝と関係者などの他国からのトップも参列する程の葬儀となった

その葬儀の場には、カノンの姿は無かった。カノン曰く

「既に別れは済ませた。彼の託したもの、残したものの整理の方が優先だし…そもそも、オレとの関係性を疑われてもいけない」とのことだった

セルゲイ・ローレルの死から一か月、魔法省の一部は、例の事件の調査に慌ただしく動いているものの、カリバーン王国そのものは平穏のままであった

というのも、アクエリアスが敗れたという話が出て数日後に、様々な過激派活動家はこの機会を逃さんと言わんばりに動いたところに、現れたのは”刃のジェミニア”であった

極光のアクエリアスとは違い、刃のジェミニアは容赦も慈悲もなく、過激派活動家を徹底的に潰した。中には過激派活動家に死傷者が出る程

過激派活動家達は、ジェミニアに恐れたせいか、この一か月は成りを潜め、カリバーン王国は活動家による事件が起きなかったというここ数年に稀に見る平穏の一か月だったのだ


カリバーン王国の王家が住まい、カリバーン王国の政治の最高機関として機能するカリバーン城。その国王の妃の一人、第三夫人になるミーラ・カリバーンに、紅の魔女はお呼ばれされていた


「お久しぶりです紅様。今日もお美してなによりです」

「久しぶりもなにも、この間のセルゲイの葬儀の場で、会ったじゃない…まあ、落ち着いて話をするのは久しぶりかしらね」


紅の魔女は、テーブルの上に出された紅茶を嗜みながら、ミーラの顔色を見る。化粧をしているものの、ミーラは少しやつれている様子であった


「寝れていないかしら?ユキナのことが心配かしら?」

「…そうね、うちの姪っ子が誘拐されたって聞いたのは、解決した後とは言え…恥ずかしながら、倒れてしまって。ホント、心配症過ぎる叔母ですよね、私…」

「ミーラ…」


紅の魔女は、ミーラの心苦しい言い方に、複雑な心境になる

聖剣に選ばれし、第七王女、ユリカ・カリバーンの母親だったミーラ。表向きは事故死であるが、今は名と素性を変えて、ミーラの兄の養女として、ユキナ・グラスとして暮らしている

誰に聞かれてもいけないように、ミーラは姪っ子と言う。が、本当は自分の娘の名前を言いたい、合いたいであろう。というのは、長年…というより、ミーラは聖王都魔法学校に通っていたので、小さい頃か知っている紅の魔女はミーラの気持ちは長年の付き合いでわかるのだ


「それに、セルゲイ先生がお亡くなりになって…姪のユキナもかなりショックを受けているのではないかと…葬儀の場に来てなかったし…」

「それは…ミーラと鉢合わせになる可能性があったからでしょ?あなた、ユキナの姿を見たらどうなると思う?」

「我慢できずに、抱きしめている」


ミーラは真顔で即答する


「でしょ?あなたの関係性を疑われる可能性を避ける為の苦渋の選択だろうし…それに、悲しんでいる暇が無いって言うのもある。あなたも魔法省大臣の報告を聞いたと思うけど、妖魔の力を使う魔装具の存在、これが明らかになった以上、それに対抗する手段を用意しなければならない。ユキナはその要になる」

「聖剣の担い手としての、妖魔を討ち滅ぼす者として…」


ウロボロスカードの存在は、魔法省大臣の報告で、カリバーン国王と各大臣、王家の者や魔法省の一部職員と紅の魔女などの耳に入っているが、民衆にはその存在は明らかにはしていない状態である


「公表したら、混乱を広げる可能性…もしくはその魔装具を求める者が現れるとも限らない…判断としては悪くないとしか言えないわね。カリバーン王国で対抗手段が揃っているならともかくとして…そうでもないからね…セルゲイをもってして、少数精鋭で戦うのが最善策って判断だったろうし」

「かつての、十二騎士達がやった方法で?」

「後、妖魔大戦と違って、空戦技術が失われたのも手痛いところね…今、当時のの魔装鎧の製造方法、当時のスペックの魔装鎧を用意したとして、その後が問題になる。各国の軍事バランスが崩れる…ホントジレンマね」


紅の魔女は顔を見上げながら、妖魔大戦終結から、ここ100年の出来事を振り返る

妖魔大戦終結後の混乱時には、小規模な戦争や武力衝突によるいざこざが絶えず、当時の魔装鎧のスペックは一般民衆にも被害を出していた為に、空戦能力を持った魔装鎧の開発、それに伴う技術を意図的に失わせている。ウロボロス、妖魔の存在が出たとは言え、それを早々に解禁する訳にはいかないという事情を分かった上で、紅の魔女は嘆いている


「セルゲイ先生がいない今、ユキナは大丈夫でしょうか…あの子を鍛えられる人なんて、セルゲイ先生以外に思いつきませんし…」

「あー…その辺は心配無用よ。カノン・サイクがいるからね」

「カノン・サイクって、例の歴史の講師の方よね?噂は聞いています。物凄く面白い授業をするって聞きますが…でも実戦は…」


カノンが十二騎士の一人、刃のジェミニアであることは、カリバーン王家でも知り得ない。カリバーン王国、聖王都の中でカノンの素性を知り得るのは、紅の魔女や魔法省大臣と、一部魔法省職員、そしてグランとユキナだけである。ミーラは知る由もないのだ


「アイツに関して言えば、セルゲイよりも強いわよ。むしろ、ユキナの教育係として、これ以上のない適任者よ」

「…紅様が、そうおっしゃるのであれば…」


ミーラは、自身が本当に尋ねたいことの本題を逸らしているに紅の魔女は気付く。その話題に関しては、ミーラとしては信じられないこと、信じたくない事実。紅の魔女は少し息を吸って、心を落ち着かせて、本題に入る


「…ナナコのこと、気になる?」


ミーラは尋ねられて、返答に困りつつも、紅の魔女に返答をする


「…本当に…ナナコが聖剣支持派に加担して、ユキナ達の誘拐の示唆したというの?」

「そうよ。ついでにセルゲイを嵌めて死因を作った重罪人の一人よ…グラス家のメイドで魔族であるナナコ…そして、かつてはユリカ・カリバーンのお付きの世話係のメイドだった者」

「ユキナが生まれてから、ずっと彼女を知っていたナナコが…紅様、ナナコがユキナを裏切るなんてことは…」


ミーラは信じられないのである、それほどまでにナナコのことを良く知っていると思っているからこそ

しかし、紅の魔女は現実を突き付けるように言う


「ミーラ…状況証拠、そして生き残っていた聖剣支持派の話から、ナナコは聖剣支持派に数年前から加担していた。セルゲイとユキナ達の行動を把握し、セルゲイを始末し、聖剣の担い手を確保する為に…そもそも、ユキナが聖剣の担い手という事実を知っているのは、ごく一部…その中の一人であるナナコであれば、実行は出来る…動機に関して言えば…当人から聞くしかないけど…」


紅の魔女は、当時…ユリカ・カリバーンの処遇を話をしていた頃を思い出す


「…ナナコは、ユキナを王家から追放することを猛反対していた…だとすれば、動機としては…」


紅の魔女は、自身の推測を言い切ろうとしたときであった


「その通りです。流石です、紅様」


突如、この場にいない者の声がして、ミーラと紅の魔女の二人は驚き、辺りを見渡す

秘密裏な話をする故に、この場には誰も出入りを禁じていたのだ。にもかかわらず、ナナコの声が聞こえたのだ

紅の魔女は勘づき、テーブルから立ち上がってミーラを庇うように前に出る。だが、気付くのが遅れのだ。目の前の空間の歪みから、光線が紅の魔女の四肢を貫き、貫通した光線がテーブルを粉々に破壊する


「ぐぅぅぅ!?」


防御魔法が間に合わず、ミーラを庇うの精一杯だった紅の魔女は、痛みに悶えながら、ミーラの目の前に倒れ込む


「く、紅様!?」


ミーラは、倒れた紅の魔女を駆け寄ろうとしたが、今度はバインド空間の歪みから撃ち出され、ミーラを拘束し、ミーラは倒れてしまう


「…お久しぶりです、ミーラ様」


空間の歪みから、ナナコと、10代前半の少年が現れたのだ…ナナコは無表情で、少年はニヤついたまま、魔装銃を振り回している


「ナ…ナナコ…ど、どうして…」


ミーラは、バインドに拘束されて倒れたまま、ナナコに尋ねる。ナナコはニヤリと微笑む


「ミーラ様…私は、ユキナ様…いえ、ユリカ様の為に行動をしています。ユリカ様、聖剣に選ばれしカリバーン血筋の者こそが、王になるに相応しい…ミーラ様、貴方にも協力していただきます。ハザマ様」


ハザマと呼ばれる少年が、魔装銃を振り回しながら、ミーラの近くまで近づき、懐から黒いカードを取り出す


「んー。ねぇナナコちゃん、本当に王妃様だけにやっていいものかな?どうせなら、そこの魔女にも埋め込よう!そして連れ帰って、僕の遊び道具にしたいな♪僕好みにおっぱい大きいし♪」


ハザマと呼ばれる少年のニヤついた表情は、どこかした狂気を感じるものがあり、ミーラを息を飲む


「いけませんよハザマ様。紅様の動きが予測不可能。そのせいで以前の計画を台無しにされたのですから。現状、無力化…というより、我々ウロボロスには、紅様では大して脅威ではありません」

「んー…ナナコちゃんが言うなら仕方ないや…時間もないし、やっちゃおうか♪」


ハザマは、黒いカード…ウロボロスカードを、ミーラの腹部に埋め込む


「ぐう!?」


ミーラは一瞬、痛みを感じたものの、特に流血も体に損傷はなかった…だが、ミーラは自身の服に何かしらの異物感を感じていた


「えへへ♪王妃様♪そのウロボロスカードは、数日で王妃様の体を妖魔の怪人にしちゃうんだよ?凄いでしょ!?…そうだな、期日は百年祭のころだね!それまでに聖剣と、王妃様のお姫様を渡してくれたら、それを取り出してあげる♪それじゃねぇ~♪」


ハザマは空間の歪みを作り、ナナコと共にその場から立ち去る

騒ぎを聞きつけた衛兵達が来る頃には、ハザマとナナコはおらず、バインドで拘束されたミーラと、光線で四肢を貫かれて、痛みに悶えて動けない、紅の魔女だけであった


カリバーン王国首都、聖王都で行われる、妖魔大戦終結を祝った祭、百年祭まで…一週間切っていた

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