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鉄塊の怪人 3

「さて、二人とも…無事だが、満身創痍って感じか?」


カノンはグランとセルゲイの様子を見て、相当やられたと判断する


「カノン先生…無事、だったんですか?」

「そんな幽霊を見ているような表情をするなよグラン。まあ、大方はあの魔法使いがオレが死んだとか言っただろうが…オレはこの通り、ついでにお前さん達の親御さんも無事だ。まさかグラス邸にまで刺客を送り込んでくるとは…まあ、思わなかったわけでもないが」


カノンはニヤリと微笑みながらグランとセルゲイに話す。この状況であってもカノンは余裕を崩さない

だが、グランは見えていた。カノンを蹴り飛ばした、鉄塊使いが、鉄塊を放っていたのを


「カノン先生!!前!!」


グランが慌ててカノンに警告するが、カノンは振り返ることもせずに杖を展開させ、振り返りながら鉄塊を杖で弾き飛ばす


「…この程度の奇襲に気付かないと思ったか?オレの魔力探知は僅かでも気付けるんだぞ?ましてや魔力の大きく使う魔力変換なんざ、もってのほかだ。鉄塊野郎」


鉄塊使いは立ち上がり、魔装銃をカノンに構えながら対峙する


「…カノン・サイク、貴様は始末したと聞いた筈だが」


口調こそ冷静であるが、表情は先程まで違い困惑と怒りを表していた


「どうやら、お前…お前さん達の仲間は、自分の仲間の声の判別が付かないようだな?奴らの通信具から誤った情報を言ったのはオレだ。グラン邸に差し向けたお仲間さん達は可哀相なことになったよ。3人は棺桶、他のお仲間もしばらくは病院のベットの上の生活を強いられることになったぞ?」

「…なるほど、貴方を侮っていましたね…確かにかなり強いという情報はありましたが、まさかここまでとは」

「今更紳士ぶった口振りするなよ鉄塊野郎。薄っぺらい仮面なんざ、すぐに剥がれるもんだぞ?」


鉄塊使いの態度や口振りを、小馬鹿にするようにカノンは挑発する

表情は変えないが、魔装銃を持つ手は震えている程度には怒っている様子であった


「グラン!!セルゲイ先生!!」

「ユキナ!?無事だったのか!!」


カノンに遅れて、ユキナがエントランスに入り、グランとセルゲイの元に駆け寄る


「うん、カノン先生が私を…それよりもセルゲイ先生の手当てを…」

「いや、ユキナ、グラン。セルゲイと自分の身を守ることを優先にしろ。逃がしてやりたい所だが、今の状態をセルゲイを動かすのは良くないし…奴らの仲間がまだいないとも限らん。その場から動くなよ」


カノンは持っていた魔装銃をユキナに投げ渡す。コレで身を守れてと言わんばかりに

そしてカノンは杖を鉄塊使いに向けて、宣言をする


「さて、鉄塊野郎。オレが相手だ、覚悟しろ」

「…先程は油断していただけで、調子に乗らないでもらおうか、カノン・サイク。私の力は大魔法使い、セルゲイ・ローレルさえ凌駕するほどであることを、忘れないで頂きたい!」


鉄塊使いは、先程同様に無数の鉄塊を周囲に展開させて、カノンに向けて放つ


「その古臭い杖で、何度も捌き切れると思うな!カノン・サイク!!」

「確かに、杖で弾いたらアイツらに当たりそうだな。なら、たたき斬るまでだ」


カノンは左手を指を鳴らすと、大気と魔力で剣を形成する


(え?カノン先生、今、魔装具どころか、詠唱…略式詠唱すらしていない!?)


カノンは杖と風の剣で、向かってきた鉄塊を全てたたき斬っていく。息を一つも切らすことなく、余裕で


「な…んだと…」

「物理的な刃だと刃こぼれるだろうが、風の剣なら関係ないからな」

(いや、それはおかしい!!)


鉄塊使いとグランがおかしいと思うのも無理もない。ウインドブレード、風の刃や風の剣などの類の魔法は実在はするし、実際に大概の魔法使いは使える。だが、鉄塊使いが放つ、鉄塊を斬れる程の切味までは無い

筈なのだが、カノンの風の剣は、まるで紙を斬るかの如く、切れて当たり前という感じで鉄塊を斬り伏せたのだ


「確かに、お前さんの鉄塊をぶっ飛ばす魔法というのは単純かつ効果的で、それでもって攻撃にも防御にも転用できるから脅威的だ。多大な魔力をどうやって補っているかは知らんが、それさえ克服して、無尽蔵に鉄塊を魔力変換と錬成魔法で使い続ければ弱点は少ないかもな…ただ、魔力変換は、物質が保てなくなるほどのダメージ…砕けるか、真っ二つに両断してしまえば、簡単に消失する」

「知ったような口を!!」


鉄塊使いは再び鉄塊を自身の周囲に形成し始める


「まだ弱点があるぞ?その魔力変換で形成するタイムラグ、多ければ多い程隙が生まれるという点だ」


カノンは風の剣を納め、左手を鉄塊使いの前に向けて、指を鳴らす

鳴らした瞬間、カノンの周囲から何かが射出されると同時に、鉄塊使いが展開した鉄塊が全てが真っ二つに両断され、消失する


「な!?」


何が起きたのか。鉄塊使いはすぐには理解は出来なかったが、魔法使いとして気付く


「まさか、無詠唱での魔法!?風の刃で鉄塊を斬ったというのか!?この数を!?」


理解した瞬間、カノンは立て続けに指を鳴らして、無数の風の刃を鉄塊使い相手に射出する

鉄塊使いは、咄嗟に鉄の壁を構築し、防壁の魔法もかけて無数の風の刃を防ぐ

防壁と鉄の組み合わせは、両断されることは無いが、カノンが放つ風の刃は鉄を傷を入れる程の切れ味であった。数発なら耐えきれるが、いずれは抉り切られる

そこから何十発も風の刃を射出するカノンであるが


「魔法防壁も張っていれば、流石に硬いな…ならば」


カノンは風の刃を射出しながら、懐から札を出し、鉄塊使いに向けて投げて、鉄の壁に貼りつく

鉄の壁に張り付いた札は、たちまち青い炎で燃え始めて、鉄の壁に引火する。そう、以前にグランの分身相手に使った東洋の魔法、魔力に反応して燃える札である

鉄の壁は燃え尽きることは無いが、盾にしている鉄塊使いはそうはいかずに


「熱い!?なんだこの炎は!?!?」


鉄塊使い本人も引火し、慌てる。慌てて、鉄の壁を維持する集中を乱されて、鉄塊使いを守る鉄の壁が消滅する

鉄塊使いは引火した火を、手で払うなどで消火はした。だが、その隙をカノンは見逃さない。いや、その隙を作る為の行動だった

瞬時に鉄塊使いの間合いに入り


「しま…」


左手に持った、風の剣で鉄塊使いの利き手ごと魔装銃を両断する


「あがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


鉄塊使いは、利き手があった腕を抑えて、苦悶の声を上げて悶える


「凄い…カノン先生、あっという間に追い詰めた…」

「それ以前に、カノン先生が使っている魔法…あれは、殺人魔法…それも無詠唱で行使するなんて」


ユキナとグランは、グランの折れた右手、セルゲイの手当てしながら、カノンの戦いを見ていた。自分達の師であるセルゲイを追い詰めた相手を、カノンは圧倒的な実力差でねじ伏せた

コレで助かった、そう安堵していた


「だ、ダメだ…カノン様…トドメを早く…」


セルゲイの声をカノンに届くことなく、カノンは鉄塊使いがこれ以上抵抗することが無いと判断し、追撃せずに、質問をしようとしていた

カノンは、自身の杖を鉄塊使いに向けて、問いかける


「さーて、お前さんのお仲間は全て片付けた。ここからは色々と聞こうじゃないか?大人しく質問に答えれば、助けてやる。オレも好き好んで人を殺すのは趣味じゃない」


大量に出血する利き腕を抑え、息も荒い鉄塊使いは、カノンを睨みつける

自分をここまで痛めつけたカノンに憎悪の目を向ける


「抵抗も沈黙もオススメしないぞ?その出血じゃ、そんな長くは持たないだろ?」


この状況で鉄塊使いが逆転できる術はない、カノンとグランとユキナはそう思っていた。だが、セルゲイだけは気付いていた


「くくく…ハハハハハ…ハハハハハ!!!!!!」


鉄塊使いは高笑いをする


「…正気じゃなくなったか?」

「私は正気だ…!カノン・サイク…貴様を侮っていたのが間違いであった。まさかここまでとは思わなかった…だが、だが!!!」


鉄塊使いは真っ黒なカードを取り出し魔力を通すと、自身の周囲にドス黒い魔法障壁が発生する

異変を察知したカノンは、即座に風の刃を撃つが、ドス黒い魔法障壁がそれを防ぐ


「これは…魔装鎧の術式?だが、この寒気がする感じは…」

「くく…キャストアップ!!!(我が身を覆え)


鉄塊使いに、魔石らしきもののバックルが付いたベルトが装着される。そのベルトの魔石から、黒い霧が鉄塊使いの身体を覆う

そして黒い霧が消えると、鉄塊使いは異様で異形という表現が合う、魔装鎧を、鉄塊使いは纏っていた


「あの姿…!!あの時の!!」


ユキナがアクエリアスの魔装鎧で戦い、敗れた相手に似ていたのだ

カノンは驚きつつも、その異様な魔装鎧を纏った鉄塊使いを観察する


「その姿とこの力の気配…なるほど、なんで魔力を消費が激しい魔力変換で、無尽蔵に鉄塊を形成出来たからくりがわかった…そのカード…妖魔の力だな?」


妖魔、100年以上前に壊滅した、オリュートスに生きる生物全ての敵

その力を、鉄塊使いが行使、制御していることにカノンは気付く


「その姿、まさに怪人…鉄塊の怪人って言った所か…厄介な力を手にしやがって…おまけに斬った、利き手まで復活してやがる」


鉄塊使い改めて、鉄塊の怪人は、カノンに両断されたはずの利き手が自己再生して、生えていた


「よもや、魔装鎧すら纏っていない魔法使いにこの力を使うとは思わなかったが…だが、この力、貴様に捉えられるものか!」


怪人はカノンの視界から消えたと思った瞬間、カノンの側面から鉄塊の怪人が蹴りを入れていた

だが、カノンもそれに瞬時に気付いて反応し、杖で受け止める

怪人は、鉄塊を飛ばすだけじゃなく、魔装鎧と同様の高速機動で縦横無尽に動き回り、カノンに近接戦と鉄塊を飛ばす攻撃を織り交ぜた猛攻を加える


「ち…魔装鎧同等の動きをして来るのか、怪人形態は」


カノンは怪人の攻撃を凌ぎ、反撃しつつも、決定打にかけていた

怪人は体を鉄にし、腕を刃にして攻撃するなどしてくる

怪人の近接戦の技術自体は、カノンに比べたら大したことが無く、むしろカノンが風の剣で鉄塊の怪人の四肢をカウンターで両断している程…だが


「妖魔同様の再生能力も持ち合わせているのか…!」


両断した瞬間に、すぐさまにくっついて再生しているのであった。射出する風の刃では、鉄の体の怪人には有効打に欠けており、両断出来ずにいた

カノンは杖による打撃をメインに変えて、攻撃を加える。怪人は鉄の壁を構成し、防御に姿勢を取る

カノンは一瞬、不思議に思ったが、そのままの高速戦闘の流れで鉄の壁に攻撃を加えた


「!?駄目だカノン先生!!その鉄の壁は破裂する!!」


怪人の手の内に気付いたグランはカノンに警告するが、遅かった

グランの杖の一撃は、鉄の壁に亀裂をいれてしまい、鉄の壁は勢いよく破裂して破片がカノンを襲う

さすがのカノンも、後ろに飛ばされ、鉄の破片が()()()()当たる


「…器用な魔法使いだな、カノン・サイク。まさか破片も切り落とすとは」

「グランに言われていなければ、今頃血だるまだったがな」


怪人の言う通り、グランの警告に気付いたカノンは、瞬時に風の刃で破片を切り落としたのだ

とは言え、すべてだけじゃなく、ローブが破片でボロボロになっていた。辛うじて帽子が無傷だったのが、カノンにとっては幸いだった


「どうだカノン・サイク。この圧倒的な力、恨むならセルゲイ・ローレルを恨むがいい!」


怪人はセルゲイの方を見つつ、語る


「セルゲイ・ローレル!貴様が築き上げた魔装魔法と魔装具の開発と発展は、妖魔の力を制御するまでに至った!!そしてこれに聖剣の力を手にすれば…貴様らは、我々聖剣支持派の崇高な犠牲になるのだ!!感謝するがいい!!そして恨むがいい!!貴様らを死に追いやるセルゲイ・ローレルを!!」


怪人の好き勝手な言い分に、カノンは杖を強く握り、言い返そうする前に


「ふざけんな!!」


啖呵を切ったのはグランであった。グランは立ち上がり、続ける


「ふざけんじゃねぇ!!セルゲイ先生が魔装具を作ったのは、生活を豊かに、魔法の力をもっと身近に使って欲しい、そういう善意の願いから来たものだ!!お前みたいな悪事に使われる為に魔装魔法、魔装具は発展してきた訳じゃない!!お前がセルゲイ先生を語るな!!」


普段は冷静ぶって、でも正義感を持つグランが、荒げて語る言葉に。カノンも覚悟を決めさせていた


「よく言ったグラン…!お前の言う通りだ。この愚かな怪人は何もわかっていない。そして間違っている」

「間違っているだと?」

「ああ、間違っている。大間違いだ。セルゲイがオレたちを死に追いやるんじゃない…セルゲイがお前を追い詰めたが正しい」


カノンは、懐からカードを取り出す。クリアグリーンに術式が刻まれたカード、カノンはそれに魔力を通す


「魔装鎧がお前だけのものじゃないってことを、教えてやる…!」


そしてカノンは、セルゲイに向けて言う


「見ていろセルゲイ・ローレル…オレの変身を。キャストアップ(我が身を纏え)!!」


カノンがカードに魔力を通すと、魔法障壁がカノンの周囲を包む

カノンの腰に、ベルトが出現する。アクエリアスの魔装鎧と似ている、魔石が中央のバックルについたベルト。違うのは、カノンのベルトの魔石のバックル左右に開閉のハンドルが付いている

カノンは左右にハンドルを開くと、魔石が回転し、輝き始め

〈Sequence Cast up〉

ベルトからネイティブな音声が流れる。回転した魔石は魔力を溜め、輝きが更に増し始め


「変身!」

〈Henshin〉


バックルの左右のハンドルを閉めると、魔石の輝きがカノンを覆う。その変身の魔力の反動はエントランス中に突風を呼び、怪人もユキナ、グランも反動を感じる程であった

そして、カノンが魔装鎧を纏った姿が、露わとなった


「な!?」「その姿は!!?」


ユキナとグランはその姿に驚く


「貴様は…まさか!!」


怪人もその見覚えのある姿に驚愕する


「ああ…また、その姿を見られる日がこようとは…」


セルゲイは羨望のまなざしでその姿を見る


それは、かつての妖魔大戦時代に、数多の妖魔を瞬時に斬り伏せることが出来たとされる魔法使い

それは100年以上前に世界、オリュートスを救った12人の英雄の一人

それは人々の希望であり、そして妖魔の絶対的な敵対者

それは騎士であり、魔法使いでもある

マントをなびかせ、白色に青色のラインが入った魔装鎧の姿。当時の魔法使いの象徴たる帽子を被り、当時の魔法使いの主装備である杖を持つ

誰もが知る、その英雄の名は


「あえて名乗ってやろう、妖魔の力を使う、愚か者よ。十二騎士が一人、”刃のジェミニア”。さあ、ショータイムだ」


挿絵(By みてみん)

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