灯花はわたしの飴を舐めたいへんたい5
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それどころか、灯花はまだ満足していないのか、右手に持ったあめとわたしの顔を交互に見つめて、何かひらめいたように、
「ねえ、加奈。ちょっといい?」
とわたしを見る。
「な、なに?」
「これ、もう一回なめてもらっていい?」
右手に持ったあめをこちらにむける灯花。
「ど、どういうこと?」
「これ、もう一回加奈になめてほしいの」
「……」
わたしは灯花の言っていることを理解し、心臓がどくんとなる。
「い、いやだよ」
「なんで?」
「なんでって……」
さっきと逆の要求だけど、やっぱり断る理由があまりに多すぎてわたしは言いよどむ。
「ふ、普通、人がなめてるあめはなめないでしょ」
「普通ってなに?」
「む、難しいこと聞かないで」
「あたしがなめた後はいやってこと?」
「……そ、そういう意味じゃ……、な、ないけど」
わたしが口ごもっていると、
「じゃあ、これから加奈のことおどすね」
と灯花は宣言する。
そして、
「これ、なめてくれないと、図書室勝手につかってること先生に言うから」
と冷静な声で言った。
「えっ」
灯花の言う、おどす、という意味を理解し、わたしは言葉を失う。
でも、その間も灯花は、
「先生の信用なくしたくないでしょ?」
とわたしに詰めてくる。
「い、いじわるしないで……」
わたしはうろたえる。
けれど、灯花はいたって平然と、
「じゃあ、なめて」
と要求し、少し小さくなった棒キャンディをわたしの口元へ向けて突き出してくる。
「う……」
灯花のだえきで、とろとろのぬるぬるになってる半透明なあめ。見ているだけで、頭の中がぽわぽわとしてくる。
「や、やだ」
わたしは咄嗟に視線を逸らす。でも、灯花はそれを許さない。
「加奈、あたしを見て」
灯花の左手がわたしのほっぺたにふれる。そうされると、魔法にでもかかったみたいに、わたしは灯花に抵抗できない。言われるがまま、灯花の顔を見つめてしまう。
ぱちくりと、灯花と目が合う。
大きくて、少し幼くて、そしてどこか寂しそうな灯花の目。
その目に見つめられているとわたしはもう何も考えられなくなる。
「ほら、加奈。口開けて」
「……あ」
促されるままわたしは口を小さく開く。
「もっと開けて。舌が見えるぐらいまで」
「……うあ」
「そうそう。よくできたね、加奈」
灯花にまじまじと口の中を見られている。とても恥ずかしいのにどうしてかわたしは口を閉じることができない。
「加奈、歯並びきれいだよね」
灯花はわたしの口の中をじっと見つめてちょっとだけ微笑む。
「それに、口の中、ぴんく色の小さな舌とか、よだれでぬらぬらしてるとことか、なんかえっちかも」
「……っ」
そんなこと言わないで。って言いたいけど、口を開けたままだと何も言えない。胸の奥がどきどきして、お腹の中がぐつぐつする。今にもとけてしまいそうな身体の中のその反応を、わたしはがまんすることしかできない。
けれど、そんないっぱいいっぱいなわたしの内心を、灯花は考慮してくれない。
「じゃ、いくね」
と合図を出したかと思うと、右手に持ったあめをそっとこちらへ差し出してくる。
「……あ」
ゆっくりと。
小さくなったあめが、灯花の右手の動きに合わせてわたしの口元に迫ってくる。
……このままじゃ、灯花の口の中に入ったあめがわたしの口に入ってくる。
そのことを考えると、全身からじっとり汗が出て、頭の中がどうにかなっちゃいそうなのに、どうしてか灯花から顔を逸らせないし、口を閉じることもできない。わたしは自分の身体のことがわからなくなる。
……だめっ!
心の中でそう叫んだ。
次の瞬間。
ぴと、とわたしの舌の上にあめが置かれるのがわかった。
「んあっ……」
直後、舌全体にソーダの味が広がる。香料のさわやかさと甘味料の独特な甘さ。馴染み深いソーダ菓子の味。
でも、その中にほんのりと別の甘さが広がる。
温かかくて、少しとろっとした、……ふしぎな甘さ。
「加奈、わかる? ……これ、あたしの味だよ」
「……っ」
灯花に説明されて、おなかの奥がじゅんとした。
胸が締め付けられて、ふとももの内側に火がついたような熱さが走って、灯花の顔を見ているだけで死んでしまいそうになる。
でも灯花のいじわるは終わらない。




