広告主様は神様です 2022年10月7日
この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。読みたい方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。
もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。
山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。
架空のラジオ番組の文字起こしという体裁のため、文法や文中記号の使い方が本来のルールとあえて異なった形になっている点をご了承願います。
また、この小説は言うまでもなくフィクションです。
おはようございます。このはな村インフォメーションです。この番組では、このはな村に関するさまざまな情報をお送りしております。
このはなFMでは、村外からこのはな村へ越しになる方への情報発信も兼ねて、この放送のネット配信を行っております。
今日は、今夏の首都圏における節電要請に関するこのはな村の対応をご報告します。
首都圏では、夏季の電力需要ひっ迫により建物内照明の一部消灯などを行なっている施設等がありました。このはな村では、首都圏三ヶ所に掲示していた「コノハナ・ヒトリレジャーノススメ」キャンペーンポスターに使用されていたスポットライトを消灯しました。
村では、首都圏の電力需要がひっ迫しているという状況を踏まえ、村内での節電運動に加え、電力需要の高い首都圏でもポスター掲示箇所の消灯させる必要があると考え、今回の決定に至りました。
しかしながら、広告管理会社からは広告用照明は消す事が出来ないという回答がありました。このため、村はポスター掲示箇所の管理者ならびに所有者または権利保有者に対し、次のような要望を提出しました。一部抜粋します。
「建築物等において明るさが人にとって必要な箇所、すなわち通路等において照明を間引きするのであれば、広告物の照明の重要度がより低くなるのは自明である。当村は現在貴重な首都圏の電力資源をなるべく消費しないため、掲示物に向けた照明を消灯するよう求める」
これに対して、
「広告物の照明を消すことは契約上不可能である」
という回答がなされたため、村は追って以下のような要望を送付しました。
「技術的、または点灯消灯および維持管理面から困難であることは理解できるが、単に広告だからという理由であるならば承服しかねる。大規模停電の危機においては、当村が宣伝活動のために電力を消費することがイメージダウンに繋がりかねない。広告主の印象を損なわないためにも、再度、当村の掲示物に対するライトの照射を休止させるよう強く求める。もちろん他の広告主をこれに同調させる意図は無い」
同時に村職員による現地調査の結果、すべてのポスターにおいて、個別にスイッチ操作もしくは管球類の取り外しが出来ることを確認。ポスター部分のみ点灯させない処置を依頼、もしくは村職員自身が消灯作業を行いました。
十月となり、既に夏の電力需要ピークは過ぎていると考えられますが、村は、地方公共団体が実例をもって節電の必要性を訴える効果、ことに冬の電力需要増大に対する警戒を喚起させることを期待し、この対応を継続いたします。
以上、このはな村の節で対応についてお知らせ致しました。
このはな村インフォメーション、本日の担当は板谷でした。
アニメとか観ていると、ニュース速報だの選挙結果だのが字幕とかL字画面とかで被ってくることありますよね。
もちろんそれらは必要な情報なのだと思います。ところが、CMになった途端に消えてしまう。大事な情報ならCM中だろうが関係無いだろがー! 今回はそういう理由によるスポンサーやテレビ局への当てつけです。自分がスポンサーだったら、そんな余計な忖度はやめてくれって思いますもの。
冬にはまた電力不足が懸念されることとなるでしょうが、必要な電気が消されて余計なところが明るいってのは勘弁です。