子どものサングラスにご理解をお願いします 2022年9月16日
この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。読みたい方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。
もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。
山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。
架空のラジオ番組の文字起こしという体裁のため、文法や文中記号の使い方が本来のルールとあえて異なった形になっている点をご了承願います。原則として地の文はメインパーソナリティのおしゃべり、カギカッコ内は他の登場人物のおしゃべりです。
また、この小説は言うまでもなくフィクションです。
おはようございます。このはな村インフォメーションです。この番組では、このはな村に関するさまざまな情報をお送りしております。
このはなFMでは、週末に放送するいくつかの番組をネット配信しているほか、村外からお越しになる方への情報発信も兼ねて、この番組も配信を行っております。
今日は、このはな村の子ども特有の服装について説明致します。
村の教育機関では、子どもにもサングラスの使用を推奨しております。標高の高いこのはな村は紫外線が強く、夏の晴れた日は特に注意が必要です。
また、このはな村には世界各地にルーツを持つ子どもが多く在住しており、目や肌の色素が薄く日焼けしやすい体質の子どももいます。
このため、村では子どもがサングラスなどで目を紫外線から保護することは重要であると考えております。その趣旨をご理解のうえ、干渉せず見届けてくださるよう、ご協力をお願い申し上げます。
また、村内でマスクをしていない子どもがいるとのご指摘を何件か頂戴しておりますので、その理由を説明致します。
これは、感覚過敏などの理由でマスクが出来ない子どもがいることへの配慮です。感覚過敏とは五感への刺激に過剰反応をする状態のことで、マスクを付ける事で皮膚の痛みなどを感じることがあります。また、その他にもさまざまな理由でマスクをできない子どもがいることを村内各教育機関で確認しております。
このはな村では、マスク着用に支障のない子どもにつきましては、必ず正しい方法で着用するよう指導を徹底しております。そのため、マスクをしていない子どもは百パーセント「マスクを出来ない子ども」ですので、マスクに関する声がけは、おやめ願います。
次に。
今週末から来週初めにかけて、台風の影響による大雨の可能性があります。このはな村は年間を通して降水量の多い村ですが、改めて警戒をお願い致します。
気象庁の定義によれば、一時間あたりの雨量が十ミリ以上はやや強い雨、二十ミリ以上は強い雨、いわゆる土砂降りとなります。さらに一時間三十ミリ以上のバケツをひっくり返したような雨は、車の走行が危険になるなどの影響が発生します。
このはな村では、このバケツをひっくり返したような雨が毎年梅雨から秋にかけて多く、今回の台風においてもこのレベルの雨が降ることが予想されます。
また、一時間五十ミリ以上の非常に激しい雨、八十ミリ以上の猛烈な雨が降ることもあり得ます。このはな村では猛烈な雨を観測することが年に数回ありますが、多くは二時間以内に時間雨量十ミリ未満の状態になります。これは夏特有の積乱雲の発達によるもので、一時的に外出や車の運転が困難となります。
一方で、台風や前線による大雨は長時間にわたる事が多く、一日あたりの積算雨量が多くなることで土砂災害などの起きる可能性が高くなります。このはな村では長時間の雨による人的被害の記録はありませんが、二十四時間雨量がおよそ千ミリに達した場合、何らかの被害が起き得ます。斜面や周囲より低くなっている所には近づかないよう、注意をお願いします。
どの程度の雨が災害につながるかは地域ごとに異なり、その地域でそれまでに経験したことがないような大雨の際に災害リスクは高まります。このはな村は相当量の雨に耐えられる土地ではありますが、これまで経験したことのない記録的な豪雨が発生した場合につきましては、身の安全を確保し、土砂災害などが発生しそうな場所には近づかないようお願いします。
このはな村インフォメーション、担当は板谷でした。
「感覚過敏」という言葉で検索してみると、視覚・聴覚・味覚などさまざまな感覚について、深刻な症状を訴えている人がいるようです。
マスクが出来ない人というのは、知覚過敏以外にもさまざまな病気などによって存在するんだそうです。さすれば、マスクを出来る人は徹底的にマスクをして、マスクが出来ない人を危険にさらさないようにする事が必要なんだろうと思います。
危険な雨量というのは地域によって違うそうです。同じ百ミリの雨でも、それがしょっちゅう降っている地域ではそれなりの対策があるわけだし、そんな大雨が滅多に降らない地域では災害となる、というものなんだそうです。
なるほど、これを雪に置き換えてみれば、積雪三十センチとなれば東京では大パニックですが、札幌とか新潟とかでは日常茶飯事。都市機能は通常運転ですしね。その地域で過去に類を見ないような大雨、というのに要注意なんだそうです。
このはな村は山の中なので、夏は天気が変わりやすく大雨も降りやすいという設定ですが、そう言えば線状降水帯のような長く降り続ける雨については設定があやふやだったなあと、台風の季節になって思った次第です。基本的にこのはな村は厳しい気候だけど災害には無縁という考えでいますので、長い大雨でもへいちゃらなんです。そのへんもうまく小説に反映していきたいですね。
常日頃思っている事を架空の村の広報でお知らせしてみました。僕の書くものは大体そうですけど。天災も人災もご注意くださいまし。