2022年9月9日 植物はやみくもに増やしましょう
作者儀間朝啓の妄想から産まれた架空の村、このはな村。このはな村には作者が理想とする自治体のあり方が詰め込まれています。
この小説は、このはな村のコミュニティFMから放送される村の情報番組を書き起こすという体で、作者の作り出した架空の世界妄想にお付き合いいただくというものです。
おはようございます。このはな村インフォメーションです。この番組では、このはな村に関するさまざまな情報をお送りしております。
このはなFMでは、週末に放送するいくつかの番組をネット配信しておりましたが、夏休みの観光シーズンを契機として、村外からお越しになる予定の方へも情報を発信するため、この番組もネット配信を開始しました。
本日は引き続き「このはな・植物を増やそうキャンペーン」についてお送りします。今週特に目立ったご意見としては、
「植物が大気中の二酸化炭素を吸収することは理解できるが、必ずしも地球温暖化の防止に寄与しないのではないか」
といった趣旨のものです。これにつきまして、このはな村環境衛生課から以下の回答を致しました。
「ご指摘の通り、植物は成長時には二酸化炭素を吸収しますが、寿命を迎えて枯れた植物は微生物等によって分解され、その際に二酸化炭素を放出してしまいます。しかしながら、植物の繰り返し生育する場所が確保されている限り、新たな植物の成長によりその二酸化炭素は再吸収されます。よって森林等を減らさないことで大気中の二酸化炭素量は一定のバランスを保つと考えられます」
この見解につきまして、ちょうど反論になる形のご意見が寄せられております。
「二酸化炭素は減らすことが必要で、森林の保護はそれに貢献しない」
というものです。これにつきましても環境衛生課の見解がございます。
「当村は森林や緑地の保護に加えて、植物の育つ場所を増加させることに取り組んでおります。スキあらば植えよ、を合言葉に、わずかな空き地も植物で埋め尽くす試みを行っております」
また、このはな村教育委員会からも補足回答があります。
「村内の教育機関では学校や保育所・公園などの公共施設で、種から木を育てる実践教育を行っております。従来、村内の街路樹や公共施設の植栽から落ちた種は廃棄されていましたが、地面に埋め戻すことで発芽することもあります。一方、村内公共施設では花壇や植栽が老朽化したり、使用していない中途半端な面積の土地があったりするため、ここにこれらの種をまくことで、子どもたちの教育効果と緑の増加という二つの効果が期待できる実践となっています。使用される樹木の種は本来処分されるものである上に、公共用地の植樹の多くは村在来の樹種が採用されているため、村の気候に合っています。したがって育成に係る環境負荷も削減されます。また種まき以外にも、せん定で出た枝をそのまま廃棄せず挿し木によって育てたり、落ち葉などを原料とした堆肥作りなどの実践も行っております。その結果、例えば村内二つの小学校ならびに一つの分校で合わせて数十本の樹木を育てることに成功しております」
ということです。
この試みによって緑化に成功した場所の写真がスタジオに届けられています。このはな東小学校の駐車場の一部なのですが、もともと砂利が敷かれてロープで駐車区画が決まられていますが、横長の土地に駐車しやすいよう、長方形の土地に対して斜めに区画が取られています。そのため、車の後ろがデッドスペースとなっていました。
そして現在の駐車場の写真です。三角形のデッドスペースが緑に覆われています。花壇の縁は街路樹のメイプルをせん定した際に出た枝を利用しており、ついでに車止めも作られています。そこに校内の落ち葉を集めて作った腐葉土を入れて、ガマズミなどの種をまきました。木は成長して一メートルを越していますが、かなりの年月がかかってはいます。ですがあまり木が高くなると落ち葉が車に積み重なったりするので、これくらいでも良いとのことです。地表にはキキョウやナデシコなどの花が植わっており、地面のグラウンドカバーとしてカタバミなどをわざと生やし、外来種などの侵入を防いでいます。
これら一つ一つの緑化箇所は小さいですが、村中にこういった土地の有効活用を広げた結果、合計面積は一ヘクタールを超えているそうです。
以上、本日も、寄せられたご質問に対する村からの回答から抜粋したものを放送いたしました。なお紹介した回答は、公開することを同意された方に対するもののみとなります。
担当は板谷でした。
金曜更新と言っておきながら、日曜更新になってしまいました。お詫び申し上げます。
今回、作品は早めに書けていただけに余計悔やまれます。
「やみくもに植物を増やす」なんて言うと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、作者個人は「やみくもに増やして何が悪い、良いことずくめじゃないの?」と思っています。
二酸化炭素による地球温暖化は、最終的には炭素の差し引きの問題だと思います植物は、光合成をして大気中の二酸化炭素を酸素に変えて大気に放出する代わりに、炭素を貯め込みます。ところがその植物が枯れて分解されれば、その炭素は再び二酸化炭素となって大気中に戻ってしまいます。
前回はそうして大気中に放出された二酸化炭素も、森林などの緑地が維持されている限りは、新たな植物が成長することで再度吸収されるはずだ、という事を書きました。そして今回は化石燃料の使用や森林の減少によって大気中に漂う二酸化炭素を植物で吸収出来ないかという考察から物語がスタートしました。その一つの解決策が「やみくもに植物を増やす事」だと思ったわけです。
話は変わりますが、花壇に一年草の苗が等間隔に植えられているのを見ると、もったいないと思ってしまう性格です。ハダカの地面にはやがて「雑草」が侵入してくるからそれを刈るのに手間がかかるし、その手間が取れないのか、草ぼうぼうになっている花壇を見ることもあります。アイビーなどのつる草やセダムを敷き詰めると他の植物の侵入も抑制できるし見栄えも良いと思うのですが。
植物をいじりながら、そんな事を思う日々です。