EP91 "The Cutie Bunnies" 旅立ちの時*
◇◆◇◆◇◆
_____転移
第29日目 日本時間推定 8月29日 午前9時00分
"寄ってっ停"の俺の部屋で一夜を明かしたエルザ、バンジョ、エマ、アイリーンのアンドロイド4体に、総統ヘドラー、元四天王、プレイアデスのジョセを含めた七姉妹は、揃って食堂で最後の朝食を終えていた。もっとも、アンドロイドに食事は不要なのだが。
「あのな、俺たちの部屋で寝るなんておかしいだろ!」
「すまん少年、私たちはハンスの屋根裏部屋で寝たが、七姉妹は兎も角、総統とアンドロイド達の寝る場所がなくてな」
それはヴィクトールが謝る事では無く、総責任者のヘドラー総統が謝る話なのだ。
______「ふむ、初めて見る客人も居るが、今日の朝飯の俺の特製"味噌活定食"は久しぶりに旨かっただろ? ユウガとみんな、あっちの世界へ帰ってもこの味だけは忘れないでくれよな」
「勿論さ、ガルガノスさん」
「いっぱいここで食べさせて貰ったしね、あたしは超満足してたわさ」
「ふふ、あたしもよ」
「見た目は面妖だったけど、食べてみたらとても美味しかったわ」
俺達はたいらげた皿を見つめ、これが最後の味噌活なんだなと互いの顔を見つめるのだった。
「ユウガ、この味噌活もう食べれなくなっちやうんだね、わたしちょっと寂しいかな」
そうだね。
レイが残念そうに呟くと、全員が残念そうな顔をガルガノスに向けるのだった。
「そうかいそうかい、そう言ってくれると俺も嬉しいぜ、なぁアイリス。ところでユウガ少年、お前さん、あっちの世界へ渡ったら、そこのレイさんと結婚するんだってな?」
そう言うガルガノスが向ける笑顔には、実に無神経な清々しさがあった。
ピキィィィン
ガルガノスのその一言で、食堂の空気は一変したが、当のガルガノスはどこ吹く風である。
「あなた、空気を詠まなきゃ」
それはなんの空気だ? あぁん??
もっとも、ハンスだけは奥殿が俺と結婚すると、ずっと思い込んでいた。
「バニー殿......その....この空気は? 結婚式に招待してくれるんじゃ?......」
「結婚式? そんな事、俺は知らんぜよ」
「ユ、ちょっとユウガってば!」
レイの外堀を埋めていく作戦は、どうやらハンスにしか効いていなかったと思える。
無神経な空気を詠めないガルガノスは、昨日までギルドの怪我人の対応に追われていて、丁度昨晩帰って来ていたのだった。事態の経緯の全てをアイリスさんから聞いていた為、お別れに間に合うよう、急遽朝飯の仕込みで徹夜をしてくれていたのだった。
しかし俺達に向けた笑顔とは一変して、総統を見る目には厳しい物があった。それは当然であろう。
ギラリ
「ヘドラー、あんたにはひどい目に遭わされたが、幸いにも死んだ者は一人もいねぇ。それにこの町の再建に、あんたの秘密結社が資金に資材と労力、医薬品を提供してくれると聞いた。前よりりっぱな町にしてくれるんなら、こんな有難い事はねぇ。俺はここはあんたの仕出かした事を許そうかと思う」
秘密結社トゥーレ協会とブリル協会の構成員はかなり存在する。世界征服が無くなれば、彼らは目的を失ってする事が無くなるので、再建の為に働かせるのは好都合である。
その為には、彼らの精神浄化処置を行う必要があるが、そこはジョセのIQ500でなんとかなりそうだ。
「うむ、余は、私は生まれ変わったのです。それは当然私が果たさなければならない責任と義務。この異世界島と<天空の剣の町>わたしは生涯、アフターケアを惜しまない所存ですぞ」
さて
両腕は使用不能な<ザ・グレートヘドラー>には、両足とスーパースクランブル・ダッシュで空を飛ぶ事が出来る。
ヘドラーの脱出したマニピュレーター・ポッドは無事であり、地球に戻る為の転移ホールは起動可能である。しかしそれは<ザ・グレートヘドラー>一体が帰還出来る大きさであり、とても俺達全員が戻れる訳ではなかった。
帰還する方法としては、南極秘密基地から転移ホールを作れる飛翔体に迎えに来て貰うという考えであったのだが、そこでプレイアデスの長女ステラが名案を提案してくれた。
「次元転移装置のある私達の宇宙船<ピーピング・トム>号で、全員地球に戻る事が可能です。いまからすぐ<ピーピング・トム>号を呼び寄せますので。アイリーンすぐ取り掛かって」
「はいな~」
「そうですか! 俺達はこれから揃って日本に! 」
全員と聞いたのだが、大荷物のザ・グレートヘドラーだけは、単体で南極秘密基地に戻さなくてはならない。その貧乏くじを引いたのは、専用マニピュレーターのエルザだ。
_____転移
第29日目 日本時間推定 8月29日 午前11時30分
強化バニースーツの変身を解いている俺達"Cuty Bunnies" 5人、ジョセを除いたプレイアデス六姉妹、ヘドラー、バンジョ、エマが、揃って<ピーピング・トム>号に乗り込んでいく。
「総統、あんたは四天王と帰れば?」
「よいではないか、そんな細かい事を気にしてはいかんぞ少年」
はぁ、ま、いいか。後でヴィクトールにでも迎えに来て貰えば......。
それが実に甘かったと、後々俺は後悔する事になるのだが。
貧乏くじのエルザは単独で、残された<ザ・グレートヘドラー>を南極秘密基地に転移移送し、改めて南極基地からヴリル・オーディーン型飛翔体で、四天王達を迎えに行く役目となった。何故かそこにはヘドラーは含まれていない。
「もう、あたしだってマスターに付いて行きたかったのにBoo~よ」
俺は<ピーピング・トム>号の船内に座り込むと、今までの出来事が夢なのではなかったのかと思えてしまうのだ。
しかし、この宇宙船は紛れも無い実体であり、乗り込んでいる仲間達も実体なのだ。
『よくMMORPGのゲーム世界に転移するってラノベがあるけど、これは違うよね。本当に嘘みたいな体験をしたんだ。俺....あ俺達か』
俺の横にはレイとラン、メーダとジョセが、ぎゅうぎゅうと取り囲んで暑苦しいのだが、今はそれも許せてしまうのだ。
「俺達が異世界ジャーブラ島に転移してから29日間、短い間にいろいろあり過ぎた。なぁレイ、ラン、メーダ、それにジョセ」
う、うん。
そ、そだね。
面妖な日々だったわ。
転移と転性の仕掛け人のあたしもよ。
「こんな話、高校のクラスメイトに話したって信じてくれないしね、ユウガ」
「あたしだって、こんな話はしないわさ。ところでリーダー、日本に着いたらジョセとメーダはどうすんのよさ?」
その会話を小耳に挟んだ、ヘドラー、アイリーン、エマ、バンジョが目を輝かせて俺に吸い付いて来た。
「なんだよ君たちは? 言っとくが、俺の家に転がり込もうなんて事は絶対に考えてないよね!」
ドキ ぐさ ほぇ~ なんと!
「ユウガ少年、君は人の心が読めるとは! それは正に余が 私が言いたかった事なのだよ」
『ヘドラーが我が家に居候するって、考えただけでもゾッとする。第一、父鶴吉と亀代になんて説明したらいいんだ? うちはいつから老人ホームになった? 』
そして、こいつらも言いたい放題の爆弾を投下してきやがった。
「「「そうそう、私達アンドロイドのアイリーン、エマ、バンジョ、それにエルザと話し合って、私達もマスターの家でお世話になろうって、密かに全員一致で決めたの。そしてRock Band "The Cutie Bunnies" デビューの為に私達の操を捧げるの」
「アンドロイドの操ってなんだよ?」
その話に違う怒りをぶつけたのはレイとラン、それにメーダとジョセだ。
「操?? あんた達、なんでこの船に居るかと思えば、そんな破廉恥な事を考えてたのね」ジョセ
「新妻となる私レイとユウガのスイート・ホームに土足で上がり込むなんて! それに総統、あなたは南極に帰ればいいじゃない! そのアンドロイド全部纏めてね! バンド活動は、南極基地からでもアシスト出来るでしょ?」
レイにはユウガと結婚すると言う大きな夢がある。それが実現するのかどうかはまだ未定の話だ。
「まぁとにかく、日本に帰ってからゆっくりと今後の事を考えれば良いではないか。しばらくはユウガ少年の家で世話になるのに、なんの問題があろう」
「「「勿論ないない!!!」」」
「なんでアンドロイド組が、総統の肩を持ってるんだ?」
「ユウガ、ここでゴチャゴチャ揉めていてもしょうがないから、取り敢えず今はこの異世界から日本に帰る事だけを考えましょうよ」
レイがそう言えばそうしてしまうのは、俺は既にレイの尻に敷かれているのかもと思えてしまうが、それでもそれが妙に心地よい? それが当たり前? なんだか不思議な気分になって来る。
「そうしようかレイ」
うん♡
ズゥゥゥ
レイの一言に反論する者もなく、俺達を乗せた<ピーピング・トム>号は、不思議な体験満載の異世界ジャーブラ島を後にして行くのだった。




