EP閑話 美魔女たちのコーヒーブレイクⅡ 女神様降臨中*
◆◇◆◇◆◇
転移
日本時間 8月29日 東京午前10時
優雅達の夏休みもそろそろ終わるまだ蒸し暑い午前。
喫茶店には、涼を求めて開店前から店の前に並ぶ客も珍しくは無い日々。
レイの母親とランの母親二人が、行方不明事件を通じてお互いに話し合うようになって早20日余り、今日もお互いの情報を交換する為、お気に入りのコーヒー専門店<Plus&Minus>に来ていた。
カラン コロンとカウベルを鳴らして二人が店に入ると、途端に男性客の視線が集中するのも毎回恒例の光景となったが、二人は特にそれを気にする素振りもないようだった。
肌の露出したノースリーヴの軽装がまた一段とセクシーであり、その上二人ともミニスカを履き、美しい太ももを惜しみなく曝け出しているのだ。人妻とは言えモデル以上の容姿容貌は、男性客ばかりでなく女性客にも羨望と溜息で見つめられていた。
二人の座るテーブルはいつも決まっているが、予約席でもないのに、何故かそのテーブルだけはいつも空けられていた。
コーヒー専門店<Plus&Minus>に二人が出入りするようになって以降、にわかに男性客が増えたのはこの美魔女二人のお陰であり、売り上げが伸びた店長にとって二人は福の神......いや女神様のような存在に思えるのだった。
二人は知らない事だが、レイママとランママが入店すると、アルバイトのウェイトレスが、店の前に一枚の看板をぶら下げるのだ。
その看板には、<女神様降臨中>と書かれていて、二人が会計中にまたこっそり取り外すのである。
_______「な言った通りだろ保毛山、二人共すげぇ美人だろ? 」
「先輩、俺、惚れてしまいました」
「俺はレイって言う子のママを押すが、ランママも捨て難い」
「いっそファン倶楽部作りません? 先輩」
おうよ!
こうなったのは、営業で外に出たリーマンが、偶然この時間に二人が出没する事を知ると、何故かその情報が拡散されていて、学生や仕事を抜け出して来たであろう店員達、暇を持て余している糞じじいが集まるようになり、店内は様々な年代の男性客で溢れるようになっていた。
「おっ、また来ているな爺さん、いい歳してあんたも目当ては.....」
「ふぉっ ふぉっ、ヤボな事を言いなさんな、眼福の為、冥途の土産の眼福じゃよ」
「俺は自主休校して来てる」
「生学さん、人生にゃ勉強よりも大事な事がある。あんな美人にゃめったに会えるもんじゃないからな」
「そうですよね、一杯500円の本格コーヒーで、女神様二人を拝めるなんて、学校の講義を聞いているよりよっぽど有益です」
_____レイの母親はフランス系で、<魔女の加護>の血を強く受け継ぎ、日本人のランの母親も、<B'sの加護>を引き継いでいる事により、お互いに当初から初対面とは思えない直感を感じていたのが分かると、昔からの親しい友人のような気持ちを持つようになっていた。その理由は当然、加護を授けた存在に関係している。
「レイママ、今日はもう8月29日。行方不明のあの子達はどうしているかしらね」
「わたしは少しも心配してないわよ。昨日、なんだか急にパァっと雲が晴れたような気分になったのよランママ」
んふんふ
「あらら、あたしもよ。明日にでもピョコッと帰って来るような、そんな気がしているの」
「あはは、明日が楽しみね」
この会話を聞いている限り、行方不明のレイとランが、明日帰って来るのがごく当たり前であるかのように思えてしまうのだ。
_____ところでさ、このコーヒーは本格ドリップだけど、ランママ、<凍結乾燥法>って知ってる?
知ってる知ってる、インスタントのコーヒーや、みそ汁、その他いろいろな商品が出てるもんね。
そうそう、<フリーズドライ製法>って凄いのよ。鮮度が落ちなくて、コーヒーなんかインスタントと思えない程美味しいの。勿論、ここの本格コーヒーとは比べられないけど。
ふ~ん、加熱して出来た物を急速冷凍する技術ね、人間って凄い技術を考えるものね。
「あらら? ランママだって人間でしょ?」
「そう言うレイママだって......半分は」
それに続く言葉は無かったが、二人の瞳は何かを確認し合うように輝いていた。
「それはそれとして、ふふ、知ってる? 金属の場合は少し違ってくるけどね、刀なんか熱した後、急速に水で冷やしたりして強度を増して作っているけど、度を越すと......バーンなの」
「原子の結びつきが弱くなるからよね」
「人間だって季節が変わる時、気温の変化で体調を崩すもんね、それと同じだよね 」
「まぁ私たちは......加護......持ってるから」
「しっ、聞こえちゃうからランママ」
二人の美魔女の会話を、聞き耳を立ててこっそり聞いている男性客には全く謎の会話である。
「人間とかバーンとか籠とか? 最後のは買い物かごのことだよね、先輩」
「主婦だからな、マイバックの新製品の話だろ」
「しかしですよ、あんなセレブより奇麗な女神様が買い物しますかね?」
「保毛山、女神様だって腹は減るんだ」
はぁそうですよねぇ。
優雅達"Cuty Bunnies" が、異世界で地球の運命を賭けて、ヘドラーと戦闘中とも知らず、日本は平和な日々を送っていた。




